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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百七十話 応援到着

 外はもう薄暗くなり始めた。

 結局今日もほとんど宿屋で過ごすことになったな……。


「お~。相変わらず派手に飛んでってるな」


「ゴ(マグマを伴ってる石はまだいいんだが、ただの石の破片とかは暗闇では見えなくて危険だな)」


「さすがにこんな夜に動こうとする人間はいないだろ。魔物でさえ安全な場所に逃げたんじゃないか」


「ゴ(あの荒野とかは岩場も多くて隠れるにはピッタリだよな)」


「だから昔から危険だって言われてるのかもな。それよりまだここにいるつもり?」


「ゴ(もう少しだけな。完全に暗くなったらさすがにあいつらも今日は帰ってこない……お?)」


「ん?」


「チュリー!」


 どこかからピピの声が聞こえた。


「ゴ(来たか)」


「てっきり明日になるかと思ってたけど」


 さすがに暗い海でミズダッコと戦闘になるのは危険すぎるからな。


 そして海のほうからピピがやってきてゲンさんの肩にとまった。


「おつかれ」


「チュリ(ふぅ~、なんとか真っ暗になる前に帰ってこれました)」


「みんなもいっしょなんだな?」


「チュリ(はい。あと五分もすればここに来ると思います)」


 さすがに迎えに行かなくても大丈夫か。


「もうすぐ俺たちの仲間が来るから襲ったらダメだぞ」


「「「「ニャオ」」」」


 うん、賢いトラ猫たちだ。


「ミャオ!」


「お? また地震か」


 すぐに小さな揺れがきた。

 慣れとはおそろしいもので、これくらいの地震ではもう動じないようになってしまった。


「チュリ(この子の地震察知能力はどうなってるんでしょうね)」


「大地の神様なんじゃないか?」


「チュリ(それなら地震をとめてほしいものですけど)」


 確かに……。


「チュリ(それよりさっきミズダッコの大物倒して回収してきましたから、みんな今からタコパーティだってはりきってます)」


「大物ってどれくらい?」


「チュリ(全長20メートルはあるんじゃないですかね?)」


「お~? それは大物だな。魔石もあるか?」


「チュリ(もちろんです。バリエーションが増えそうで良かったですね)」


「あぁ。ミズダッコはデカければデカいほどこわいし、足が太く長いほど攻撃も強くなるからな」


 こりゃ帰ってすぐ地下四階で出現させないと。

 通常のミズダッコとは別枠にして、ドロップ品もそいつの大きなタコ足にするか。

 魚屋にも相談しとかないとな。


 そうしてるうちに下からにぎやかな音が聞こえてきた。

 間違いなくリヴァーナさんの雷魔法だな。


 そして猫たちが階段の近くでお出迎え態勢に入った。


「わぁ!? なにこの可愛いトラ!?」


 猫じゃなくてトラと思ってるのに可愛いのか……。


「あ、こっちに凄く可愛い猫もいる」


 ミオも来たか。

 リヴァーナさんやララは危険だからって反対するかもと思ってたんだが。


「あっ!? ロイス君!」


 俺を見つけたリヴァーナさんが颯爽と駆け寄ってくる。

 そのすぐ後ろからミオも付いてきた。


「こんな遠いところまですみません」


「ロイス君に呼ばれたらどこへでも行くってば! ねっ、ミオ」


「うん」


「ありがとうございます。ミオも来たってことはマグマ系の魔物相手でもやれるって判断したんですよね?」


「もちろん! で、倒すんだよね?」


「え? ……倒すってなにをですか?」


「マグマスライムに決まってるでしょ!」


「……」


 本気なのか?

 倒せる自信があるのか?


「まぁまぁリヴァーナさん、そう焦らずに」


 ……ヒューゴさんパーティも三人とも来てくれたか。


「あれが火山ですか。想像以上にマグマが噴出してますね。管理人さん、話を聞いたときには卒倒しそうになりましたよ、ははっ。あ、管理人さんが噴火に巻き込まれたのではないかと思ったからですよ?」


「……ヒューゴさんもマグマスライムを倒すつもりなんですか?」


「私たちにはそこまでの攻撃力はありませんよ。だから倒すとしたらアシストという形の間接的なものになりますね。もちろんCランクだろうがマグマ系の通常の敵には負けませんが」


 ヒューゴさんまで……。

 その自信はどこから来てるんだよ……。

 さっきウチで戦ってきたんだろうが、結構強かっただろ?

 というかCランクなんか結構どころじゃないからな?


