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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百六十話 今できること

 ティアリスさん、アリアさん、そしてマリッカの三人は、ダンジョンの様子を見てくると言って洞窟の中に入っていった。

 マリッカの話は気になるところだが、話したくないようなので今は聞かないことにした。

 水魔法のことといい、まだまだ謎が多そうな女性だ。

 俺には言いたくないことでもティアリスさんたちには話せるといいんだけどな。



 火山からはまだ黒煙やマグマが流れ出している。

 よほどマグマスライムの機嫌がいいんだろう。

 エマが張った封印結界にもたまに石の破片のようなものがぶつかってくる。

 あんなに遠いところからここまで飛んできてるんだもんな。

 まだマグマが流れてきてないことが救いか。

 こっちに流れてきてないだけでサハのほうへは流れてるって可能性はあるが。

 でもそれはピピがいないと確認ができない。


 ……そろそろ暑くなってきたな。


「見送ったら中に入るか」


「はい。あ、ちょうど冒険者の方も来ましたよ。砂浜に行きましょうか」


 船は結局フィンクス村とサハの町へも立ち寄ることになった。

 そりゃこんな事態になってるんだから普通は故郷の様子が気になるだろうからな。


 そして村からの階段を下り、砂浜まで戦闘しながら大人数で移動した。

 もちろん俺は安全な真ん中を歩いてただけだが。

 でもやはりこの付近の魔物は以前よりも増えているそうだ。


「元気でな!」


「またいつか会おうぜ!」


「村の人たちを早く避難させろよ!」


 みたいなやり取りがみんなの間で交わされている。


 旅立つ冒険者は三人。

 フィンクス村出身が一人とサハ出身が二人。

 それをナミ出身の三人が見送る構図だ。


「ロイスさん、どうかあのお二人によろしくお伝えください。いずれまた改めてお礼を言いに行くと」


 ティアリスさんとアリアさんに助けられたこの人もサハ出身だったらしい。


「お礼なんて気にする人たちじゃありませんから気にしなくて大丈夫だと思いますよ。それよりもっと強くなって町を守ってくださいね」


「はい! 大樹のダンジョンにも必ず行きます!」


 死にかけたにも関わらずこの前向きさ。

 まだ若いからこれからどんどん成長するだろう。


「俺も一度大樹のダンジョンに行きます!」


「その前にサハの安全を見届けてからにしてくださいね」


 ウチに来るのは魔道列車が繋がってからでも遅くないからな。


「なぁ、本当に村人全員が世話になってもいいのか?」


「えぇ、ウチはマーロイ帝国やジャポングの救助にも行ったくらいですからそこは気にしなくて大丈夫です。二百人程度なら一度に乗れますし」


 今フィンクス村からサハの町まで砂漠を避難するなんて危険すぎるからな。

 砂漠の魔物たちがナミ方面から逃げてきたりもしてるだろうし。

 だからといって避難しないでいると、気付いたら魔瘴に覆われてるって可能性もある。


「できれば今日中に村のみなさんに声をかけてください。船の出発はおそらく明日の朝以降になると思いますので。サハを選ばれてもいいですし、サウスモナやマルセールでも大丈夫ですから」


