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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百八十六話 砂漠の絶景レストランにて

 馬車にはカトレアとメネア、そしてワッサム夫妻が乗っていた。

 もちろんワタもいっしょだ。


 すぐにワッサムさん夫婦は持ってきた料理を取り分け始めた。

 みんなに料理が行き渡ったところで、待ちに待った昼食会のスタートだ。

 みんな腹ペコだっただろうからな。


 でも改めて考えると、今凄い場所で食事をしてるんだよな。


 ここからは砂漠が一望できるんです。

 山々の景色を楽しむことだってできます。

 そしてなんといっても目玉はあの火山から流れるマグマ。


 ……うん、こんな感じの触れ込みで宣伝したらどんどん客が集まってきそうだ。


「なに考えてるんですか?」


「壁を全面透明の魔力プレートに変更した場合のことだよ」


「魔物が壁にぶつかってくる様子を見たいんですか? それとも魔瘴を見ながら食事をしたいんですか? どちらにしても悪趣味ですね」


「なっ……俺は今の外の景色を想像してるんだって……」


「あのマグマを見て気分がいい人なんていません」


「……」


「ゴ(ついでにさっきのこと報告していいか?)」


「やめてくれ……」


 既に怒られてるようなもんだろ……。


 カトレアは相変わらずの疲れと寝不足と暑さで機嫌があまりよろしくなさそうだ。

 それなら村で待っとけば良かったのに。


「なんですか?」


「いや別に……」


 こわい……。


「お嬢さん、そんなムスッとしてたらせっかくの可愛い顔が台無しだぞ」


 ダルマンさんが会話に入ってきてくれた。

 このテーブルには俺とカトレア、それにダルマンさんとあとは魔物たちがいる。

 ダルマンさんは村人よりも俺と話すことを選んでくれたようだ。

 おそらくみんなは俺がダルマンさんからダンジョン内のことについて話を聞くものだと思ってる。


「カトレアです。初めまして」


「あぁ、これはご丁寧にどうも。俺はダルマン。ロイス君とは彼が十歳のときに会ったことがあるんだよ」


「そうでしたか。まずはご無事でなによりでした」


「ありがとう。もしかしてあの手紙を書いてくれたのはカトレアちゃんかな?」


「そうですけど、よくおわかりになられましたね」


「口調がそのままだからな、はははっ」


 怒らせないように気を付けてくれよ……。


「ところでダルマンさん、体調に異変とか感じていませんか? 例えば、右腕が痛いとか」


「え?」


 こいつまた勝手に人の体内の魔力見て……。

 すっかり癖になってるな。


「……確かに今右腕には力が入らない。でも痛みはほとんどない」


「その力の入らない状態がどれくらい続きますか?」


「今は少し無理したあとだから、たぶん丸一日はこんな感じかな」


「なるほど。エーテルとかってお飲みになられますか?」


「いや、飲まない。俺は飲んでもあまり効果が出ない体質でさ」


「そうなんですね。では今私にかかってる補助魔法が目で確認できますか?」


「いや、できない。俺の魔力は右腕にしかなくてさ」


「やはりそうですか。なかなかに珍しい特異体質をお持ちのようですね」


「それを一目見ただけでわかるのは凄いな……」


 うん、凄い凄い。

 そして実に羨ましい、うん。


 というか右腕にしか魔力がないって言ったか?

 そんなの初めて聞いたぞ……。


「魔力を使わなければ大丈夫なのではないですか?」


「う~ん、でもあったら使いたくなるだろ?」


「それはそうですね。ちなみにどんな魔法が使えるんですか?」


「力強化系の補助魔法だ。それしか使えない」


「どの程度持続できますか?」


「節約しながらであれば三日から四日かな。もちろんずっと使ってるわけではないけど」


「長いですね。その魔法によって得た力をどういう使い方してるんですか?」


「盾を持つために使うんだ」


「盾? その力強化魔法を使わなければいけないほど重い盾だと?」


「あぁ。こっちの袋に入ってるから見てくれ」


 ダルマンさんはカトレアにレア袋を渡す。

 そしてレア袋の中から盾を取り出し、テーブルに立てかけた。


「……これは大きいですね」


 いや、デカすぎだろ……。

 なんだよこの盾……。

 立った状態でも人が一人すっぽり隠れられるデカさだろ……。

 一人どころか縦になれば二人や三人は前から見えないんじゃないか……。


 ってそのためにこんなデカい盾を持ってるのか。

 重さはどうなんだ?

 ……重い。

 それにかなり分厚くないか?

