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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十三章 桜舞い散る

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第六百六十七話 援軍第一陣

 ワタが行方不明で大混乱の中、第一陣となる魔道列車が到着した。


「来たのです!」


「私が来たからにはもう安心よ!」


 やはりこいつらも乗ってたか……。

 まぁ家でカトレアから連絡を受けたのはユウナだったみたいだし当然か。


 そのユウナとシャルルに続き、足早に降りてくる冒険者たち。

 みんな真剣な顔つきではあるが、どこか高揚感のようなものも見て取れる。


 シャルルはともかく、この人たちが来てくれたらもう安心だな。

 なんたって最強の援軍だ。


「ん?」


「ミャオ」


「あ、お前も来たのか」


 いつの間にか足元にチビ猫がいて、俺の足に体を擦り付けてきた。

 構ってやりたいところではあるが、それはあとにしよう。


「お疲れ様です。早速ですが状況を説明しますので俺の周りに集まってください」


 みんなから見えるように台の上に上がる。


 そして大きいホワイトボードに張り付けたサハの町の地図を見ながら説明を始める。


 まずは被害状況に加え、特に魔物の出現が多い場所、出現してる魔物の種類などについて話す。


 次はみんなにやってもらう任務についてだ。

 西側に行くEランク冒険者は絶対に町への魔物の侵入を許さないこと、それと魔道化用の土壁を作ること。


 南側に行くFランク冒険者はさっきまで俺が戦っていた場所へ行き、コタローの指示を仰ぐこと。

 それと魔瘴の流れが不安定になってるので、町中のような町外を巡回して魔瘴スポットの発生に気を付けつつ、住民への避難を促すこと。

 これは衛兵隊のあのリーダー格の人に指示を仰いでもらうことにした。


「最後に、おそらくですけどこのサハの町の魔道化する範囲はこんな感じになります」


 地図に赤色で線を引いていく。


「「「「えぇっ!?」」」」


「たったそれだけ!?」


「狭すぎませんか!?」


「しかも極端に横長ですね!」


「魔道化してもらえるだけでありがたいだろ!」


「この町はみんなが思ってるより廃れてるんだぞ!」


 お?

 意外にも賛同してくれる人がいるようだ。


「町を規模縮小する案にはサハの女王様にも了承いただいてます。実は今日俺はその話をするためにここに来たんですが、運悪くこんな事態に巻き込まれてしまったというわけです」


「この町にとっては運が良かったと思うけどな」


「だな。運良く管理人さんが来てなけりゃ今頃もう終わってただろ、この町」


「この町の衛兵は口だけのやつが多そうだったからな」


「文句言ってくるやつがいたらアタイがマーロイ大陸の話を延々としてやるよ」


 俺の目の前にいるサイモンさん、ナイジェルさん、チェイスさん、ゾーナさんというEランクパーティのリーダー面々が少し大きめの声で話す。


 こう見るとEランクの人たちは凄く落ちついてるな。

 Fランクの人たちはまだワクワクとドキドキとハラハラが入り混じってるって感じだ。

 ……あれ?

 そういやヒューゴさんたちの姿が見えないな。

 てっきり第一陣で来るものかと思ってたけど。


「西側の最新の状況は現地にてパラディンの四人に確認してください。ヴィックさんもいますので」


「ヴィックが来てるのか」


「あいつ腕鈍ってないだろうな?」


「やっぱり冒険者のほうがいいなとか思ってるんじゃないか、ははっ」


「守りに入ったヴィックにアタイが格の違いを見せつけてやるよ!」


 競おうとしなくていいからな?

