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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百六十九話 それぞれの選択

 マリンちゃんもマリッカという名前に心当たりがないみたい。


「マリッカ殿はモーリタ村のダンジョンで修行してる冒険者でござる。フィンクス村出身という話でござる」


「「へぇ~」」


 なるほど。

 じゃあそのマリッカさんもシファーさんの知り合いってわけね。


「魔力の感知に鋭いのでござるよ。ダイフクの魔石も感知したくらいでござる」


「「へぇ~?」」


 なかなかやるじゃん。


「しかもずっとソロでダンジョンに入ってるのでござるよ」


「「おお~?」」


 このレベルの敵が出るダンジョンにソロで入るなんて勇気あるじゃない。

 魔法の腕のほうも凄いんでしょうね。


「戦ってる姿は誰にも見せないという謎の少女なのでござる」


 ミステリアスな感じでいいじゃない。

 強さをひけらかしてないってことでもあるよね。

 というか少女なんだ。


「自分やティアリス殿たちはダンジョンに入った際にマリッカ殿と少しだけパーティを組んだので戦い方を見れたのでござる。なんとマリッカ殿はララ殿のように手から魔法を放てるのでござるよ」


「「おお~?」」


 魔力制御も抜群ってことね。

 ますます面白いじゃない。

 って自分も手から魔法出せるくせにまるで私だけみたいに言わなくてもいいのに。

 まぁ忍者たちは制御は上手いけど威力はまだまだだからね。


「でも故郷のことに関しては話したくないようでなにも教えてくれないそうでござる。モーリタ村の宿にはもう一人フィンクス村出身者の冒険者がいて、マリッカ殿のことを聞いてみたのでござるが、なにも知らないの一点張りだったのでござる。でも明らかに、なにか知ってるけど言えないって感じだったのでござるよ」


 フィンクス村では他人の情報を話してはいけないとかそういう決まりがあるのかな?


「マリッカ殿は妹でござるか?」


「「えっ?」」


 妹?

 そのマリッカさんがシファーさんの?


「チュリ」


「ふむふむ、話し方がそっくりと言ってるでござる」


 ちょっと?


「ニャ~」


「なるほど。髪型は全然違うけど顔はそっくりでござるし、匂いも似てると言ってるでござるな」


 本当に言葉を理解できてるの?

 適当に言ってるだけだよね?


「チュリ」


「なんでござると? マリッカ殿は水魔法が使えるかもとロイス殿が言ってたのでござるか?」


「ニャ~」


「ふむ、マリッカ殿はそのことを隠してるんでござるな? まるで今シファー殿がなにかを隠してるかのように」


「「……」」


 ピピとダイフクが頷いてる……。

 完全に意思疎通できてるみたい……。

 凄いショックなんですけど……。


 あ、マリンちゃんがアオイ丸の周りをキョロキョロ見てる。

 きっとドラシーが隠れてるんじゃないかと思ってるんだ。

 でもまだアオイ丸たちはドラシーの存在を知らないからね。


「言いたくなければ言わなくてもいいでござる。どうせ近いうちにマリッカ殿はここに来るはずでござるからな」


「「「えっ!?」」」


「大樹のダンジョンの案内冊子をそれはもう熱心に見てたでござるよ。ほかにも魔道列車関連の冊子を見てマルセールや近辺の村にも興味津々でござるからな」


 さすがお兄……。

 よそのダンジョンでウチの宣伝をするとは……。


「まぁその前にモーリタ村で会うでござるけど」


「シファーさんはまだ行くとは決めてないから」


「この話聞いたら行かなくなるんじゃない? そのマリッカさんとの繋がりを隠したいみたいだし」


「……」


 どうするんだろう?

 もしかしてマリッカさんと仲悪かったりする?

 シファーさんのせいでフィンクス村では自由に行動できなかったとか?

