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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第六百十話 ピラミッド⇔ナミの町

 広い場所まではそんなに遠くなかった。


 だが広さと転移魔法陣の数に全員が驚かされることになる。

 どちらも予想してた以上の数倍はあったからだ。

 おそらく左側にある転移魔法陣は食料用ピラミッド、右側にある転移魔法陣は住居用ピラミッドへと繋がるものなのだろう。

 数が多いということは、もしかしたら階層が多いということなのかもしれない。


「カトレア? ……大丈夫か? カトレア?」


 あまりの転移魔法陣の数に眩暈でもしたのか、目を瞑って動かなくなってしまった……。


「……さすがにこれ全部を検証してる時間も魔力もないだろう。このあと地下遺跡前には大きな転移魔法陣があるということだし、それに備えてある程度は魔力や体力を残しておかないといけない」


 みんなが頷いてくれる。

 この時点で住居用ピラミッドの中の確認は後回しにすることで決定した。


「カトレア、こっちの食料用ピラミッドのすぐ上に繋がってそうなやつだけでいいからさ? う~ん、たぶん一番近いこれだ。みんなもそう思いますよね?」


 当然のようにみんなも頷いてくれる。

 カトレアにかかる負担の大きさはこれまでも十分に理解してくれていたことだろう。


「ホロロ」


 俺の腕に抱かれていたワタが、カトレアを慰めるように前足で優しく触った。


「……わかりました。これですね」


 そしてカトレアはしゃがみ込み、調査に入った。

 ワタをカトレアの横に置いてやると、ワタはカトレアの足に擦り寄るようにしてから座った。


 さて、ここはカトレアに任せて、次の準備をするか。


 確か以前にナミの町での会議のときに聞いた話では、ナミの町から一番近いこのピラミッドまではラクダで歩いて五分と言ってたはず。

 この道は砂漠ではないから、人間が歩いたとしても五分とはいかないまでもそこまで時間はかからないだろう。


 だが避難者は体力的に限界かも知れない。

 ここまで歩いてくるのが困難なお年寄りだっているだろう。

 地下遺跡にはラクダも避難してるかもしれないが、馬車はないはずだし、なにより一万人もの人がいる中でラクダの取り合いになってはいけない。


「幸いにもここからナミの町への道はそっちの横の道よりも広く作られています。おそらく人が一気に移動することを想定していたのでしょう。というわけで、トロッコを使います」


「「「「えっ?」」」」


 ダルマンさん、ガボンさん、デルフィさん、アリアさんは頭に『?』を浮かべてる。

 アリアさんは昨日一度その言葉を聞いてるはずだが。


「これです」


 レア袋の中から魔力プレートレールとトロッコを取り出す。

 あ、魔力供給システムもか。


 高台で使おうと思ってたやつよりかは小さめのトロッコだ。

 この道は多少広いとはいえ、片道一人用トロッコの幅を2レーン作るので精一杯だろうからな。


 動いてるところを見せるために、レールをいくつか繋げてみることにした。

 歩きながら追加のレールを次々と取り出していく。

 以前撤去したときに、また使うことがあるかもと思い解体は最小限にしておいたからそれなりに長い距離で繋がってる状態のレールだ。

 決して全部解体するのが面倒だったわけではないぞ?


 さすがに大樹のダンジョンかとマルセール間の距離に比べたら、ここからナミの町までのほうが遥かに短いだろう。

 とりあえず50メートル程度にしておくか。

 急いでみんなの元へと戻り、運転用トロッコの後ろに一人乗り用トロッコを二つ繋げる。

 そして魔力供給システムをレールに接続し、魔石をセット。


 魔力が導通してることを確認し、運転用トロッコに乗り込んだ。


「じゃあアリアさん、後ろに乗ってください」


「……はい」


 アリアさんがおそるおそる乗り込んだところで、まずはゆっくりとした速度で出発した。

 これから徐々に速度を上げていこうと思ったらもうあっという間に終点だ。


「なかなか便利でしょう? もっとスピード出ますよ?」


「いやいや……便利すぎませんか?」


「以前はこれで大樹のダンジョンからマルセールまでの地上の道を移動してたんです。メロさんに運転手をお願いしてたんですけど、従業員の送り迎えだけで一日に何往復もしてもらってましたよ、はははっ。まぁ短い寿命でしたけどね」


