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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百七十九話 明日の予定

 みんなの食事が終わり、バビバさんが来たところで会議を始めることにした。

 大浴場に入っていく村人たちの視線が少し気になるがまぁいい。


「まずバビバさん、村人パーティの方々が生きていて良かったですね」


「あぁ。ありがとう。メタリンちゃんも」


「キュ(まだ明日まで生きてるとは決まったわけではないのです)」


 そうだな。

 喜ぶのはちゃんと救い出してからにしろってことだな。


「それでは明日の予定を発表します。明日のメインの目的は村人パーティ救出ですが、作業的に言いますとなんといっても地上での道路建設です」


「「「「道路建設?」」」」


「はい。ダンジョン内は危険ですし、砂漠の上も砂や魔物のせいで移動しにくいですので、地上から火山およびナミの町の近くまで高台の道を作ったほうが早いと思ったんです。この地図をご覧ください」


 ホワイトボードにはモーリタ村からナミの町付近までを拡大した地図が貼ってある。


「まずモーリタ村からこの印がある付近までやや北北東方向にほぼ一直線の道を作ります。この印は村人パーティが待機してると思われる場所です」


「そんなところまで行ってたんですね」


「あと少し進めばもう火山だよね」


 うん、その通り。


「そのパーティが作ってた地図を元に考えた推測ですのであくまで参考程度にしてください。この印地点の山の地下を掘り進んでダンジョンに到達することになりますが、バビバさん、よろしいですよね? ダンジョンを少し破壊することになるかもしれませんが」


「うむ。どうせそのあたりは人工的に作られたものだしな」


 そういう問題なんだろうか……。


「では道を作る手順を説明します。まずピピとボネが上空から土、石を大量に撒きます。あとは土魔法でガッチガチに固めるだけの簡単なお仕事です。少し実演してみましょうか」


 アオイ丸が地面の上にシートを敷く。

 そしてピピが目印となる大き目の石を置き、その上から土や小石を撒く。

 それをゲンさんがすぐに固め、高台の道のサンプルが完成。


「このくらいだと自分の土魔法で作り出したほうが早いと思いますが、これのもっと大規模なものとなるとみなさんの土魔法の土だけでは到底無理だと思います」


 魔力量の問題であって、別に実力不足だなんて言ってるつもりはないから誤解しないでくれよ?


「実際には先にまず大きな岩だけを設置していきます。そのあとに土と石が混ざったものを撒いていきますので、みなさんの作業はそれからになります。高さはこの村や外の猫たちの家がある高さでいこうと考えてます。道幅は5メートルくらいですかね。どうせなら広めに取っておこうと思います。もしかするとこの道を今後ナミの町とモーリタ村の人々が使うかもしれませんからね」


 いずれこの道にも魔物は出るようになるかもしれないが、砂漠を通るよりはマシだろうからな。

 最低でも馬車がすれ違えるくらいの幅は欲しい。


 さて、作業分担はどうしようか。


「作業は何手かに分かれてもらいます。う~ん、四手くらいですか? 高台の上、それと高台下の左右、それと後方から道をきれいに整備していく感じですかね」


「はいはい! リヴァとミオは上に行きたい!」


 積極的で実にいい。

 ミオの意見がどうなのかはわからないが。


「じゃあお二人は上でお願いします。ティアリスさんとアリアさんもいっしょにお願いしますね」


 改めて考えるとこのパーティ強そうだな……。

 しかもバランスがいい。

 ミオはまだまだこれからだが、今後の成長次第ではウチじゃ飛びぬけた存在のパーティになりそうなのに。

 今からでもパラディン隊を辞めてもらおうかな。


「リヴァとミオが高台の全体の基礎を作っていっていい? 全体を軽く固めて形作りをしていく感じでさ」


「ん? 高さと幅がある分、かなり広い範囲になりますけど、いけるんですか?」


「完璧に仕上げるんじゃなければ大丈夫だと思う。リヴァ昔ね、土魔法の精度を上げるために大きな岩場を崩してそれを元通りにするって修行をしてたんだよ」


「へぇ~? まさに今回と似たようなケースじゃないですか。なら速度を重視してどんどん進んでください」


「うん! 任せて! 高台下の人たちはちゃんと堅くしてきてね!」


 おそらくソロで修行してたときの話なんだろうが、これ以上は聞かないほうがいいな。

 でもゲンさんにお願いしようと思ってた役割をリヴァーナさんができるとなると、ゲンさんを仕上げに回せる分かなりいい強度の道ができそうだ。

 それにゲンさんよりリヴァーナさんのほうが作業早そうだから前を任せるのにも適してると思う。


「じゃあ高台下の山側の補強要員としてはマリッカとアオイ丸に行ってもらいますので、ヒューゴさんパーティ、同行お願いできますか?」


 マリッカの本当の名前の説明は今は省いておこう。


「わかりました。私たちのパーティは土魔法を使えない分、周囲の警戒に努めます」


「せっしゃは未熟なものでありますから……」


 未熟と言うが、ソロモンさんは火、雷、水、氷が使えるんだよな?

