表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

554/742

第五百五十四話 冒険者たちの葛藤

 俺の話を聞いた五人は悩んでいるようだ。


「ナミの町を俺たち冒険者で守れると思うか?」


「ナミには強い衛兵たちもいます。それに水道屋もいるでしょう?」


「……やはりそのことも知ってるのか」


 この人たちが水道屋の本当の姿を知らなかったらどうしようかとも一瞬考えたが、なんとなくこの人たちは知ってる気がした。


「ラシッドさんって冒険者の方を知ってますか?」


「もちろんだ。あのパーティはここで長い間修行してるからな」


「え? してるということは最近までここにいたってことですか?」


「あぁ。確か今月の頭くらいにナミの冒険者ギルドから依頼が入ったって言って出ていったっけな」


 そうだったのか。

 おそらくその依頼が補佐官さんからのものだったんだろう。

 そのあとウチに偵察に来ることになったってわけか。


「ラシッドさんがナミ国王の息子さんだということはご存じで?」


「あぁ。ってそんなことまで知ってるのか……」


「昨日国王やラシッドさんパーティ、それに水道長と顔を合わせる機会があったものですから」


「「「「……」」」」


 別にそこに驚かなくてもいいぞ。


「できればここで俺たちと会ったことは内緒にしてもらえますか?」


「……わかった」


 それ以上は聞こうとはしてこないようだ。


「ちなみにあのパーティのほかの三人のことを教えてもらってもいいですか? ほかは男性一人女性二人ですよね? 名前と出身地だけでいいですので」


「……男の名前はドーハ、ここモーリタ村出身で、この宿屋の息子だ」


 ほう?

 あの体格はおばさん譲りか?

 っておばさんは席を外してるようだ。


「女の一人はアーミア。攻撃魔道士でナミ出身。そいつもラシッドと同じく水道屋だ」


 ペンネのことが大好きなあの人か。

 水道屋ということはあの水魔法だけじゃなく転移魔法陣も使えたりするのかもな。


 ってさり気なくラシッドさんも水道屋だってこと言っちゃってるし……。

 まぁこの国では国王の息子って時点で水道屋ってわかるから別にいいのか。


「あと一人、小柄の女性はナスリン、フィンクス村出身だ」


 どう見ても二十二歳には見えない人か。


「ん? フィンクス村出身で二十二歳というとこちらの方と同い年では?」


「そうなんだよ。俺とナスリンは幼馴染でさ。というかよくナスリンの年齢まで知ってたな……。あいつ、一見かなり年下に見られがちだからさ」


「実はそのパーティのみなさん、先週くらいにウチのダンジョンに偵察に来たんですよ」


「「「「えっ!?」」」」


 ん?

 五人が驚くのはいいとして、後ろからも声が聞こえなかったか?


 振り向くとマリッカがこちらを見ていた。

 つい最近までここにいた冒険者たちのことだから気になってたのかもな。

 女性も二人いたわけだし。


「先月の終わりくらいにウチからナミの国王に、魔瘴が迫ってくるから早くサハに避難したほうがいいって伝えたんですよ。避難をしたくない国王たちはウチが嘘を言ってるんじゃないかと怪しんで、ウチの実態を調べるために偵察を送ってきたってわけです。ナミの町は水の問題やサハとの関係性など色々とナイーブな事柄を抱えてるでしょう? だから疑いたくなる気持ちはわかるんですけどね。そのあと衛兵たちも大勢やってきて少し騒ぎになりまして、昨日急遽俺がナミまで足を運ぶことになったんです。結局交渉は決裂しましたけどね」


 って愚痴はほどほどにしないとな。


「そのナスリンさんがウチに来た際に、見た目が少し子供っぽいなと思ったもので確認のために年齢をお聞きしたんですよ。ダンジョンを遊び場と間違われては困りますから」


「「「「はははっ!」」」」


 お?

 笑ってくれるのか?


「ナスリンちゃんは子供じゃない」


 ん?


 ……どうやらマリッカは俺を睨んでいるようだ。


「ナスリンちゃんは強いんだから」


 同郷で、さらにここでいっしょに修行してた仲間でしかも女性を冗談とはいえネタにしたのはさすがにマズかったか。


「そうか。ここで修行してたくらいだからそうなんだろうな」


「うん。凄く速いし力も強いんだから」


「うんうん。そんな感じだな。ウチの店で防具一式と武器まで買ってくれてたんだよ」


「え? 武器? ……キミ、誰かと間違ってない? アーミアちゃんじゃないよ?」


「ん? 間違ってはないと思うぞ? 小柄な武闘家の女性だろ?」


「そうだけど……。なんの武器買ったの?」


「爪だよ」


「「「「爪?」」」」


「これです。これはウチの魔物用のミスリルの爪ですけど、ナスリンさんは鋼の爪を買ってくれたみたいです。手にこうやって装備するんです。この状態で攻撃すると今までただの突きや手刀だった手がまるで剣になったかのように感じるらしいですよ」


「貸して」


 マリッカが俺の手から奪い取るようにして爪を装備した。

 だがサイズは全く合ってないようだ。


「……私用のサイズない?」


「ない。ウチにならたくさんあるけど」


「……」


 マリッカは少し拗ねたような表情をした。


「……もしかしてマリッカは武闘家なのか?」


「うん。ナスリンちゃんみたいになりたいの」


 そうか、だから怒ったんだな。

 小さな村みたいだし、昔からの知り合いなのかもしれない。

 あ、じゃあこのフィンクス村出身の人とも前からの知り合いなんだよな?


