第五百七十五話 ピピから聞き取り
ララがヒョウセツ村に旅立つことになった経緯をアオイ丸は知らないらしいので、その場にいたというピピから話を聞くことになった。
「チュリ(まずララちゃんが、ボネに戻ってきてもらってヒョウセツ村に行ってもらったほうがいいんじゃないかって言ったんです)」
うん、そこは俺と全く同じ考えじゃないか。
「チュリ(そしたらマリンちゃんが、ロイス君になにかあったら心配だからボネはロイス君の傍にいさせたほうがいいんじゃないかって言いました)」
「ミャ~(さすがマリン、わかってるじゃない)」
「チュリ(そのあとにマリンちゃんが、ララちゃんは行けないの? みたいに言ったんですよ)」
マリンの意見だったのか……。
「チュリ(そんな考えが全くなかったララちゃんは当然困惑してました。マリンちゃんは続けて、ララちゃんがモーリタ村でボネがヒョウセツ村に行くのが一番良さそうじゃない? みたいに言いました)」
「ミャ(前言撤回よ。なんで私がヒョウセツ村に行かないといけないのよ。私はこっちにいるんだからララがあっちに行ったほうが効率もいいじゃない)」
ボネはよほど行きたくないんだな……。
「チュリ(どちらにも行きたくないララちゃんはしばらく無言になりました。でもダイフクが、僕が乗せていくからいっしょに行こうよって言ったんです)」
「ミャ~(名案じゃない。やるわねダイフク)」
ダイフクのやつ……。
雪道で吹雪や魔瘴で視界も悪く、魔物の出現数も増えてる危険な場所に行くってわかってるんだろうな?
「チュリ(ララちゃんはそれからまたしばらく考えたあと、やっぱり人間もいっしょに行ったほうがいいよねって言って、ヒョウセツ村行きが決まりました)」
それは確かにそうだけど……。
でもララは大丈夫なのか?
魔物との戦いは避けられないんだぞ?
いくらこの前ナミまで行ったとはいえ、あのときはヒューゴさんたちが護衛にいたんだからな。
「チュリ(それとフランちゃんたちがシルバやダイフクの砂漠用の靴を改良してくれてました。雪道でも使えてましたし、今度のはちゃんと爪も装備できますから攻撃もできますよ)」
「本当か? それならまぁなんとかなるか……」
「チュリ(心配いりませんよ。ダイフクの背中にはララちゃんのほかにマカとタルも乗るんですから。フィールドの敵もそこまでは強くなさそうですし)」
「でも魔瘴の影響がどう出るかはわからないからな。クマが巨大化でもして襲ってきたらヤバそうだし」
「チュリ(雪フィールドでのララちゃんの炎のほうがこわいですって)」
それもそうなんだけど、一人ってのが心配なんだよなぁ……。
「船で出発したのか?」
「チュリ(いえ、時間的に今日はセツゲンの町にも着けないだろうからと、ボクチク村まで魔道列車で行ったあとはダイフクに乗って移動することを選びました。今日はボワールに宿泊し、明日朝一の船でスノーポートに渡るそうです)」
船でスノーポートまで送ってもらえば良かったのに。
でも魔物五匹といっしょとはいえ、一人で宿泊なんて大丈夫か?
一人で宿に泊まったことなんてないはずだしな。
それに十二歳の少女がペット五匹も連れて宿に泊まりたいなんて言ってきたら店の人はどうするんだろう?
ちゃんと泊めてくれるのだろうか。
こんなことになるんならボワールまでの魔道化作業をもっと早く進めてもらっておくんだったな。
……まぁ小屋は持っていってるだろうし、ララには封印魔法があるから余計な心配か。
「道に積もってる雪を全部炎で燃やし尽くして馬車で進むってことは考えなかったのか? 馬や冒険者といっしょにさ」
「チュリ(考えてましたけど、またすぐ積もるみたいですし、まずは封印魔法を優先するために魔物たちだけで行ったほうが速いからという理由でそれはなくなりましたね)」
「……そのほうが確実か。馬車は目立つから魔物にも見つかりやすくもなるし、馬が吹雪に耐えられるとも限らないもんな。それより、ララはモーリタ村に行きたいとは言わなかったか?」
「いっさい言わなかったでござるな」
「果物の魔物のことや猫たちのことは言ってないな?」
「もちろんでござる。ほかにも水魔法奥義やワタのことなど、ララ殿が少しでも興味を持ちそうな話題は避けたでござる」
ララがこっちに来たら果物を探すためにダンジョンに入るとか言い出しそうだからな。
それならまだヒョウセツ村に行ってもらってたほうが危険も少ないだろう。
……ん?
ヒョウセツ村?
