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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術

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第六十七話 鍛冶工房運用システム

「「「「「いただきます!」」」」」


 土曜日の七時半過ぎ、今日の朝食は白米、味噌汁、卵焼き、納豆だ。


「……うん、この味噌汁美味しい。ララのとは少し味が違うなぁ。……卵焼きも出汁の味がよく出てる」


「そうだね! なんかホッとする味だね!」


「ん、良かった」


 今日の朝食担当はアイリスさんだ。

 町の鍛冶屋では朝昼はお弟子さんもいっしょに食べることが多いみたいで、アイリスさんとおばさんでいつも十人前程度のご飯を作っていたらしい。

 だから包丁の扱いはもちろんのこと、味も自分の味というものをしっかり持っている。


 カトレアもララに半年間教わってる成果もあってかなり腕は上達してるし、ユウナも少しずつではあるが作れるようになってきている。

 みんなが料理をしてくれるから俺は食べる専門でよくて非常に楽だ。

 リクエストすればなんでも作ってくれるしな。

 今日だってこのあと受付が終わったらララは豚骨ラーメンの試作に入るはずだ。


 ……え?

 なんでアイリスさんがこんな朝早くから朝食を作ってるのかって?


 そりゃ鍛冶の仕事は八時から始まるからそれまでにご飯を食べて身だしなみを整えたり準備をしないといけないからな。

 ダンジョンの営業開始は八時半からだが、おそらくそれまでに武器のメンテナンスを頼みたい冒険者も多いだろうから八時からにしたんだ。


 鍛冶工房の営業時間は八時~十八時半を予定している。

 ただし、それは受付時間なだけであって、おそらく十八時以降は武器を預けてその日は帰り、翌朝受け取りという形が一番多くなるだろう。

 十八時半までに預けられなかった人は翌日の朝一に見てもらおうとするはずだ。

 なのでアイリスさんの仕事は営業時間が終わってからが本番で、さらには朝に急な仕事がいっぱい舞い込む可能性もある。


 完全にブラックだと思うかもしれないが、冒険者たちのことを考えるとこれがベストなのは間違いないんだ。

 その代わり、朝ダンジョンの受付が終わってから夕方までは比較的暇な時間ができると思っている。

 不規則な生活になるかもしれないが、この内容をアイリスさんは快く了承してくれた。


 実際にオープンするのは来週の月曜日、つまり明後日からだが、既にその時間に合わせて行動しているというわけだ。


 ……ん?

