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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百六十二話 スピカの案

「おはようございまーす。いってらっしゃいませー」


 ピピまだかな~。


「おはようございまーす。お気をつけてー」


 もう八時過ぎてるよ?

 最初の大きな地震があってから三時間くらい経ったよ?

 そろそろ帰ってきてもいいんじゃない?


「あの、ダンジョン初めてなんですけど……」


「ご新規さんですね? ありがとうございまーす。もう少ししたら新規の方向けの説明会を行いますのでそちらの小屋の中でお待ちいただいてよろしいでしょうかー」


「はい!」


 ピピまだかな~。


「ちょっとララ? 体調でも悪いの?」


「あ、スピカさん。おはようございまーす」


「おはよう。ってそうじゃなくて、なんか上の空って感じじゃない? 顔色も悪い気がするわよ?」


 スピカさんはいつものように起きてきてすぐリビングのソファに寝転がって声をかけてきてる。

 これ、なにも知らないっぽいね……。


「スピカさん」


「なに?」


「今朝方、火山が噴火したんだよ」


「火山?」


「ナミの町近くの火山。しかもただの噴火じゃなくて大噴火」


「大噴火? 大丈夫なの?」


「地震があったの気付かなかった?」


「地震? ……そういやマリンがそんなこと言ってたわね」


「その地震は火山が噴火したことによるものだと思われてるの。今もたまに揺れてるし。あ、ほら」


「……確かに揺れてるわね。でもこの揺れじゃ歩いてたら気付かない程度でしょ? そんなにナーバスになることなの?」


「……スピカさーん、今私が言ったこと聞いてた?」


「え? 火山が噴火したんでしょ?」


「どこの火山かだよ」


「え、どこって言ったっけ?」


 もぉっ。

 もしかしてお兄やカトレア姉たちがナミに行ってることも忘れてるんじゃないの?

 というかほかに火山なんてどこにあるの?


「ナミの火山」


「ナミ?」


「うん。おそらく一番大きいピラミッドの中にある火山」


「ピラミッ……ド? …………それってカトレアやロイスが行ってるあれ?」


「うん」


「…………」


 ようやく事態に気付いたっぽい。

 寝転んでる体勢は変わってないけど。


「……」


 なにか言えばいいのに。


「あ、おはようございまーす。お気をつけてー」


 娘が生きてるか聞くとかさ。


「……マリンはどこ行ったの?」


 カトレア姉のことよりマリンちゃんのことなの?


「マリンちゃんには今会議スペースで今朝の地震について従業員のみんなに説明してもらってるの。お兄たちがナミに行ってることや、ピラミッドの中に火山があるという推測についても話すことにしたから。通いの人たちも地震のことが気になっていつもより早く出てきてくれてるし」


「……そう」


 あ、これ結構心配してるのかも。


「じゃあ私は新規の説明行ってくるから。受付にはシンディさんがすぐに来てくれるからね」


「うん」


 説明終わって戻ってくるころには少しは頭が整理できてるといいんだけど。



◇◇◇



 うん、我ながら丁寧に説明できてたはず。

 こういうときこそ平常心を心掛けないとね。


 さて、ピピは帰ってきてるかな~?


「シンディさん、ありがとう」


「うん。じゃあ私は宿屋の仕事に戻るね」


 シンディさんは早足で小屋の中に入っていった。


 本当は自分も会議に参加して話を聞きたいはずなのになぁ~。

 でも自分のやるべきことはしっかりやらないとってことだよね。

 私もこのあとはパラディン隊のほうに顔出さないと。

 本当ならお兄が行ってくれるはずだったんだけどなぁ~。


 あ、スピカさんまだここで寝てたんだ……。


「ピピ帰ってきた?」


「まだよ」


 ナミからそんなに時間かかるかなぁ?

