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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第六百二十一話 謎の魔物たちの正体を推測してみる

 地下二階の牢屋を出て、地下一階への階段を上る。

 そして牢屋に行くための階段があるだけの部屋を出て、広い部屋に出た。


「あっ!? ロイス君!」


 声の主はリヴァーナさんだった。

 もう着いてたか。

 どうやらミオと二人で来たようだ。


 だがリヴァーナさんたちは衛兵に囲まれていた。

 しかも衛兵たちはなにかしないように見張っているわけではなく、武器を構え完全に戦闘前といった状態で囲んでいる。

 よく見ると、何人かの衛兵が既に地面に横たわっているではないか。


「お前たち! なにをしてるんだ!?」


 衛兵隊長が怒鳴り声をあげた。


「この者たちが強引に突破を図ろうとしてきたものですから!」


「違うよ!? この人たちがリヴァたちのこと勝手に悪者扱いしてきたんだからね!? だからイラっときて少し挑発したら剣を構えて襲ってこようとしたんだよ!?」


「襲おうとは思ってない! 少しこわがらせようとしただけだ!」


「いっしょじゃん! それを言うならリヴァだって脅しで超弱い雷を使っただけだからね!? これくらいで倒れるなんて弱すぎなんじゃないの!?」


「貴様!」


 血の気が多い人たちだな……。

 衛兵もみんな疲れてるだろうし、リヴァーナさんだってもうヘトヘトのはずなのに。


「やめなさい」


「しかし補佐官様!?」


「やめなさい!」


「……はっ」


 その一言で、囲んでいた衛兵はサッと横に移動し、一列に並んだ。


「あ、もしかしてあなたが補佐官さん? 誰がどう見ても無実のロイス君を牢屋に入れたっていう?」


「……そうです」


 おい?

 頼むからなにもしないでくれよ?


「ふ~ん。……ロイス君はもう解放されたってことでいいの?」


「はい。国王拉致の件は私たちの誤解でした。それ以外も証拠不十分ということで、今後は町や国民のために私たちといっしょに尽力していただくことになりました」


 尽力って言い方は違うと思うけど。

 俺は俺で好きなようにやるだけだし。


「……まぁいいや。もしまたロイス君を牢屋に入れるようなことがあれば、リヴァがあのピラミッド二つとも壊すからね? リヴァの魔法、マグマなんかより強いよ? 本当だよ?」


「「「「……」」」」


 こらっ……。

 俺のために怒ってくれてるのはわかるが、そんなこわいこと言ったらダメでしょ……。


「リヴァーナさん、大丈夫ですから」


「本当? 拷問とかされてない?」


「えぇ。堂々とカツ丼食べてやりましたよ」


「さすがロイス君!」


 なにがさすがなのかよくわからないが……。

 ミオもなぜか頷いてるし……。


「では衛兵のみなさんは持ち場に戻ってください。休憩もしっかりするように」


「「「「はっ!」」」」


 そして衛兵たちはリヴァーナさんや俺を睨みながら散っていった。

 あとで襲われたりしないだろうな……。


「ロイスさんはこちらに」


 どこに連れていかれるんだ?


 ここは神殿の大広間っぽいところだ。

 この大広間に隣接して、部屋への入り口がいくつもある。


 衛兵隊長がその中の一つに先頭で入り、それにみんなが続く。


「ロイスさん!?」


 あ、ラシダさんだ。

 もう牢屋から出してもらえてたんだな。


「青年、よく来てくれたの」


 このジジイめ……。


 俺は絶対許さないからな。

 危うく死刑になるところだったんだぞ?

 特に火山ダンジョンを内緒にしてたことに怒ってるんだぞ?

 どこのジジイも平然と嘘つくよな。


「そちらにおかけください。お二人もどうぞ」


 リヴァーナさんとミオが俺の左右に座る。

 その二人の隣に衛兵隊長と水道長がそれぞれ座った。

 どうやら二人は警戒されてるようだ。


 ここは会議室なんだろうか?

