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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第六百十八話 牢屋生活

 夜は冷えるな。

 この上の地上が熱々のマグマの海になってるなんてとても想像できない。

 フィリシアたちが苦労して地下遺跡を強化した効果が出て良かったな、うん。


 ……なんか喉乾いたな。

 もう寝る前だし、ホットミルクにしておこう。


 ……ふぅ~。

 ようやくゆっくりできた気がする。

 今日は色々あったもんなぁ~。

 モーリタ村からこんなところまで歩いてきたせいで足が棒のようだ。

 明日は筋肉痛だな。


 ……暇だな。


 そろそろ寝るか。

 ベッドを出せる広さはありそうだが、さすがにマズいか。

 布団を出して反感を買ってもいけないしな。

 というか布団くらい用意してくれててもいいのに。

 仕方ないから枕代わりのクッションだけにしておくか。

 剣は取り上げられたが、レア袋まで取り上げられなくて良かった。

 たぶんあの人たちは空の袋だと思って見逃してくれたんだろう。

 レア袋どころか身ぐるみ剥がされることも覚悟してたのに。

 まぁ防具のおかげでそこまで寒さを感じずに寝られそうだ。

 ではおやすみ。




 ……眠れるはずないけどな。


 なんだよこの無駄な時間は。

 今どういう状況かわかってるのか?

 ナミの町の人たちを救出できたんだから次は早くマグマスライム対策を考えないといけないんだぞ?


 まぁ今ゆっくりできるんだからその間に考えとけってことなのかもしれないけどさ。

 でも俺一人で結論を出せるような問題じゃないし。

 あれだけのマグマを噴出してスッキリしたであろうマグマスライムがこのあと何百年も寝てくれることを期待するか?


 というかフィリシアたちのときは最初の噴火のあと火山はどうなってたのだろう?

 二十年もピラミッドを造ってる間、噴火はなかったのだろうか?

 最初ほどの大きさの規模じゃないにしてもそこそこは噴火してたとか?

 というかよく火口の上に石を設置できたな。

 それこそ命がけじゃないか。


 ……なんかお腹減ってきた。

 さっきはサンドイッチだけだったからな。

 よし、カツ丼を食べてやる。

 なんだかわからないが、今はがっつりカツ丼の気分だ。


 ……うん、美味い。

 でもカツ丼ってこんなに美味しいものだったっけ。

 俺はいつもトンカツには白米とサラダと豚汁の定食派だから、あまり食べようとはしてなかったんだよな。


 それに地下遺跡の神殿、しかも牢屋の中での食事なんてなかなかできない体験だぞ。

 この環境がカツ丼というか食事をさらに美味しくさせてるのかもしれない。


 ……でもさすがに視線が気になるな。


 さっきからそこでず~っと俺のことを見てる衛兵二人。

 二十代前半の男に十代後半と思われる女。

 俺ごときに二人も必要ないだろ。

 ただ立ってるだけなんだったらほかにもっとできることがあるんじゃないのか?

 それこそ避難者の誘導や食事会場での配膳や仮住居の割り当ての手伝いでもしてこいよ。


 というか俺が急にカツ丼食べてることに対してなにか言えよな。

 ホットミルクにもなにも言わなかったし。

 このクッションも急にどこから出したと思ってるんだよ。

 こんな囚人を許していいのか?

 なめられるぞ?


「あの……」


 ん?

 なんだよ?


「……いえ」


 なにビビってるんだよ……。

 別に睨んでもないし、ただ箸をとめて少し顔を上げただけだろ?


 でも今男のほうが女に、こいつのことを注意しろみたいな目配せしてたよな。

 そこは先輩としての威厳を見せるために、俺がガツンと言ってやる的な態度のほうがよくないか?

 相手は囚人だぞ?

 前国王や現国王の娘二人を利用して、国王暗殺を企てた歴史上でもかなり極悪の部類に入る犯罪者だぞ?


 しかも一万人もの人々を同時に殺そうともしたんだぞ?

 おまけに町は既に全崩壊してるんだぞ?

 そんなやつ少しくらい痛めつけても誰も文句言わないだろ。

 文句どころかもっとやれ、今すぐ死刑になんて声も多そうだ。


 だからといって俺は絶対に犯行を認めないぞ?

 こういうのは認めたら終わりなんだ、たぶん。

 ってやってないからな?


