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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第六百十七話 拉致疑惑

 火山が噴火する前の日の夜のこと。

 国王であるカイロは秘密の部屋で調べものがあるといって寝室を出ていった。

 妻のサイダはそのことを特に気にせずに先に就寝した。


 そして翌朝、あの噴火が発生した。

 そのとき寝室にカイロの姿はなく、城内を探しても見つからなかった。


 だから避難指示は全て大臣が出した。

 午前中にはなんとかほぼ全町民の避難が完了した。

 運悪くも噴火により飛んできた石に当たり亡くなった人もいた。


 避難が完了したあとも地下遺跡に国王カイロの姿は見当たらなかった。

 午後になり、補佐官は前国王であるハミドから話があると言われた。


 そしてハミドから火山の秘密を明かされた。

 ハミドは火山の地下にダンジョンがあることや、マグマスライムという強敵がいることも知っていた。

 それは国王だけに引き継がれてきた話で、ハミドの妻であるエシェも知らなかった。


 そして国王がいなくなった日、ハミドは現国王カイロに初めてその話をしていた。

 なぜ今まで教えなかったかというと、カイロの転移魔法陣の腕が未熟だったからだそうだ。


 それでも現水道屋においてカイロは転移魔法陣、水魔法ともいまだトップに近い実力を持つ。

 だがハミドの転移魔法陣には、現水道屋の誰も到底敵わない。

 なぜならハミドは現水道屋で唯一、人が通れる転移魔法陣を使えるからだ。

 そのことは妻のエシェと現国王カイロだけが知っていた。


 カイロに火山の秘密を教えたあと、ハミドは秘密の部屋に入った。

 もちろんネックレスを借りて。


 目的は二つ。

 一つはピラミッドへ繋がっているであろう転移魔法陣の解析。

 もう一つは、封印魔法を維持するための魔道具の確認。


 転移魔法陣の解析については思わしくなかった。

 ハミドも昔からずっと考えてきてわからなかったものが今になってわかるとは思っていない。


 封印魔法への変換魔道具については、カイロに見に行かせることにした。

 ハミドが行かなかった理由は二つ。

 大ピラミッドまで遠いということと、正式にカイロに全ての引き継ぎを行ったからとのこと。

 秘密の部屋と、その奥の部屋の二つの転移魔法陣はハミドが接続した。


 そしてカイロが確認しに行ったのが一昨日の夜。

 そのあとに噴火が発生。

 カイロがなにかしたことが原因で魔道具から封印魔法維持のための魔力供給がとまり、噴火が発生したと考えるのが自然だ。

 だが魔道具に直接触れる必要はないことや、魔道具自体は安全な場所にあるため、ハミドはなにがあったか想像がつかないと言う。


 話は一旦そこで終わった。


 だがそのすぐあと、水道長から報告があった。

 報告といっても噴火に関することではなく、水道屋の仲間がこの前地下遺跡でなにか小さな動物のようなものを見たという報告だった。

 しかし、その動物は凄く速く、目で追えなかったという。


 補佐官サイダはピンときた。

 ロイスが連れてた魔物に違いないと。


 そこでラシダを呼び出した。

 ラシダはあっさりと認めた。

 自ら白い鳥の魔物を地下遺跡に招き入れ、中を見せたという。


 するとその場にいたサイダのもう一人の娘、ラシダの妹でもあるライサが口を開いた。

 実は自分も魔物使いの魔物であるスライムとリスを二匹ほど招き入れたと。

 ラシダと同じようにこっそり中を見せたと。


 一見なにも関係ないように思えるが、その二日後に噴火が発生しており、さらに国王まで行方不明とあってはロイスたちを疑わざるを得なかった。


 サイダは立場上、その事実を無視することはできないため、仕方なくラシダとライサを神殿の牢屋に入れることにした。


 そして前国王であるハミド、その妻であるエシェも同じく牢に入れられることになった。

 ハミドがロイスと共謀し、国王を誘導した可能性があるとされたからだ。

 エシェは夫が入るなら自分もと言って自ら牢屋に入った。


 ラシダとライサは魔物使いロイスと前国王ハミドに利用されたか脅されていた可能性が高いという意見があったものの、二人が自ら招き入れたという主張を変えないため、同じく共謀罪とされた。


