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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百七十三話 ボネ、錬金術修行中

 アオイ丸が戻ってきたところでプティさんとは別れ、宿屋に戻ってきた。

 バビバ婆さんにこのあとの会議に参加してくれということを伝えるためだけに食堂に行ったのに、プティさんがいたせいで思わぬ時間をくってしまった。


 宿屋に入るとミオは食事中のみんなの輪に再び加わった。

 俺とアオイ丸はそのままカトレアの部屋に向かい、軽くノックをして静かにドアを開け中に入る。


 ……錬金中か。


 ベッドの上ではピピがワタと遊んであげてるようだ。


「カトレアたちの周りの封印結界は大丈夫か?」


「チュリ(そんなに何回も確認しなくて大丈夫ですよ。というかこの封印結界があって良かったと思うときには中は無事ではすまないでしょうけどね)」


「それは仕方ない。宿に迷惑かけるわけにはいかないし」


「チュリ(そんな危険なことをやらせるなんてカトレアさんが可哀想です)」


「危険なんて知らなかったし……」


 俺はただ水魔法奥義が込められた鉱石をそのまま杖として使えるようにできないかって昨日チラッと言ってみただけだし……。

 それなのにこの鉱石が持つ魔力に耐えられずに錬金釜ごと爆発するおそれがあるなんて言われてもさ。

 それなら試さずに無理って言えばいいのに。


 今日一日かけてもまだ成果が出てないし、もう無理なんじゃないか?


 あ、カトレアに睨まれた……。


「ふぅ~。ボネちゃん、少し休憩しましょうか」


「ミャ~(ずっと休憩でいいわよ……)」


 ボネも朝からずっとカトレアに付き合わされてる。

 なんでもボネの念力と封印魔法を錬金術に活かせるかもしれないという話だ。

 カトレアがメネアの残した本や水魔法奥義の説明書を読んでる間などもずっと錬金の修行をさせられてたようだ。


「ミャ~(ようやく少しコツを掴めてきたって感じね)」


「チュリ(ボネには錬金の才能もあるのかもしれませんね。天才ですね)」


「ミャ~(そ、そんなことないわよ。というかなにが楽しいのよこれ……。さっきからカトレアがニヤニヤ笑ってるのよ……)」


 ボネは天才と言われ一瞬嬉しそうな反応を見せたが、残念ながら錬金術には全く興味がないようだ。


「カトレア殿、コーヒーでござる」


「ありがとうございます。アオイ君は気が利きますね」


 まるで俺が気が利かないやつみたいじゃないか……。

 あ、また一瞬睨まれたし……。


「……順調なのか?」


「えぇ。ロイス君の構成案とボネちゃんの能力があれば理論上は問題ありません。あとは私の腕次第でしたがそれもなんとかなりそうです」


「ミャ~(カトレア、錬金釜の中では私以上に念力みたいな力使ってるのよ……。ハッキリとは見えないけど、なにか凄いことしてそう……。錬金術師ってとんでもないわね)」


 ボネにここまで言わせるとは……。


 コーヒーのお供に饅頭でも出しておこう。

 あ、すぐ食べた……。


 錬金に集中してるときには水分を取るだけでほとんどなにも食べない日だってあるからな。


「……ミズダッコ料理持ってこようか?」


「今は結構です。この饅頭のような甘いものを欲してましたから」


「それは良かった……」


 ここに来るときにミズダッコを焼いたやつを持ってこようかとも考えたが危ない危ない……。


「あともう一つですね」


「え? ほかに甘いものなにがあったっけな~」


「違います。錬金の話です」


「あ、そっちか……」


「アオイ君がウチから持ってきてくれたユウト君作の杖で魔力経路は問題なさそうです。通常とは異なる杖を短時間で仕上げたユウト君も凄いですね」


「ジジイ殿と二人で張りきってたでござるからな。マリン殿も魔力芯の細かい調整を手伝ってたでござるし」


「じゃあもう一つっていうのは…………シファーさんか」


「はい。取扱説明書にも書いてあるように、やはりこの奥義の鉱石には魔力の流れが込められてるだけです。魔法杖にするにはここに水魔法を組み込まなければいけません」


「……大変そうならシファーさんに覚えてもらうだけでも」


「ロイス君? シファーさんに全てを託すのは可哀想だからこの奥義が込められた鉱石を複製して魔法杖を量産しろって言ったのはロイス君ですよ? 水魔法を出力するための仕組みが入ってるんならそこに水魔法を流せば槍雨が誰でも使えるんじゃないかって簡単に言ってくれたのロイス君ですよ? こんな二つの鉱石を連結する形の杖って見たことあります? まず水魔法が込められた鉱石に魔力が通るようにセットして、その先に奥義を複製した鉱石をセットするんですよ? ララちゃんが自分の魔法を制御するのとは違って、ボネちゃんがシファーさんの水魔法を念力と封印魔法を駆使して制御するんですからね? ララちゃんは他人の魔法制御はできませんでしたよ? ボネちゃんには念力があるとはいえ、せいぜい水魔法をなんとかしてこの鉱石内に閉じこめる程度のことしか無理なんですからね? 奥義を複製できそうなだけでもボネちゃんは凄いんですからね? 私だけじゃこの複製はできませんよ?」