 結構広いな。


 俺の前には補佐官さんが座る。

 その右隣に前国王の爺さんとその妻である婆さん。

 左隣には大臣とラシダさん、それと……これが噂の妹さんか。


「衛兵を配置しなくていいんですか?」


「信じると決めましたから」


 どうせその言葉も半分嘘なんだろ?

 俺は信じてないからな?


「ほかにお偉いさんとかは呼ばないんですか?」


「あまり人数が多くなると決定が遅くなりそうですので。それにほかの方々まで呼ぶと、発言内容でロイスさんの機嫌が悪くなるかもしれませんし」


 ふ~ん。

 俺を率先して牢屋に入れたがったのはその人たちなのかもな。


「随分気が立っておるようじゃの」


 誰のせいだと思ってるんだ?

 爺さんが牢屋に入らなければ俺が入ることもなかったんじゃないか?


「そんなに牢屋が嫌じゃったか?」


「なんであっさり牢屋に入ったんですか?」


「ふむ。カイロが戻ってこないことに責任を感じておったからかの」


「帰ってこないと気付いてからなぜすぐに助けに行かなかったんですか?」


「行きたくてもネックレスはあやつが持っておったしの」


「設定変更の方法は知らなかったんですか? 一番手前の転移魔法陣は、ネックレスじゃなくて指輪を持って通常の転移魔法陣を使えば誰でも通れるように変更できたはずですよ?」


「なんじゃと……」


 そのくらいの解析はできてほしかったな。


「でも指輪とはなんのことじゃ?」


「ん? ネックレスと同じように伝わってきてるんじゃないんですか?」


「……知らん。全く覚えがない」


 マジかよ……。

 ならこっち側からはどのみち解除するしかなかったんじゃないか……。


「ダンジョンのこと、なんで俺たちに黙ってたんですか?」


「質問ばかりじゃのう~」


「隠し事ばかりしてるからでしょう?」


「色々事情があるんじゃよ。でも青年たちといっしょにここに来た日、もし青年たちが地下遺跡の調査をすることになってたらちゃんと全てを話すつもりじゃった」


「今ならなんとでも言えるでしょうね」


「本当じゃって」


「あの場で話してくれてたら俺たちもすぐに町を出たりしなかったですよ」


「それを言われると痛いところじゃ。でもまさか助けに来てくれるとは夢にも思わんかったぞ」


「完全に偶然ですからね? もし俺たちが大樹のダンジョンに戻ってたらこんなに早くは来れませんでしたよ? 今頃まだ、マグマを冷やすか遠くから穴を掘るか決められず揉めてたかもしれません」


「ならワシらは相当運が良かったんじゃの。ナミの全国民を代表してお礼を言わせてくれ。ありがとう。おかげで多くの命が救われた」


 急に真面目にお礼を言われても困るだろ……。

 だからといって爺さんのことを信用したわけじゃないからな?