「こんな素晴らしい物を使わないなんてもったいなくないでしょうか?」


「今は魔道列車がありますからね。それにこれを町中で走らせるのは危ないですから」


「なるほど。でもこの場所だとなんだかしっくりきますよね」


「そうでしょう? 高台の道で走らせても面白いと思いません? 二列で座れて屋根付きのトロッコもあるんですよ?」


「そのアイデアはいいと思いますけど、さすがに外は魔物もいますから危険ではないでしょうか……」


「ですよね~……。まぁナミの人たちも結局モーリタ村に避難せずにすみそうですし、今となってはレールを設置しなくて正解でしたよ。カトレアに怒られずにすみましたね、ははっ」


「あ……私は乗りたい派ですけどね……」


 気を遣ってくれてるようだ。


 でもまだ実際に町の人の声を聞いたわけじゃないからな。

 この町から避難したいと言う人が五千人以上いたら高台にトロッコを設置しようと思う。

 ミニ大樹の柵は設置してくれたはずだから、封印結界を張らなくても今ならまだある程度は大丈夫だろう。


 そんなことを考えながらトロッコの向きを変える。

 そして来た道をトロッコで戻り、トロッコから降りた。


「このレールをここからナミの町まで一周繋がるように設置します。トロッコは十個くらい繋げましょうか。運転手は俺とダルマンさんとガボンさん……いや、ガボンさんはやめときましょう」


「……俺が乗れそうなやつないか?」


「あるにはあるんですけど、トロッコの幅が広くなるとここでは危ないですから……」


「……すまん」


「でも人がいない今は大丈夫ですから、このあと向こうに行くときに乗ってみてください」


「あぁ。楽しそうだ」


 ふぅ~。

 やはりみんな乗ってみたいと思うよな。

 大樹のダンジョンにできたときも冒険者たちから乗せろという要望が凄かったもんな。


「カトレア、どうだ?」


「……ここにあるものは先ほどの出入り口と同じく相互通行の転移魔法陣でした。今ボネちゃんに封印結界張ってもらったところです。では接続してみます」


 カトレアは転移魔法陣を描いた。

 すぐに転移魔法陣に光がともった。

 マグマが溢れてくるようなことはなさそうだ。


「……大丈夫なんだよな?」


「はい。メタリンちゃん、お願いします」


「キュ! (行ってきますです!)」


 メタリンは上の階層に転移していった。


 メタリンの度胸も大概凄いよな……。

 転移先になにがあるかもいるかもわからないのに。

 むしろ先陣を任されることを楽しんでるようだ。

 ウェルダンがいたら同じように行ってくれたのだろうか。


「キュ! (ただいまなのです!)」


「お? 早いな」


「キュ! (かなり広い空間なのです! マグマも魔物もいないのです! ただ広いだけの空間なのです!)」


「へぇ~。とりあえず行ってみるか」


 そして全員で転移した。



 ……うん、広い。

 天井も結構高い。

 でも外から見たピラミッドの形とは全然違う。

 柱もたくさんある。

 そりゃ支える物がなけりゃあんな形の建物は作れないか。


「これ、この上もありますよね?」


 ダルマンさんに聞いてみる。


「だろうなぁ~。でもこれだけ広かったらとりあえずはここだけで十分だと思うけど」


「ならあとでリヴァーナさんたちに土魔法でテーブルやイスを作ってもらいましょうか」


「うん、それがいいと思う。まぁこの地面の上で食事にすることになっても文句言う人なんかいないと思うけど」


「じゃあもしリヴァーナさんたちより早く来るようなことがあればそうしてもらいましょう。あ、カトレア、厨房との接続も頼む」


「はい」


 そして厨房との転移魔法陣を接続してメンデスさんたちに声をかける。

 調理担当の四人はすぐに転移してきて、この広さに驚きの声をあげ、またすぐ厨房に戻っていった。

 調理が忙しいのだろう。


「さて、じゃあ今度こそナミの町へ向かいましょう」


 とりあえずはメタリン馬車で、俺とカトレアとアリアさんの三人だけが行くことになった。

 もちろんボネとワタもいっしょだ。

 その間にダルマンさんにはトロッコの運転の練習をしててもらう。


 俺は馬車の最後方に乗り、途中まで設置したレールの続きを設置しながら進むことにした。

 まぁ全部繋がってるからレア袋から出すだけだけどな。

 メタリンはゆっくり進んでくれているので、レールがずれないようにだけ注意しながら置いていく。


 五分ほどで行き止まりに着いた。

 馬車の後ろから降り、先に降りていたカトレアたちに合流する。


 ……大きいな。


 行き止まりの壁には、今まで見たことがない大きな転移魔法陣が描かれていた。

 そしてその転移魔法陣はかなり明るい光を放っていた。


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