「それより夜になったばかりとはいえまだまだ暑いですね。早く中に入りませんか?」


「えぇ……どうぞ中へ」


 リヴァーナさん、ミオ、ヒューゴさん、グラシアさん、ソロモンさんが続けて入っていく。


 最後にシファーさんとアオイ丸がやってきた。

 やはりユウナたちは無理だったか。

 それとマクシムさんもいないな。


「フィンクス村には寄ってきましたか?」


「うん、少しだけど。みんな明日船でとりあえずサハに避難するって」


「そうですか。今日は実家に泊まらなくて良かったんですか? その場合また明日迎えに行くつもりでしたけど」


「いいの。荷物は全部レア袋に詰めてきたし、こっちでやることがあるから来てるんだし」


 まぁそうしてもらわないと困るけどな。


「ここにはむりやり連れてこられました?」


「う~ん、まぁ少しはむりやりだったかも。でも私の力が役に立つかもしれないんだよね?」


「さぁどうでしょう」


「え……」


「やってみないことにはわかりませんから。マグマ系相手に水魔法試してきました?」


「うん。確かに効果的だったけど、敵が強いせいか水の無駄遣いしてるみたいでなんだか罪悪感が凄いの」


「ただの魔力なんですからそこは気にしなくていいんですよ」


「そうなんだけどね。ナミの人に見られたらどう思われるかなって考えちゃってさ」


「ラシダさんには数か月分の水を渡してますから安心してください」


「うん、ありがと。……ラシダさんもナミにいるんだよね」


 やはり長年の相棒だったような存在の人だから気になるか。


「二日前、ナミを出る直前にラシダさんと話しました。ラシダさんはいずれ衛兵隊をやめるって言ってましたよ」


「え……もしかして私のせい? 責任を取らされたとか……」


「違います。王女や衛兵や町のためといったしがらみを取っ払って、自由になりたいと思ってしまったようですよ。冒険者になろうかなとも言ってました」


「……そう。ラシダさん真面目で正義感に溢れてるから、ああいう人が衛兵でいてくれると町の人は安心できるんだけどね」


「そんな感じはしますよね。じゃあ俺たちと会ってしまったのが悪影響だったのかもしれません、ははっ」


「ラシダさんって本当に真面目な人なんだよ? キミが変にそそのかしたとか思われてもおかしくないからね?」


 あ、またキミって言われた。


「フィンクス村の人はキミって言うのが一般的なんですか?」


「え? そんなことないと思うけど……あ、もしかしてあの子?」


「ん? やっぱり知り合いなんですか?」


「知り合いというかね」


「ロイス殿、その話はあとにして中に入るでござる。みんな待ってるでござるよ」


「そうか」


 まぁ中にマリッカもいることだしな。


 俺たちの後ろから少し離れてゲンさんとピピが付いてくる。

 ゲンさんは今朝ぶりに洞窟の中に入ったんじゃないか?


「ゴ(ダイフクはどうしたんだ?)」


「あ、そうだよ。ダイフクは?」


「ダイフクは別件が入ったでござるよ」


「別件?」


「あとで話すでござる」


 エマたちに付いていったんだろうか?


「あれ? そういやピピだけか? タルは?」


「チュリ(あとで話しますから)」


 なにがあったんだよ?

 ユウナたちに付いていったってことか?


「マリッカ殿はどこにいるでござる?」


「さっきはティアリスさんたちといっしょに宿屋ロビーにいたぞ。……あ、ちょうど出てきた」


 マリッカはすぐに俺たちに気付いた。


 ……だが一瞬見ただけで、そのまま再度宿屋に入ろうとする。


「待って!」


 シファーさんが叫んだ。

 するとマリッカは宿屋入り口を向いたまま立ち止まった。


 そしてシファーさんはマリッカのほうに駆け寄っていった。


「会いたかった……」


 そのままシファーさんはマリッカに抱きついた。


 ……どうやら泣いてるようだ。


 村では親しい間柄だったのかもしれない。

 でもなぜマリッカはなにも言わない?


 その状態で少しの間沈黙が流れ、ようやくシファーさんが次の声を発した。


「もういいの……。少し前にナミの町の水のことはロイス君たちが解決してくれてたから……。もう私はナミに行かなくてもよくなってたの……。もう砂漠の女神じゃないの」


「……本当?」


「うん。今は大樹のダンジョンで暮らしてるの。だからもうなにも隠さなくても大丈夫だよ」


「……そっか」


 そしてマリッカも泣き始めた。


 話の流れがいまいちよくわからないが、感動的な再会のようだからそっとしておこう。


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