第六百五十一話 ソボク村視察
魔道ダンジョンから出た瞬間に漂ってくるいい匂い。
ソボク村って感じだな。
「ソボク村名物のお団子はいかがですか!?」
「とろとろのわらび餅も美味しいですよ! お土産にもどうぞ!」
威勢のいい声が飛んでいる。
団子もわらび餅も、もうすっかりソボク村の名物として定着しつつあるな。
「二名様ですか!? こちらへどうぞ!」
あ、買って食べながら歩くんじゃなくて中で食べたいのか。
まぁ店の中で食べるとお茶も付いてくるからな。
「醤油味のお団子二本とあんこ団子二本」
「ありがとうございます! こちら新作の三色団子もいかがでしょうか!?」
「新作? じゃあそれも二本」
「ありがとうございます! では少々お待ちくださいませ!」
昼前なのに結構人入ってるな。
みんなこれが昼食なのだろうか。
というかミオのやつ、頼みすぎじゃないか?
一本でもそこそこ量多いんだぞ?
「お待たせしました!」
……うん、美味い。
店で食べることによって美味さが増してる気がするな。
新作の団子も甘くて美味い。
冷たい分、お土産には醤油味よりこっちのほうが適してるかも。
「店員さん」
「はい!?」
「草あんこ団子と草団子を二本ずつ追加で」
え……。
「草団子は先ほどご注文された三色団子の緑の団子と同じ物ですがよろしいでしょうか? 草あんこ団子も団子自体は同じ物です」
「そうなの? それなら草あんこだけで。二本」
「かしこまりました!」
気が利く店員さんじゃないか。
なにも言わなければそのまま二本分の注文を貰えたはずなのに。
客が色々な味を食べ比べてみたいということを理解してくれてるんだな。
「あ、これ美味しい」
うん、美味いな。
新作の三色団子以外はウチの五均屋でも同じ物を販売してるが、ここの店の物のほうが美味しくなってるかも。
いや、同じ物ではなくて、今となっては同じような物か。
材料は同じ物のはずだが、団子専門店であるこの店の職人は団子作りだけに専念できる分、差は生まれて当然かもしれない。
アンは悔しがるだろうけど。
「リヴァーナちゃんにお土産買っていい?」
ウチの団子に気遣ってくれてるのか?
ってそんなことまで気にしてないか。
お土産代も俺に出してもらっていいのかってことだな。
とりあえず頷いておく。
「お土産用にあんこ団子と三色団子と草あんこ団子、一本ずつ」
「ありがとうございます! すぐにお持ちしますね!」
醤油味は買わないのか。
さすがに冷めた醤油団子とならウチで状態保存された団子のほうが美味いか。
お土産用の団子を受け取ったので席を立つ。
「110Gになります!」
冒険者カードを見せ、支払い魔道具の上に置く。
「……はい、完了です! ありがとうございました~!」
そして店を出る。
「ありがとう。草あんこ団子はミオが食べるの」
ほう?
それが一番好みの味だったのかな。
ってわらび餅の店にも入るのかよ……。
まぁミオにはこういう経験も必要だしな。
「いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!」
正直、団子ばかり四本も食べたせいでお腹がいっぱいなんだけど……。
「とろとろのわらび餅、普通のと抹茶味を一つずつ」
「かしこまりました! ありがとうございます!」
でもわらび餅も美味いんだよなぁ~。
「お待たせしました! ごゆっくりどうぞ!」
ミオは二つの皿のわらび餅を半分ずつ交換してから食べ始めた。
……絶妙なとろとろ加減だな。
もう少し固くなったやつは俺はあまり好きじゃない。
「……もう一つ食べていい?」
ミオも気に入ったようだ。
これはウチでも販売してないからな。
「追加で普通の一つと、あとお土産用に同じの二つ」
「ありがとうございます!」
お土産の一つは自分用なんだろう。
「ここはミオが出すから」
ほう?
