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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第六百四十三話 心当たり

 壁際に土魔法で足場が組まれ、鉱石採掘が始まった。


 この戦闘でなにも役に立てなかった衛兵や水道屋たちが採掘してくれるというので遠慮なく任せることにした。

 ボネのためにも早く帰らねばということはわかってるんだが、これだけキラキラしてるのを見せられるとどうしても放っておけないのが人間の性というものなんだろう。


 でも役目があった衛兵たちの顔は実に晴れやかだ。

 この調子ならすぐに終わるはず。


 そして俺はボネを抱いて、ゲンさんといっしょにマグマハリネズミの元へと来た。


「マグマの中に隠れて攻撃されたらマグマスライムに見えるのかな?」


「ゴ(スライムには色んな形のやつがいるからな。名前なんて適当に付けただけだろうから深く考えるな)」


「ふ~ん。じゃあ剣抜いちゃって」


 ゲンさんはマグマハリネズミの頭から大剣を引き抜いた。


「火山のボスを倒した英雄の剣としてどこかに飾ったりしたいかな?」


「ゴ(ここの連中はそういうのが好きそうだからな。ピラミッドもあれだけ大事に思ってるくらいだ)」


「ならあげるか。その代わりここにある鉱石は全部貰うけど。別にナミに所有権があるわけでもないよな?」


「ゴ(もちろんだ。天然ダンジョンは人間の物ではない。こういう危険な場所にあるお宝を探すことを生きがいにしてる冒険者もたくさんいるんだぞ)」


 お宝発掘のためにダンジョンに入るのか。

 そういう目的がある人ってなんだか楽しそうでいいな。

 ウチのダンジョンでレアドロップ狙いで魔物を倒しまくるのも楽しいって言ってくれそうだ。

 ってドロップ制はみんなに大好評だもんな。


「ところでこいつ、ハリルの親じゃないよな?」


「ゴ(さぁな。あいつをマグマに浸からせてみて気持ちいいとか言うんならその可能性もあるだろうが)」


「それは拷問みたいだからやらないけど……。で、実際に本調子のこいつと戦ってたらどうなってた?」


「ゴ(勝てなかっただろうな)」


「だよな。火魔法の威力もとんでもなさそうだし。マグマの中にいられるとさすがにシファーさんの魔法も効かなかっただろうしな。フィリシアたちはよくこんなバケモノと戦おうと思ったな」


「……ゴ?(ここに先に来てた女、本当に敵なのか?)」


「どこに味方の要素があるんだよ?」


「ゴ(こいつを弱らせてくれたのはそいつなんだろ?)」


「でもナミの町は完全に崩壊したんだぞ? しかもこいつの調教が成功しそうならいずれ俺たちを襲ってきてたかもしれないんだぞ? それにミオやメタリンの件はどう説明する?」


「……ゴ(すまん。あっちのマグマの中からメタリンの声は聞こえないか?)」


「全然。やっぱり噴火といっしょに外に弾き飛ばされたんじゃないかな」


「ゴ(あの高さから落ちたらさすがに無理かもな……)」


 そうなんだよな。

 マグマに耐えられたとしても、大ピラミッドの高さから地面に落ちたとなると……。

 運良く砂漠かマグマに落ちてくれていればいいんだが。

 でもマグマの中でずっと意識が失ってるのもさすがにキツイか。


「ゴ(それにしてもシファーにあの奥義を覚えさせておいて正解だったじゃないか)」


「どうだろ。あれくらいなら元々のシファーさんの魔法でも十分だった気もするけどな」


「ゴ? (過去のメネアが編み出した魔法で倒したから意味があるんだろ?)」


「倒せばいっしょだって」


「ゴ(疲れてるからってそんな冷めたこと言うなよ。お前もこわがらずによく戦ったじゃないか)」


「早くウチに帰らないといけなかったからだよ。それにハリルで見慣れてたせいか、こいつをあまりこわいとは思わなかったな。声にはビビったけど。マグマダブルドラゴンのほうがよっぽどこわい」