「でもそんなに魔力があるのなら魔道士の修行したほうがいいんじゃないのか?」


「……これ以上は企業秘密」


「は?」


 企業秘密ってなんだよ……。


 あ、そういやマリッカは戦ってる姿をあまり見たことがない謎の女性って言われてるんだっけ……。


 村人の前でだけ隠してるかと思いきや、どうやら五人もあまり知らないようだ。


「ロイス君、あとで教えてあげるよ」


 そういやティアリスさんは昼間にマリッカといっしょに戦ってきたんだったな。

 それにマリッカのことをそこそこ強いみたいに言ってたし。


「ねぇアリアさん、これもうやめにしない?」


「気が合いますね」


 早くやめたかったって感じだな……。

 こっちの話もしっかり聞いてたみたいだし。


「なんだか酔いもさめちゃった。それとそちらの冒険者のみなさん、ロイス君は故郷の町や村で冒険者を続けたほうがいいって言いましたけど、私は大樹のダンジョンに行って修行することをおすすめしますよ」


 悩ませるようなこと言わなくていいのに……。


「理由を聞いてもいいか?」


「そんなの強くなれるからに決まってるじゃないですか。一度行ってみればわかりますよ。死ぬ死なないとか以前にまず強くならなきゃ意味ないですから」


「そこまで違うって言うのか? ここのダンジョンの敵は大樹のダンジョンの冒険者からしても強いんだろ?」


「強いことは強いですけど、初見の私でもサーベルキャット倒せましたし」


「「「「なにっ!?」」」」


 本当なのか?

 アリアさんが全部倒したんじゃなくて?


「まぁ事前に少しは情報聞いてましたけどね。でも思ってたより速くはなかったですし、火魔法がよく効いてくれましたので遠距離からの攻撃で楽勝です」


 楽勝は嘘だよな?

 本当は少し強がってるよな?

 アオイ丸は死にそうになったんだろ?


「証拠見ますか?」


 そう言ってティアリスさんはまず地面が汚れないようにシートを敷いた。

 そしてレア袋から大きい物体を二体取り出した。


「「「「……」」」」


 うん、確かに火による攻撃で倒した感じの損傷具合だ。

 ただの火じゃなくてララの炎だけどな。

 少し焼きすぎな気もするが。


「ちなみにこちらのアリアさんはもっと多く狩ってますので。証拠の頭見ますか?」


「「「「……」」」」


 みんなは首を横に振っている。

 さすがに信じてくれたようだ。

 頭だけなんか見たくないし。


 そもそもサボテン地帯まで辿り着いてたことは知ってるはずだからな。


「ちなみに私、回復魔道士ですので」


「「「「え?」」」」


「私の能力としては攻撃魔法はいっさい使えないんです。でもこの杖のおかげで強力な火魔法が使えます。魔法付与っていう錬金術を聞いたことありますか?」


 魔法杖のことを知らない冒険者たちは驚くことしかできないでいるようだ。


「この杖はその錬金術で中級と上級の間くらいの火魔法が付与されてるんです。魔法の発動には私の魔力を使いますけど、魔力がない人でも魔石をセットすれば使える杖もあります」


「「「「……」」」」


「そういう技術面でも大樹のダンジョンは優れてるんですよ。その冊子読んだんですよね? トレーニングエリアなんてきっとみなさんの想像以上に広いですし、ダンジョン営業時間外の朝早くや夜遅くに利用してる人だってたくさんいます。図書館には魔道士のための訓練施設なんてのもあるんです。図書館なのに魔物が出ますし、魔法だって打っていいんですよ? あ、ダンジョンフィールドのことはネタバレ防止のために内緒です」


 俺が説明するよりも実際に利用してくれてる冒険者から聞いたほうがリアル感があっていいのかもな。


「……そっちのテーブルに移動しますので、空いたお皿は片付けてください。ロイス君、私とアリアさんが座る席も用意してね」


「了解です」


 ここはティアリスさんの好きにしてもらおうか。

 例えこの人たちが大樹のダンジョンに来なくても、それぞれの町に帰って宣伝してくれるかもしれないしな。

 一応案内冊子も追加で何冊か渡しておこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=444329247&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