 少しでも弱気になったら負けだ。

 牢屋から出るには根気強く粘るしかない。

 例え何年、何十年とかかろうとも。


 ……でも何十年はキツイな。

 というか何年でも無理だな……。

 せめて三日くらいで勘弁してもらえないだろうか……。

 まぁ食事は一か月分くらいは持ってるからそのくらいは大丈夫か。


 ……ん?

 牢屋生活って食事はどうなってるのだろうか?


「ここって一日何食出ます?」


「「は?」」


「食事ですよ。囚人の食事」


「「……」」


 こいつなに言ってるんだみたいな顔してるな……。


 そりゃ初めての会話が食事の話だし、なんなら俺今カツ丼食べてるしな。


「……今は食料がないから、一日一食になるかもしれない」


 なんだと……。


 そうか、飢え死にさせようってわけだな。

 まぁ町がこんな状況だし食料を節約しないといけないことについては仕方ない。

 それにどうせ囚人に出す食事なんてどうせパン一切れとかその程度だろう。

 囚人なんだから死んだところで誰もなにも言わないだろうしな。


 ……一応俺も食事は少量にしよう。

 何か月入れられることになるかわからないしな。

 差し入れでレア袋とかありなんだろうか?

 というかなぜ取り上げない?

 この中にまだ剣とか武器が入ってる想像くらいできるだろ?

 俺に背中を見せたらその隙に剣でブスッとなんてこともできるんだぞ?

 あ、だからずっと俺を監視してるのか?


 でもこの檻を斬るのは無理だろうな。

 おそらくこれもフィリシアの錬金のやつだ。

 ミスリルの剣を装備したアリアさんの腕なら斬れるかもしれないが、俺程度では剣が折れて終わりな気がする。

 まぁボネの念力で曲げれば余裕だろうけどな。


 ……ん?

 そういやほかの囚人はどこにいるんだ?


「前国王とかラシダさんはどこに捕まってるんですか?」


「……別の場所だ。ここは牢屋の中でも最も強固な牢屋になってる。逃げだせるなんて考えないほうがいい」


 なんと……。

 そんなところに入れるなんてこれまた貴重な体験じゃないか……。


 確かにここは地下遺跡のさらに地下だ。

 まさかまだ地下があるとは思ってもみなかった。


 でもフリじゃないよな?

 逃げられるんなら逃げてみろって言ってるわけじゃないよな?

 まぁ俺一人じゃどうやったって無理だから無駄な体力は使わないけどさ。


 それよりこのことをララが知ったらどうするかな?


 激おこなのは間違いないけど、剣を振り回したりまではしないか。

 とりあえず今後はナミの町にはいっさい関わらないことは確定だろう。

 マグマに耐えられるんだから魔瘴くらいどうってことないだろうし。

 水の不安に関しては町の人が可哀想だから、魔石装着式の水魔法錬金杖を高額で売りつけようか。


「あの……」


 ん?

 今度はなんだ?


「本当に国王様を拉致したんですか?」


「おい!」


「……すみません」


 勝手に話が終わったようだ。

 でもよくそんな質問してこれたな……。


「俺がそんなことする人間に見えます?」


「「……」」


 こんなに堂々とカツ丼食べてる人間が言っても全く説得力はないだろうが。


「むしろ俺が前国王やラシダさんたちにハメられてる可能性は誰も考えてくれないんですかね? 三人が協力して俺を犯人に仕立て上げようとしてると考えたほうがまだ納得できると思うんですけど」


「「……」」


 ってこの二人に言っても仕方ないか。


 ん?


 誰かが階段を下りてくる音が聞こえる。

 ……三人か。


「ご苦労。二人は上で休憩していいぞ」


「「はっ!」」


 衛兵隊長が二人に声をかける。


 後ろには大臣と水道長もいっしょのようだ。

 そして大臣が前に出てくる。


「牢屋の居心地はどうだ?」


「悪くはないですよ。レア袋の持ち込みも許可してくれたみたいですし」


「それはまだ君が犯人だと確定したわけじゃないからだ。だからといってあまり好きにされるともう少し厳しい処置をしなくてはならなくなる」


 カツ丼のことを言ってるのか?

 それともクッションか?

 ってカツ丼だよな。


「すみません。今日は早朝からずっと歩きっぱなしだったので少し気が緩んだだけです。モーリタ村からここまで結構距離ありましたからね。ずっと魔物と戦いながらでしたし」


「「「……」」」


 俺はほぼ戦ってないけどな。


「……今から取り調べを行う」


 取り調べか。

 本格的になってきたじゃないか。


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