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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百八十三話 援護射撃

 ラシッドパーティの四人は無言で歩き続けている。


 ゲンさんは相変わらず地面を均しながら歩いており、一定距離進むと立ち止まって地面に手をつけ地中がしっかり堅くなってるかを確認している。


 ゲンさんがとまると四人もとまる。

 ゲンさんが歩き出すと四人も歩き出す。

 一応前は見えてるみたいだな。


 ナスリンさんがメネアから聞いた内容は、火山の地下にはダンジョンがあってその最深部にはマグマスライムというボスがいる。

 そしてそいつが火山の元凶だということだった。

 それを聞いてほかの三人に報告するために慌てて飛び出してきたらしい。


 それだけではまだ全容を理解してるとは言えないから、日記を読んでもらうことにした。

 そして歩きながらアーミアさんが日記を声に出して読んだ。


 今はまだみんな頭の中を整理することでいっぱいいっぱいのようだ。


「ゴゴ(おい、しっかりしろ。下のやつらがいなかったら火山から飛んできた石が確実に当たってるぞ? それにほら、山側を見ろ。空にはオアシスガンの群れ、山からリカオーンの群れが下りてきてる)」


 ゲンさんがなにか言ってる。

 って感じるだけなんだろうな。

 言葉が通じないってのは不便だ。


 先に下に声かけておくか。


「ヒューゴさん! 山からリカオーンの群れが来てます! それと空にオアシスガンの群れも!」


「わかりました!」


 さっきから見ててもナミの冒険者三人はやはり強い。

 視野も広いし、今すぐウチに来ても地下四階まですんなり到達できるだろう。

 あと一人メンバーを加えれば地下四階でも十分に戦える。


 でも村人戦士の二人は少し厳しいかもな。


 ウーメルさんはなんか剣の動きに無駄がある気がする。

 というか盾を使おうとしすぎじゃないか?

 守りから入ろうとするスタイルなのか、攻める姿勢があまり見られないんだよな。


 ヤシンさんは火と雷魔法を使えるようだが命中精度が低い。

 敵が動くことを考えて打たないと。

 狭いダンジョンの中ではある程度曖昧でも当たってたんだろうが、広い外となるとそうはいかないからな。

 普段からもっと外で戦闘経験を積んでおけばもう少し上達してたのかもしれないが。


 それと意外なのはプティさんがおとなしく壁の強化に努めてくれてることか。

 アオイ丸とシファーさんの指示もちゃんと聞いてるようだし。

 この人は剣より魔法のほうが合ってたりしてな。


「シファー、上から覗かれてるよ」


「え?」


 プティさんの声で上を向いたシファーさんと目が合った。


「……キミ、少し堂々と見すぎじゃない?」


「暑い中みんな凄いな~って思いまして」


「ロイス殿、これは報告案件でござるよ」


「なにがだよ?」


「まずカトレア殿に報告するでござるからな? 説教は覚悟しておくでござるよ」


「だからなんのことだよ?」


 ……あ。


「違う違う! そんなとこ見てないって! 作業を見てただけだから!」


 慌てて顔を引っ込めた。


 勘違いも甚だしいだろ……。

 でも確かにさっきのアングルだとそういうふうに見られてもおかしくないかも……。


「ゴ(危ないから道から顔をはみ出すなって言ってるだろ。それに作業中の真上には行くな。誤って土魔法が飛んでくるかもしれないぞ)」


「下の三人がひどいんだって。俺が上からシファーさんを覗き見してたみたいに言ってきたんだぞ?」


「ゴ(それはお前が悪い。まぁあいつの服装もどうかしてるとは思うが)」


「俺は悪くないって。そもそも戦場に行くのにあんな露出の多い服装なんて危険でしかないだろ」


「ゴ(あいつは戦闘する気はないから動きやすい慣れた服装でいいと思ったんだろ)」


「そうかもしれないけど、昨日とかだって普通の服だっただろ? それにウチに来てからはもうずっと普通の服着てるとこしか見たことなかったし」


「ゴ(なら今のがあいつにとっての正装みたいなものなんじゃないか?)」


「正装? ……ナミに水の補充に行ってたときみたいな気持ちってこと?」


「ゴ(そこまではわからん。ただ暑いだけかもしれないがな)」


 暑いだけのような気がしてならない……。


 それよりこの四人はどうしようか。

 ラシッドさんとアーミアさんはナミ出身でしかも元水道屋だからほかの人以上に思うところがあるんだろうな。

 こういうときこそドーハさんとナスリンさんがなにか声かけてやればいいのに。


「シファーさんすぐ下にいるんですよ? 声かけなくていいんですか?」


「……今はそんな空気じゃないのわかるでしょ」


 ナスリンさんが睨んでくる。


 こっちの空気か下の作業中の空気かどっちのことなんだよ。

 俺とゲンさんがこんなに話してるのも少しはこの空気を和ませようと思ってのことなんだからな?


