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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第六百七話 進化した魔物たち

 目が点になるとはこういうことか。


 誰もが呆然とワタを見ていた。


 ワタ自身も最初は自分の背中を思わず二度見してた。

 それからは首を右に捻ってみたり、左に捻ってみたりして何度も背中を確認してる。


 御者席の二人も、後方にいる二人も、外を見ることなくワタだけを見ていた。

 みんなが目を真ん丸にして。


 ただカトレアだけは微笑んでいた。

 まるでこうなることはわかっていましたよとでも言わんばかりに。


「ホロロ!」


 ワタの背中から翼が生えた。


 まだ小さいワタにピッタリの小さな翼だ。

 ワタの成長と共に翼も大きくなっていくのであろう。


 そりゃカトレアやゲンさんは骨格的に翼が生えてくる可能性は高いとか言ってたけど、まさかこんな突然生えてくるなんて誰も想像できないだろ。

 まだ出会って数日で、まだこんなに小さいのに。


「ワタちゃん、お腹空きませんか? ご飯食べますか?」


「ホロロ!」


 ワタはカトレアが用意した肉を食べ始めた。

 なんだか凄く元気になってる気がする……。


「ミャ~(あれたぶん食欲増進効果とかもあるのよ。私も飲んだ後いつもお腹空くからね。みんなもいつも以上に食べてるし)」


 だからなんでそれを俺が知らないんだよ……。

 仲間外れにされた気分だからしばらくカトレアと魔物たちを会わせないようにしてやろうかな……って冗談だから睨まないで……。


「ロイス君」


「……なんだ?」


「見てください。背中の針というか毛が少し伸びました」


「え?」


 マグマハリネズミを見てみる。


 ……伸びたのか?

 長さまではよく見てなかったから正直わからん……。

 左半分の毛が伸びてきたとかならすぐわかるんだが……。


「本当だな。効果はあるんだろう、うん」


 適当にそう言っておいた。

 カトレアも満足そうにしてるからその答えで正解だったんだろう、うん。


 ワタは相変わらず肉に夢中だ。


「ロイス君」


「なんだよ?」


「ワタちゃんに出会ったことは偶然ではありませんよ」


「ん? どういうことだ?」


「ワタちゃんとロイス君は出会う運命だったんです。じゃなければワタちゃんだけがあの場で生き残っているなんてありえないでしょう。ロイス君が砂漠であのルートを選択したのも、ワタちゃんがロイス君を呼ぶ声が聞こえてたからなんです。アオイ君があの荒野地帯が危険だという情報を事前に入手できなかったのも、ロイス君とワタちゃんが出会うための運命によるものです」


 なんだよその妄想話は……。

 図書館にある小説の読みすぎじゃないか?

 そういう話ならララとマリンに聞かせてやれよ。

 それとリヴァーナさんにも。


「ボネちゃんとの出会いもそうです。初めからロイス君に出会うという運命があったボネちゃんとダイフク君だけ、リヴァーナさんの攻撃が当たらずにすんだのです。じゃなければ巨大化した何十匹の魔物たちを葬り去るほどの威力の魔法の中で子猫ちゃん二匹だけが生き残れるはずがありません。それは偶然ではなくて必然、つまり運命だったのです」


「ミャ(運命……偶然じゃなくて、運命……)」


 おい?

 そんな話を鵜呑みにするなんてボネらしくないぞ?


 ……ん?

 なぜかアリアさんとデルフィさんも頷いてる……。

 これ以上カトレアを調子に乗せたらダメだって……。


「そしてみなさん、聞こえますか?」


 なにが?


「……このハリネズミちゃん、呼吸がはっきりと深くなってきました」


「「「「えっ!?」」」」


「そうです。こっちの世界に戻ってきたんです」


「「「「おおっ!?」」」」


「もう大丈夫です。安心してください」


 本当だろうな?


 ……確かにさっきまでとは少し違う。

 普通に寝てるようにしか見えないな。


「もちろんこの子もロイス君と出会うべくして出会いました。そしてみなさんに囲まれる前から既にロイス君に助けを求めてたんです。悪い魔物じゃないことを必死に伝えてたはずです。なのにロイス君はすぐに気付いてあげられませんでした。ロイス君だけにはこの子の声が聞こえていたはずなのに気付かなかったんです。自分は戦わないからと、完全に気を抜いてたんですよ。そのせいで運命は一度遠ざかっていきました。全部ロイス君が悪いんです。普段怠けてるつけが出たんです。体の怠けよりも頭の怠けが原因です。でもまぁロイス君もまだ腰の怪我が治ったばかりですから許してあげてください。帝国では痛い目に会ってますので魔物に恐怖意識があったこともあります。今後はこのようなことがないようにするはずですので。そうですよね? ロイス君」


 ……え?