「わかった、ありがとう。……あんたはナミに行く気なんだよな?」


「わかりません。今の状態じゃとても近付ける感じではありませんし」


「……死ぬなよ」


「ははっ。生きていればまたどこかでお会いしましょう」


 冒険者三人は船に乗り込んでいった。


 なぜかみんなには俺がナミに行くものだと思われてるようだ……。

 俺が戦闘タイプじゃないことは一目見てわかるはずなのに。

 魔物たちもこんなに帰らせるっていうのに。


「リーヌまでの道中にはベビードラゴンも出るらしいから気を抜かないようにな」


「ピィ! (油断大敵です!)」


「ピィ! (ブルースライム相手でも全力です!)」


「ピィ! (ときには逃げることも必要です!)」


「ピィ! (無理はしません!)」


 うんうん。

 しっかりエマとカスミ丸を守ってくれよ。


「以前よりも魔瘴で見えにくくなってるだろうから気を付けろよ」


「モ~(確かに道の見極めは難しくなるね。でもそれも修行だから。誰にも怪我はさせないからご主人様は安心してていいよ)」


 こいつ……もう俺が言うことはないな……。


「ニャ~(ちゃんとワタのお世話しててよ?)」


「ミャ~(わかってるわよ。ってダイフクは早ければまた今日の夕方ここに来るんだからそんなに心配しなくていいじゃない)」


「ニャ~(明日になるかもしれないし)」


「ミャ~(一日くらい変わらないわよ。それよりしっかり船での攻撃方法覚えなさいよ)」


「ニャ~(うん。魔物代表として頑張る)」


 ララもダイフクに会いたがってるだろうからな。

 この旅での成長具合に気付いてくれるといいんだが。


「エマ、急がなくてもいいから丁寧にな」


「はい。自分にできることを精一杯やってきます」


 うん、エマに任せておけばなにも心配はいらないだろう。


「ハナ、今日はゆっくり休めよ。それと明日ダンジョンに行ったらできるだけみんなが心配しないように言っといてくれ」


「はい……。危険なことはしないでくださいね……」


 ハナは地震と噴火にずっと怯えている。

 まぁ普通はこうなのかもしれないが。


「もういいでござるか!?」


「出発するでござるよ!」


 船からカスミ丸とアオイ丸が声をかけてきた。

 エマとハナ、それに魔物たちも船に乗り込む。


「じゃあ行ってくるでござる!」


「あぁ。安全運転でな」


 そして船が出発していった。



 ……いつも感じる寂しい気持ちだ。

 俺は僻地に取り残された側なのにな。


「さて、戻りますよ。みなさん、ゲンさんとメタリンちゃんばかりに任せてないでしっかり魔物を倒してくださいね」


 俺たちが話してる間、後ろではゲンさんとメタリンが魔物を寄せ付けないでいてくれた。


 再び砂の上を戦闘しながら歩いて村まで戻る。

 この冒険者たち、このダンジョンで修行してるだけあってそこそこ強いな。


「「「「ニャオ」」」」


 大勢のトラ猫たちが村への階段の下で待っててくれた。

 心配してくれてるんだろう。


「「「「ミャオ」」」」


 階段を上ると小さな猫たちも大勢で出迎えてくれた。

 いい村じゃないか。

 村人がみんな猫を好きになる気持ちがわかるな。


「ミャ(あ、この子すぐロイスの傍に寄って来るわね)」


「ミャオ」


 こいつだけはなんとなく見分けがつくようになってきたな。


「ミャオ!?」


 ん?

 猫が急に火山のほうを向いて叫んだ。


 ……あ。


「地震が来ます!」


「「「「えっ!?」」」」


「しゃがむかなにかに掴まってください!」


 外にいた村人たちが俺のほうを見てくる。

 俺がしゃがむとカトレアもしゃがみ、俺の腕をガッチリと両手で掴んできた。

 ……痛い。


「「「「うわっ!?」」」」


 そしてすぐに大きめの地震がやってきた。

 遠くに見える火山からはまた赤い光が空に向かって飛んでいく。

 同時に凄い量の黒煙が空へと噴出される。



 ……どうにか揺れはおさまったようだ。


「ありがとな」


「ミャオ」


 頭を撫でると猫は嬉しそうに鳴いた。


「ミャ~(なかなか使えるじゃない。しばらくはロイスの傍にいていいわよ)」


 ボネは相当地震がこわいようだ。

 ってこわくない人なんかいないよな。


「もう大丈夫だぞ」


「……はい」


 ようやく腕を解放してくれた。


 今のは結構大きな地震だったな。

 こんなのがまだしばらく続くかもしれないんだから不安しかない。

 地震もそうだが、マグマが噴出する量に限界はないんだろうか。

 もしかすると二百年以上分のマグマが溜まってた可能性もあるからな……。


 カトレアによると、砂漠に流出したマグマが完全に冷え固まるのにおそらく一か月近くはかかるのではないかって話だ。

 でもそれはマグマの噴出がとまったあとの話であり、こうやって噴出し続けてる限りはマグマの温度も下がることなく保たれたままなんだろう。


 これだけのマグマとなると火山ダンジョン内も凄いことになってそうだ。

 ダンジョン内の魔物たちはいくらマグマ系の魔物とはいえ全滅してるんじゃないか?

 とにかく今は待つことしかできない。


 ……ってことでいいんだよな?

 ナミの人たちのことが心配だから、本当はできれば今すぐどうにかして地下遺跡への道を探るべきなんだろうけど……。


 でもこういうときのための避難用ピラミッドか。

 食糧用のピラミッドもあるらしいしな。

 問題は道を見つけられてるかどうかだが……。


「ロイス君、中に入りましょう」


「ホロロ」


 さっきからワタは俺の右手の上で不気味なくらいずっとおとなしくしてる。

 今まさに悪い魔物になるか良い魔物になるかの狭間で精神が揺れ動いているのかもしれない。

 魔瘴が勝つか、俺のマナが勝つかといったところか。


「あの葉っぱのブレスレットをワタの首に付けてみるか」


「まず調査してからです。ほら、暑いので早く入りますよ」


 そして洞窟へと足を踏み入れる。

 結局この入り口にはまだ封印魔法の壁は作られていない。


 ……ん?

 どうやらゲンさんは引き続き外で火山の様子を見守ることにしたようだ。


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