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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百八十話 噴火二日目の朝

 うん、よく寝た。

 安らぎパウダーの香りのおかげで地震も気にならずによく眠れた。

 大きな地震があってたとしても気付いてないかもしれないのは少しこわいけどな……。


 ……ゲンさんはいないようだ。

 たぶん外に行ったんだろうな。


「ホロロロロ」


「お? もう起きてるのか」


 ワタはゲンさんのベッドの上でゴロゴロ転がって遊んでいるようだ。

 こう見てるととても魔物には見えないんだけどな。


「ご飯食べるか?」


「ホロロ?」


 まだ言葉はわからないか。


 とりあえずワタを手に乗せ、部屋を出る。


「あっ、ロイス君だ」


「ロイス君おはよう!」


「おはようございます」


 すぐにミオとリヴァーナさんに会った。


「ホロロ!」


 やはりまだ威嚇するか。


「なにこの子!? 新しい仲間!?」


 あ、そういや初対面だったか。

 昨日ワタはずっとカトレアの部屋にいたしな。

 アオイ丸もワタのことまでは話していなかったようだ。


「仲間候補といったところですね。ご覧のように誰に対しても威嚇しますので」


「こわいこわい!」


 ワタは一生懸命にリヴァーナさんを引っ掻こうとしている。

 落ちるからあまり動くなよな。


 リヴァーナさんはそんなワタに自ら手を差し出したり引っ込めたりして楽しんでいるようだ……。


「ほら、ミオもやってみなよ」


「うん」


 勧めるなよ……。


 ミオも同じようにワタに手を近づける。


「ホロロ」


「あれ? なんかリヴァのときと全然反応違うんですけど~……」


「あ、もしかしてミオ今補助魔法使ってるか?」


「うん」


「じゃあそれだな。こいつ、魔法で体を覆ってる相手には怒らないんです」


「なにそれ!? 面白いねこの子!」


 面白いのかな……。


 すぐにリヴァーナさんは自分になにかしらの補助魔法をかけたようだ。


「あっ!? ホントだ!」


 今度は引っ掻くこともなく、ワタはリヴァーナさんの手に移っていった。


 相手が魔物であったとしても関係ないんだろうな。

 って魔物が俺たち人間になつこうとしてるほうがおかしな話だけど。

 こんなところを魔王に見られてたらどうしようか……。



 宿屋ロビーに行くと、既にヒューゴさんたちがいた。

 ナミ出身の三人パーティや、プティさんたち村人三人組もいっしょだ。

 まだ六時には少し早いのに。


 どうやらみんなは会話しながらストレッチをしているようだ。

 今日この九人はいっしょに行動するから交流を深めてるんだろうか。


「ロイスさん、ちょっと来てもらえますか?」


 振り返るとアリアさんがいた。


「おはようございます。なにかありましたか?」


「カトレアさんたちなんですけど……」


「まだ起きてませんか?」


「そうなんです。カトレアさんなんかテーブルの上で寝ちゃってますし……」


「あ~。夜中に錬金をしてるときにはよくあるんですよ」


 眠気と疲れと戦いながら限界まで錬金を続けてたんだろう。

 ピピやメタリンがなにも言ってこないということはまだみんな寝てるんだろうな。


 そして部屋に入るとティアリスさんがいて、静かにするように言われた。


 ……あ、シファーさんとマリ……じゃなくてメネアもここで寝ちゃったのか。

 同じベッドで二人仲良く寄り添うようにして眠っている。

 ピピとメタリンはその二人の頭の上で寝てるようだ。


 じゃあボネはどこにいる?


