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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十四章 帰還

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第六百九十五話 4月に向けての従業員会議

 昨日、カトレアたちはマルセールにて夜遅くまで会議をしてきた。


 その内容を受け、今日十六時からは大樹のダンジョン内で働いてる全従業員を集めて会議を行うことになった。

 従業員への連絡は今朝になってしまったが、大多数が参加できるそうだ。


 ほぼ全員が一堂に集まるなんてかなり久々のことじゃないだろうか。

 ここ最近は月に数人は新しい顔触れが増えてるし、月に一度はこうやって集まるのもいいかもしれない。


「ミーノちゃん、アイリスちゃん、ホルンちゃん、みんな揃っていますか?」


 左隣に座るカトレアが、各部署のリーダーに確認する。


 やはり魔導図書館の講義室だとみんなが座る座席が段差になってるから全員の顔が見えていいな。


「メロ君、各駅の代表者の方々も揃ってますか?」


 各駅からは責任者一名に来てもらっている。

 マルセール、ソボク村、ビール村、ボクチク村、サウスモナ、ボワール、スノーポート、そしてサハ。


 魔道列車が運行を開始してまだ一年も経ってないのに駅増えすぎ。

 俺が魔物たちといっしょに魔力プレートを設置してたあの暑い夏がもう既になつかしいな。


「ユウト君、ジジイを起こしてください」


 ジジイも来てるのか。

 別にジジイは来ても来なくてもどっちでもいいのに。

 仲間外れにされるのは嫌がるんだよな。


「では書記はモニカちゃんとシファーさん、進行はロイス君で始めます」


 このままカトレアが進めてくれたらいいのに。


 というかカトレアとシファーさん、同い年なのになぜか距離があるんだよな。

 いまだにさん付けで呼び合ってるし、敬語だし。


「ロイス君」


「うん。では始めます。みなさん、お疲れ様です」


「「「「お疲れ様です!」」」」


 うんうん。

 子供組は元気があっていいな。


「3月も半ばに入り、外はようやく少し暖かくなってきましたね」


 ……今度は反応が薄いな。

 ボワールはまだまだ寒いし、スノーポートは一年中雪だし、サハは年がら年中暑いんだから季節ネタはやめろということなのだろうか。


「さて、ではお手元の紙に書いてある目次順で進めていきます。まずは学校のことについてですね」


 マルセールに学校ができることは今町で一番の話題になってるそうだ。

 子供たちもワクワクのドキドキだとか。

 俺は大樹の森から出られないから実際の様子は知らないが。

 ウチの従業員である子供組を見てる感じは楽しみな様子が全く伝わってこないけど。


 でも近隣の三つの村から通うことになる子供もたくさんいるそうだ。

 各村に学校を作るとなると大変だしな。

 それに各村からは子供たち専用の通学魔道列車を運行するから通学時間もそこまでかからないし、安全だし。

 しかも学校の正門駅に到着するという直行便だし。


「……とまぁ学校の概要はこんなところです。ちなみにお子さんがいらっしゃる方と子供組にお聞きしますが、お子さんを学校へ通わせたいという方、通いたいという方は手をあげてもらえますか?」


 あ、やっぱり親たちのほとんどは手をあげるんだな。。


 子供組はどうだ?

 アン、エルル、ルッカ、メイナードといった、あと一年だけ通える組は誰も手をあげてない。

 マックもか、あと二年も通えるのにな。

 みんな遠慮してるだけなのか、学校には行かずにこのまま働きたいのかどっちなんだろうか。


 ギャビンさんたちのところのサミュエルはまぁ冒険者を続けさせるだろうな。

 同じパーティのワトソンとイザベラの問題双子は学校に行きたいと言いそうな気もするけど、あいつらは問題を起こす気しかしないからダメだ。


「学校の話はこれくらいにしますか。今の話は近日中に町でも公開される話ですから秘密にされなくても構いません。ちなみに、学校運営に関してはウチも町も赤字垂れ流しです。ですがそれでも子供たちの未来のためには必要なこと、やるべきことだと判断しました。当然ウチのダンジョンにとっても将来的に有益なことだと思ってます。ですのでみなさんの賛同を得られたら心強いのですが、いかがでしょうか?」


「「「「パチパチパチパチ」」」」


 みんなは拍手をしたり、頷いたりしてくれている。

 赤字が想像以上で、給料が今より少なくなっても知らないぞ。


「では次に、4月からウチと町との間で変更になる事柄を数点お話しします」


 まずは魚屋の件だ。


 サウスモナとボワールに作った海階層での漁が思ってたよりかなり順調らしい。

 天然の魚、天然の魔物が豊作ってことだ。

 養殖についてはまだまだこれからだが。


「というわけでして、サウスモナとボワール、それぞれの町や漁業協会から、地下四階のドロップ品である魚系の魔物をマルセールの魚屋に卸すのをやめてほしいとの要望が来ました。マルセールは今や大きな町になりましたからいい顧客になりますからね。それに魚に関してはウチからの分だけでは足りてないという現状もありましたので、要望を受け入れることにしました」