「わかったから……」


「ミャ(私の力不足みたいに聞こえるんだけど……)」


 このまま説教コースになりそうだ……。


「でもカトレア殿、これが上手くいけば今後はボネがいれば誰のどんな魔法でも再現できるってことではないのでござるか?」


「アオイ君。これはたまたま水魔法奥義の鉱石が手に入ったからできることなんです。この鉱石に魔法を使うための魔力の流れを封じ込めるという技術は大変難しいものなんです。それこそメネアさんがかなりの魔法の使い手で、そのうえ封印魔法を使えたからこそできたことなんです。フィリシアさんという錬金術師が近くにいたことも大きいです。わかりますか? ララちゃんにはできてもユウナちゃんにはできないでしょう? ボネちゃんでも他人の魔力を完全には制御できないんです。私のようにたいした威力でもない魔法でも難しいんですから、シファーさんの魔法ともなるともっと難しいに決まってます。魔力プレートの鉱石と言えど何度も破壊されることになるでしょうね。無茶苦茶な魔力の流れの水魔法をこのまま出力すれば鉱石だけではなく杖もろとも粉々に砕け散るほどの暴発を起こします。それを奥義の鉱石を利用して魔力の流れを奥義用の流れにしたうえで出力しようとしてるんですからね? この二つの鉱石の連結に全てがかかってると言っても過言ではないんですよ? わかります?」


「……すまんでござる」


 矛先がアオイ丸に向いたようだ……。


「ミャ? (さっきから私、制御も上手くできない役立たずって言われてない?)」


「そんなことないから。そう聞こえるのはそれだけこの作業が難しいってことを言ってるんだよ。カトレアはずっと褒めてるぞ」


「ミャ(そうかしら……でもシファーの魔法が私の能力をだいぶ超えてきたらきっと制御できないわよ……)」


「ボネの能力でできる範囲まで制御してくれれば十分だから」


「ミャ(それこそシファーとの差がハッキリ出ちゃうかもしれないじゃない……)」


「出てもいいんだよ。お前はまだ子猫なんだしさ」


「ミャ~(そうかもしれないけど、奥義の威力が発揮できなかったら嫌じゃない……)」


 ボネにしては珍しく不安がってるな……。


「それは仕方ないって。水魔法が出せる杖ってだけでも貴重なんだから誰も文句は言わないよ」


「ミャ? (本当?)」


「あぁ。だってそんな魔法杖があるんなら今後はナミの町に設置すればみんな大喜びだ」


「ミャ(あ、確かにそうよね。魔石セット型にすれば誰でも使えるしね)」


「あぁ。だから気楽にやっていいぞ」


「ミャ~(そうね。少し気が楽になったわ。奥義の複製のほうは魔力の流れを念力で固定したまま移動させるだけで良さそうだからいつ本番でもいいわよ)」


 カトレアは自分にはそれができないから無理って言ってたけどな……。

 ボネがいるからこそできることみたいだが、まぁその前にカトレアがいなきゃ錬金自体ができないしな。


「複製のほうのボネの仕事は簡単そうだからいつ始めてもいいってさ」


「簡単って……。じゃああとは私次第ということですね……」


「誤って元の鉱石を破壊するなんてことはしないでくれよ」


「はい……気を付けますけど」


 さっき俺たちに説教してた勢いはどこいったんだよ……。


「それとボネが言ってたけど、錬金釜の中でのカトレアの魔力の操り方はボネの念力以上のものだってさ」


「え? 本当ですか?」


「ミャ~(お世辞じゃないわよ。だからもっと修行すればこのくらい一人でもできるようになるわよ)」


「そのうちカトレア一人でもこの複製ができるようになるって」


「嬉しいです。この中は私の魔力を活かせる唯一のフィールドですから」


 フィールドか。

 カトレアはこの錬金釜の中で毎日戦ってるんだもんな。


「じゃあ休憩が終わったら始めてくれ。その間にシファーさんに話してくるから。あ、その前にアオイ丸、ララがどうのこうのって言ってた話はなんだったんだ?」


「やっとでござるな。まずはこれを見てほしいでござる」


 アオイ丸は紙を渡してくる。


「……手紙か?」


「送ってきた主はマクシム殿でござる」


 マクシムさんか。

 手紙を送ってきたということは、やっぱり大樹のダンジョンには行けないって書いてあるのかもな。


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