「ゴ(おい、少しオアシスガンの相手してやれ。数が多い)」


「了解」


 あいつら上空から鋭い水魔法使ってくるから厄介なんだよな。

 まぁ所詮Fランクだからこっちの攻撃さえ当てることができればすぐに倒せるけど。


 立ち止まり、剣をオアシスガンの群れに向ける。

 どうやら下に気を取られてて俺が狙ってることには気付いていないようだ。

 少しでも敵が多く重なる瞬間を狙って…………今だ。


 ……うん、五匹は倒したんじゃないか?

 もう少し狩っておいたほうがいいか。


 …………お?

 今度はさっきより多く倒せたな。


 どれ、もう一発……あ、たった三匹か。


「ゴ(気付かれたぞ。邪魔されても面倒だから一気に撃ち落とせ)」


「はいはい」


 なら連続で攻撃するか。


 あ、俺に向けて水魔法放ってきた。

 その程度の水でララの炎に勝てるわけないだろ。

 どんどん攻撃してやる。


 …………よし。

 一掃できたんじゃないか?


「ゴ(今度は砂漠側だ。村人のやつらポイズンサソリの大群に苦戦してて東から来るオリクスとガゼルンの群れにまだ気付いてない)」


「どこだよ? ……あれはまだ少し遠くないか? さすがに魔法が届かないと思うけど」


「ゴ(そうか。なら俺がやる)」


 ゲンさんは土魔法で少し大き目の石を作り出した。

 そしてそれを右手で持ち、大きく振りかぶって魔物の群れを目がけて思いっきり投げた。


 ……うわっ。

 群れの真ん中にポッカリ穴が開いた……。

 そりゃこんなの食らったらよほどの防御力がない限り貫通して即死だよ。


 残りの魔物たちはそれでもこっちに向かって来ようとする。

 仲間が死んでるのになにも感じないとはおそろしい。


 ゲンさんは続けて三発ほど攻撃を繰り出した。

 そして残りが少なくなったのを見て攻撃をやめた。


「わざわざ投げなくても魔法で飛ばせばいいのに」


「ゴ(お前が届かないとか言ったからだろ)」


「あ、そっか」


「ゴ(それに俺の場合こうやったほうが威力ありそうだしな)」


「力だけは誰にも負けないもんな」


「ゴ(おい……。いい加減俺も泣くぞ……)」


 ふふっ、それはぜひ見てみたい。


「それよりやっぱり魔瘴の影響がだいぶ出てきてるな」


「ゴ(あぁ。特に山側から魔物たちの音がザワザワと聞こえる気がする)」


「なんだよそれ……。早くしないとマズいな」


「ゴ(下の土魔法部隊に少しペースを上げるように言え。多少なら俺がフォローできるから)」


「わかった」


 そしてまず砂漠側にいるバビバさんに声をかける。


「……よくあんな遠くの敵を撃退できたね」


「ゲンさんが少し強めに石投げただけですから」


「……味方で良かったよ。バビームもだいぶ慣れてきたし、ペースを上げれそうだ」


 へぇ~。

 才能あるというのは本当なんだな。


 次に山側の人たちに声をかけた。


「……キミさ、よくそんな平然とした顔でいられるね」


「え? 覗いてるわけじゃないですって……。ほら、目線はアオイ丸に向いてるでしょ?」


「じゃなくて、さっきの攻撃」


「攻撃? あ~。ララの火魔法凄いでしょ?」


「キミの命中率にも驚いてるの」


「そりゃ一発でも無駄にしたら魔力がもったいないですから当然慎重になりますって」


「慎重になってる人があんなに連続でしかも全部的確に当てるなんてことできるの?」


「あれだけ数が多ければ当たる確率のほうが高いと思いますけどね」


「……あの二人よりキミがそこから攻撃してたほうがいいんじゃないかな?」


 あの二人?

