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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第一章 管理人のお仕事
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第七話 地下一階構想案

「では新しい地下一階の構想案を発表したいと思います」


「「パチパチパチ」」


 俺とドラシーは拍手をしてララの次の言葉を待つ。


「質問は一通り説明してから後で受け付けます」


「わかった。お願いします」


 ララは要点を箇条書きしてある紙と、フィールドの地図が書いてある紙を真ん中に置いて説明を始めた。


 地下一階のフィールドは今までと変わらずの洞窟フィールド。

 今までよりも道幅を広くしたり、地下二階まで最短で行けるルートの距離を短くする。


 出現する魔物は三種類(ブルースライム、オレンジスライム、ダークラビット)。

 入り口付近では単体でしか出現せず、奥になるに連れて複数で出現させる。


 魔物が出現しない休憩エリアを設け、そこでは湧き水を飲めるようにする。


 薬草が採集できる場所を設ける。

 種類は薬草のみ。

 ただし、採集できる枚数に制限をつける。


 トラップはいっさい設置しない。


 安心安全な魔物を見回り巡回させ、ピンチのときには冒険者のお助けをさせる。


「こんな感じにしたいんだけど、どう? あくまで一階は初心者向けね!」


「いい案だと思うわ。爺さんと違って細かい気配りもできているようだし」


「ほんと!? 良かった~」


「ただ一点だけ気になるところはあるわね。……っと、アタシの前にロイス君の意見を聞きましょうか」


「うん! お兄どうかな?」


 え? これでいいんじゃない?

 俺にララ以上の案は出せないよ?

 ドラシーが気になった点はどこだろう。

 新しく追加された要素だろうから……


「よく考えられてると思うよ。さすがララだ。特に問題はなさそうと言いたいところだけど、湧き水を飲んで大丈夫なのか?」


 懸命に絞り出した質問をララではなくドラシーに問いかける。


「そうね、衛生面では魔力で作った水を飲んでも体にはなにも異常はないわ。ただせっかくだからこの大樹を利用したほうがいいと思うの。幸いにもこの森は水が豊富な上にきれいだしね」


「……この森の水をそのまま湧き水として出せるってこと?」


「えぇ、私が行うのは大樹が取り込んでる水の一部が循環する道を作るだけ。大樹からしたら微量だし、マナの力で不純物も取り除かれるから美味しい水ができると思うわよ」


「それはいいな。魔物が出ないのに加えて美味しい水が飲めるんだったらいい休憩場所となりそうだ」


「うんうん、いいでしょ!? 他は?」


 ララが好奇心旺盛な目で見てくる。

 ……もしかして俺に質問させるためにわざと曖昧な説明にしたところがあるのかもしれない。


「う~ん、薬草なんだけど」


「うんうん!」


 どうやら当たりのようだ。


「……薬草は魔力で作るのか?」


「そこは魔力じゃなくて実物にしたいんだけど、できるかなドラシー?」


「大丈夫よ。成長に必要な環境と種子だけは魔力で用意して、後はこの地のマナの力で自然に成長を促すわ。枯れたらまたそのとき考えましょう」


「それで薬草の葉は実物になるのか?」


「過去にやったことがあるから大丈夫だと思うわ。種子はきっかけにすぎないみたい。魔物を作る原理に似ているわね」


「ふーん。少し疑問は残るが深く考えても仕方ないか。でもララ、枚数に制限をつけるってのはなにを考えてのことなんだ?」


「それは単純に採りすぎを防ぐためだよ。市場価格に変動があっても困るしね。それに薬草はすぐ採集できるようになるわけじゃないから一人に独占されたら他の人にいきわたらないからね。でも考えては見たけど、枚数を制限することって実際にできるのかな?」


 ララは首を傾げながらドラシーに質問するが、ドラシーもまたなにか考え事をしているようで反応せず、静かな空間が流れる。


 枚数に制限をつけるのは難しいだろうな。

 荷物検査するわけにもいかないし。

 自己申告するにしてもわざわざ「制限より多く採ってきました」なんて言うわけない。

 制限はつけられない、独占は防げないとなると薬草の数自体を減らすしかなさそうだな。


「とりあえず採集可能な薬草自体を少なめに設定してみたらどうだ? そんなに急に冒険者が増えるわけでもないだろうから十人程度が採る分には問題ないと思うけど。少なくしておいたら他の冒険者に遠慮してあまり採らないかもしれないし。まぁ逆の可能性も考えられるが……。それに薬草を巡って冒険者同士で争いが起こるようなことがあっても、それを防ぐために見回り巡回させる魔物を作るんだろ?」


「……うん! お兄の言う通りね! まずはやってみることが大事だよね! さすがお兄!」


 褒められてるんだろうが、そんなにいいことを言ったつもりはない。

 作戦か?