 あのマグマダブルドラゴン、ウチで出現させようか。

 帰ったら今度こそ地下五階の構想を練ろう。

 これだけ鉱石も手に入ることだし、モーリタ村から貰う魔石も合わせればそこそこ魔力も溜まるだろ。


「じゃあ回収するから」


 そしてマグマハリネズミをレア袋に収納した。

 こいつのランクをドラシーがどう付けるか楽しみだな。


 穴から上に戻ると、ティアリスさんが駆け寄ってきた。


「ボネちゃん大丈夫?」


「今のところは。シファーさんはどうですか?」


「寝ちゃった。でもまだ魔力残ってたみたい」


「おそろしい魔力量ですね……。冒険者になってくれればいいのに」


「ねっ。みんなパーティに欲しがると思う。ところで約束ってなんだったの?」


「……それは内緒です。でもデートじゃありません」


「ならいいや。それとね、一つ言うの忘れてたことがあったの」


「なんですか?」


「ここに私たちより先にいた女がね、去り際に、ロイス君宛てに伝言を残していったんだった」


「伝言? 俺に?」


「うん。ロイス君にというか、魔物使いさんに伝えてって」


「なんてですか?」


「次に会ったとき、ボコボコにしてあげる。って」


「いやいや……それ完全に宣戦布告じゃないですか……。なんで俺だけボコボコにされるんですか……」


「たぶん大樹のダンジョンの冒険者たちをって意味だと思うけどね」


「良かった……。って良くないですよね。警戒を強めないと。パラディン隊でその女の情報を共有しましょう」


 なんてこわい女なんだ。

 そんな女とは絶対に顔合わせるわけにはいかないな、うん。


 というかボコボコにするって表現はなんなんだよ……。

 殺してあげるとかのほうが敵っぽい感じがして……ん?


 ボコボコにしてあげる?


 ……ボコボコに?

 次に会ったとき?


 どこかで聞いたようなフレーズだな……。



 あ。




◇◇◇



「なんで町を出てくの!? 私たちといっしょに施設で暮らすのはダメなの!?」


「だって爺ちゃんが俺とララの面倒を見てくれるって言うし」


「でもマルセールって遠いところなんだよ!? それに田舎だよ!?」


「その田舎の町からさらに歩いて一時間かかる森の中に住んでるらしい。爺ちゃんの家しかないんだってさ」


「ド田舎じゃん! 絶対不便だって!」


「でも毎日お客さんはいっぱい来るんだってさ。なんかダンジョンとかいう店みたいなのをやってるっぽい」


「ダンジョンって危険なんだよ!? 魔物がたくさん出るんだよ!?」


「外には出てこないって言ってたぞ。だから安全なんだってさ」


「でも子供が行くところじゃないもん!」


「俺はただそのダンジョンの横にある家に住むだけだし」


「そうかもしれないけど……。でもララはそれでいいって言ってるの!?」


「今のララにそんな判断できるわけないだろ。もう三日以上ご飯も食べれてないんだぞ。ララのためにも環境を変えたほうがいいって爺ちゃんや施設の人も言ってる。それに爺ちゃんがいるからか、俺たちには施設に入る権利はないらしいし」


「なんでよ……。なら私もいっしょに行く」


「ダメに決まってるだろ。なんで爺ちゃんがお前の面倒まで見なきゃならないんだよ。本当は俺とララが来ることさえも迷惑と思ってるかもしれないのに」


「ならそんなところ行かなければいいのに。ロイ君の家で私とロイ君とララの三人で暮らせばいいよ」


「無茶言うなよ……。子供だけで生活できるわけないだろ。生きていくにはお金がかかるんだぞ。例えばご飯は誰が作るんだよ? 料理とかしたことないだろ?」


「これから覚えるもん。ララの面倒も見るもん。ロイ君は働いてお金を稼いでくるの」


「おままごとじゃないんだぞ……。でも俺も働くとは言ってみたけど、こんな子供が働いてたら問題になるからどこも雇ってくれないってさ」


「う~……なら冒険者になればいい」


「それも言ったけど、俺なんか町を出た瞬間に殺されて終わりだってさ」


「なんでもっと真面目に修行してこなかったの!」


「そんなこと言われても……。まだ子供だから力も弱いし」


「でも私は! …………なんでもない。ごめんね、ロイ君も今ツラいよね。リリアンさん死んじゃったんだもんね」


「いや、そこに気を遣う必要はないって。施設にはそんな境遇のやつらもいっぱいいるし、ルチアだって親の顔覚えてないんだろ?」


「うん……」


「人間なんて簡単に死んじゃうんだよ。だからこそ俺は今ララのことが心配なんだ。わかるだろ?」


「うん……」


「それにみんなの前では言えないけど、俺は恵まれてるんだと思う。親がいなくなってもまだ爺ちゃんがいた。その爺ちゃんがいっしょに暮らそうって言ってくれてるんだから今は甘えようと思う。じゃないとララを育てられないし」