 全部俺が悪いのか?


 ……あ、そういうことか。


「みなさん、すみませんでした。カトレアの言うように、最初に攻撃する前から俺にはこのマグマハリネズミの声が聞こえてました。でもビビッてたこともあり、誰かなにか喋ってるな~としか思ってなかったんです。攻撃の打ち合わせをしてるのかと思ってました。俺のせいでこいつにはもちろん、みなさんの心にも傷を作ってしまったかと思います。本当に申し訳ありませんでした。このお詫びはウチに帰ってから必ずさせていただきます。ですから俺がみなさんに対して申し訳なさを感じないようにするためにも、できればさっきの戦いのことは忘れてください。魔物使いとして非常に恥ずかしいんです。俺のたった一つの能力でもあり取り柄でもある、魔物の声を聞くということができなかったわけですから……。魔物使い失格と言われても仕方ないんです……」


「「「「……」」」」


 ふぅ~、このくらいでいいか。


 おそらくカトレアはみんなに責任を感じさせないようにするために運命とか言い出したんだろう。


 でも俺が気付いてやれなかったのは紛れもない事実だ。

 『やめて』と聞こえたときに、とめに入ってればここまでのことにはなってない。

 俺はこいつに恨まれるだろうか。

 少なくとも俺の仲間になんてなりたくはないだろうな。

 もしかすると人間のことが嫌いになったかもしれない。

 というかいつからここに一人でいたんだ?

 フィリシアが死んでから誰も来てないとかはさすがにないよな?

 まだフィリシアが囲ってたと決まったわけじゃないけど。


 でもなぜ大樹のダンジョンに連れていかなかったのだろうか?

 やはりルーカスが仲間の魔物を亡くして悲しんでたからか?

 もう魔物を仲間にするのはやめたとか言われたのだろうか。


「あの……」


 ん?

 御者席からヒューゴさんが声をかけてくる。


「着きましたけど、どうしますか?」


「え? もう着いたんですか?」


 ……確かに馬車はとまってるな。


「はい、先ほど。少し声をかけづらいお話をされてましたので……」


「そうですよね。では一旦馬車から降りましょうか」


 そしてカトレアが転移魔法陣の調査に入る。

 マグマハリネズミは馬車の中で眠ったままだ。


「おそらくもう小ピラミッドまで来てると考えていいと思います」


「お~? じゃあもうピラミッドの下にいるんですね。深さは変わってませんか?」


「上りになってたようには感じませんでしたし、おそらく地下二階の深さと考えて良いのかと。この先も同じ天井の高さだと地下一階かもしれませんけどね」


 地下遺跡は火山ダンジョンでいう第一階層にあり、モーリタ村から火山までのダンジョンは第二階層。

 地下遺跡から大ピラミッドまでの道の下には排水用水路が流れてる。

 ということはこのまま進めば今いるこの深さのところに排水用水路があるはずだ。

 まぁそれを考えたところで特に意味はないが。



 それから五分ほどでカトレアの調査は終了した。

 なんの変哲もない一方通行の転移魔法陣だそうだ。

 距離は5メートルだから魔力消費もたいしたことない。

 そしてカトレアは転移魔法陣を発動し、まずメタリンが一匹で転移していった。


 メタリンは十秒ほどで戻ってきた。

 もちろんそれはもう一つの転移魔法陣で戻ってこられるかをただ確かめただけだ。


 再び転移していき、そのあとメタリンが戻ってきたのは五分後。

 なにやら興奮してる様子だった。


「キュ! (食べ物がたくさんあったのです! とんでもない量なのです!)」


「落ち着け。魔物はいなかったか?」


「キュ! (全くいないのです! たぶん魔瘴も存在してないのです!)」


「そうか。馬車は出せそうか?」


「キュ(出せるとは思うのです。でもここみたいな道というよりかは通路みたいになってて狭いのです。それに階段もあったのです)」


 なら馬車はやめとくか。


「さて、とりあえず魔物が向こうに入らないようにこの転移魔法陣の周りを魔道化しましょうか」


 いよいよピラミッド突入か。

 少しワクワク感があるな。


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