 ジジイと呼ぶのは可哀想だからやめてやる。


「ハミドさんは地下通路の先からダンジョンに入ったことはあるんですか?」


「ない。間違いなく死ぬ」


 きっぱり言い切りやがった……。


 実はマグマスライムの実物を見たことがあると言ってくれるんじゃないかと少しでも期待した俺がバカだったようだ。


「奥に転移魔法陣があることを国王には伝えてなかったんですか?」


「伝えておったに決まってるじゃろ。それに仮に転移魔法陣が使えるようになったとしてもまさか一人でダンジョンに入るとは誰も思わんじゃろ?」


 まぁそれは確かに……。

 その件に関しては確実に国王に落ち度がある。


「国王がダンジョンで見たという人間と魔物に心当たりはないんですか? 人間じゃなくて魔物二匹かもしれませんけど」


「ない。人間じゃとしたら、モーリタ村から入ってきた可能性が高いと思うんじゃが」


「それはないと思います。あそこから入るには村の中を通る必要がありますから誰にも見られないというのは難しいかと。それに魔物が通れない封印魔法の壁もあります」


「ふむ。なら大ピラミッドの周りから侵入した可能性を考えないといけないかの」


 やはりそうなるか。

 俺たちも同じことをしたもんな。


 それに知られてないだけで、大ピラミッドから離れた場所のどこかにダンジョンへの入り口があるという可能性もある。


「ロイス君、リヴァたちにも説明して」


 あ、そうか、まだ聞いてないか。


 そして簡単にではあるが国王が話した内容を説明した。


「……ふ~ん。もしかしてその女性、魔物使いだったりして?」


「「「「!?」」」」


 やはりその可能性も浮かんでくるよな……。


 本当に俺以外にも魔物使いがいるのだろうか。

 魔族領あたりにはいそうな気がしないでもない。

 って魔族領のことはほぼなにも知らないけどさ。

 でもここから海を北上すればすぐそこに魔族領があるってことは知ってる。


 魔物使いじゃなくても、親しい魔物がいるという人間は意外に多くいるのかもしれない。

 フィリシアたちとハリルのように。

 それにヒョウセツ村のマクシムさんとユキというスノーウルフもそうだ。


 敵意がなければ誰だって仲間になれる可能性を秘めてる。

 ただのペットじゃなく、いっしょに戦ってくれるパートナーというのは人間にとっても都合がいい。


 だが問題はその女性たちが火山になにしに来たのかということだ。

 噴火に関わってることはかなりの確率で間違いなさそうだけど。


 マグマスライムを討伐しようとして失敗し、怒らせたために封印魔法を破壊するほどののマグマが発生したのだろうか?

 それなら仕方ないと思う。

 討伐しようとしただけでも凄いと思うし。


 だけどもし、もしもだけど、マグマスライムを討伐することが目的じゃなくて、接触することが目的だったとしたら……。


『人間にも悪い人間はたくさんいるでしょう?』

『それこそ魔物と手を組んで悪いことを企む人間だっているはずです』


 フィリシアはこう言ってた。


 まさにその女性がそうなんじゃないだろうか……。


 でもなぜこのタイミングでここに現れた?

 この火山ダンジョンの情報をどうやって知ったんだ?


 ……考えたくはないが、魔王の仕業ということも考えられる。

 主導権を握ってるのは魔物のほうで、女性は従ってるだけかもしれない。


 ん?

 もしかしてその魔物が魔王だとか……。

 それかその女性が魔王だったりして……。


 ドラシーも魔王の姿を聞いたことくらいあるはずなのに知らないとしか言わないしな。


「ロイス君ロイス君」


 ん?


「今日はダンジョンに入るのやめとこうね? さすがに夜遅くなってるし、みんな疲れてるからね? こんな状態で戦ってもいい結果出ないよ?」


「そうですね。その女性と魔物とマグマスライムを同時に相手することになるかもしれませんし」


「やっぱり悪者って考えたほうがいいのかな?」


「味方であってほしいですが、敵と考えてたほうが現場での驚きも少ないですから」


「そっかぁ。……で、この会議まだ続く?」


「お疲れですよね、すみません。先にピラミッドに戻っていただいても構いませんよ?」


「それはダメだよ。リヴァとミオがロイス君を牢屋から救い出してくるって言って出てきたんだもん。だから戻るならいっしょじゃないと」


 え……。

 俺がまだ牢屋にいればさらに衛兵に犠牲者が出てたかもしれないのか……。

 助けようとしてくれたのはありがたいことではあるんだけど。


「補佐官さん、今日はもう終わりでいいですかね?」


「はい。正直、私も少し休みたいですし」


 国王が生きててようやく少しは安心できただろうしな。


 俺はさっきまで牢屋で休憩してたからまだまだ元気だけど。

 でもとりあえずピラミッドに戻るか。


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