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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百八十五話 モーリタ村最強パーティのリーダー

 行き止まりとなってる前方の端から村人たちが馬車に向かって続々と走ってくる。

 そして四人の無事を確認して安心しているようだ。

 三人が寝てるということもあって一応静かにはしてくれてる。


 というか下の壁はちゃんと最後まで強化してきたんだろうな?

 山側の人たちはまだやってるぞ?

 四人に早く会いたいから適当にしたとかだったらゲンさんからのお仕置きが待ってると思えよ?

 ほら、そこで休憩してるんじゃなくて早く戻ったほうがいいんじゃないか?


 ……みんなもう今日の作業は終わったって感じの顔してるな。


 アリアさんはベンチをたくさん出し、みんなに飲み物を渡している。

 リヴァーナさんとミオは休憩を切り上げ、山側の作業に加わったようだ。


 さて、村で何回か名前は聞いてたんだが、今の村人同士の会話の中でようやくこの四人の顔と名前が一致した。


 このリーダーの人はダルマンさん。

 だが名前と顔が一致したところで俺の記憶はよみがえってこない。


 六年前に来てたとなるとまだそのころは初級者だったってことなのかな?

 確かにそのころから受付の手伝いはたまにしてたはずだから、毎日来てくれてた人なら少しくらいは覚えてるはずなんだけど。

 でもモーリタ村出身の人がそんな年齢まで初級者なんてありえないだろうし。

 本当に俺と会ったことあるんだろうか。


「無事だったかい。今回ばかりは完全に死んだと思ってたよ」


 バビバさんもやってきた。

 ということは作業はちゃんと終わってたってことか。


「婆さん、地図見てくれたか? あのパーティと比べてどうだ?」


「……まだもう少しだけ追いついてないと思うよ」


「……そうか。今回もダメだったか」


 あのパーティというのはバビバさんが言ってた最も奥まで進んだパーティのことだろうか?


「あやつらと比べる必要なんてないと言ってるだろ。それにこの子のたちのおかげでダンジョンの最奥の秘密もわかったんだよ」


「秘密? どういうことだ? 火山の地下までダンジョンが続いてるということならもう聞いたぞ?」


「あとで話すが、まだ言ってないことがあるんだ。とにかく、あんたの想像以上に魔瘴が拡がってたから今はもうダンジョン内へ入ることを禁止にしたんだよ。それに加えてあの火山の噴火だ。ナミのやつらも無事かどうかわからない。だから今はまず状況を整理しな。どうせあんたのその右腕、しばらく使えないんだろ?」


 右腕?


 ……鎧の下にインナーとかも着てるみたいだし、見た目ではわからないが骨折とかしてるんだろうか。

 言われてみるとさっきから全く動いてないような気もする。

 まぁ座ってるのにわざわざ手を動かす必要もないかもしれないけど。


「……そうだな。今は火山のことが先か。この道だってナミの町の人たちを助けるために作ってるんだよな? じゃあロイス君は噴火を知ってこの国に助けに来てくれたってことか」


「いえ、そういうわけではないんですけど」


「ん? ならなにしに? それより魔物使いがこんなところに来ててダンジョンは大丈夫なのか?」


 ん?

 なんか気になる言い方だな。


「もしかしてあんた、この子のことも知ってたのかい?」


「あぁ。六年前に一度会ったことがある。ロイス君は覚えてないようだけど」


 一度?

 たった一日ってことか?

 それなら覚えてないのが普通だと思うが……。


「六年前って、まだ小さい子供が覚えてるわけないだろ」


 そうだ、よく言ってくれた。


「そうかなぁ? でも家に泊まらせてもらったし、あのとき結構話もしたと思うんだけどな~」


 なんだと?

 家ってウチのあの家ってことか?

 当時泊まりに来たことがある人なんてそうめったにはいないぞ?

 というか泊まりに来たことがある人なんていたのか?

 爺ちゃんといっしょにマルセールで飲んで、そのまま宿に泊まったのを勘違いしてるとかじゃないか?


「いや、本当だって。妹もいるだろ? 確か名前は……ルルちゃんだっけ?」


「ララです」


「そうそう、ララちゃんだ。あ、俺が大樹のダンジョンに行ったことがある話はこのパーティメンバーと婆さん以外には内緒で頼むな? 一応世界を旅してくると言って出ていったもんだからさ」