奢ってくれるとは優しいじゃないか。
まぁオアシス大陸の依頼報酬でPはたっぷり持ってるはずだからな。
そして俺がじっくりと味わってる間に、ミオは追加分も食べ終えた。
まだまだ食べられるといった様子だ。
「お持ち帰り用の物をお持ちいたしまし……あっ!?」
マズい。
どうやら店員に気付かれたようだ。
って別にマズくはないけど。
だがお忍びであることを察してくれたのか、それ以上はなにも言わずに去っていった。
この店もなかなか教育ができてるじゃないか。
ミオが支払いをすませ、店を出る。
ありがとうございましたの声がやけに大きかった気がするが、いつものことなのだろう。
俺とミオが店から出てきたことに気付いたゲンさんが向こうから近付いてくる。
そして俺たちは駅を出て、店が並んでるほうへと歩き出した。
「ゴ(さっきあそこにいるパラディン隊のやつらに声かけられたぞ)」
「ゲンさんと気付いて?」
「ゴ(いや、気付いてない。そんなところに座ってるとみんながこわがるから駅の外に移動してくれってさ。オドオドしながらな)」
「ははっ。こんなにデカくて、顔まで隠してる全身ミスリル装備の人に話しかけるだけでも凄いじゃないか」
「ゴ? (でもそれなら強制的に排除したほうがいいんじゃないか? あいつら、少し離れてずっと監視してるだけなんだぞ?)」
「ゲンさんも返事しなかったんだろ? 疲れて少し休憩してるだけだと思ったのかも」
「ゴ? (そんな呑気なこと言ってていいのか? 人間が襲わないと思ったら大間違いなのはよくわか……)」
ん?
ゲンさんの言葉が途中でとまった。
すると正面からパラディンが一人歩いてくるのが目に入った。
「すみません。少しよろしいでしょうか?」
なんだ。
ちゃんと連携取れてるんじゃないか。
あっちで見てたパラディン二人も近付いてくる。
「お三人は冒険者パーティですか? …………あ。お疲れ様です!」
俺に気付いたか。
少し遅い気もするけど。
まぁ服装が変われば印象も変わるから仕方ない。
「お疲れ様です。見回りは順調ですか? 不審者がいたりしてませんかね?」
「いえ……その……」
「これはゲンさんですから大丈夫です」
「ゲンさん!? この方が!?」
まだ知らない人も多いんだよなぁ~。
「そうです。鎧の左胸を見てください。ゲンさんであることの印が彫ってあるでしょう?」
「……あっ!? 本当ですね! これは失礼しました!」
胸部分にはゲンさんの姿絵が彫られている。
ゲンさんだと証明するためのものであるが、鎧の光り具合的に目をこらさないとわかりにくい。
というかその前にこんな大きな人間がいたらそのほうが驚きだけどな……。
「では俺たちは公園の視察に行きますので」
「公園ですか? なにかあったわけではないんですよね?」
「ただの視察です。ではお仕事頑張ってください」
「はい! ありがとうございます!」
うんうん。
元気なのが一番。
その調子で村の治安維持に努めてくれよ。
くれぐれも駅に不審者を入れないように頼むぞ。
「みんなロイス君のこと知ってるね」
「そりゃパラディン隊は知ってるさ。さっきのわらび餅屋にも何回か来たことあるからな。それよりこのあたりの店には入ってみなくていいのか?」
「帰りに見るから今はいい。先に公園行こ」
団子とわらび餅はゆっくり食べたのにな……。
そしてすぐに公園に着いた。
確かにそこそこ人がいるようだ。
冬に咲く花も結構あるんだな。
ん?
あの列はなんだ?
