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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百七十四話 マクシムの頼み

 マクシムさんからの手紙を読み終えた。


「ユキちゃん……」


 この手紙にカトレアは涙しているようだ。


「ミャ(仕方ないわね。ワタのついでに面倒見てやるわよ)」


 絶対お前より年上だからな?


「ユキちゃんじゃなくてユキ君かもしれないぞ?」


「女の子に決まってます。ですよね?」


「女性でござるよ」


 まぁ俺もそんな気はしてたけどさ。


「ということは本当にこのユキってスノーウルフがウチまで来たってことか?」


「そうでござる」


「ヒョウセツ村からだぞ? スノー大陸の端から端まで移動するのも大変なのに。それに海はどうやって渡ったんだ?」


「それはたぶん船に紛れ込んだんだろうとの予想でござる。それこそぜひピピ殿に聞いてみてほしいでござるよ」


「あ、ピピも会ってるのか。どうなんだ?」


「チュリ(海を凍らせて道を作って渡ってきたって言ってました)」


「は? 海を凍らせて渡ってきた?」


「「え……」」


「チュリ(氷魔法と水魔法を使えるようです)」


「氷魔法と水魔法……まさに今ここで必要としてる能力じゃないか……。というか会話もできるのか?」


「チュリ(少したどたどしい感じがしましたけどね。魔物と会話するのは初めてだって言ってましたし、当然話せる人間などいなかったでしょうから自分が話す言語に自信がないのかもしれません)」


「人間の言葉は理解できてたのか?」


「チュリ(それは問題なさそうです。ララちゃんの言葉にも頷いたりして答えてましたからなんとか会話が成立してた感じですね。ウチの子たちとは違って凄くおとなしい子ですけど)」


「ふ~ん。でも大樹の森にはさすがに入れなかったんじゃないか? どうやって気付いた?」


「パラディン隊本部の北にある魔物専用入り口のトラップに捕まってたらしいでござる」


「そんな……ユキちゃんごめんなさい……」


 謝るところじゃないから……。

 でも殺されなくて良かったじゃないか。


「悪い魔物じゃないってよく気付いたな」


「スタンリー殿が散歩中に発見したようでござるよ。なにか泣きそうな目で訴えてくるシルバ殿似の魔物がいるとララ殿に連絡してきたそうでござる」


「へぇ~。あの人意外に見る目あるんだな」


「お手柄です。いい魔物と付き合う良い例として、今後パラディン隊や冒険者のみなさんに伝えましょう」


 そこまでしなくても……。


「で、毛色が違うってどんな色なんだ? スノーウルフって普通は白毛だろ?」


「ユキ殿も白毛でござるよ。でも艶がある白で、光ってるようにも見えるのでござる」


「普通のスノーウルフと比べてみたのか?」


「もちろんでござる。どこか神々しさも感じたでござるな」


 ほう?

 そんなにきれいな白なのか。


「早く会いたいですね」


「そうだな。スノーウルフとシルバーウルフは親戚みたいなもんだよな?」


「スノーウルフはたくさんいますけど、シルバーウルフはレアです。というかロイス君の周りに集まってくる魔物がレアすぎるんです」


 レアって特別感があっていい響きだよな。


「シルバも喜んでたんじゃないか?」


「チュリ(自分と似たような種類の魔物が現れて困惑してる感じでしたね)」


「そんなもんなのか」


「ユキ殿のことも気になるとは思うでござるけど、今はヒョウセツ村のことが重要でござるよ」


「「あ……」」


 ついユキのことばかり気になってヒョウセツ村のことを忘れてた……。

 もう一度手紙を読んでみよう。



 ……ふむ。

 どこの村も似たようなもんだな。

 自分たちの目で魔瘴のこわさを感じないことには逃げる気になってくれないか。

 まぁ雪が凄いんじゃ村の外に出るほうが危険って思ってるのかもしれないけど。


「地図あるか?」


「準備するでござる」


 すぐにテーブルの上に世界地図が広げられた。


「縦の位置としてはモーリタ村とほぼ変わらない場所だよな。ということは今この村に迫ってきてる魔瘴と同じものと考えても良さそうだ。つまり本当にもうすぐそこまで迫ってるってことだな」


 あ、ちょうど真ん中にある魔族領もさらに魔瘴が増すことになるのか……。

 そこに住んでる人たちは大丈夫なのかな……。


「すぐ助けに行きましょう」


 え?

 ……ヒョウセツ村のことだよな。

 一瞬魔族領に行くのかと思ったぞ。


「ウェルダンたちはリーヌに行ったあとどうするって?」


「ララ殿たちはこの手紙を読んだあとだったでござるけど、ラスに向かうように指示が出たでござる。あ、ユウナ殿やシャルル殿たちは昨日にもう出発してたでござるよ。……チャチャ丸とジャジャ丸が引く馬車で」


 リーヌの作業が明日いっぱいかかるとして、明後日にラスまで移動。

 ユウナたちの作業次第では早ければ明後日中に終わるだろうが、その日に帰ってくるのは無理だろうな。

 ということはウェルダンが帰ってくるのは早くても三日後。


 じゃあメタリンに行かせるしかないか?

