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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十三章 桜舞い散る
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第六百四十八話 初めてのバイキング会場

 ダルマンさんたちはバイキング会場の広さや料理転送システムに随分驚いてくれているようだ。


「ちょっとロイス君! 邪魔!」


「あ、すまん」


 ミーノに怒られた……。


 まぁこんなとこにいる俺が悪いのは当然なんだが。

 でも厨房の中からが一番見やすいし。


「もぉ~。あの人たち誰なの?」


「火山ダンジョンでいっしょに戦ってくれたモーリタ村最強の戦士パーティだ」


「へぇ~。でも戦士? 明らかに魔道士っぽい人も二人いるけど」


「モーリタ村では戦う人って意味で全員戦士と呼んでるみたいなんだ」


「ふ~ん」


「それとあっちの、はしゃぎまくってる女性はシファーさんの妹な」


「え? 妹さんは冒険者なの?」


「あぁ。ソロだがそこそこ強いし、かなりセンスはある。ちなみに俺たちと同い年な。なんか同い年にやたらと親近感を感じるみたいなんだよ」


「あ~~。少しわかるかも」


「わかるってなにが?」


「同い年が特別って感じ? 同い年だとなんでも気兼ねなく話せそうな感じしない? マルセールも今までは数人しかいなかったからね。フィンクス村の人口なら一人もいない可能性もありそうだし」