 こりゃ力強化魔法が必要になるわけだ。


 ……ってそうじゃなくて、力強化魔法が使えるからこそのこの盾か。


「ロイス君も質問があればどうぞ」


 いや、別に俺に振らなくてもいいんだけど……。


「持ち運ぶために魔法が必要になるんですか?」


「もちろんそれもあるけど、敵の攻撃を盾で受ける瞬間にも使ってないと盾の重さに押されることもあるから」


 体の線はそこまでガッチリしてるわけじゃないもんな。


「自らの体を鍛えようとはしないんですか?」


「これでも鍛えてるつもりなんだけどな。これ以上は筋肉をつけるのが難しいんだ」


「鍛え足りないだけではないんですか?」


「厳しいな……。まぁ俺もそう思って色々な修行をしてきた。でも今が一番バランスが取れてる気がするんだよ。まぁなにもしなければ筋肉も体力もすぐ落ちていくけどな、ははっ」


 なんだそれ。

 そりゃ魔法の力に頼ってばかりで体を鍛えるのをサボってたら体がなまるのは普通だろ。

 自分がキツイ修行と思ってるだけで、実はたいしたことないんじゃないか。


「一種の呪いですね」


 カトレアちゃん?

 なに言ってるんだ?

 呪いは誉め言葉じゃないからな?


「いい意味での呪いです」


 悪い意味にしか聞こえないからな?

 呪いだぞ?


「呪いと上手く付き合うことさえできれば、それと引き換えに大きな力を手に入れることができますから」


 呪い呪い言いすぎだからな?

 さすがに注意したほうがいいか。


「だからこそ今みなさんから認められるほどの実力をお持ちなのでしょう?」


 え?

 つまり上手く付き合えてるってことか?

 本当に、いい意味での呪いだと?


「……もしかして俺のこと、グラネロさんから聞いてたのか?」


 グラネロさんときたか……。


「いえ、私はお会いしたことがありません。ですが私の仕事は知識をより多く必要とするものでして、その中で偶然ダルマンさんのような症状をお持ちの方の事例を耳にしたことがあっただけです」


「カトレアちゃんは回復魔道士なのか? それとも浄化魔法が使えたり?」


「魔道士で言いますと攻撃魔道士タイプになりますが、私の本業は錬金術師です」


「錬金術師か……なるほど。でもなぜ錬金術師のカトレアちゃんがこんな危険な場所に来てるんだ?」


「私は大樹のダンジョンの従業員ですから」


「従業員? 錬金術師なのに?」


「ダルマンさんはここ二年ほどの大樹のダンジョンの進化を知ってますか?」


「噂では少し聞いてる。でも正直、今の俺が行って満足できるようなダンジョンではないとも思ってるから詳しくは知らないな」


 実際モーリタ村のダンジョンに出る敵のほうが強いしな。


「そうですか。まぁ私のことや大樹のダンジョンについての話はまたいずれ。それより、その呪いを制御できるようになるまでずいぶん苦労されたんじゃないですか?」


「あぁ。ずっとどうすればいいかわからなかったんだ。そんなとき婆さん……バビバ婆さんが一度大樹のダンジョンに行ってこいって言ってくれたんだよ」


「なぜ大樹のダンジョンに?」


「回復魔道士が多く集まってきてるだろうから、もしかしたらなにかしらこの症状に関する知識を持っている人物に出会えるかもしれないってな」


「で、その人物に出会えたと?」


「あぁ。でもその人は回復魔道士どころか魔法も使えない人だった」


「魔法が使えなくても知識は得られますからね」


「そうだな。その人も俺から症状を聞いて本で調べてくれてた。実際に過去に似たような話を聞いたことがあったらしい」


「その人というのが、グラネロさんだったわけですね」


「あぁ。グラネロさんは本当に色んなことを教えてくれたよ」


 へぇ~。


 って絶対ドラシーだろ……。

 俺と同じで爺ちゃんに魔力のことなんかわかるはずないからな……。

 まぁ似たような事例を聞いたことがあったのは本当かもしれないけど。

 というかカトレアもドラシーから聞いてたおかげで知ってたんじゃないか?


「ん? ちょっと待ってくれ。従業員ってことは普段は大樹のダンジョンにいるんだろ?」


「もちろんです。私は大樹のダンジョンに住んでますから」


「それならグラネロさん……いや、ロイス君のお爺ちゃんのことを知らないわけないだろ?」


「私はお会いしたことがないと言っただけで、知らないとは言ってません」


「どういうことだ? …………え? 嘘だろ?」


 ダルマンさんはなにかに気付いたとばかりに俺を見てくる。

 察しがいいじゃないか。


「爺ちゃんは二年前に亡くなりました」


「……」


 それを聞いたダルマンさんは左手で顔を隠してしまった。


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