 ヒューゴさんがいてくれたら良かったんだけど。


「ロイス君、もう出発していい? いくらゲンさんでもコクエンドリが相手だと心配だよ」


「そうですね。リヴァーナさんたちは壁の強化にも力を入れつつお願いします。壁はユウシャ村みたいなやつがいいですね」


「うん、任せて」


 リヴァーナさんとミオ、この二人がいることが一番心強いかもしれない。


「ではみなさん、この町を救ってきてください」


「「「「はい!」」」」


「「「「うぉー!」」」」


 そしてみんなは次々に転移していく。


 だがそのうちの数名をエマが引きとめた。


「エマちゃんなんなのです!? 早く行かせるのです!」


「そうよ! なんなのよ!? もう遅れちゃったじゃない!」


 こいつら……。

 なんでもかんでも一番じゃないと気がすまないんだな。


「お前たち二人にはみんなとは別にやってもらうことがある」


「私たちだけ別任務なのです!?」


「なによその特別感!? 悪くないわね!」


 こいつら……。

 単純で助かるが、内容を聞いたら怒りそうだ……。


「その前に、ボネが体調を崩してるから小屋の中のベッドを見てきてくれ」


「それをもっと早く言うのです!」


「そうよ! ユウナ早く行きなさいよ!」


「ミャオ」


 ユウナとシャルルとチビ猫は慌てて小屋の中に入っていった。


 そしてこの場に残った冒険者は五人。

 まずはメネアだな。


「家族やフィンクス村の人たちが無事かどうか確かめてきてもいいんだぞ?」


「え? いいよ、そんなのあとで」


「心配じゃないのか?」


「心配だけど、私は家族だけじゃなくて町の人みんなを救いにきてるんだからさぁ~。キミが思うよりは心配してないから気にしなくていいって」


「そうか。なら西側か南側、どっちに行く? Eランクになったとはいえ、ソロで動くのは危険だからどこかのパーティに臨時で入ってもらう」


「西側に決まってるでしょ。コクエンドリやマグマウルフが相手だと私は相性いいだろうし」


「そうか。じゃあリヴァーナさんたちといっしょに行動しろ」


「あ、てっきりユウナちゃんたちとパーティ組ませるのかと思ったら違うんだ」


「あいつらの別件は戦闘じゃないからな。それとこれ、槍雨の杖が二本あるから現場の状況見て魔道士の誰かに渡してくれ」


「了解」


「シファーさんは来ないのか?」


「来ないんじゃない? じゃあ私ももう行くね。早く追いつかないと」


 メネアは一人で転移していった。


 そして残るは四人。

 結成してまだ日が浅いパーティだ。


「今のがメネアちゃんか。最近かなり噂になってるよな」


「ティアリスもべた褒めだったもんな。そういやどこのパーティに入りそうかわかったらすぐに知らせろとか言ってたっけ」


 ティアリスさんもメネアの動向を気にしてるのか。

 というか双子のお兄さんたちと話すの久しぶりな気がする。


「みなさんには南側に行ってもらいます」


「「えっ?」」


「南側ですか!? 西側じゃなくて!? 私たちもうEランクに上がってますよ!?」


「南のほうが楽なんだろ? 最高じゃないか」


 ティアリスさんの兄である双子の戦士二人。

 エマの親友の攻撃魔道士ベルちゃん。

 そしてパラディン隊試験を受けるために大樹のダンジョンにやってきた回復魔道士の女性、ニコレッタさん。


「ニコ、管理人さんの前ではもう少しやる気見せたほうがいいぞ」


「そうだぞニコ。怒らせてダンジョン出禁になっても知らないぞ」


「ニコ! ロイスさんに謝って!」


「ふん。やる気のないやつが嫌いなら出禁でもなんでも勝手にすればいいよ。それも私の運命ってことだよ」


 みんなニコって呼んでるのか。

 確かお兄さんたちよりニコレッタさんのほうが年上だったよな?

 ということはベルちゃんや俺よりは最低でも三つは上か。


「管理人さん、ニコはやる気がないように見えるけど実は少しはやる気あるんだ」


「そうなんだよ。恥ずかしがってるだけなんだ」


「あまのじゃくってやつなんです!」


「あんたらさ、こっちはせっかくの休みにこんな遠いところまで連れてこられて大迷惑してるんだから変なこと言うなよ。しかもこの大陸はあんたらの想像以上に暑いんだよ? 雪国生まれ雪国育ちの私なんかが外に行ったらたぶん死ぬよ? だからそこの小屋で寝てるからあんたら三人だけで勝手に行ってきなよ」