 でも砂漠と同じで雪の上じゃメタリンは上手く馬車を引けないかもしれないしな。


 あ、それならメタリンとウェルダンを交代させればいいか。

 メタリンには明日リーヌに行ってもらって、ウェルダンにはすぐにヒョウセツ村に向かってもらうのがベストっぽいな。


 ……でもメタリンは今こっちの貴重な戦力なんだよなぁ~。


「村の人口は?」


「五十人ほどでござる」


「五十人か。なら馬車五台でいけるか。村の規模も小さそうだな」


「どうします?」


「三日後か四日後にウェルダンに行ってもらう。それまでは耐えてもらおう」


「耐えるってどうやって?」


「まずはそのユキとシルバといっしょにボネを向かわせるのはどうだ?」


「ミャ!? (なんで私が!? 嫌よそんな寒そうなところ!)」


「封印魔法で村を守るってことですか?」


「そう。小さな村だからボネ一人でもなんとかなるだろ」


「ミャ~! (嫌って言ってるでしょ! それならユウナかエマを向かわせなさいよ!)」


「ラスはそれなりに大きな町らしいから結界も大規模になるかもしれないんだよ」


「ミャ! (ならララを行かせなさいよ!)」


「ララが行くわけないだろ。それにそんな危険なところに行かせるわけにはいかないし。そもそもウェルダンがいなきゃ馬車がないし。メタリンには対マグマ要員としてこっちにいてほしいし」


「ミャ!? (馬車もないのに私はどうやって行けって言うの!?)」


「ボネならシルバに乗れるから大丈夫だ。あいつ最近大きくなってきてるしな」


「……ミャ? (本気?)」


「そんなに嫌なら無理にとは言わないけどさ」


「……ミャ(ズルいわよ。私が行かなかったらみんな死んじゃうじゃない)」


「なら行ってくれるか?」


「……ミャ(仕方ないわね)」


「そうか。じゃあ頼む。ピピに乗せていってもらったほうが早く着くけどな」


「……ミャ(シルバで我慢してあげるわ)」


 高いところは苦手なようだ。


「じゃあ錬金は今日中に完成させてくれよ」


「失敗は許されませんね……」


 焦らせたくはないが、こうなってしまった以上仕方ない。


「ちょっと待ってほしいでござる」


「なにが?」


「ララ殿やマリン殿の意見も聞いてほしいでござる」


「ん? なにか言ってたのか? それなら先にそっちを言ってくれよ」


「ロイス殿がどう考えるかも気になったでござるからな。それにこっちは少し言いづらいことでござるし……」


「なんだよ?」


「……早い段階でユキ殿とシルバ殿、それにマカ殿とタル殿、ダイフクを向かわせることがまず決定したでござる」


「ミャ!? (ダイフクも!?)」


「決定? もうララが決めてたんなら早く言えよ……。じゃあマカはリーヌ組に同行はしてないんだな? タルやダイフクがここにいないのもヒョウセツ村に行かせるためなんだな?」


「そうでござる。色々と報告が遅れて申し訳ないでござる」


「それは謝らなくてもいいよ。遅れたって言ってもまださっきここに着いたばかりなんだし、あとで話すって言ってたし。でも今俺が考えてた時間は無駄だったってことだろ? 今はほかにも考えなきゃいけないこといっぱいあるんだからな?」


「すまんでござる……」


「ロイス君、温かいカフェラテでも飲んで落ち着きましょうか、はい」


 カトレアはカフェラテが入ったカップを差し出してくる。


 ……ふぅ~。


 砂漠で飲むカフェラテもいいもんだな。

 まぁもう夜で寒くなってくるし、ここは洞窟の中で昼間でも涼しいから砂漠って感じはしないけど。


「で、ララとマリンはその五匹を行かせてどうする気なんだ? まさかダイフクに馬車を引かせる気じゃないだろうな?」


「それはないでござる。とりあえずウェルダン殿待ちの数日を耐え忍ばせようとの考えでござるよ」


「俺と似たような考えだな。封印魔法は必要ないって?」


「なくても大丈夫かもしれないけど、あったほうがいいという結論になったでござる」


「なんだ、じゃあ結局さっきの俺の意見とほぼ同じじゃないか」


「……ララ殿も向かったでござる」


「ララ? ……え? ……一応聞くけど、向かったってどこに?」


「……ヒョウセツ村でござる」


「「……」」


 なんでそうなるんだよ……。


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