「それ俺にはよくわからないんだよなぁ~。自分より年上か同い年以下かで言葉や対応は変えるけどさ」


「その割には私にずっと丁寧語で話してたよね?」


「あれは店員と客だからだよ。モモが店番してたとしても俺は丁寧な口調で話してたはずだ」


「私は数少ない同い年の友達として接してほしかったのに」


「なるほど。じゃあメネアもそれを望んでるんだろう。気が向いたらでいいから見かけたら話しかけてやってくれ」


「うん。あ、そういや学校の話ってどうなってるの?」


「学校?」


「え? 知らないの? てっきり大樹のダンジョンが絡んでると思ってたんだけど」


「俺はオアシス大陸から帰ってきてパラディン隊のことでいっぱいいっぱいだったからな。マリンたちがなにか進めてるのかもしれない」


「そっか。もしマルセールにも昔から学校があったら、私やロイス君は同じ教室で授業を受けてたのにね」


「毎日通わないといけないんだろ? 往復二時間の道のりが嫌で俺は行ってないと思うぞ」


「ふふっ、子供の足にはキツイか。で、メネアちゃんだっけ? 呼んでるよ」


「ん?」


 確かにメネアがこっちを見て手招きしてる。

 そろそろ人が増えてくるから俺が出ていくのもどうかとは思うが、少しくらいはいいか。


「どうした?」


「凄いねここ! 楽しすぎる!」


「バイキング会場がか?」


「全部! ねぇ、キミもいっしょにご飯食べようよ!」


「う~ん。じゃあ少しだけな」


 ダルマンさんたちの感想も聞きたいしな。


 白米、酢豚、スープ、サラダの定食セットを手早く完成させる。


「なにそのちょうどいい具合のバランス……。私、お寿司とお肉しか取ってないのに……」


「食べたい物を食べればいいんだよ。それにみんな最初は珍しがって肉や寿司ばかりになる。でも野菜も美味しいから食べたほうがいいぞ」


 フィンクス村やモーリタ村では気候や流通の関係で野菜があまりなかったらしいから食べ慣れてないと聞いた。


 メネアはみんながどんなものを取ってるのかキョロキョロし始めた。

 だがダルマンさん、ガボンさん、メンデスさんのお盆の上もメネアと似たようなものだった。

 そんな中、デルフィさんだけは野菜ばかりを取っている。

 米や肉は取らずに、野菜ばかりだ。

 実は菜食主義者ってわけではないだろうが、こんなに多くの新鮮な野菜を見るのが初めてだから食べてみたくなったのだろうか。


「そういやヒューゴさんたちは?」


「知り合いに声かけられたみたいで、その人たちといっしょに向こうで食べるって。だからもうお別れしたよ」


「そうか。もう二週間近くもここにいなかったわけだから色々話を聞きたい人も多いんだろう。じゃあ俺たちはあそこの端のテーブルに座ろうか」


「え、奥に座るの? 料理に近いほうが便利じゃない?」


「ん? それもそうか。なら近くにしよう」


 特にガボンさんはたくさん食べそうだしな。

 俺はこれ以上食べないから、人の往来が多い料理転送魔道具レーン付近は避けたい派だが。


 そしてダルマンさんパーティ四人、メネアと俺の六人で席に着いた。


 みんなは相当お腹が減っていたようで、凄い勢いで食事を食べ進める。

 まるでこんなに美味いものは初めて食べた的な感じでどんどん平らげていく。

 高台の道の建設作業をしてたこの一週間の間もウチの料理は食べてたはずだからそこまで新鮮さはないはずなんだが。


 五人は席を立ち、次の料理を取りにいった。

 こうやって見てると、周囲からは特にガボンさんが注目を浴びてるのがよくわかる。

 大きいってだけで強そうに見えるもんな。


 あ、メンデスさんは女性に声をかけてる。

 なにか教えてもらうためならいいが、あまりちょっかいはかけないほうがいいぞ?

 要注意人物としてすぐ噂されるからな。


 デルフィさんは相変わらずフードを被ったままだな。

 ウチのローブにたまたまフードが付いてたからとかじゃなく、前からそうなんだろうか?


 ダルマンさんはどこだ?

 あの人、普通すぎてあまり目立たないんだよな……。

 右腕の力はあんなに凄いのに。


「見て見て! ラーメンなんて初めて聞いた!」


 メネアは豚骨ラーメンを取ってきたようだ。


「暑い砂漠で熱いラーメンなんか食べたくないからな。って寒くなる西部地方の夜とかだったらありか」


「というか品数多すぎない? 夜とか朝は違うメニューもあるんでしょ?」


「夜はもう少し豪華で、朝はもう少し軽めのものが多い感じだ。同じものばかりだと飽きられるからな。色々選べて楽しいだろ?」


「うん! 案内冊子や、ヒューゴさんたちに聞いて想像してたのよりも遥かに上を超えてきた!」


「それは良かった」


 すぐにダルマンさんたちも戻ってきた。


 ダルマンさんとメンデスさんは少量ずつ色んな料理を食べてみることにしたようだ。

 ガボンさんはカツ丼と海鮮丼を取ってきてる……。

 デルフィさんは早くもデザート系に目を付けたようだ。


 みんなの性格が出てて面白いな。


「なぁ、どんどん人が増えてきてるけど、まだまだいるんだよな?」


「まだ十一時過ぎですからね。この時間に来る人は混雑を避けたい人たちか、よほどお腹が空いた人たちです。ピークは十二時頃ですかね? 今いる人の倍以上にはなります」


「これの倍って……。もう俺が知ってる大樹のダンジョンとはかけ離れてすぎてるな……」


「ダンジョン内は昔と変わらないかもしれないですけど。洞窟フィールドや草原フィールドがあったんですよね?」


「あぁ。ほかには雪フィールドや砂漠フィールドとかもあったかな」


「そっちは爺ちゃんと比べられることになりそうですね。でも昔のほうが階層も深い分、敵も強かったと思いますから、今はまだそこまで期待しないでください」


「地下四階の水フィールドだっけ? そこの敵はヤバいって聞いたけど」


「みなさんなら余裕ですよ。リヴァーナさんには初見かつ一人で突破されてしまいましたし」


「そんなにプレッシャーかけないでくれ……。リヴァーナの攻撃力は桁違いなんだからさ……」


 ダルマンさんは心配してるみたいだが、ガボンさんやメンデスさんは突破する気満々に見えるぞ。

 デルフィさんはケーキに夢中のようだ。


「でもそんなリヴァーナさんですけど、外では俺が知ってる限りで二連敗中ですからね」


「……一敗目は帝都でのことか」


「あ、聞いたんですか?」


「あぁ。三日くらい前かな。とても悔しそうに話してくれたよ」


 人に話せるくらいならもう大丈夫そうだな。


「帝都での敵と火山で会った女、どっちのほうが強いとか言ってました?」


「いや、それは聞いてないが、帝都のときは身動き一つできなかったって言ってたな。ゲンさんがやられて、ロイス君が派手に吹っ飛ばされてもなにもできなかったと。というかロイス君もなんでそんな危険なところばかりに顔出すんだよ……。しかも大怪我を負って、つい最近までベッドに寝たきりだったって聞いたぞ……」