 地図上の距離だけで見るとラスやリーヌより少し遠いくらいなのに。

 よほど避難作業が難航してるのかも。


「ドラシーから話は聞いたわ」


「ふ~ん」


「ララやマリンの判断は正しいと思う。今はピピを待つのが最善ね」


「だといいけど」


「でも私の意見も言わせてもらっていい?」


「どうぞ」


「もし昼までになにも連絡がないようであれば、午後一でナミに向かいましょう」


「……本気で言ってる?」


「本気よ。サハのラクダを全部買い取ってでも助けに行くわよ」


「……それこそもう少し情報を待ってからのほうがいいんじゃない? 今コタローがサハへ行ってるはずだから、それ待ちのほうが……」


「もちろん情報は大事だけど、こういう災害関連の救助は初動が凄く重要になってくるの」


「でもマグマはどうするの? 前と同じならナミ周辺はマグマでいっぱいになってるかもしれないんだよ?」


「それはあれよ。ラクダの足にマグマ耐性がある靴を装備させるとか、冒険者の氷魔法や水魔法でマグマを急激に冷やすとか、そこは今からみんなで考えるのよ」


 必死さは伝わってくるかも。


「カトレア姉とナミの町の人々、どちらのため?」


「そんなの両方に決まってるでしょ。でもカトレアにはロイスたちが付いてることを考えたら私たちが優先するのはナミの町の人たちのほうかもね」


「……それってカトレア姉たちが町にはいないってことを想定してる?」


「そっちのほうが最悪のパターンでしょ?」


「それはそうだけど……」


「そうなってたらナミの町は封印魔法で守られていないことになるわ。先人たちのように今頃みんな必死でサハへ逃げようとしてるかも。砂漠を走ってよ?」


 それなら今すぐ助けに行ったほうが……。

 でも相手はマグマだから助けに行くほうもかなり危険になるし……。


「あ、ラクダはやめにしましょうか。土魔法の使い手を集めて砂漠の砂を土に変えてしまいましょう。それならウチの馬で馬車を引いて行けるわ。うん、そうしましょう」


 確かにそれはいいアイデアかもしれないけど……。


「空から降ってくるマグマは攻撃魔法で全部撃ち落とすわよ。予備で置いてる魔法杖も全部持っていくわ」


「……もしかしてスピカさんも行く気?」


「当たり前でしょ。ナミの人たちのことは冒険者に任せて、私はカトレアを助けに行くんだから」


 あ、やっぱりカトレア姉が最優先なんだ……。


「パラディン隊も向かわせるわよ。こういうときのための組織でもあるんだから。人数が多いからここから直接船でサハまで向かったほうがいいわね。馬は全部冒険者村のほうに行ったんだっけ? じゃああの管理してる子たちに馬の準備をさせて。冒険者はFランク以上全員出動よ。報酬は私が出すわ。……いや、やっぱり全部は無理だからセバスたちにも出させましょう。ってこういう場合は冒険者の自主性に任せて報酬は出さないほうがいいんだっけ?」


 こんなスピカさん初めて見たかも……。

 それに今のスピカさん、なんだかお兄みたい。


「ララ? 聞いてるの?」


「え、うん……」


「この森のことはドラシーに任せておけば大丈夫よ。町や村も封印結界があるから被害も出ないわ。もしかしたらサハの町からサウスモナに避難しようとしてる人もいるでしょうから船を増便させたほうがいいかもね。まぁそれはサウスモナの町長がもうやってるか。状況によっては一つ目の人工島からの魔道列車の臨時運行も考えないとね。あ、名前は忘れたけど下のほうにある村は大丈夫なのかしら? 確か二つくらいあったわよね?」


「フィンクス村とモーリタ村だね。その二つの村には前回はそこまで被害が出てないらしいし、大丈夫じゃないかな」


「そう。でも遠いほうの村はしばらくは身動きがとれないでしょうね。確か海岸線沿いにあったでしょ? 船で物資を届けたり、避難したいのなら助けに行ったほうがいいかも。あ、それならついでに手前の村にも寄れるか」


 なんかどんどん頭が冴えてきてるみたい……。

 相変わらず寝っ転がってるのに……。


「あ、マリンが戻ってきたわね」


「師匠~やっと起きてきた~」


「ごめんごめん。まさかこんな大きなことになってるとは思ってもみなかったわよ」


「言ったよ? お姉ちゃんが巻き込まれたかもって」


「そうだったかしら? でもどうせ今と状況はいっしょなんだからいいじゃない」


「もぉ~。で、ピピちゃんは?」


「まだよ」


「えぇ~? まだなの~。従業員のみんなも心配してたから早くなにか報告してあげたいのに。話を聞いて泣いちゃう人だっていたんだよ~」


 気持ちはわかる。

 でもお兄はきっと大丈夫だもん。


 あ、ドラシーだ。


「森は大丈夫なの?」


「えぇ。それよりピピちゃんが帰ってきたわよ」


「「「えっ!?」」」


 ほら。

 お兄はそんな簡単に死んだりしないもん。


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