 相変わらずだなこの人……。

 本当に来る気がなかったんなら第一陣で来れてるはずがないのに。

 でも三人はちゃんとこの人の性格を理解してくれてるようじゃないか。


 まぁ俺はこの人の面接を担当したララから聞いて面接や戦闘の映像を見ただけで、こうやって話をするのは初めてだけど。

 その面接のときも、町や人々を守ることなんかどうでもいいみたいなことを第一声で言ってたな。

 給料が良さそうだし、町内をぶらぶら見回りするだけの簡単なお仕事っぽくて楽そうだから応募してみただけとかダルそうに言ってたのが印象的だ。


 だがこの人こそ、さすらいの冒険者、いや、さすらいの魔道士と呼ぶにふさわしい人なんだよな。

 なんと世界中をたった一人で旅してきたとか。

 本人がそう言ってるだけで本当かどうかは知らん。


 出身はアソート大陸の北地方にあるゴウセツとかいう村らしい。

 大陸だけで言えばアリアさんと同じ出身だ。

 まぁニコレッタさんはとっくの昔に故郷を捨てて、アソート大陸にすらもう何年も帰ってなかったらしいけど。

 これも本当かどうかは知らん。

 単に雪国設定が好きなホラ吹き者かもしれない。


 だがこの人、回復魔道士なのに短剣の扱い方がやたら上手い。

 ヒューゴさんやミオほどではないが、十分に戦闘で使えるだけの技術はある。


「管理人さん? 怒らないでくれよ?」


「今のはニコの本音じゃないんだよ」


「そうです! ニコはやればできる子なんです!」


「なんだろう……。こんなに無言でジッと見られるとなぜか不安になってくるね……」


 でもこの人、朝の挨拶とかも面倒そうに目でチラッと見てくるだけなんだよな。

 人付き合いが面倒だと思ってるのは間違いない。

 だからこそ世界中を一人で転々としてたのかもしれない。


 まぁウチはそういう少し捻くれた冒険者も大歓迎だけどな。

 みんなが同じである必要はない。

 こういう人がいるからこそなにか新しいものが生まれるかもしれないし。


 それにこの双子のお兄さんたちは今までずっとティアリスさんに頼りっきりだったんだからニコレッタさんと接することでかなり新鮮な気持ちになってるはず。


 ベルちゃんも仲良くやれてるようじゃないか。

 ベルちゃんの前のパーティも、リーダーだった人がパラディンになったことで解散したからお兄さんたちと同じ気持ちのはずだし。


 ……ジョアンさんは元気にしてるだろうか。


「「「……」」」


「な、なんだよこの間は……。私が悪いのかよ? 謝ったほうがいいのか?」


 前のティアリスパーティと比べたらどっちが強いのかな。


 ティアリスさんとニコレッタさん。

 回復魔法だけで言えばティアリスさんのほうが上。

 でも補助魔法はニコレッタさんのほうが使える種類も多く、効果も強い。

 さらに浄化魔法もそこそこ使えるとか。


 ジョアンさんとベルちゃん。

 ジョアンさんは弓と短剣使いであり、弓の精度と威力はトップクラス、風魔法による探知も使えるレンジャー。

 ベルちゃんは火、風、雷魔法を操る攻撃魔道士で、火魔法は中級レベル、探知は修行中。


 ……お兄さんたちが前衛戦士である以上、今の構成のほうが俺の好みだな。

 今後のベルちゃんの成長次第ではかなりいいパーティになることは間違いない。

 ベルちゃんはカトレアの推しでもあるし。


 ……そのカトレアはさっきからずっと小屋のドアに隠れてこちらを見てる。

 気付かれてないとでも思ってるのだろうか。

 よほどベルちゃんのことが気になるようだ。


「「「……」」」


「そ、そういえばサハはナミに比べるとそこまで暑くないんだったね。ほら、あんたら早く外行くよ」


「「「……」」」


「ど、どうしたんだよ?」


「管理人さんの話待ちだからな」


「南側に行くということ以外まだなんにも話聞いてないし」


「ニコのせいだからね」


「……」


 ベルちゃんがパーティに馴染んでるようでカトレアもご満悦のことだろう。


「さて、地図をご覧ください。この赤丸の地点ですが、実は魔瘴スポットが発生しています」


「「「「えっ!?」」」」


「先ほど言いましたが、この地点はもう町の外のようなものなんです。今この魔瘴スポットは土魔法で作った壁で囲ってますが、それも応急処置にしかすぎません。もしかしたらもう壁が破壊されて中から魔物が解き放たれてるおそれもあります」