「最近まで寝たきりは少し大袈裟ですよ。それに俺の体が貧弱なせいだと思われますからあまり人には言わないでください。でもあのときは帝都にそんな敵がいるなんて知りませんでしたからね。町や城から避難できてない人がいるのなら助けようと思って行っただけです」


「でも前日に避難は促して、ある程度は避難したあとだったんだよな? それに魔瘴で覆われて魔物が帝都中に出現し、火の手があちこちから上がってるような状況だったんだろ? よくそんなんで行こうと思ったな……」


「国王たちが残ってることはほぼ間違いなさそうでしたからね。こっちにはリヴァーナさんもいましたし、ほかにも数名頼れる仲間がいましたから危険は少ないだろうと考えまして」


「凄い回復魔道士の子がいるんだっけ? リヴァーナが言うんだから相当なんだろうな」


「リヴァーナさんの同郷の後輩なんで多少は誇張してるとは思いますけど、凄いことに間違いはありませんね。回復魔法の効果、精度に関しては今ウチのダンジョンにいる冒険者の中でも断トツです。補助魔法もかなりの腕です」


「そこまでなのか……。ならデルフィよりも上かもな」


「……」


 デルフィさんは首を左右に二度ほど振った。


 負けてはいないということか?

 私と比べないでってことかな?

 それとも今イチゴを食べるところなんだから邪魔しないでと……あ、食べた……。


「あ、噂をすればその本人が来ましたよ」


 ユウナとシャルルがバイキング会場に入ってきた。


 すぐガボンさんに目がいったのか、俺がいることにも気付いたようだ。

 二人は料理を取ることなくこちらに歩いてくる。


 そしてこのテーブルにいる面々の顔を見ながら、なにも言わずにそのまま横を通り過ぎていった。


 あの二人はいつも入り口から遠いほうの料理レーンやテーブルを利用してるからな。

 そろそろ向こうからも入れるように入り口を増やすか、入り口を真ん中に持ってきたほうがいいかもしれない。


「白いローブを着た小さいほうの子だよな? 普通の可愛い女の子にしか見えなかったけど……」


「あぁ、線も細いし強そうには見えなかったな。若干睨まれてる気がしたが……」


「いや……あの子の魔力量とんでもないよ……。それにいっしょにいた子も」


「……」


 デルフィさんはまたしても首を横に振っている。

 だがさっきよりは小刻みで、震えてるようにも見える。

 やはり熟練の魔道士には二人の凄さがわかるのだろう。


 メネアはまだ二人の背中を目で追いかけている。

 その目からは驚きが隠せていない。


「魔力の流れを見てるのか?」


「……うん。二人ともリヴァーナさんと同等かそれ以上のものを秘めてるかも。でも私はあの回復魔道士の子よりもう一人の子のほうが気になるかな」


「へぇ~……」


 魔力暴走を起こしそうな危険な雰囲気とか言わないよな……。


「そういやダルマンさん、アイリスやエルルとは会ったんですか?」


 話を急に変えてみた。


「あ、そうだ、聞いてくれよ~。アイリスちゃんはさ、『ん? ダルマン? ……久しぶりだね』……ってそれだけ言って奥に戻って行っちゃったんだよ……」


「ま、まぁ仕事中ですからね……。それにアイリスはいつも淡々としてて冷静な性格ですから……」


「そうだけど、六年ぶりの再会にしては寂しいだろ? エルルちゃんなんか俺のこと覚えてすらなかったんだぞ……」


「ま、まぁ六年前というとエルルもまだ小さかったですしね……。それに今もまだ子供ですし……。ゲルマンさんのところにはいつ行かれるんですか?」


「日曜日に行くつもりだけど、俺のことなんか忘れてるかもな」


「さすがにそれはないと思いますが……」


 でもゲルマンさんからダルマンさんの話なんて聞いたことなかったしな……。


「ダルマン君は普通だからね」


「右腕以外にも特徴を出したほうがいいぞ」


「……」


 前にも聞いたような会話だ。

 ダルマンさんはこういういじられ方をするのが普通なんだろうな……。


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