 これは俺を持ち上げるだけ持ち上げといて後で面倒なことを押しつけるための作戦なのかもしれない。

 ここでドラシーがなにか思いついたように口を開く。


「さっき私が気にしてた点がこの数の制限についてなのよ。どうしようかしらね……魔力でタグみたいなものを作って薬草一枚一枚にセットしてみるかなぁ」


「タグ? それでカウントできるようになるの?」


「タグごと採ってくれたらだけどね……」


「タグごとか……」


 ララとドラシーはまた黙り込んでしまった。


 タグを付ける場所が重要だということだ。

 薬草の葉の部分に付けるのは難しいとして、葉と茎の間に付けることになるだろうが、そのタグより葉に近い部分を切られたら意味がないからな。

 タグごと採らせるようにするには……


「タグから葉の部分を魔力で覆えないの? ほら、たまに果物の木で見かけるだろ? 果実に一個一個袋を被せてるみたいにさ」


「「!?」」


 二人は俺の案に驚いたようだ。


「ドラシーできるの!?」


「そうね、それなら可能だわ! タグを設置すると同時にタグから葉の先までの部分を薄い最小限の魔力で覆う形にして、もし魔力の部分を切られた場合は葉ごとその魔力で消滅させちゃえばいいし」


「いいじゃんそれ! お兄ナイスアイデア!」


 実現可能そうな案に二人とも喜んでいる。

 だけど、う~ん、なんか引っかかるなぁ。

 ……カウントの方法についてか?

 個々にカウントして、かつ制限までしか採らせないことなんてできるのか。 


「タグごと採集させるのはできそうだとして、どうやってカウントするんだ?」


「冒険者ごとに持っているタグを魔力で感知すればいいだけじゃないの? ドラシーの仕事になるけど。制限超えて採ろうとしたらそれ以上はタグを採れないようにするとか、出口でカウントして多かったら没収するとか? ドラシーがだけど」


 凄いドラシー頼り!

 まぁそれがドラシーの仕事だから構わないか。


「ドラシーできるよね?」


「……」


 ん?

 無理なのか?

 てっきりなんでもできるもんだと思ってたが。


「……やっぱりタグは難しいかもしれないわね」


「なんで?」


「アタシが冒険者一人一人を確認できればララちゃんが言うようなことも可能なんだけどね、今みたいにお客が少ないのならまだしも今後は増える予定でしょ? さすがにそれは魔力的に効率が悪いというか。タグ自体の取り付けも薬草が成長しきった後に取り付けないといけないしね、それもどうするか」


「そうだけど、ドラシーが無理なんだったら私かお兄が出口でタグを外すしかないかな? 私たちのチェックを受けていないタグ付きのものはこのエリアから出た時点で消滅させるとして、それなら数は制限できるよね? でもタグの取り付けも手作業になるよね……。どうしようお兄?」


 ……これは面倒だな。

 制限を今後薬草以外のものにもつけるとして、種類や数が増えると管理がどんどん大変になる。

 タグを取り付けるだけでも結構な作業なのに、訪れた冒険者全員分のタグ付き荷物を確認するとなるとさらに大変だよな。

 なにかいいアイデアはないものか。

 ララには悪いが持ち帰れるものは今までと同じで魔物の素材や魔石だけでいいんじゃないか。


 ここでふと先ほど感じた疑問が再び浮かんできた。

 さっきドラシーがこのダンジョンにおいては魔物と薬草の生成が似ていると言っていたな。

 確か魔石をダンジョンコアが取り込むことでその魔物を生成できるようになるんだったか。

 そう考えると、魔物はまず核となる魔石を魔力で生成し、それをマナと合わせて実体を作り出しているのか。 

 なら魔物の素材は持ち帰れても魔石は持ち帰れないんじゃないのか?


 ……もしかしてここで循環が効いてくるのか?

 魔力で循環……すなわち魔物が倒された後の残骸をダンジョンが吸収し、それをマナの力で再生してまた新たな魔物を生み出すという道を作る。

 そうやって生成された魔物の核となる魔石は魔力だけでなくマナの力からもできているため持ち帰ることができるのか?

 それならば先ほどの種子はきっかけにすぎないという言葉を魔物にも当てはめることができるな。


「……お兄? 起きてる? お兄!」


 気付くと二人が俺を凝視していた。

 しばらく目を閉じて無言で考えこんでしまっていたようだ。


「あぁ、少し考え事をしてた」


「……なにかいい案浮かびそう? やっぱり数を制限するのは諦めたほうがいいのかな」


 そうだった、あまりにも面倒そうだと思ったのか知らないうちに制限のことから逃げていたようだ。

 ララの願いを叶えてあげたいのは山々なんだけど、なにか人の手を使わなくてよくて俺が楽できる方法はないか。


 ……できるかわからないが結局はドラシーに頼るしかなさそうだな。


「いい案が浮かんだ」


「「!?」」


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