……弁当屋か。
よく見るとベンチに座って弁当を食べてる人もいる。
寒くないのかな。
「モ~? (なにかあったの?)」
「ん? ……え?」
気付いたら足元にウェルダンがいた……。
「ここでなにしてるんだ?」
「モ~(シファーがこの公園に散歩に行くって言うからさ)」
「今日はソボク村か。どこにいる?」
「モ~(向こうの入り口)」
公園東にある入り口ってことか。
その入り口のほうに向かって歩いて行くと、シファーさんとパラディンが話をしているのが目に入ってきた。
この場所には見張りとしてパラディン隊が二人警備することになっている。
「あっ!?」
まだ少し距離があるにも関わらずパラディンの一人が俺たちに気付いた。
元々はウチのダンジョンに来てくれてた冒険者の人だからゲンさんのサイズ感もよく知ってるんだろう。
「「お疲れ様です!」」
「どうしたの? ミオちゃんまで連れて」
みんな俺が来るとなにかあったかと思うようだ。
さっき巡回してたパラディンの人はシファーさんやウェルダンが来ていることを知っていたはずだから余計にそう思ったのかもしれない。
あ、もしかして俺に気付くまでは、俺たちがシファーさんを狙ってると勘違いして声をかけてきたのかもな。
「ただの視察ですよ。公園拡張の相談があったものですから」
「な~んだ」
ただの視察っていい言葉だな。
公園でのんびりサボってようが視察と言っておけば仕事のように聞こえる。
「そちらこそなにかありましたか?」
「なんか上のほうが変な感じしない?」
「上? ……山の上ってことですか?」
「うん。曇ってるとかじゃなくて、なんだかザワザワしてるような嫌な感じがしてね」
シファーさんはマッシュ村の方角を見ている。
「時間帯的に、マッシュ村を朝出た馬車がそろそろここに到着するころですからそのせいとか? ここより先は魔物がよく出ますから戦闘もしてるでしょうし」
「……それならいいんだけどね」
意味深っぽく言うなよ……。
でも魔瘴の影響だろうか?
ラスまで魔瘴が来たということは、もうそろそろ王都も魔瘴で覆われるころだ。
そもそも王都の位置だとアソート大陸よりもマーロイ帝国からの魔瘴の影響のほうが早いかもしれないし。
どちらにしてもその次は順番的にマッシュ村だもんな。
元々この山はパルド王国の中では比較的魔瘴が濃く、出現する魔物も強い。
そんな山の魔瘴がさらに濃くなれば、出現する魔物もたちまち強い魔物だらけになる可能性が高い。
魔瘴が濃くなっても弱い敵しか出ない場所もあるみたいだけどさ。
「お二人はどう思います?」
「魔物の声は聞こえてきますが、これが日常なのかと……」
「僕たち二人ともここの勤務は初めてのものでして……」
マルセール近辺にある三つの村での勤務は、マルセール配属の隊員が交代で行うことになっている。
当然まだわからないことも多いよな。
「そういやハリルは?」
「モ~(外に散歩に行ったよ。ついでにそのへんの木に水あげてくるってさ)」
好奇心旺盛なやつだ。
俺はまだこの入り口より向こうには行ったことがないというのに……。
「モ~(あ、戻ってきたね)」
右手にジョウロ、左手に本、外出するときのいつものスタイルだ。
「ハリ? (あれ? ロイス君もお散歩?)」
「あぁ。ここの公園は気持ちいいからな」
「ハリ(公園なら、僕は大樹の森近くの公園のほうが好きだけど)」
「心ではそう思ってても、お世辞を言うことも大事だぞ」
「ハリ(なるほど。さすがロイス君。でもこの公園も好きだよ)」
よく考えたら、大樹の森自然公園ができたことでこの公園の客は減っていくんじゃないだろうか……。
それを懸念してるからこそ公園拡張を望んでるのかもしれないな。
「ハリ(向こうから何台か馬車が来るよ)」
「そうか。ほかになにか変わったこと感じなかったか?」
「ハリ~(変わったこと? 特にはないかなぁ~。魔物も弱いしね)」
ハリルは外の世界のことはまだよく知らないから聞くだけ無駄か。
それからシファーさん、ウェルダン、ハリルもいっしょに、公園を囲う封印結界付近を一周歩いた。
拡張するには周囲の土や岩の壁を破壊することが必要になるが、それが仕事になると思えば有りだ。
もちろんこれ以上ウチがタダでやるなんてことはしない。
観光客が増えてソボク村の収益も上がってるはずだし、工事要員は別で雇ってもらい、ウチの魔道化拡張費用もきっちり払ってもらおう。
公園を出たところで、セレニティーナさんが走ってやってきた。
わらび餅屋の店員から俺が来ていることを聞いたらしい。
少し遅れて村長もやってきた。
