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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第六百二十話 一報

 大臣たちが部屋を出ていき、また牢屋で待機するだけの時間がやってきた。

 死刑までの待機時間とも言えるかもな。


「あの~、面会ってできないんですか?」


「……今はできない」


「いつならできるんです?」


「……大臣様や補佐官様次第だ」


「じゃあ聞いてきてくださいよ。カトレアって女性を呼んできてほしいんです。緑色の髪の」


「……我慢しろ」


 ダメだ、イライラしてきた。

 でもこの人たちもこれが仕事だから許してやる。


 とりあえず横になるか。

 このまま寝れたらそれはそれでいいや。


「「ご苦労様です!」」


 ん?


「お二人もご苦労様です」


 補佐官さんが来た。

 その後ろには大臣たちもいる。

 また仲良く三人で来たのかよ。


「ロイスさん」


 おっと、さすがに寝たままでは失礼か。

 気分を損ねて即刻死刑とか言われても困るしな。


「なんでしょうか?」


「国王が発見されました」


「「「えっ!?」」」


 俺だけじゃなく見張りの衛兵たちも声をあげた。


「……どのような状態で?」


「……生きてます」


 ふぅ~。

 それは朗報だな。


「ですが大怪我を負っていますので、生きてるとは言いましても辛うじてです」


 なんと……。


「どんな怪我ですか?」


「左足の大腿骨を骨折しています。攻撃を受けた傷も残っており、かなりの血も失ったようです」


「それでよく生きてましたね。もう二日も経つというのに」


「……夫は水魔法が使えますし、応急処置程度のことはできたのでしょう」


 へぇ~。

 やはり水魔法が使えると便利だな。


「どこで見つかったんですか?」


「……大ピラミッドの近くの地下通路です。地面に倒れていました」


「周りになにか人間や魔物の痕跡は?」


「……特には」


「では近くに転移魔法陣はありませんでしたか? 近くじゃなくても奥の壁あたりとか地面とか」


「……」


 この反応はあったということでいいのか?


「転移魔法陣の状態はどうなってました? いくつありました? 光ってましたか? 光ってなくても、壁に刻まれてたとか?」


「……」


 ……俺には言えないか。


 というか俺なら知ってるだろと思ってるのか?

 お前たちが準備したんじゃないかって?


「前国王はなんと?」


「……」


 あの爺さんまだなにか隠してるな。

 次あったとき覚えとけよ。


「もしかして国王は魔物にやられたんじゃないですか?」


「……なぜ魔物だと?」


「さっきも言いましたが、地下通路の先にダンジョン内へ通じる転移魔法陣があっても不思議じゃないな~と思ってましたから。かつてメネアたちはマグマスライムに何度も戦いを挑んだそうですし、排水攻撃の効き具合を確かめてたりもしたそうなので、最深部にはできるだけ早く安全に行けたほうがいいでしょうし」


「……」


 もしそんな道があるんならラッキーなんだけどな。

 封印魔法の魔道具の先から第二階層に入れるだけでもそれなりのショートカットになる。


 おそらくあるとしたら一方通行の転移魔法陣か。


 一方通行の転移魔法陣があったとして、国王は誤って転移してしまい、近くにいた魔物に攻撃を受け、慌てて戻ってきたってところか。

 でも国王に戻ってこれるのだろうか?

 一方通行の転移魔法陣なら使えるとか?


 ……いや、そもそも地下通路に魔物が出現しないのなら一方通行である必要はないのか。

 その場合は秘密の部屋と同じ相互用だとして、国王が接続して通ることは不可能だ。


 じゃあ国王は魔物にやられたわけじゃないか。

 そうだとするとやはり犯人がいるってことになる。

 でも痕跡はなかった。

 衛兵ではなくてヒューゴさんやミオに調べてもらえば別の結果が出るかもしれないが。

 それこそアオイ丸に頼んだほうがいいか。


「……ロイスさん」


「はい?」


「少し話は変わりますが……カトレアさんが倒れました」


「え?」


 カトレアが倒れた?


「……魔力の使いすぎですか?」


「そうです。転移魔法陣の数が多かったものですから……」


「今傍には誰か?」


「デルフィさんに付き添ってもらってます」


 カトレアが転移魔法陣の使い手ということはバレてしまったか。

 まぁボネとメタリンがいないんじゃ実質アリアさんとの二択だったしな。


「……私を怒らないのですか?」


「怒る? なんでですか?」


「……カトレアさんに無理をさせてしまったことや、今私がロイスさんを牢屋に入れてしまってることも」


「カトレアはいつも無理してますから。昨日からマグマスライム対策のために色々錬金もしてもらってたせいで睡眠も取れてませんでしたしね。それに俺を牢屋に入れたのは明確な理由があるからでしょう? それなら納得いくまでとことん調べてください。ただし、できるだけ早くお願いします」


「……国王から話を聞くことができました」


「え? 意識があったんですか?」


 なんだよそれを早く言えよ……。


「救助に向かった衛兵が少しだけ聞けたそうです。こちらに戻ってきたときにはもう気を失ってました。最後の力を振り絞り、地面を這いつくばって戻ってこようとしてたみたいで」


「誰にやられたんですか?」


「……魔物だと」


 やっぱり魔物なんじゃないか。


「ダンジョンに入ったんですか?」


「はい。どうやら転移魔法陣が使えたようで……」


「え? 国王が? 使えるのを隠してたってことですか?」


「いえ、直前に前国王様に魔法を見せていただいたおかげだと。コツをつかんだそうなんです」


 ほう?