「……わかった。私たちまだ子供だもんね」


「うん。またここにもいつか遊びにくるから」


「絶対だよ? 全然会いにこなかったら、次会ったときいつもみたいに剣でボコボコにするからね?」


「おい……。最後だから言うけど、わざと負けてやってただけだぞ? さすがに俺のほうがルチアより強いからな?」


「そんなことない。私もだいぶ手抜いてたもん。私がロイ君に負けるわけないし」


「……俺がいなくなったら剣の相手もいなくなるな」


「だね。だからもう剣はいい。これからは魔法の勉強するから」


「魔法? どうやって?」


「内緒。ビックリしても知らないからね?」


「ははっ、それは楽しみだな。……ちゃんとみんなと仲良くしろよ」


「……うん」


「ケンカは控えめにな。もしルチアが本当にツラかったら……いつでも爺ちゃんのとこ訪ねてきていいから」


「……うん。でも私は……」


「……なんだよ?」


「なんでもない。本当にまた会えるよね?」


「会えるって。よその国や大陸に行くわけじゃないし。ここからマルセールまで馬車で一日半もあれば行けるらしいから遠いとは言ってもすぐだよ」


「うん。そうだよね」


「……じゃあそろそろ行くな」


「うん……元気でね……」


「ルチアもな」



◇◇◇




 いやいや……まさかな……。


 その魔族の女性があのルチアなわけがない。

 ルチアが俺たちを襲う理由なんてあるわけないし。

 あのころは少しヤンチャではあったけど……。


 でもあれからもう何年だ?


 ……八年か。

 俺はたまに思い出したりもしてたけど、向こうが俺のことを覚えてるかはわからないよな。


「金髪なんですよね?」


 一応確認してみる。


「うん。長くてきれいな金髪」


「……年齢は俺たちと同じくらいですか?」


「たぶん。もっと若いってことはないと思うけど」


「俺のこと、ほかになにか言ってませんでした?」


「う~ん。直接ロイス君の話は出てなかったけど、魔物使いのことについては知ってるみたいな感じだったかな?」


 俺のことは知らないってことか?

 なら俺の勘違いだ。


「あ」


「ん? なにか言ってました?」


「最初にね、その人とリヴァーナがお互い探り合いみたいな感じで会話してたの。そのときに出身地を聞いたんだけど、その人はノースルアンって答えたの」


「……」


「でも適当かもしれないから鵜呑みにしないほうがいいかも。リヴァーナもリーヌ出身だって嘘言ってたし」


 どういう意図でノースルアンなんて言ったんだろう……。

 俺がノースルアン出身だってことも調べてあるって言いたかったのか?

 それとも俺に気付かせるためだろうか……。


「それとたぶんメタリンちゃんのことも知ってた」


「……調べてあったんですかね?」


「そうだと思う。ロイス君や魔物たちのことは全部知られてると考えたほうがいいかも」


 ……まぁそれくらいは誰でも調べればすぐにわかることか。

 マルセールの町の人に聞いたらみんなノリノリで教えてくれそうだし……。


「……もしかして心当たりある?」


 鋭い……。


 でも可能性があるってだけで、確信はない。

 なんせ最後に会ったのは俺がノースルアンを旅立った日だ。

 あれから一度も会ってない。


 それにまさか魔族だとは夢にも思ってなかったし。

 あ、差別的な意味で言ってるんじゃないぞ?

 って魔族かどうかはまだわからないか。


「ゴ(知らないフリしとけ)」


「……ウチに来てるお客さんの中にそのような人物がいた可能性はありますよね。金髪はそう多くありませんし、帰ったら調べてみます」


「うん。じゃあ私は周囲の魔物の警戒に戻るね」


 ティアリスさんは入り口のほうに戻っていった。

 火山のボスを倒したからといってダンジョン内の魔物が出現しなくなるわけではないからな。


「ゴ(ボネが首に付けたそのマナの指輪、もしかしたらボネは自分がこういう事態になることも想定してたのかもな。それを装備してなければもっと危なかったかもしれん)」


「……そうかもな」


「ゴ? (それより俺の鎧を見ろ。穴だらけだ。せっかくだからこれも贈呈してやるか?)」


 なぜルチアのことを聞いてこない?

 明らかに俺に気を遣ってるよな……。

 考え事をしてた俺の顔はゲンさんの目にどのように映っていたのだろうか。


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