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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第六百二十七話 オアシス爺さんの隠し事

「なんじゃこれは?」


 前国王のオアシス爺さんがやってきた。


「ただの寝床ですよ」


「ただのではないじゃろ。これなんて立派な家じゃないか」


「それは俺たちが普段から持ち歩いてる小屋ですから」


「持ち歩いてる……。考えるだけ無駄のようじゃな」


 爺さんは小屋横のテーブルに座ったので、俺も仕方なく座る。


「もうみんな起きておるか?」


「いえ、誰も。あ、カトレアは起きてますけど」


「なら呼んできてくれ。地下通路の先に関して話しておきたいことがある」


 まだ隠してることがあったか。

 すぐにボネがカトレアを呼びに行く。


 ……だが今は手が離せないとのことだ。


「魔物を風呂に入れてるところでして」


「風呂なんて入るのか。まぁいい。じゃあ青年にだけ話しておく」


 そして爺さんは地下通路の奥、火山部分について話し始めた。


 地下通路は排水用水路の真下を通る。

 その通路の最奥に封印魔法への変換魔道具、そして相互用の転移魔法陣がある。

 そこから転移した先は秘密の部屋と同じくらいの広さがあり、封印魔法に守られているいわゆる安全エリアとなっている。

 そこは火山ダンジョンの第二階層。


 さらになんと、その部屋からは第三階層に行ける転移魔法陣、そして第三階層からは第四階層、つまりマグマスライムがいる最深階層へと行ける転移魔法陣があると言うではないか。


 俺が予想してたことが当たり、少し嬉しい。

 これでみんなが生き延びる確率もかなり上がったわけだし、心配も少なくてすむ。

 無理そうならすぐに逃げ帰ってこれるのはかなり大きい。


 爺さんは続いて各階層に出現する主な魔物についての情報も教えてくれた。


 第一階層:レッドウルフ、マグマプチスライム。

 第二階層:マグマプチスライム、マグママンドリル、マグマハリネズミ。

 第三階層:マグママンドリル、マグマハリネズミ、マグマドラゴン。

 第四階層:マグマドラゴン、マグマゴーレム、ヒクイドリ。


 これも予想はしてたとはいえ、改めて聞くとヤバすぎる……。


 マグマドラゴンにはもう遅れを取ることはないと思うが、マグマゴーレムがなぁ……。

 というかヒクイドリってなんだっけ?

 低いところを飛ぶのが好きな鳥なのだろうか。


 でも過去のメネアたちはこの程度の敵を苦にはしなかったんだよな?

 それでも歯が立たないマグマスライムなんて今の俺たちには厳しすぎる相手だと思う……。


「これを聞いても行くんじゃろ?」


「……えぇ。言って聞いてくれるような人たちじゃないんで」


「第四階層からは右に進め。道なりに行けばマグマスライムがいる溶岩の間に出られるはずじゃ」


 溶岩の間……。

 墓場と呼んだほうがいいのではないだろうか……。


「これで本当にもう隠し事はない」


 嘘つけ。

 昨日もそんなこと言ってたぞ。


「というかこれって凄く大事な情報ですよね? 現国王に伝える前にハミドさんが死んでたらどうするつもりだったんですか?」


「それならそれで仕方ないと思ってた。知らなかったら行くこともないじゃろうしな」


「でも今みたいな事態が起きると予想されてたから伝えられてきてたんですよね? なら伝えることが国王としての最低限の義務なんじゃないですか?」


「義務か。そうじゃのう」


 もし爺さんが俺たちといっしょにオアシスから来てなかったらこの情報も知らないままだったんだぞ?

 まぁ別に今の情報を聞いてなくても第四階層まで行けることには変わりなかったけどな。


 というか国王に伝えてなければ国王も怪我せずにすんだんだよな。

 やはりこの爺さんが厄病神で間違いない、うん。


「青年」


「まだ隠し事あるんですか?」


「さすがにもうない……」


 さすがにの使い方がおかしいだろ……。


「一つアイデアがあるんじゃが、聞いてみるか?」


「一応聞くだけは聞いてみますけど」


 あまり期待はしてないが。


 ん?

 女性側の建物から誰か出てくる。


「あ、おはよ~」


「おはようございます」


 シファーさんが起きてきたようだ。

 そのままゲンさんの近くまで歩いていった。


「なんじゃあの娘は……。目に毒じゃ」


「見ないほうがいいですよ。あんな服装してるくせに見てると怒ってきますから」


「それはこわいのう。でも寒くないんじゃろか? ここも結構冷えるのに」


「フィンクス村ではあれが普通らしいですよ」


「フィンクス村か……なら仕方ないかもしれんのう。あの村は夜でもそこまで気温が下がらんしの」


「というか彼女のこと知りません? 一応ナミの前国王なんですよね?」


「フィンクス村はナミではなくてサハ王国に属する村じゃぞ? それにワシはナミの町の住人一人一人のことまで覚えてないからのう。一万人って多いんじゃぞ?」


「そうじゃなくて、彼女、砂漠の女神様ですよ?」


「……へ?」


「あ、オアシスに移住したのはもう十年も前なんでしたっけ? それじゃ顔を知らないのも無理ないですよね」


「……今は大樹のダンジョンにおるとか言ってなかったか?」


「そうですよ。でも彼女は水魔法に加え土魔法もかなりのレベルですから助っ人で呼んだんです。ナミとの縁もありますしね。まぁどの面下げて顔出せばいいか少し悩んでたみたいですけど」