元村長の爺さんは来ないんだな。
これから店を見て回ろうとしてただけにミオは少し残念そうだ。
村役場にはそのあと顔を出そうと思ってた。
そして俺たちは駅の中の管理室に案内された。
ここはウサギや猫たちがいて一番安全だからな。
もう午後だし、シファーさんは先に帰ると言うかと思いきや、いっしょに話を聞いていくらしい。
そんなことはいいから早く帰って映像編集の仕事しろよ。
……なんてことは俺の口からは言えないから、とりあえずギャビンさんに連絡しておいた。
無断欠勤は良くないからな。
「マッシュ村の村長の息子さんが亡くなったそうです」
「は?」
完全に公園の話のつもりで準備してたこともあり、村長の言葉にすぐには理解が追いつかない。
こういうとき、なんて言葉で対応すればいいんだっけ?
「……なぜでしょうか?」
「魔物に殺されたそうです」
「……どこで?」
「王都からリーヌの町に向かう途中だと聞きました」
「リーヌ? なにしに行こうとしてたんですか?」
「リーヌからベネットに船で渡ろうとしてたみたいです」
「ベネット? マーロイ大陸に行こうとしてたってことですか?」
「そうみたいですね。どうやら魔工ダンジョンに入るつもりだったそうです」
「……」
魔道列車をマッシュ村へ繋げてもらうためにか?
ということは死んだのはもしかして俺のせい?
「本人はリーヌで船の交渉だけして、そこからは雇った冒険者たちだけで行かせるつもりだったようです。ですがリーヌまであと一時間ほどのところまで来て、息子さんと冒険者八名のうちの五名が死亡してしまったようでして。生き残った冒険者から聞いた話によると、敵はベビードラゴンという敵で間違いないそうです」
いや、俺は悪くない。
ベビードラゴンすら倒せないような戦力でマーロイ帝国に渡ったところで即死だ。
その前にいくら金を積んで船を出させたとしても、船ごと海の底に沈むことになりそうだけど。
「ロイスさんのせいではありませんから!」
セレニティーナさんが慰めるように言ってくる。
だが申し訳ないが俺はそんなに気にしちゃいない。
「ねぇ、なんでロイス君のせいになるの?」
シファーさんは俺にではなくセレニティーナさんに尋ねる。
「魔道列車をマッシュ村まで繋げたいのなら、まずは魔工ダンジョンの最奥にある物を手に入れてきてくれというようなニュアンスのことをロイスさんがマッシュ村の村長やその息子さんに言ったからですけど……。それに私はロイスさんのせいではないと言ったのであって、ロイスさんのせいとは言ってませんから……」
「ふ~ん。でもだからってなんでロイス君のせいではないなんて言葉が出てくるの?」
「ロイスさんが責任を感じてしまうんじゃないかと思いまして……」
「でもそれはロイス君にも原因があったと思ってるからこその発言だよね? じゃあ例えば冒険者ギルドの依頼をこなすために魔物と戦って死んだらギルドのせいになるの?」
「……いえ」
「あ、そんな顔しないで。別に責めてるつもりはないんだよ? ごめんね。なんか変な空気にしちゃったから先帰るね」
シファーさんは立ち上がり、管理室を出ていった。
だからすぐにミオとハリルにあとを追わせた。
そのあと、残った俺はマッシュ村村長の様子などを聞いた。
昨日の夕方にソボク村に来てたそうだ。
だが特に俺を恨んでる様子などはなく、俺には報告だけしておいてくれと言い残し、今朝マッシュ村へ帰っていったとのこと。
公園の出口まで見送ったから間違いなくマッシュ村に帰ったそうだ。
かなり自分の息子のことを好きだったような記憶があるだけに少し意外な気もする。
……セレニティーナさんはずっと下を向いてしまってる。
「息子さんにはもう魔工ダンジョンを探すのはやめろと何度も言ったそうです。仮に見つけたところで、中に入って無事に帰ってこれる可能性のほうが低いということも」
村長はしっかりと現実をわかってたか。
この大陸で見つかるようなダンジョンで、しかも運良く初級魔工ダンジョンなんだったらとっくに俺たちが先に討伐してるはずだ。
一時期ピピに探しに行かせたもんな。
それにマーロイ大陸にある初級魔工ダンジョンも、ベネット付近にあったものはある程度討伐したはず。
残ってるのは中級、少なくともEランク以上の冒険者じゃなければ討伐できないようなダンジョンばかりのはずだ。
「駅の基となれるなにかを見つけたところで、マッシュ村への山道を工事することは難しいのではないかとも仰ってました。今後魔瘴が濃くなればいずれ魔道ダンジョンの接続が分断されることになるんじゃないかとも」
ほう?