「なるほど。その魔瘴スポットと魔物の処理が任務ってことだな」


「ニコの浄化魔法が重要になるな」


「魔瘴スポットがほかの場所にも発生してる可能性や、今後発生してくる可能性もありますよね!? その対応を私たちがするってことでいいですか!?」


「……」


 話が早くて助かる。


「えぇ、町の人たちの避難が完了するまではそれでお願いします。では俺からの話は以上です。くれぐれもお気をつけて」


「ベル、頑張ってね!」


「うん! エマもね!」


 うんうん、友情って素晴らしいな。


「ベルちゃん!」


 おっと、ここでカトレアの登場だ。


「あっ!? カトレアさん!」


「これを持っていってください。中級水魔法が放てる魔法杖です」


「いいんですか!? 見るからに凄そうな杖ですけど! ありがとうございます!」


 出発直前に直接渡したいがために様子を窺ってたのか……。


 そして双子のお兄さんパーティは転移していった。


 ニコレッタさんは最後のほう俺から目を逸らし続けてた。

 気味悪い管理人だと思われたことだろう。

 でも無言の圧力の効果は抜群だったな。


 そういやあのパーティのリーダーは誰なんだろう?


「ボネちゃん治ったのです!」


 ユウナが小屋から出てきた。


「呼吸も落ち着いて寝ちゃったのです!」


「そうか。やっぱりユウナの回復魔法は効くな」


「当然なのです! ポーションなんかでは治せな…………たまにポーションより効果がある場合もあるのです。愛情込めて体の内部を優しく治癒するのです」


 カトレアやモニカちゃんに気を遣ったようだ。


 シャルルはチビ猫を抱えて出てきた。


「あれ? メネアは?」


 ……チビ猫は逃げたそうにしている。

 ボネの傍にいてやりたかったのだろうか。


「家族の元へ行ってもいいぞって言ったんだけど、今は魔物討伐のほうが大事って言って西側に行ったぞ」


「……そっか」


 どうやらユウナとシャルルも、メネアとパーティを組めるものだと思っていたようだ。


「さて、おまえたちには凄く重要な任務をやってもらいたい」


「なんなのです!?」


「もったいぶらないで早く言いなさいよ!」


 いったいなにを想像してるんだろうか。


「今すぐ城に行ってもらいたいんだ」


「「城!?」」


 お?

 これはどういう反応だ?


「そうだ。実はさっき城に向かってる途中にマリンも熱中症になってしまって、今は城で休ませてもらってるんだよ」


「「……」」


 あからさまにテンションが下がったな……。


「今から城に行き、マリンをウェルダン馬車でここまで連れ帰ってくることがお前たちに与える重要任務だ」


「「……」」


 そんなやる気のない顔するなよ……。

 マリンのことはどうでもいいのかよ……。


「城に行けるんだぞ? 楽しみだろ?」


「「……」」


 この様子だとララやカトレアからこの町の城のこと聞いてしまってるな……。


「……ほら、ユウナは帝都の城にも王都の城にも入ったことあるんだから、お城コレクションの一つとして入ってみておいたらどうだ? こんな機会めったにないぞ?」


「……」


「シャ、シャルルもパルド王国の王女として、サハの女王や王女たちに挨拶しておくのもいいんじゃないか?」


「……」


 こいつら……。


 今は戦闘にしか興味ないって顔してるな。

 女王を暗殺してこいとかだったら喜んで向かっていったりするのだろうか。


 あ、チビ猫が隙を見てシャルルの腕から抜け出し、俺の足元にやってきた。


「ピュー? (ご主人様、その子誰だっけ?)」


 ん?

 小屋の中でお昼寝していたはずのペンネがドア付近に立っていた。

 まだ眠いようで、俺のほうをぼーっと見ながら声をかけてきてる。


 その子とはチビ猫のことだろうか?