 でもこれって結構痛いんだよなぁ~。

 アジジやサババでもそれなりの売り上げにはなってたのに。


「ん? はい、メロさん」


「ヨハンたちはそれで納得してるのかよ? 大樹のダンジョンのおかげでマルセールに魚屋を出せたようなもんなのに」


 メロさんらしい発言だな。


「ヨハンさんやヨーセフさん、それにサウスモナとボワールの海階層を管理してもらってるヴァルドさんやシモンさんの意見もあってのことです。魚の流通経路や流通数が増えることによってそれぞれの町の漁師たちの人手も増やせるみたいですし、マルセール内にも魚屋が増える予定ですから。それにウチとしても、海階層使用料として今後は維持にかかる魔力費用分以上の額を徴収させてもらうようにしますからそこまで心配はいりません。学校とは違い、赤字になってまで海階層を使わせる気はありません」


「……わかった」


 納得してくれたようだ。

 メロさんは優しいから、職に就ける人が増えると言われればなにも言わないだろう。


「では次に……」


 そしてボクチク村とビール村からの要望の件を話した。


 みんな要望が多すぎるんだよなぁ。

 駅の責任者たちはそれぞれの村や町の要望を今どういう気持ちで聞いてるんだろう?

 魔力と相談しながらできそうなことはやってみるけどあまり期待はしてほしくない。


「では次、マルセール自然公園内でウチが出店してる店舗について、マルセールから要望が来ました」


 これまた要望だよ。

 しかも一方的な。


「実は町側の数店舗が撤退したいと言ってるそうです」


 まだ一か月ちょいしか経ってないのに早すぎだろ。

 もう少し根性を見せてほしいもんだ。


「理由は、ウチの店舗のせいらしいです。モモ、なんでかわかるか?」


「ウチの全店舗に売り上げが負けてるからですか!?」


「そうだ。しかもかなり差があるらしい」


「でもそれって私たち悪くないですよね!? 単なる負け惜しみじゃないですか!」


「そうだな。でもあちらさんもお金を稼ぐためにやってるんだから、売り上げが少なければ撤退せざるを得ないだろ?」


「それは仕方ないですよね!? 私たちだって町側の店舗にはもちろん、仲間の店舗にも負けないように必死にやってるんですし!」


「そうだな。一品一品のクオリティが高いのはもちろん、状態保存機能付きレア袋もフル活用し、さらに薄利多売でやってるんだからウチが勝つに決まってる。そもそも町の人たちとは下ごしらえの段階の環境からして全然違うわけだ。不公平を感じるのも理解できる」


「もしかして私たちに撤退しろって言ってきてるんですか!?」


「まぁそうだな」


「「「「えぇっ!?」」」」


 俺もビックリだよ。

 元はと言えば向こうが出してくれと頼んできたくせに。


「すみません……」


 カトレアの隣に座るジェマがみんなに謝る。

 せっかくモモ、ハナ、アン、ヤックとマック、メロさんも頑張ってたのに。


 本当なら町長を連れてきて土下座でもしてもらいたいところだが、そんなことさせたら問題になりそうだからな。

 代わりに今そこに座ってる町長の母親に謝ってもらってもいいが、これはこれで問題になるからな。

 その母親の娘は俺のペットを盗むし、なんてはた迷惑な家族だ。


 ……でもよく考えたらセバスさんが頼んできた気がする。

 ということはジェマが謝って正解なのか。


「というわけで、みんなには悪いけど今週いっぱいで五店舗とも撤退することにした」


「「「「えぇ~……」」」」


「町長やセバスさんには俺から強めの苦情を言っておくから我慢してくれ。メロさん、それでいいよな?」


「……あぁ」


 子供たちのことはメロさんがなだめてくれるだろう。


「それと、南マルセール駅にある24ストアも撤退することにしました。理由はほぼ同じです。町から言われたことは、今後店を出すのであればできれば駅の改札内に入ってからの場所のみにしてほしいとのことです。もちろん無料で改札内に入ることは禁止という条件付きの要望でした」


 24ストアの弁当なんかめちゃくちゃ売れてたのに。


 改札内に店を出すなら、魔道列車には乗らないが改札内に入りたいという人のために入場券みたいなものを準備したらどうかとか言ってきた。

 その入場券の収入のいくらかは町に入るからな。

 なんてがめついやつらだ。

 ララがいたら間違いなくブチギレてるところだぞ。

 セバスさんがララがいない今を狙ったのは明白だな。


「要は町の中ではダンジョン経営のみに徹しろということです。今後はダンジョンの一部を町に貸し、その収入で運営する。そういう形もありなのかもしれません」


 面白味はないけど、そのほうが楽なのは事実だよな。

 駅以外で町とダンジョンを行き来できる転移魔法陣を増やしたいと言ってきたらオプションで追加費用と維持費用を取るようにすればいいし。


「最後に、魔道列車の増便についてです。3月や4月というのは人々の移動が多くなることが予想されます。なのでしばらくの間、運行本数を1.5倍にしますので各駅員への周知をお願いしますね。ではこれにて会議は終了です。このあとバイキング会場の別室にて懇親会を予定してますので、お時間のある方はぜひご参加ください。強制ではありませんので、ご予定がある方はここで抜けてもらって構いません。宿が必要な方は宿屋フロント従業員の三名の誰かにお声がけください。それではお疲れ様でした」


 さて、人事異動については個別に相談してみるか。


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