「……ここに呼んでもらっていいかの?」


「いいですけど、発言には気を付けてくださいね? 砂漠の女神様なんて呼ばれ続けて、プレッシャーでずっと苦しんでたんですから」


「……わかっておる」


「ならいいですけど。シファーさん」


 ゲンさんの足に座ってたシファーさんは立ち上がり、こっちにゆっくりと歩いてくる。


「なに?」


「座ってもらっていいですか?」


「……上着取ってくるから待ってて」


 爺さんの視線を気にしたんだろうな。

 ついでにボネもカトレアの様子を見に行き、シファーさんといっしょに戻ってきた。


「ミャ~(ハリルが水をこわがるせいで時間かかってるみたい。毛も針みたいに尖ってたたわよ。カトレアもいつ針から火魔法出されるか不安がってるから私も手伝ってくるわ)」


 水がこわいのか。

 マグマ系にはやはり水魔法が一番有効なのだろう。


「で、この方はどなた?」


「ナミ王国の前国王のハミドさんです」


「え……どうも、初めまして。シファーと申します……」


「……ふむ」


 シファーさんは気まずそうだ。


「あの……水の補充者の件、急に辞めてしまいまして申し訳ありません……」


「む? いや、そのことは気にせんでよい。今まで大変じゃったろう」


「……まぁそれなりに」


 シファーさんが俺を睨んでくる……。

 あとでなにか言われるだろうな……。


「……もういい?」


 これ絶対俺に怒ってるよな……。


「いえ……こちらのハミドさんがシファーさんとお話したいということでしたので……」


「……なんでしょうか?」


「フィンクス村の住人は避難できたんじゃな?」


「え? はい。大樹のダンジョンの船でサハへ避難させてもらったはずですけど」


「そうか」


「「……」」


 ん?

 それだけ?


「……左腕を見せてもらっていいかの?」


「え……」


 シファーさんは怪訝そうにしつつ、ゆっくりと左腕をテーブルの上に置いた。


「服を少し捲ってくれ」


「え? ……はい」


 言われた通りにするシファーさん。


 この爺さん大丈夫だろうな?

 変なことしたら婆さんに言いつけるからな?


「ふむ。ちゃんとしっかり出ておるな」


 出てるってなにが?


「……この模様のこと、知ってるんですか?」


「もちろんじゃ。ワシにもある」


「え?」


 そう言ってジジイは左腕を見せる。


 ……どこに模様があるんだ?


「……本当ですね」


「そなたほど濃くは出てないけどな」


 あ、これあれだ。

 俺に関係がない魔力の話に違いない。


「これ、なんなんですか?」


「むっ? もしかして知らんのか?」


「はい……」


「なんと……。そなたの父親はこれについてどう言っておるのじゃ?」


「魔法が使える証みたいなものだと……」


「……それだけか?」


「はい……」


「ふむ」


 ここまで言うってことはなにか秘密があるのか?


「そんな目でワシを見るなって……」


「もう隠し事はないって言ってたじゃないですか」


「それとこれとは別の話じゃろ……。まぁさっき青年に話そうとしてたことにも関連してるからちょうど良かったのかもしれんが」


「もったいぶらずに早く言ってくださいよ」


「怒らんでもいいじゃろ……」


 別に怒ってない。

 向こうの建物から聞こえるボネとワタとハリルがわちゃわちゃしてる声が気になってるだけだ。

 あれじゃ寝てる人も起きちゃうだろ。


「その模様はな、水の加護じゃ」


「「水の加護?」」


「そうじゃ。かつてナミの町を創設した偉大なる魔道士メネアにも出ていたと言われておるものじゃ。これは水魔法の才に秀でた者に出るもので、濃ければ濃いほど才があるということになる。じゃがこれが出るのは百年に一人の割合とも言われておるんじゃ」


 なんだと……。

 その百年に一度の才を持つ者がここに二人も……。


 さてはこの爺さん、適当に言ってるな?

 これじゃ五十年に一人になっちゃうし。

 まぁこの二百年の間にこの二人だけとかいう話であれば合ってるんだけど。


「妹の水の加護はどうじゃ?」


「え? ……私のよりももっと濃いです。濃いというか、強いというか」


 なんだと……。

 一人どころか三人も……。


「じゃろうな。あやつの加護はワシらのものとは比にならん」


「妹に会ったことあるんですか?」


「……うむ。あやつが赤ん坊のころに一度だけじゃが」


 まさかそのころから女神候補にしてたのか?


「そなたらの父親は……ワシの息子じゃ」


「「え?」」


 爺さん?

 なにを言ってるんだ?

 ボケか?


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