 そうだよ、アイリスさんはここに住みはじめたんだよ。


 メタリン馬車で十分ほどで通えるとはいえ、朝早いし夜遅いからそれなら住んだほうが楽だということになってね。

 それでも俺は通いを勧めたんだが、アイリスさんも一人暮らしをしてみたかったらしく……。

 結局初めて来た日の翌日からここに住んでもう今日で三日目になる。


 毎週土曜の夜は町の家に帰り、月曜の朝にダンジョンへ行くということでゲルマンさんやおじさんおばさんを納得させたらしい。

 なので土曜は多少作業が残っていようが他の従業員といっしょに帰る予定だ。

 月曜の朝だけメタリンは二往復することになるが、メタリンは喜んでいるので遠慮なく働いてもらおう。

 ただし今週は準備で忙しいから帰らない。


 それにここに住みはじめたといっても、住んでいるのはこの家ではなく鍛冶工房だ。

 あそこには生活に必要なものが全部揃ってるからな。

 冷蔵魔道具も追加したから食料も保管できるし。


 ただアイリスさんはご飯はできるだけみんなといっしょに食べたいらしい。

 なので鍛冶工房とこの家の廊下と繋がる転移魔法陣を新しく設置することになった。

 廊下のドアから入ってくるから、他のみんなと同じくまるでこの家の二階に住んでいるような気にもなる。

 ついでだからリビングにあった物資エリアへの転移魔法陣も廊下に移動させた。


「ウサギたちはどうですか? 仕事覚えてますか?」


「ん、ウサータは目利きができるようになってきた。ウサッピには汚れ落としを教えてるけど凄く丁寧でいい」


「なら良かった。あと二日で受付任せられますかね?」


「ん、それはまだちょっと難しいかも」


「そうですか。となるとカトレア次第ですかね」


「……」


 カトレアは俺に話を振られたことに一瞬体をビクッとさせたが、なにも言わずにご飯を食べ続けている。

 ……顔が完全にやつれてるな。

 こんなカトレアを見るのは久しぶりかもしれない。


 カトレアには鍛冶工房内で使う魔道具をいくつか製作してくれるように頼んでいた。


 まずは持ち込まれた武器の材質や形状を調べることができる魔道具だ。

 使用されている鉱石の種類や武器の大きさによっても修理の作業量は変わってくる。

 それを一瞬で把握するための魔道具が作れないかを相談してみた。

 ついでに材質と損傷具合からそれに伴う作業時間や料金を提示できる機能を備えたやつをな。

 あとは損傷具合をウサギが判断できるようになればその魔道具を使ってウサギでも受付ができると思ったのだ。

 この考えを俺から聞かされたカトレアは、久しぶりの大作になりそうな予感に嬉しそうにしていた。


 さらにその魔道具に管理人室の受付で使ってる受付魔道具と似たような機能もつけてほしいとお願いした。

 提示条件を了承した冒険者が冒険者カードを差すと受付が完了し、冒険者側の確認用に小さな紙を排出、店側にはそれと同じ情報を持ったタグを排出するといった機能だ。

 そのタグをウサギが武器に取り付けることで店側の受付作業は完了となる予定である。


 次に依頼したのは受取のための魔道具だ。

 これは単純で、冒険者カードを差した状態で提示された料金を入れると、武器に取り付けられていたタグが外れるというものだ。

 もちろん仕上がりに納得してもらってから料金を支払ってもらうので武器を一度確認してもらうことになる。

 もし料金を支払わずに店から出ようとしても、タグ付きの武器自体をこのエリアから持ち出せないように設定しておく。

 万が一、仕上がりに不満があるようだったら今回の料金はなしでまた受付をしてもらうことになる。


 と、ここまではカトレアも頷きながら聞いてくれていたんだ。


「それならウサちゃんもお金のやり取りをせず引き渡しができますね」


 なんて言ってたりもしたんだが、俺の考えではこの時点ではまだ半分ほどの内容だったんだ。


 その次に依頼したのは、受付した武器を転送する転移魔法陣だ。

 ただし、タグ情報が持つ受付番号に紐づいた保管先へ転送させる機能付きだ。

 普段使用している転移魔法陣は対となる転移魔法陣と行き来できるものばかりだが、これは送る側は一つで受ける側は複数というものだ。

 行き先をタグ情報だけで指定できるかなんてわからないが、できたら便利だなーと思って提案してみた。

 これを聞いたカトレアは実現できるか目を瞑って考え込んでしまった。


 おそらく鍛冶工房の裏に保管専用の小屋を作って、その中に大量の転移魔法陣を描くことになるだろうな。

 大事な商品だから丁寧に扱わなければならない。


 受付した武器が保管庫に転送されるとなると、次は保管庫から鍜治工房へ転送される仕組みを作らなければならない。

 これはアイリスさんがボタンのようなものを押すことで次の作業予定の武器が転送されてくるような仕組みの魔道具にしたい。

 転送されてくる武器は保管庫にあるタグの受付時間の古い順でだな。

 となるとこの魔道具では今保管庫にある全部の武器のタグ情報を確認する必要がある。

 ……冒険者カードみたいに一元管理したほうが楽そうだな。

 そう思った俺は考えたことをそのまま言ってみたんだ。


「受付時のタグの情報を全部の魔道具から参照できるようにしようか。受付済みか作業中か完了などの情報も入れよう。完了したものは食堂と同じように番号をどこかに映し出しておこう」


 するとしばらく無言だったカトレアが口を開いたんだ。


「……ダンジョンコアの持つ情報に鍛冶情報を加えるということですか?」


「え? そんな大げさなことはしなくてもいいけど、そのほうが楽ならそれでもいいんじゃない?」


「……いつまでに作ればいいですか?」


「オープンは来週の月曜日だけど、ウサギたちのテストもあるしできれば早いほうがいいな」


「……他になにかありますか?」


「あぁ、あとはアイリスさんが作業完了したものを保管庫に戻すための転送魔道具だな。ってこれは受付のものを使えばいいか。ごめん今のはなしね。……いや、完了したことを更新しないといけないからやっぱり必要か。じゃあこっちの転送魔道具から転送されたものは完了になるようにしといてくれる? あとは……受取に来た冒険者が冒険者カードを差したときに保管庫から作業完了済みの武器が転送されてくる仕組みを受取魔道具に追加しようか。これなら受取時はウサギはノータッチでいけるはずだ。冒険者カードと鍛冶情報を紐付けするのも忘れないでくれよ。うん、これで全部だ」


「……わかりました…………ぐすっ」


 その後カトレアは自分の作業部屋へ向かっていった。

 アイリスさんが来た日の夜のことだから水曜の話か。


 それからカトレアは朝昼夜関係なくご飯のとき以外はほとんど作業部屋に籠りだした。

 たまに鍛冶工房を行ったり来たりしつつドラシーやアイリスさんと入念に話し込んでいる姿が見られた。

 なぜかわからないが俺とは一言も口を聞いてくれない。

 まぁこういうときはたいてい俺の提案が上手く行ってるときだから特に気にしたりもしないけどね。


「ロイス君……午後から鍛冶工房内で試用してみます」


「え!? できたの!?」


 と思ったら久しぶりにカトレアが話しかけてくれた!

 もうできてるなんてさすがだな!

 

「……はい……でも少し寝てもいいですか」


「もちろん! ゆっくり寝てくれ!」


 気遣ってるつもりで言ったんだが、ララとユウナ、そしてアイリスさんからも冷たい視線を浴びせられた。


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