 つまり悪の根源は魔物使いロイス。


 おそらく火山の噴火の罪を全て国王カイロになすりつけようとしたものだろう。

 なぜそんなことをしようとしたのかは不明だが、補佐官との折り合いが悪かったことはみんなが知っている事実であり、その復讐でナミの町を滅ぼそうとしたのかもしれない。

 それが国の上層部、そして衛兵隊や水道屋のトップたちが集まっての会議で出た結論だ。



◇◇◇



 おいおいおいおい……。


 なんだか話が少し飛躍しすぎじゃないか……。


「つまり俺が事前に魔物たちにこの地下遺跡を調査させて、ハミドさんを使って国王をこの先の転移魔法陣の先、地下通路に誘き出し拉致したってことでいいですか?」


「……そうです」


 いやいやいやいや……。

 そうですじゃないんだよ……。


 むりやりすぎないか?

 それに最初はその封印魔法の魔道具の状態を確かめに行った国王のせいで火山が噴火したと思ってたんだろ?

 なのにちょっと魔物たちが地下遺跡を見せてもらったからって全ての首謀者が俺になるのはおかしいだろ……。


「補佐官さんもそう思ってるんですか? 俺があの会議で少しばかりイライラしたせいで、町の人々ごとナミの町をマグマで焼き尽くしてしまおうと思ったと?」


「……いくつかの事柄を組み合わせると、その可能性が完全にゼロとは言えませんから」


「でもこの先にはネックレスを持った一人しか入れないんですよね?」


「それはロイスさんたちならモーリタ村からのダンジョンを踏破することも可能だという意見もあったものですから……」


 あ、なるほど!


 俺たちの強さならあの程度のダンジョン余裕だと思ってくれたわけだ!

 三日前の午後にここを出てからすぐモーリタ村に向かい、ダンジョンに入って次の日の夜までに地下通路に到達すれば犯行が可能ってことだな!?

 確かにできなくはない!

 それに卑怯な俺のことだから、ダンジョンの外から穴掘って一気に中盤に侵入することだってあるかもしれない!

 それならさらに時間に余裕を持って国王を待ち伏せできる!


 ってバカなのか?

 全部俺が事前に火山ダンジョンのことやピラミッドの地下通路のことを知ってなければできないことだろ?

 それなら最初にここに来たときに全部話してるだろ。

 そんなことも考えられないほど頭が回ってないのか?

 ラシダさんや妹さんが主張を変えないのも俺たちがそんなことをするわけないって信じてくれてるからだろ?

 というかメタリンとタルに地下遺跡を見せてくれたの妹さんだったんだな。


 あ、前国王のオアシス爺さんのことは知らん。

 やっぱり俺たちに隠し事してたんじゃないか。

 しかもとんでもなく重要なことを。

 なんか怪しいと思ってたんだよ。

 あの爺さんのことはもう絶対に信用しないからな。


「で、俺たちを捕まえてどうする気ですか?」


「……容疑が固まれば、一生牢屋に入っててもらうことになるかもしれません」


「ほう? 俺を一生牢屋にですか」


「……」


 ヤバいヤバい……。

 そんなこと言いながらすぐに死刑にされてしまうんじゃないだろうか……。


 というかそれ以前に俺の魔物たちが黙ってない気がする……。

 それこそダルマンさんや爺ちゃんが懸念してたことが起きるかも……。


 でも完全に冤罪だよなこれ?

 怒っていいのかな?


