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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第六百三十二話 火山ダンジョン第四階層

「ミオ! 右のヒクイドリだ! メネアは奥のゴーレムを見ていろ!」


 前方からの敵の襲撃にダルマンの声が響く。


 ミオはクナイに風魔法を纏わせ、二本続けて投げた。

 それがヒクイドリの両足に命中し、足からは血が噴き出す。

 だがヒクイドリはそんなことお構いなしとばかりに、向かってくることをやめない。

 リヴァーナは頭を狙って風魔法を放った。

 それをまともにくらったヒクイドリは体勢を崩す。

 続けてメンデスの氷魔法が足を狙って放たれる。

 鋭い氷柱が二本、ヒクイドリの両足に突き刺さった。

 ヒクイドリは立っていられなくなり、その場に前のめりに倒れる。

 そしてアリアが素早く近付き、一振りで首を斬り落とした。



 一方では、マグマゴーレムのマグマ投石攻撃をメネアが水魔法で粉砕していた。

 それとほぼ同時にメタリンがマグマゴーレムの腹に体当たりをぶちかましている。

 マグマゴーレムはメタリンの小さな体からは想像できないような衝撃に思わずよろけることになった。

 すかさずリヴァーナが土魔法を放った。

 リヴァーナの杖からは無数の小さな岩の塊が凄い速さで飛んでいき、マグマゴーレムに次々と命中する。

 命中した岩は体中に突き刺さっており、マグマゴーレムは立ったまま動きが完全にとまった。

 そこにメネアが右手に土魔法の岩を纏わせ、思いっきり殴る。

 するとマグマゴーレムは砕け散った。



 後方ではマグマドラゴンが急に湧いてきていた。

 頭が二つ、腕が四本、尻尾が二本あろうがマグマドラゴンに違いない。

 だがヒューゴは魔物が湧いてくることをいち早く察知していた。


 敵が出現したのと同時にデルフィ、ソロモン、グラシアが左右から水魔法を放つ。

 マグマドラゴンの二つの頭は魔法が飛んで来た方向をそれぞれ見る。

 その隙をヒューゴは見逃さず、敵に一気に接近し、心臓にミスリルの短剣を突き刺した。


 敵は大声をあげて痛がりながらも、すぐに右腕二本でヒューゴに襲いかかる。

 もちろんヒューゴは反撃が来ることをわかっているので、そのときにはもうそこにはいない。

 その振り下ろされた右腕を狙っていたのはガボンの斧。

 一振りで右腕二本が地面に落ちた。


 さらに大声をあげて痛がる敵に対し、容赦なく水魔法が左右から飛んでくる。

 今度は口から火を吐いて水魔法に対応しようとするマグマドラゴン。

 だが火は出ずに、代わりに血が吐かれた。

 心臓へのヒューゴの一撃が効いていたのだ。

 それでも必死に首を動かして水魔法を避けようとする。

 次の瞬間、首の一つが地面に落ちた。

 ガボンの斧によってだ。


 怒り狂った敵は体を凄い速さで反転させ、二本の尻尾を鞭のようにしならせて攻撃……してこようとしたが、そこに尻尾はなかった。

 既にヒューゴによって斬り落とされていたのだ。

 マグマドラゴンの後ろにいるヒューゴの手には短剣ではなく、ミスリルの剣が握られている。

 なにが起きているのかわからなくて混乱する敵に対し、最後はガボンが正面から斧を振るい、残りの首を斬り落とした。



 そして一行はダンジョンを進んでいく。


「ワシの出番が全くないな」


「いいことじゃないですか。それに本来は別に後ろに湧く敵なんか相手にしなくてもいいわけですし。今はグラシアやデルフィさんに水魔法のいい活用方法を習得してもらうためにわざわざ戦ってるだけですからね。あ、疲れたらガボンさんに担いでもらってください。前と離れるのだけは許されませんから。後方の敵を撒く方法なんていくらでもありますし」


「……あんた、あやつに信頼されてるだけのことはあるね」


「あやつとは管理人さんのことですか? 確かに信頼は感じますが、管理人さんが求める強さにはまだ全然達していませんから」


「その若さでそれだけ戦えたら十分だと思うがね」


「強さに年齢は関係ありません。子供であろうがお婆さんであろうが強い人は強いんです。自分で限界を認めない限りは強くなれるんです」


「ほう? 目標はもっと上のレベルにあると?」


「当然じゃないですか。じゃないと生きてるうちに魔王を倒せないでしょう?」


「……わっはっは! そうかい! 魔王か! わっはっは!」


「婆さん! なに呑気に笑ってるんだよ!」


 前方からダルマンの声が飛んでくる。

 だがバビバは気にすることなく、ヒューゴとの会話を続ける。


「あんた、剣も使えたんだね。レンジャーと聞いてたし、両手に短剣を持ってるから前衛のサポートがメインだと思ってたよ」


「元々はそうでしたけど、この一年間でパーティから前衛二人が続けざまに抜けましてね。今はグラシアとソロモンの魔道士二人との三人パーティですから、私が前衛で火力を出さないとならない機会も多いものでして」