 ……ウメールさんとヤシンさんのことか。


「プティさん」


「えっ!? なに!?」


「ウメールさんに盾を捨ててもう一本剣を持つように言ってみてください」


「えっ!? 二本持つってこと!?」


「そうです。鋼の剣をお渡ししますので。それとヤシンさんにはこの風魔法が付与された杖を渡してください。たぶんヤシンさんが持ってる杖の内部の魔力はぐちゃぐちゃになってるんですよ。これだと少しは制御しやすくなると思いますから。風魔法はおまけです」


 そして剣と杖を下に落とした。


「……うん! ありがとう!」


 素直にお礼が言えて偉いじゃないか。

 って普通のことなんだけどな。


 プティさんは二人の元へと駆け寄る。

 おそらく今俺が言ったことをそのまま話してるはずだ。


 すると二人がこちらを見てきたので軽く手をあげておく。

 ……なにもリアクションしてくれないのかよ。

 あれは俺のことを疑ってるな。


 だがウメールさんは盾をプティさんに渡し、それぞれの手に剣を一本ずつ持った。

 そしてヤシンさんはララの風魔法が付与された杖を手に取った。


 ……なんかウメールさんの後ろ姿からさっきより迫力を感じないか?

 はたから見たら剣を二本持ってるただただこわい人だけど。


 さて、吉と出るか凶と出るか。

 扱いにくそうだったら今度は大剣を渡してみるけどな。


 あ、向かっていく体勢に入った。


「うりゃーーーー!」


 そしてそのまま近くにいたレッドウルフに襲いかかっていった。


「「「「おおっ!?」」」」


 今までより身のこなしが軽い!

 二刀流に慣れるまではぎこちないはずの手と体の動きも非常に滑らかだ!

 まさかいきなりここまで使いこなせるとは!


 ウメールさんが盾でまず守りから入ってたのはおそらくこのあたりの魔物が強すぎるのが原因だろう。

 小さいころからいきなりこんな強敵を相手にしなきゃならなかったんだから、前衛としてはもう癖みたいなものだったんだろうな。


 というかレッドウルフもこんなにいっぱい出現してるのかよ……。

 この砂漠こわい。


「「「「おおっ!?」」」」


 ん?


 あ、ヤシンさんも攻撃に入ってるようだ。


 ……おおっ!?

 レッドウルフに次々と命中してるではないか!

 それに風魔法もなかなか強力!

 ってそれはララの魔法だから当たり前か……。


 でもなんかさっきまでと雰囲気が違う。

 急に自信がついたようにも見える。

 まぁ杖内部の魔力事情を知らなければ自信が持てないのもわかる気がするな。

 それが自分の実力だと思い込んでしまってても不思議ではない。


「ロイス! あんた凄いよ!」


 プティさんは壁際に戻ってきたようだ。


「二人の実力だと思いますよ。俺は武器を渡しただけですし」


「いや、見抜いた目が凄いんだよ! これならサボテン地帯にだって行ける!」


「それはもう危険だからやめたほうがいいですって。それより早く作業に戻ってください。早くしないと山からサーベルキャットの大群が押し寄せてくるかもしれないですよ」


「え……」


 サーベルキャットをこわがってるんじゃもう一生ダンジョンには入れないぞ。


 ……ん?

 気付いたらラシッドパーティの四人が隣にいた。


「あのウメールが……」


「ヤシンも覚醒したみたいですね……」


 ラシッドさんとドーハさんは二人の戦闘に見入ってるようだ。


「やはりララさんの魔法は凄いですね……」


「うん……これでも本人の魔法に比べたら威力落ちてるって話だったよね。でも管理人さんの剣が一番反則じゃない?」


 アーミアさんとナスリンさんが俺を見てくる。


「もう大丈夫ですか?」


「うん。管理人さんとゲンさんの攻撃見たらなんだかスッキリした。たぶんみんなも」


「それは良かったです。あまり色々なことを同時に考えないほうがいいですよ。まずは一番なにを優先したいかを考えるんです」


「そんなこと言われてもすぐには決められないって」


「それなら今はみんなと同じように村人四人パーティを救出することや、少しでもナミの町に近付くことを考えましょう。元々ナミの町に行くつもりだったんですよね?」


「うん。でもとりあえず今一番やりたいこと思い出した」


「え?」


 そう言うとナスリンさんは突然下に飛び降りた。


 ……上手く着地できたようだ。

 でもこの高さだぞ?

 骨折とかしてないだろうな……。


 だがナスリンさんは痛みなど全然なさそうに走り出し、シファーさんに勢いよく抱きついた。


「えっ!? ……あっ、ナスリンちゃん!?」


「シファー、相談事があるなら管理人さんよりまず私に相談するべきでしょ?」


「……うん。ごめんね。でも会いたかった」


「……うん。私も」


 また感動的な再会かよ……。


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