 ……いた、カトレアといっしょにテーブルの上だ。

 カトレアはボネを撫でながら寝ているようにも見えるな。


「どうする? というかなにしてたの?」


 ティアリスさんは小声で話しかけてくる。


「みんなで錬金です。とりあえずピピとメタリンを部屋の外に連れてきてもらってもいいですか? ロビーで待ってますので」


「わかった」


 さすがに女性二人が寝てるベッドに俺は近付けない。


 ロビーのテーブルで待ってると、ティアリスさんとアリアさんがそれぞれピピとメタリンを抱えてやってきた。


「ピピ、メタリン、起きれるか?」


 二匹を優しくさすりながら起こす。


「……チュリ(もう朝ですか)」


「……キュ(眠いのです)」


 どうにか起きたようだ。

 二匹とも昨日は疲れただろうからまだ寝足りないのかもしれない。

 それなのに昨夜はカトレアたちが心配だからと作業を見守っていてくれた。


「無理そうか?」


「チュリ(いえ、大丈夫です。お水ください)」


「キュ(ボネは休ませたほうがいいかもしれないのです)」


 ボネは無理か。

 代わりにメタリンをピピに同行させてもいいが、メタリンはレア袋を上手く扱えないからな。

 スライムの中には自分の形を自在に変形させることができるやつもいるがメタリンはそういうタイプじゃないし。


「チュリ(設置は私がやるのでメタリンは周囲の警戒をお願いします)」


「キュ(了解なのです。石の破片一つも見逃さないのです)」


 って俺が言わなくてもちゃんと役割をわかってるか。

 それにこのコンビで飛ぶのも慣れてるだろうしな。


「じゃあ頼んだぞ。あとから位置を変えるのは面倒だから真っ直ぐにな」


「チュリ(少しは多めに見てくださいね)」


「ズレてたらリヴァが壊して直すから速さ重視でいいよ!」


「チュリ(ではそれでお願いしますね)」


 リヴァーナさんがそう言うのならいいか。


「それはそうとカトレアたちの錬金はどうなったんだ?」


「チュリ(う~ん、完璧に成功とはいかなかったみたいですね)」


「そうか……。まぁ仕方ない」


 そんな簡単にはいかないか。


「チュリ(でもそこそこの物はできたみたいですから、実戦でも使えると思います)」


「そうなのか? 何本ある?」


「チュリ(まずは一本です。メネアちゃんが先にダウンしてしまったので二本目はとても無理でした。カトレアさんが言うにはメネアちゃんに錬金術は向かないかもしれないということです。シファーさんも試してましたが同じ感じでした)」


 いくら魔力が多かったり制御が上手いとは言っても錬金術となるとまた別物か。

 ユウナも杖の魔力安定化錬金に苦労してたもんな。


「こっちの作業はできそうか?」


「チュリ(大丈夫だとは思いますが、二本目を作ることを考えたらボネ同様に錬金に集中させたほうがいいと思いますけど)」


「わかった。ならシファーさんに頼むか。ティアリスさん、シファーさんだけを起こしてきてもらえますか?」


「うん」


「それとさっきテーブルの上に杖があったのに気付きました? あれも持ってきてください」


 ティアリスさんとアリアさんは走って部屋に向かった。

 すっかりコンビって感じだな。


 すぐにアリアさんだけが戻ってきた。

 どうやら杖を持ってきてくれたようだ。

 俺に杖を渡すとまた部屋に戻っていった。


「リヴァーナさん、外でこの杖の試し打ちしてきてもらっていいですか? 水魔法が使えるはずなので」


「えっ!? わかった!」


 リヴァーナさんは笑顔で宿を出ていった。

 ミオとグラシアさんもそれに続くように後を追いかけていった。


「話の流れ的に、シファーさんの水魔法を利用してカトレアさんが魔法付与錬金したってことですかね?」


 さすがにヒューゴさんは理解が早いな。


「いえ、シファーさんではなくてメネアです」


「メネア? まだお会いしていない方もいましたか。……ん? メネア? 過去の人物の方のことではないですよね?」


 あ、そうか。

 色々とややこしいな。


「マリッカのことです」


「「「「えっ?」」」」


「本当の名前はメネアなんです。そしてシファーさんの実の妹です」


「「「「えっ!?」」」」


 どっちに驚いてるんだろう?

 というかこのナミの冒険者たちや、村人三人組はシファーさんが砂漠の女神だったということに気付いているのだろうか?


「……待てよ。水魔法でシファー?」


「もしかして砂漠の女神様!?」


「嘘だろ!?」


 今気付いたようだ。

 ナミに住んでたのならさすがに知ってるか。


「そうです。本物の砂漠の女神様です。そしてその妹がマリッカ改めメネアです」


「「「えぇ~っ!?」」」


 三人はさらに驚いた様子を見せる。


「どうしよう……。俺昨日女神様にタメ口で話しかけちゃったんだよ……」


「俺も……」


「まだいいよ……俺なんて……。ダメだ、あとで本気で謝ろう」


 一体なにしたんだろうか……。


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