 やるじゃないか。


「それをダンジョンに繋がる転移魔法陣で試したってことですか?」


「そのようで……」


 なんて命知らずな……。


 でもこれで俺が無実なことはわかっただろ。

 さぁ、早く出してくれ。

 転移魔法陣があることもわかったし、すぐにみんなと相談しよう。

 よし、少しはやる気が戻ってきたぞ。


「……まだここから出してくれないんですか?」


「実はダンジョン内で気になるものを見たそうで……」


「なにを見たんですか?」


 というか国王は大怪我してるんだよな?

 よくそんなに喋れたな……。


「……人間です」


「人間? ダンジョン内で?」


「はい……。おそらく女性だと」


 女性か。

 流れ的に俺を見たと言われるかと思った。


「その女性は一人だったんですか?」


「……魔物といっしょだったと」


「は? ……魔物と戦ってたってことですか?」


「……いえ、いっしょに歩いていたと」


「は? ……仲良くってことですか?」


「はい……。真っ黒のローブでフードも被ってたそうですから顔までは見えなかったそうですけど……。背丈と声からしておそらく女性だと」


「魔物は? どんな魔物でしたか?」


「黒くて、宙に浮いていたらしいです。人間よりは小さかったと。後ろ姿しか見えなかったそうで。転移先は封印結界に守られていた場所らしいのですが、その女性たちに声をかけようか悩み、悩んだ末にその場所から出たすぐのところで魔物に襲われたそうです」


 ちょっと待て。

 状況がよくわからなくなってきた。


 国王は興味本位でダンジョン内に転移。

 転移先は安全エリアのような場所。

 その場所からダンジョンの中を見物してたら、人間と魔物がいっしょに歩いているところを目撃。

 黒いローブ姿の女性、黒くて人間より小さく宙に浮いている魔物。

 国王はその女性たちを追いかけるために安全エリアから外に出たところ、魔物の襲撃を受けて大怪我。


 まず国王のことだが、完全に自業自得じゃないか?

 って国王のことはどうでもいい。

 問題は女性と魔物だ。


 いったい誰なんだ?

 そもそも本当に人間なのか?

 人型の魔物とかじゃなくて?

 賢い魔物ならローブくらい着るんじゃないか?

 元々ローブを装備してる魔物かもしれないし。

 精霊ドリュのことが頭に浮かんだが、帝都で戦ったときは黒いローブなんて着てなかったから違うか。


 二匹コンビの魔物かもしれない。

 同種以外ではなかなかいないパターンだけどな。

 だがユウシャ村近くで見たメカトロルとメカゴブリンの群れはセットみたいだった。

 ここも魔瘴の影響で新種が生まれたのかもしれない。


 なんにせよ人間だというのは国王の見間違いだと思う。

 こんな危険なダンジョンの中を一人で歩こうとする人間なんていないだろ。


 ……と思いたいんだが、いいかな?


 でも声を聞いたって言ってるんだよな……。


「「「「……」」」」


 補佐官さんや大臣たちは俺をジーっと見てくる。

 まるでなにか俺を疑ってるかのように。


 いや、わかるよ?

 そりゃあまずその女性が俺の仲間の誰かだと考えるだろうさ。

 その魔物が俺の仲間だと考えれば誰もが納得するだろう。

 俺をすぐにここから出してくれないのはみんなそう思ってるからだろう。


 でも一昨日の夜はみんな揃って荒野地帯で野宿してたし。

 それに黒くて宙に浮いてる魔物なんてウチにはいないし。

 メタリンは光の具合で黒く見えるときもあるかもしれないが、宙に浮けないし。

 ウェルダンにも黒が入ってるけど、俺たちといっしょにいたし、浮いてるように見えたことなんて一度もない。

 ……ペンネの背中も黒だけど、絶対違うしな。

 ほかに黒いのいないよな?


 というかその魔物も黒いローブみたいなのを着てたとしたらどんな色の魔物でも容疑者扱いされてしまうよな……。

 ウチの魔物たちは外に出るときみんな防具着てるし。


 あ、だから余計に疑われてるのか……。

 ピピが黒い服着て飛んでたと思われてるのかも……。

 怪しい行動をするなら身を隠すために黒い服を着たほうがそれっぽいしな。


 ……でも一つ気になる可能性があるんだよな。

 国王が見たのがもし本当に人間と魔物だったとしたら、その人間は……。


「「「「……」」」」


 視線が痛い……。


 いや、俺は確実に無実だぞ?

 俺だけじゃなくウチの人間も魔物たちもだ。


「ロイスさん」


「はい」


「お仲間のどなたかではないんですよね?」


「絶対に違います」


「……信じていいんですか?」


「……信じてくれるんですか?」


「夫の件は完全に私の誤解でしたから。それについては本当に申し訳ありません。ですが人間といっしょにいた魔物の目撃情報もあるわけですし、噴火と封印魔法の関係性がまだわかってない以上は疑念を完全に晴らすわけにはいきません。……でも今はその過去のことよりこれからのことを考えねばなりません。今後噴火が発生するしないに関わらず、町がこのような状態になってしまっては今後どうしてもロイスさんたちの力を借りないわけにはいきませんし。ですからお願いです。どうかナミの町、いえ、ナミの国民を助けてください」


 補佐官さんは頭を下げてくる。

 それを見た大臣たちも同様に。


 でも矛盾してないか?


 まだ疑ってるくせに、俺たちに助けを求めてくる。

 心のどこかでは、ナミの町をマグマの海で覆い尽くさせたヤバいやつかもしれないと思いながら俺に接してくるってことだろ?


 ともあれ牢屋を出れそうなことには喜ぶべきか。

 謎の女性と魔物のせいで心配事がさらに増えてしまったが。


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