 ……いや落ち着け。

 これくらいで怒ってたらキリがない。


「わかりました。俺を捕まえたいというのならおとなしく捕まりましょう。でもその前に、地下遺跡にはナミの町の人が一万人近く避難できたと考えていいんですか?」


「……はい」


「このままここで暮らしていくんですか? それとも仮住居用のピラミッドで生活するんですか?」


「……ピラミッドで」


「避難したみなさんは食事をとれてるんですか?」


「非常用の物ならほんの少し」


「それはいけない。今俺たちの仲間が食料用ピラミッドで食事を作ってます。もちろんみなさんのために」


「「「「え……」」」」


「食料はピラミッドに備蓄されてた物を使わせてもらってます。移動するためにトロッコという乗り物も準備しました。お年寄りや子供を優先して乗せてあげてください。ですが住居用ピラミッドのほうはまだ中を確認できてません。ピラミッドに入るには転移魔法陣を接続しないといけないものでして、みなさんを食事会場に案内してる間に確認しようと思っていましたから。まずはみなさんの避難と食事を最優先にしようと思い、そこの転移魔法陣の解析に入ったわけです。それに前国王が捕まってるのなら転移魔法陣を使える人はいないということでしょう? 蛇口程度の転移魔法陣じゃ話になりませんよ? だから今俺の後ろにいる方々を案内役として連れていってください。この中に転移魔法陣のスペシャリストがいますから。それとトロッコの運転は衛兵の方にしてもらいたいのですが、その運転方法を教える説明役も必要です。食事を作ってる仲間への紹介や、入ってはいけない転移魔法陣などの説明も必要でしょう。知らずに転移するとその先に魔物がいる場所もありますから。それと今ほかの仲間が、ここに来るまでに通ってきたピラミッドから比較的近い場所の地中を掘って地上まで道を作ってくれてます。モーリタ村から応援を呼ぶのに必要ですし、もしこの場所からすぐにほかの町に避難したいという方がいたときの場合にも必要ですからね。だから足が速い魔物たちも現状を知らせるための連絡係としてそちらに向かわせてください。決して戦うための応援を呼ぶわけではなく、避難したみなさんを助けるための応援です。つまり俺以外はみんな避難者のために必要な人たちなんです。ですから捕まえるのなら俺一人だけでお願いします。あ、そういえば息子さん、ラシッドさんパーティも地上で作業してもらってますよ? 俺たちといっしょにダンジョンに入ると言って聞かなかったんですが、実力的に未熟だと判断しましたので地上に置いていくことにしました。無事に道が繋がれば真っ先にここに来ると思います。俺たちの無実も証明してくれるといいんですが、彼らがモーリタ村にやってきたのは今朝のことですので難しいかもしれませんね。とにかく今最優先すべきは俺たちのことより町の人々の食事や安心できる住まいですよね? 地下遺跡がどんな場所かは知りませんが、さすがに仮住居用として造られたピラミッドのほうが住み心地はマシでしょう。それとそこの転移魔法陣からすぐに国王を探しに行くべきでは? 俺が犯人だとしたらそんな簡単に見つけさせるようなことはしませんけどね。で、どうします? 実質俺一人だけを捕まえるという一択ですが。全員捕まえたいのであれば、残念ですが先日に続きまた交渉決裂とさせていただきます。そのときは俺たちは全員でここから、そしてピラミッドからも出ていくという選択をしますが、どうしてもというのであれば相手になりましょう。そちらもお怒りでしょうし、俺たちも濡れ衣を着せられたままでは気分が悪いですからやるなら本気でやりましょう。一般の方には手を出したくはありませんが、攻撃してきたら身を守るために反撃はさせてもらいますし、衛兵隊と水道屋の方々が全滅することになってもこっちの知ったことではありません。たった数人の俺たちに負けるようではどうせこの先ここで生活なんかできっこないでしょうから」


「「「「……」」」」


「あと数時間もすれば噴火から丸二日経ちます。慣れない環境と地震のせいで睡眠を満足に取れてる人なんてほとんどいないでしょう? こうしてる間にも体力はどんどん失われていってるんです。早く判断されたほうが町の人のためかと思いますけど」


 すぐ後ろにいたダルマンさんにボネとワタを渡す。

 封印魔法を使うことにはならなかったな。


「ホロロ!」


 ワタはなにかを察したようだ。

 着実に成長してるな、うん。

 でも攻撃はするなよ?


「どうしますか?」


「…………ロイスさんを、ロイスさんだけを捕らえて……ください」


「「「「……はっ」」」」


 衛兵たちは弱々しく返事した。

 そして俺に近寄り、俺の両腕を掴んでくる。


「……すみません」


 補佐官さんは下を向いてボソッと呟いた。

 捕まえる相手のことくらいしっかり見たほうがいいぞ?


「歩け。あっちだ」


 なんだか本当に捕まったような気分だ。


 って本当に捕まったのか……。


 今あんなことを話しながらも、頭の片隅では牢屋に入れられることはないだろうと高を括ってたのに。


 そして生まれて初めて牢屋に入った。


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