 しかもウチに来てから威力、精度とも順調に増してるらしいし。

 一つくらい俺にくれてもいいのに。


「それとそちらのお三方もいっしょによろしいですか?」


「あぁ、任せてくれ」


 ナミ出身の冒険者三人は村人パーティのことよりも早くナミの町に戻りたいだろうな。


「この高台の道によって山側と砂漠側が分断されることになりますから、山側は砂漠側に比べると魔物の出現数は少ないかと思います。ですが山のすぐ傍のことだけあって斜面になってたりすることもあるかもしれませんので注意してください。もしかすると大陸西側からの魔瘴の影響で魔物も増えてるかもしれませんし」


「それは厄介ですね。私たちもなんとか体力面だけでもこちらのお三方に付いていけるようにしないと」


 ヒューゴさんは年上の三人に謙遜して言ってるようだ。

 ヒューゴさんのことを知ってる側からすると、体力面には特に自信があるからこそ言ってるようにも聞こえるけど。

 ソロモンさんも最初に会ったときに比べるとだいぶ筋肉ついてきたもんな。

 魔法の修行だけじゃなくそういう基礎体力の修行もすることによっていい相乗効果になってるのかもしれない。


「アオイ丸もそれでいいな?」


「もちろんでござる。それはそうと、さっきから輪に入りたそうな三人組がいるでござるが」


 ん?


 ……またかよ。

 風呂に入りにきたんならさっさと行けよな。


「なにか用ですか?」


「……私たちもなにかできないかな~って」


「邪魔をする気ですか?」


「いやいや! ってさっき仲直りしただろ……」


 これくらいにしといてやるか。


「村の人たちにもやってもらいたいことがありますから、あとでバビバさんから聞いてください」


「私たちもこっちに混ぜてよ!」


 面倒だな……。


「私は土魔法使えるし! 砂漠の魔物とならウメールとヤシンも戦える!」


「あとでお願いするって言ってるじゃないですか」


「今お願いしてよ! あ、お願いというか私たちにも頼ってよ! あ、頼ってじゃなくて、私たちを下僕のように使ってくれていいから!」


 下僕って……。

 まぁ誰も怒らせることのない言葉を選ぼうとしてる気持ちは伝わってくるけど。


「バビバさん、どうしたらいいですか?」


「邪魔になるんじゃないかね」


「そんなことない!」


「プティ、お前にはこの場にいる者たちの力がわからないのかい?」


「そんなのわからなくてもわかってる!」


 どっちなんだ……。


「ならおとなしく村の者といっしょに行動しな」


「ヤダ! それじゃ今までとなにも変わらない!」


 ほう?

 自分を変えようとしてるってことか?


「そんなこと言ってもねぇ~」


 バビバさんは俺を見てくる。


「ウメールさんとヤシンさんでしたっけ? お二人も同じ意見ですか?」


「え……まぁ……」


 ウメールさんはやる気なさそうだぞ……。


「可愛い子がいっぱい増えてる……」


 ヤシンさんは話すら聞いてないんじゃないか……。


「この二人は村の人といっしょでいいから私だけでもこっちに入れてよ!」


「おい、それはないだろ。俺たち一応パーティなんだし」


「むしろこっちの女の子ばかりのパーティに入りたい……」


 三人は揉めだしてしまった。


 バラバラなパーティだな。

 個々の実力のことまではわからないが、これじゃサボテン地帯まで行けないというのもなんだか納得できてしまう。


「静かにしな! ……すまないね。こやつらは外に連れ出すから」


「いえ、こちらでお引き受けしましょう」


「……いいのかい?」


「えぇ。解散するなら早いほうがいいでしょうから」


「……頼んだよ」


 別に解散させたいってわけじゃないからな?


「ヒューゴさん、そちらの組に入れてもらってもいいですか?」


「もちろんです。見たところ私たちと同年代のようですし、同じ三人パーティですからね。こちらこそモーリタ村で生まれ育った戦士とやらの実力を勉強させてもらいますよ。管理人さんに刃を向ける度胸はおありのようですから」


「「「……」」」


 アオイ丸から聞いてたのか。

 ってプティさんが最初から剣を持ってたのは事実だが、実際には刃を向けられたのは宿屋のおばさんで、俺はプティさんに刃を向けた側なんだけどな……。


「バビバさん、高台下の砂漠側の作業は村の人たちにお願いしたいんですけど、やってくれますかね?」


「やらないと言ってもワシがやるから任せてくれ。でももしワシ一人だったらどうするんだい?」


「そのときはゲンさんとメタリンを傍に付けます。プティさんたちも」


「そうかい。こやつらでもいないよりはマシだしね」


「「「……」」」


 扱いが少し可哀想にも思えてきたな……。

 ウチの冒険者たちからも厳しい目を向けられてるし。


「俺とシファーさんは高台上でみなさんの後方から道整備をしていきますので。村人四人を救出できたら、そのあとのことはまたそこで考えましょう。でもなによりまずは自分たちの命最優先で動いてください。明日は日が昇るのと同時に作業開始します。なので六時には準備万端にしておいてください。では会議は以上です。お疲れ様でした」


 みんなはサッと立ち上がって部屋のほうに戻っていく。

 このあと風呂に入ってから、今日はもう寝るんだろうな。


 プティさんたちはバビバさんに言われ、ホワイトボードとさっき即席で作ったミニ高台道路をシートごと持って宿を出ていった。

 このあとまた食堂で会議をするんだろう。


 さて、俺も今日はさっさと寝るか。


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