 なんだよその面倒な設定は……。

 村の人たちがウチのダンジョンを敵視してるわけでもあるまいし。


 でもララのことまで知ってるということはウチに来たことがあるのは本当かもしれない。

 ほかの村人はララの存在をまだ知らないだろうしな。


「妹なんていたのかい? まさかその子も魔物使いとか?」


「違います。ララはウチのダンジョンの総支配人です。俺よりかなりしっかり者で頭もいいですから経営面は全部ララに任せてます」


「「へぇ~」」


「ちなみに俺の四つ下なんで十二歳です」


「「え……」」


 この反応が面白いんだよなぁ~。

 このネタもあと数年しか使えないとなると残念だ。


「でも経営って、入場料の管理だけじゃないのか?」


 あ、この人はまだ最近のウチのことを知らないのか。

 それなのに驚いてくれたんだな。

 ララが俺よりもだいぶ小さかったことも知ってたはずなのに。

 いい人なのかもしれない。


「あんたも今の大樹のダンジョンの話を聞いたらきっと驚くよ。でもそれはあとにしな。どうやら冒険者たちのほうの作業も終わったようだ」


 火山のほうからみんなが歩いてきてる。


「このあとどうする? 村の者たちの今日の一番の目的は達成されたけど、ここまで来たんだからみんなあんたらにとことん付き合うつもりだよ?」


「それはありがたいです。でもちょうどお昼ですし、とりあえずここで一旦食事休憩にしましょうか。今ピピとメタリンが村に食事を取りに行ってくれてますから」


 みんなのためにワッサムさんが作ってくれてるであろう料理を食べないのはもったいないからな。

 この距離ならすぐに帰ってくるだろ。


「四人は村に戻られますか?」


「いや、ほかのみんなといっしょでいい。と言ってもこの三人は寝てるし、俺もなにも手伝えそうにないけどな」


 やはり怪我してるのか?

 さっきから痛そうな感じは全く見せてないけど。


「あ、この右腕な、魔法というか魔力を使いすぎるとその反動でしばらく全く力が入らなくなるんだよ」


「え? 右腕だけですか?」


「あぁ。これでも昔に比べるとだいぶマシになったほうなんだけどな。昔は魔力を数分使っただけで、一日は重いし痛いしでなにも手につかなくなってたんだ」


「そこまでなんですか……」


 右腕だけ魔力が枯渇したような状態になるってことか?

 そんなに強力な魔法が使えるんだろうか?


 でもこの人戦士じゃないのか?

 あ、村の戦士って意味じゃなくて。


 ……いや、数分って言い方をしたか。

 それだとなにか強化系の補助魔法のような感じなのかな。


「ロイス君! お腹空かない!?」


 リヴァーナさんがみんなの声を代弁するかのように言ってくる。


「今ピピたちが料理取りに行ってますのでもう少しお待ちください。あ、その前に、このあたり一帯を壁で囲ってもらってもいいですか? 休憩中まで敵や火山のことを気にしたくないですから。それに暑いところでご飯食べるのも嫌ですし」


「わかった! ミオ、道の端に適当に撒いて!」


「うん」


 そして二人はあっという間に大きくて頑丈な囲いを作り上げた。

 道の前方後方には馬車が通れる程度の大きさの入り口がそれぞれある。

 これじゃ馬車がすれ違うのは無理だが、今はこれでいいか。

 今後使うとしても馬車がすれ違うほどの往来がある道でもないかもだし。


 そしてみんなの手によってテーブルとベンチが設置されていく。

 完全に食事会場に変貌してしまったな……。


 でもここでこのままお店とかやったら面白そうだ。

 砂漠のオアシスに対抗して、砂漠のレストランと名付けようか。


 そういや国境のオアシスもマグマのせいでもうなくなってたりして……。

 あの元国王の爺さんたちがオアシスに戻ってたかどうかはわからないが、あそこからならサハに避難できてるだろう。


「ゴ(やはりリヴァーナの土魔法のほうが凄いかもしれん……)」


「ゲンさんは魔道士じゃないし、ゲンさんの土魔法は硬くて小さな石を作り出すことが目的なんだから気にしなくていいよ」


「ゴ(お前また俺をバカにして……。あとでカトレアにチクるからな)」


「は? それは卑怯だぞ。カトレアなんか魔物の味方しかしないんだからゲンさんが俺を見てなにか言ってたら絶対俺に怒ってくるじゃないか……」


「ゴ(そのつもりで言うんだから問題ないだろ)」


「おい……」


 ん?

 馬車の音がする。


 あ、メタリンが馬車を引いてやってきた。

 御者席にはピピとボネがいる。


 馬車がとまり、俺を見つけたボネは即座に飛び降り俺の元へと走ってきた。


「ミャ~(結構火山の近くまで来たわね)」


「気を付けろよ。ボネはほんの欠片みたいな石が当たっただけでも死ぬかもしれないらしいからな」


「ミャ(脅かさないでよ……)」


「それより馬車に乗ってるのはボネだけか?」


「ミャ(カトレアたちもいるわよ)」


「え……」


「ゴ(ちょうどいいな)」


 全然良くない……。


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