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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第六百二十三話 合流

 果物エリアに来てから二時間ほど経過したころ、トンネル作業組がメタリン馬車に乗ってやってきた。


「キュ!? (ご主人様!?)」


「ミャ!? (脱走したの!?)」


 真っ先にボネが俺の胸に飛びついてきた。


「普通に出してもらえたんだよ」


「ミャ~! (それなら早く知らせなさいよ! みんな心配してたんだからね!?)」


「悪い悪い。ここで作業してたらすっかり忘れてた。というかメタリンもいなかったし」


「ミャ? (なんの作業よ? ってこれなに?)」


「みんなの寝床だ。俺たちがピラミッドで寝るのは少し違う気がするからな」


 果物エリアを通る道の左右に小屋が一軒ずつ。

 そしてそれぞれの小屋に隣接して、小屋の三倍の広さはあろうかという建物。

 リヴァーナさんとミオに土魔法で作ってもらったものだ。

 建物の中にはまだ果物の木がたくさん植わってるけどな。


「キュ! (心配したのです!)」


 アオイ丸に馬具を外してもらったメタリンが俺の元へとやってきたので抱きかかえてやる。

 馬車からは続々と人が降りてきてる。


「なにもされてないから心配ない」


「キュ! (明日の朝になっても解放されてなかったら地下遺跡を破壊する勢いだったのです!)」


 おい……。

 でも人間を殺すとかではなくて建物を少し破壊するってことだろうだからまだセーフだよな?


「無事そうでござるな」


 アオイ丸が声をかけてくる。


「あぁ。国王も見つかった」


「本当か!?」


 ラシッドさんが食いついてきた。


「えぇ。魔物にやられて大怪我してるみたいですけど」


「魔物!?」


 みんなが周りに集まってきたところで、ここまでの経緯を簡単に説明する。


「一人でダンジョンに転移するなんてなにやってるんだよ……」


 うんうん。

 ラシッドさんだけではなくみんながそう思ってる。


「……巻き込んで悪かった。国王からはあとで必ず謝罪させる」


「いえ、補佐官さんが謝ってくれましたからもういいですよ。それより早く行ってあげてください」


「……すまない」


 そしてラシッドさんは転移魔法陣に一人で入っていった。


「管理人さん、ありがとうございました。私も行ってきますね」


 続いてアーミアさんが声をかけてくる。


「お一人でですか?」


「はい。二人は遠慮するようです」


 ドーハさんとナスリンさんはここに残るようだ。

 ラシッドさんも一人で行くんじゃなくてアーミアさんを待っててやれば良かったのに。


「俺たちも行ってくるよ」


「ありがとうな」


「明日朝またここに来るから」


 そしてナミ三人衆とアーミアさんも転移魔法陣に入っていった。


 さて、みんなお腹が空いてることだろう。

 それとも眠いかな?


「ティアリスさん、まだ魔法使えます?」


「うん。浄化魔法?」


「はい。小屋付近はグラシアさんにもうかけてもらいましたから、小屋よりこちら側の建物の中や周りを全部お願いします」


「わかった」


「ピピはティアリスさんの護衛な。ゲンさんは建物の中にある果物の木を抜いてくれ」


「ゴ(おう。そのへんに植え替えるか?)」


「いや、きれいな間隔で植わっててちょうどいいからやめとこう。とりあえず状態保存機能付きのレア袋に入れといて。ボネは浄化が終わってから封印魔法な」


 そして作業が始まった。


 アオイ丸とプティさんはゲンさんの補助をしてくれるようだ。

 リヴァーナさんとミオはゲンさんが木を抜いたあとに建物の中の整備。

 そのあとに俺がベッドやテーブルをレア袋から出していき、それを男性陣がセットしていく。


 同時に男性陣には順番にシャワーを浴びていってもらうことにした。

 シャワーは小屋に一つしかないからな。


 ピラミッドから見て右側の小屋と建物を男性用、左側を女性用とした。

 右側には火山もあるからな。


 女性陣には食事の準備をしてもらっている。

 準備とは言ってもテーブルの上に並べるだけだが。

 とりあえず今日は男性側の建物でみんなで食事をすることにした。


「キミさ、牢屋に入ってた感が全くないよね」


「本当は入ってないんじゃないの?」


「管理人さんは謎なんだから気にしたらダメ」


 なんだよこのフィンクス村三人衆は……。

 嫌味を言われてるように聞こえるのは気のせいだろうか。


「ミャ~(一番シファーが心配してたわよ)」


 そうなのか?