「……仲間が抜けた理由を聞いても?」


「えぇ。別に仲が悪いからとかじゃありませんから」


 そしてヒューゴはまずベンジーが抜けた経緯を話した。

 その原因がさっき戦ったばかりのマグマドラゴンとの戦闘だということや、その戦いでアラナという冒険者の命が失われたことなども。

 だからマグマドラゴンには絶対に負けるわけにはいかない、というヒューゴの強い意志をバビバは感じ取っていた。


 その次はヴィックの話になる。

 ヴィックがパラディン隊設立を機に、結婚するためにパーティを抜けパラディン隊になることを選択したという話を聞いてバビバの顔は少し歪む。

 ヒューゴたちのパーティでいうとバビバはヴィックの立場。

 バビバは当時のことを思い出すのと同時に、つい最近ロイスにそのことを話したときのことも思い返していた。

 あのときおそらくロイスの頭にはヒューゴたちのことが浮かんでいただろうと。


 と、そのときだった。


 後方の空中を黒く大きな鳥がこちらに向かって飛んできてることにガボンが気付く。

 その敵はまだかなり距離はあるにも関わらず口から炎を吐いてきた。

 中級から上級レベルと思われる火魔法。

 だがデルフィ、グラシア、ソロモンの三人が放つ水魔法によってその攻撃は届かない。

 敵はこちらに向かってきながら、水魔法に対抗するように延々と炎を吐き続けてくる。

 そのせいで道の両脇にいたガボンとヒューゴに気付くのが遅れたようだ。

 宙を飛んでる敵の首に、まずヒューゴが短剣を投げつける。

 この魔物の体全体にはモヤのようなものがかかってるが、短剣はそのモヤを抜けしっかりと首に突き刺さった。

 それによって敵が吐いていた炎が一瞬とまり、水魔法が頭にまともに命中する。

 そして高度が少し下がった隙を見逃さず、ガボンは軽くジャンプしつつ勢いよく斧を振り下ろした。


「……これはヒクイドリですかね?」


「だろうな。飛べないと聞いてたはずだが、飛んでたな」


「今まで遭遇したヒクイドリは飛んでいませんでしたし、これは魔瘴によって進化した新種かもしれません。ここがダンジョン内ではなく、天井がない外だったらもっと厄介な敵ですね」


「あ~、そうだな。外でもっと高く飛ばれてたら俺の攻撃は届いてないよな……。お前は風魔法も少し使えたり、短剣を投げたりできるからいいけど」


「ガボンさん、剣や斧だから遠距離攻撃はできないなんて話はもう昔の話ですよ?」


「どういうことだ? 俺も魔法杖とやらを持っておけということか?」


「違います。私が今回お借りしてるこのミスリルの剣、これで雷魔法が放てるんです」


「は?」


「見ててください」


 ヒューゴは剣に雷魔法を纏わせた。


「な……」


「これは魔法杖ならぬ魔法剣なんです。もちろんこれでこのまま斬っても効果は抜群だと思いますが、このボタンを押すと雷魔法が飛んでいくんですよ」


「……」


「無駄遣いはしたくありませんから今は使いませんけど。それに杖に付与する魔法よりかは威力が落ちるらしいですし、動力となる魔石の消費量も多かったり、魔石の重量がそこそこあるのもネックですね。まぁそれは今後錬金術師さんたちが改良していってくれると思います。今は最先端の剣を使わせてもらえるだけでありがたいですし、敵に接近して戦うことが多い私には杖より剣のほうが使い勝手いいですしね。なによりこのような剣を持てて私自身の気分が高揚してますよ、ふふっ。あ、ちなみに火魔法や風魔法が付与された剣もありますよ。特に管理人さんが持ってる剣の火魔法の威力は段違いです」


「……魔法斧もあるのか?」


「あればガボンさんに渡してくれてるでしょうから、今はまだ作ってないでしょうね。大樹のダンジョンには斧使いが少ないものですから、需要がないという認識をされてるかと思います。錬金術師さんもお忙しいですから使われない物を作ってる暇はないんです」


「そうか……」


「でもガボンさんが頼めば作ってくれると思いますよ?」


「本当か?」


「えぇ。強い方にはより良い武器を作ってあげたくなると言ってましたし。もちろんお金は取られますけどね、ふふっ」


「ミスリルに魔法付与か……。いったいいくらするんだ……」


「ヒューゴとガボンさん! 早く来なさい! 前が離れるでしょ!」


 前方からグラシアの怒号が飛んできた。

 二人は魔石を回収し、駆け足で隊列に戻る。


 一行はその後も順調にダンジョンを進んでいく。

 もはやこの大人数パーティはこの階層の敵を苦にしなくなっていた。


 そしてダンジョンに入って四十分ほど経過したときのこと。

 道の先に、ここまでのダンジョンの道とは違う風景の場所が見えてきた。


 それを見たダルマンは立ち止まり、小休憩を入れることを提案する。

 当然みんなもその意見に賛同する。


 この先がどういう場所か、なにがいるか、誰もが理解していた。


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