 ずっと比較されてきたのかもしれないし。

 水魔法が使えるなら尚更だよね。


「……ごめんね。もう隠さなくていいはずなのにね」


「そうですよ。と言いたいところですけど、もうずっとそうやって生きてきてるんですから仕方ないと思います」


「うん……。あの子にもちゃんと伝えないと」


 妹っていうのは本当なんだ。


「どのくらい会ってないんですか?」


「一年半くらいかな? あの子がモーリタ村に行ってからは一度も会ってないから」


「仲が悪いとかじゃないんですか?」


「それは全然。むしろ私は会いたくてたまらないけど」


「じゃあモーリタ村行きます?」


「うん。いきなり行って驚かせたい。でも私に戦闘は無理だよ? 体力もないし、この前のパラディン隊試験も凄くこわかったんだからね?」


「それはお兄もわかってるはずですから大丈夫だと思います。具体的になにを考えてるかは私にはわからないですけど」


「お兄ちゃんはシファーさんを絶対に連れてきてくれって言ってますからなにか考えがあるはずです。なにも考えてないかもしれないですけど」


「……」


 とにかくお兄に任せておけば間違いないもんね。


「じゃあご飯食べて出かける準備ができたら宿屋ロビーに来てもらえますか? 一応火山の中の敵を見ておいてほしいですし」


「うん、わかった。ララちゃんとマリンちゃんはモーリタ村に行かないの?」


「はい。別件が色々とありますからね」


「そっかぁ。……ねぇ、もし私が無事に帰って来られたら、私もここの従業員にしてくれない?」


「え? 従業員ですか?」


「うん。みんな大変そうだけど楽しそうだから」


「う~ん。でもお金いっぱいあるんですから働かなくてもいいんじゃないですか?」


「そういうことじゃないの。今までは移動時間を含めても月に五日程度しか働いてないようなものだったから退屈で仕方なかったの」


「う~ん。どうする?」


「まぁ仕事はいっぱいあるからいいんじゃない? でも一応魔王と戦うために修行してるって設定なんでしょ?」


「そのことはもう気にしなくていいんじゃない? ウチで働くことが魔王と戦う冒険者の助けになるわけだし」


「そっかぁ。ならお兄ちゃんに任せよう」


「そうだね。お兄に言ってみてください」


「……私の相手が面倒だからロイス君に押し付けようとしてない?」


「「そんなことないですよぉ~」」


 マリンちゃんと声が揃った……。


 でも別に面倒ってわけじゃないもん。

 どういう扱いをしたらいいのかがわからないだけで。


「とにかくそれは帰ってきてから考えましょう。まずは準備してきてください」


「うん」


 シファーさんは少し嬉しそうにダンジョン酒場を出ていった。

 今どういう心境なんだろうな。


「自分も戻っていいでござるか? まだ準備するものがたくさんあるでござるよ」


「あ、うん。よろしく~」


 お兄たちから色々と持ってくる物を頼まれてるらしいからね。


「さて、こっちはユキちゃんたちがどうやったら大勢の村人を連れて来られるかを考えないとね」


「やっぱり馬車しかないんじゃない? ウェルダン君も四日後くらいには帰ってくるだろうし、それからすぐ冒険者の人たちを連れて向かってもらおうよ」


「やっぱりそれしかないか。ユキちゃんや魔物たちには先に行ってもらったほうがいいよね?」


「うん。マクシムさんもユキちゃんが早く帰ってきてくれることを信じてるはずだもん」


 でもウェルダンが行くまで村は持つのかな?

 魔物と戦える人は少ないって話だし……。

 せめて誰か封印魔法が使えたらいいんだけどね。


「あっ、ボネに戻ってきてもらおうか?」


「それもいいとは思うけど、お兄ちゃんになにかあったら嫌だし……」


「そうだよね~。せめてユウナちゃんとエマちゃんのどちらかがいればなぁ~」


「……ララちゃんは?」


「ん? …………え?」


 嘘でしょ?

 その顔はもしかして私に行けって言ってる?

 どっちに?

 暑いのも寒いのも嫌だよ?

 それにお兄はモーリタ村には絶対来るなって言ってるんだよ?

 ましてやヒョウセツ村なんか山道でしかも吹雪なんだからウェルダンに馬車引いてもらわないと絶対に辿り着けないよ?


「どっちがいい?」


「……冗談だよね?」


「ララちゃんがモーリタ村に行ってボネちゃんに帰ってきてもらうのが一番自然かつ安全そうじゃない?」


「……」


 この目は本気っぽい……。


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