それはつまり道が魔物によって破壊される可能性を考えてたってことだよな?
あの村長、なかなかやるじゃないか。
おそらくパラディン隊の情報も入手したうえで、道の保守が難しくなるということも理解してるのだろう。
「ですので、マッシュ村から全村民を避難させることに決めたようです」
「え? 避難ですか?」
「はい。村長のその言葉を聞いて、息子さんはマーロイ大陸に行く決断をしたようです。もう少しだけ待ってくれと。ですので村長は自分が息子を殺したようなものだと落ち込んでました」
そうだったのか……。
でもとめられなかった村長の責任でもあるか。
「せめてそうなる前にロイスさんに相談してれば良かったのに」
「たぶん俺はなにも言えませんでしたよ。王都からも魔道列車を繋げてくれと言われてますし、マッシュ村を通る道が一番近くて早いのは間違いないですから」
「……ソボク村に避難させてほしいそうです。避難というか移住ですね」
「王都ではなくてですか?」
「王都に住むとなると村人が離れ離れになってしまうからだと。それに土地柄や安全の面でも、新しくなったソボク村に移住したいというのが村人みんなの意見だそうですよ」
「村人みんなの意見、ですか」
「はい。最後にやっと村長らしい仕事ができたと仰ってました。息子のおかげで村人が一つになれたとも。王都が大樹のダンジョンの進言で独自の封印結界を張ることになったと聞いてもまだ危機感がそれほどなかったらしいですから」
「……それってなにもしてくれないウチや王都を恨んでる人もいるってことでは?」
「いえ、自分たちの村がある場所がほかより危険な場所ということは理解できているようです。それに大樹のダンジョンが、今すぐにでも魔瘴の危険に晒されることになる町や国の人々を優先して救助していってることも知ってるようです。ですので自分たちのような小さな村の少ない住人のために手を煩わせることが申し訳ないという声もあったそうですよ。すぐに避難できる場所に住んでるのにと」
そう思ってくれる人もいるのか。
近くにある小さな村だからこそすぐに助けてくれればいいのにと思うのが普通のような気もするが。
「……一応マッシュ村にはセレニティーナが何度か足を運んでましたからね」
「村長! それは言わないでって!」
「ははっ。悪いな。でもあの村長はお前のおかげだとも言ってたじゃないか」
ほう?
避難するように説得してくれたってことだよな?
「そうかもしれないけど、だからといってロイスさんたちには関係ないでしょ。助ける義務なんかこれっぽっちもないんだからね」
お?
そう思ってくれているのはありがたい。
「いえ、非常に助かります。ありがとうございます。マッシュ村のことは前々からの懸念事項でしたから、それを考えなくて良くなっただけでも気持ちが楽になりました」
やはりこの人にこの駅の責任者を任せて正解だったな。
お礼というわけではないが、公園の拡張くらいすぐにしてあげようじゃないか。
費用は貰うけど。