 ……あ、そうだ。


「そうかそうか。ペンネから見てもこの二人は薄情だよな。でもペンネはダメだ。マリンを迎えに行ってくれようとする気持ちは嬉しいが、この町の外の暑さはペンネには耐えられない」


「ピュー? (ペンネそんなこと言ってないよ?)」


「そこまでしてマリンを早く迎えに行きたいのか。わかった。なら俺といっしょに馬車で行こう。でもペンネは絶対に馬車から出たらダメだぞ?」


「ピュー? (え、ペンネいい子だからお外には行かないよ?)」


「そんなに怒るなって。いくら同じ家に住んでるとはいえ、この二人は冒険者だからマリンとはそこまで絡みがなくて他人みたいなもんなんだよ。それに人間ていうのは魔物より冷たい生き物だからな」


「ピュー? (ご主人様、さっきからなんの話してるの?)」


 ペンネがこっちに向かって歩いてくる。

 チビ猫は俺の足の後ろに隠れた。


 もうそろそろいいか。

 二人の反応はどうだ?


「……私たちが行ってくるのです」


「そうね。マリンに早く元気になってもらわないと作業にも支障が出るだろうしね」


「……そうか。なら頼むぞ。ウェルダン馬車で行けばすぐだから」


 どうやら信じてくれたようだ。


「嘘が下手すぎるのです」


「え……」


「そうよ。私たちにそんなの通用するわけないでしょ。ペンネのことは生まれたときからずっと見てきてるんだからね」


「……」


 生まれたときからは見てないだろ……ってそういうことではないか。


「ロイス君、そんなお芝居をしなくてもユウナちゃんとシャルルは自主的に行ってくれますから」


「そうなのです。全然乗り気ではないですけどマリンちゃんのためとあれば仕方なく行くのです」


「そ、そうよ! オンボロの城なんかに全く興味はないし、戦闘がしたくてうずうずしてるけど、マリンのためならどんなショボい城でもどんなに悪そうな女王のところにでも行ってやるわよ!」


 嫌々感が半端ないんだが……。


「ではお二人とも、マリンのこと頼みましたよ。ロイス君によると、女王は思ってたよりいい人だったみたいですから。でも念のため何事も穏便にすませてください」


「了解なのです。シャルルちゃんは無言でいいのです」


「なんでよ!? 私だって町長のときはみんなをダマせてたんだからそこそこ上手く振る舞えるわよ!」


 せめて欺いてたとか言えよな……。


 マリンを連れて帰ってくるだけの簡単な任務なのに、こいつらに任せるとなんでこんなに不安になるんだろうか。


「ミャオ~」


「ん? お前も行きたいのか?」


「ミャオ」


「ふ~ん。まぁ砂漠という点では故郷に帰ってきたようなもんだもんな。この町に住みたくなったら好きにしていいぞ」


「ミャ、ミャオ……」


 それは嫌なようだ。

 ウチでの暮らしの快適さを覚えてしまったのだろうか。


「そういえば名前決まったのです」


「お? なにになった?」


「モリタなのです」


「モリタ? ……モーリタ村出身だから?」


「そうなのです」


 こいつら、考えるのが面倒になったんじゃないだろうな……。


「ほかにも色々考えたのですけど、モリタのときの反応が一番良かったのです」


「もっとカッコいい名前いっぱいあったのに~」


「ミャオ」


 こいつ自身が選んだってことか。

 オスだけどもっと可愛い名前を選べばいいのに。


「ならモリタでいいや。モリタ、外に出ても砂遊びはほどほどにしろよ。それと行方不明になるんだったらちゃんと誰かに伝えてからにしろよな」


「ミャオ」


 魔物のワタとは違い、モリタはただの猫だからそのへんを歩いてようが騒ぎになる心配はないと思うけど。

 それに迷子になったとしてもこいつならちゃんと帰ってこれるだろうし。


 そしてユウナとシャルル、ウェルダンとモリタも転移していった。


「ロイス君。一応別の名前も考えておきますね」


 酷い……。

 でもなんでみんな名前を付けたがるんだろう……。


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