そういやバビバ婆さんの昔のパーティメンバーが住んでるという噂があるのはヒョウセツ村だったっけ。
ララが大樹のダンジョンから来たなんて知ったら冒険者時代の嫌な記憶がよみがえるかもな。
もしかしたら避難に難色を示してるのもマクシムさんから色々とウチのことを聞いたせいかもしれないし。
面倒なことにならなければいいけど。
その前にまだ生きてるかどうかもわからないが。
「ピピ、明日の午後からはスノー大陸に向かってくれ」
「チュリ? (ララちゃんに合流ということですか?)」
「あぁ。ピピも寒いとこ得意だろ?」
「チュリ(苦手ではないです)」
「なら頼むぞ。ついでに調べてきてほしいこともある。あ、ここから真北に一直線に向かうんじゃなくて一度大樹のダンジョンに戻ってマリンに報告くれ。大樹のダンジョンに寄らないとしても真北だけは絶対にダメだぞ? 魔族領があるからな?」
「チュリ(わかってますよ。あんな魔瘴が濃いところになんて近寄りたくないですし)」
午後からとなるとララとの合流はヒョウセツ村になるかもな。
本当はリーヌにいるエマたちの元へも行ってほしいが、さすがに魔瘴の中を一匹では危険だ。
「もし明日中に無事封印結界が張れれば明後日の午前中にはまたこっちに戻ってきてくれ。もちろん大樹のダンジョンに寄ってマリンに報告してからな」
「チュリ(結構疲れそうな飛行ですね。寒暖差も激しくなりますし)」
「ミャ(風邪ひかないようにしなさいよ)」
自分が行かなくていいとなったら余裕だな……。
「ロイス君、そろそろ私たちにも説明を」
「あ、そうだな」
そしてカトレアとアオイ丸に今の会話の内容を話す。
ピピとボネはワタと遊び始めたようだ。
「……なるほど。ララちゃんが大丈夫というのなら任せましょう。エマちゃんたちはラスの作業が終了次第すぐに大樹のダンジョンに戻るでしょうし、三~四日の辛抱です。ウェルダン君が行く際に、帰りの護衛のためにEランクの冒険者パーティを2パーティほど連れていってもらったらいかがでしょうか?」
「そうだな。村には魔物と戦える人もほとんどいないって話だったし、そのほうがいいかもしれない。そういやララはメタリンを呼ぶって考えはなかったのか?」
「それもロイス殿と同じ考えで、狭いダンジョンやマグマフィールドではメタリン殿がいたほうがいいだろうとのことでござる。もしまだまだ動く予定がないようならすぐにウェルダン殿と交代してほしいとは言ってたでござるけど」
「さすがララだな。俺が考えることくらい簡単に想像できて当然か」
「二人は意思疎通ができてるでござるな。火山はお兄に任せるからヒョウセツ村のことは私に任せてって言ってたでござる」
「ピピ、ララのことは任せたぞ」
「チュリ~(ララちゃんからはロイス君を任されましたよ)」
なんだかピピのなすりつけ合いをしてるみたいだな……。
いい意味でだけど。
「そういえばずっとメタリン殿の姿を見てないでござるな」
「今ダンジョンに入らせてる」
「ダンジョン? ……ほかには誰がいっしょなのでござる?」
「メタリン一匹だ」
「……危険じゃないでござるか?」
「別に敵と戦うわけじゃないからいいんだ。メタリンにとっては逃げるだけなら一匹での行動のほうがいいみたいだし」
「それはそうかもしれないでござるけど……。目的はなんでござるか?」
「マグマの影響を調べてくるのと、この村の戦士パーティを見つけたら引き返すように伝えることかな。一応手紙を持たせてある。もし果物の魔物を見つけても無視していいとは言ってあるし。欲を出すとろくなことないからな」
「面目ないでござる……」
あ、別にアオイ丸のことを言ったわけじゃないのに……。
「……とにかく、メタリンの調査報告次第で地上から向かうかダンジョンから向かうかを決める」
「了解でござる。メタリン殿はいつから入ってるのでござる?」
「アオイ丸たちが出発したあとちょっとしてからだな」
「相当長い時間入ってるでござるな。メタリン殿ならもしかするとナミまで往復できるのではないでござるか?」
「この距離だけで考えると、なにも障害物がなく直線で走りやすい地面だったらとっくに二往復はできてるだろうな」
「そんなに速いでござるか……。でもまだ帰ってきてないということは、すんなりとはいってないってことでござるよな」
「そりゃダンジョンなんだからそう甘くはないだろう。とは言っても途中は人工的に作られた道だからそんなたいしたダンジョンではないだろうけどさ。メタリンもウェルダンに負けてられないと思ってきっと色々調べてきてるんだと思う」
それにしても少し遅い気がしてきたな……。
「ミャ~(ゲンさんがこっちに歩いてくるわよ)」
あ、そういやゲンさんはどこ行ってたんだろう?
「ミャ(あ、メタリンの声も聞こえるわね)」
ちょうど帰ってきたか。
ゲンさんは地下でメタリンの帰りを待っててくれたのかもな。