 それは意外だ。

 だからこそ実際俺に会って拍子抜けしたってところか。


「ミャ~(それよりティアリスがヤバいわ。さっきまで一言も喋ってなかったんだからね。ロイスが牢屋に入れられたと聞いてもあまり反応してなかったし)」


 ハリルのことか。


「あ、そうだ。ボネ、ハリルを迎えに行くぞ」


「ミャ~(封印魔法かけてからね)」


 すっかり忘れるところだった。

 ついでに厨房にも声かけてこよう。


 そしてティアリスさんによる周囲の浄化が終わり、ボネが封印魔法をかける。

 これで寝てていきなり魔物に襲われるなんてことにはならないはずだ。

 たぶんゲンさんは外で見張ってくれるんだろうけど。


「ピラミッドにいるみんなを呼んできますから、みなさんは遠慮なく先に食べててください。眠くなったら寝てもらって構いませんから」


 そう言って男性側の建物を出た。


「ゲンさん、カトレアを運んできたいからいっしょに来てくれ」


「ゴ? (中に俺が入っても大丈夫なのか?)」


「大丈夫。一般人には会わないはずだから驚かれることもない。それとティアリスさんもいっしょに来てもらっていいですか?」


「……うん」


 ハリルに会いたくないのだろうか。

 まだフィリシアのあの本のことは知らないはずだから歩きながら話すか。


 そして俺とティアリスさんと魔物たち全員で転移魔法陣を通る。

 見張りの衛兵は別の人に交替していた。

 軽く挨拶をし、地下二階を進む。


「この左右の部屋が肉や野菜の保管庫になってるんですよ。なんと状態保存もかかってるんです」


「へぇ~」


 やはりおかしい。

 いつものティアリスさんなら興味津々で勝手に部屋の中へ入っていくはずだ。


「……あのマグマハリネズミ、名前はハリルなんだそうです」


「え? 意識戻ったの!?」


「いえ、彼のことが書かれている本を発見しました」


 地下遺跡前の転移魔法陣にて、俺が地下に転移した経緯から話し始めることにした。


 厨房には顔を出さずにそのまま食料保管用ピラミッドの外に出る。

 そのまま交差点を真っ直ぐ進み、住居用ピラミッドの地下へと入った。

 見張りの衛兵たちは俺の顔を知っているのか、それとも魔物といるせいかはわからないが、なにも言わなくてもすんなり通してくれる。


 こちらのピラミッドは、地上より上が住居用として使用。

 地下は城としての機能を持たせることにしたようだ。


 ただし、こちらの地下は食料保管用ピラミッドの地下に比べてだいぶ広いらしい。

 一階層あたりの面積が広いだけでなく、地下三階まであるのだとか。


 地下一階には小規模ではあるが水路があるそうだ。

 さらに地上5階、10階、15階……と、5階ごとに水路があるらしい。

 それらはどうやら中継的役割を持たせるための水路らしく、水の補充は地下一階だけで行えるようにできてるとのこと。

 今は水道屋が総勢で水を補充中……というわけではなく、レア袋に残ってた水を使ったらしい。

 まさかこんなに早く使われることになるとはな。


 各階層の水を使う施設は全て共同とのことだから、転移魔法陣の接続も水道屋にいる転移魔法陣の使い手全員でやればすぐに終わったそうだ。

 まぁこのピラミッドは地上30階建てらしいから……え?


「ティアリスさん?」


 泣いてる……。

 って本の話をどこまで話してたっけ?


 このピラミッドのことを考えながら半分無意識で話してたからよく覚えてない……。

 でもカトレアたちと同じパターンだとしたらもう最後まで話したんだろう。

 ただ、話を聞いて余計に心を痛めてしまったのかもしれないが。


「今はもう落ち着いて眠ってるだけだと思いますから心配いりません。それと先にピラミッドに来た人たちには話しましたが、あれは完全に俺が悪かったんです。ティアリスさんが攻撃する前から俺にはあいつの声が聞こえてました。でも誰が話してるのか気付けずに無視してしまったんです。本当ですよ? カトレアからも魔物たちからも相当怒られました。本当にすみませんでした。全部俺のせいなんです。ティアリスさんが攻撃したときも、あの状況で先陣をきれて凄いなぁとしか思ってなかったんです。それにティアリスさんが攻撃しなくてもきっとすぐに誰かが攻撃してましたから」


「キュ(そうなのです。ご主人様が悪いのです)」


「ミャ(そうよ。ティアリスが気にすることじゃないわ)」


「ゴ(そうだぞ。相手は魔物なんだし、状況的に攻撃するのが普通だ)」


 いつのまにかボネはティアリスさんの腕の中にいた。

 おそらく慰めるためにボネのほうから抱いてもらいにいったんだろう。


「ロイス君」


「……はい」


「全部ロイス君が悪い。私が攻撃したのもロイス君のせい。みんなが攻撃したのもロイス君のせい。あの子がこのまま目を覚まさなくてもロイス君のせい。そうだよね?」


「そうです。ティアリスさんが俺を許してくれないと、俺は今よりさらに落ち込むことになります」


「……なら許してあげる」


「ありがとうございます」


「その代わり、帰ったらデートでいい?」


「え……はい」


「ハリル君もいっしょにね。人間の町というものを見せてあげないと。あ、ハリル君じゃなくてハリルさん?」


 ティアリスさんの顔が少しだけ笑顔になった。


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