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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第三章 集いし仲間たち
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第五十五話 ダンジョン食堂オープン

「少し多くないか?」


「……そうですね。まだ十時四十分なんですけどね」


「ここになにしにきてるんだろう」


「……食事だと思いますが?」


「いや、そうじゃなくてさ。魔物と戦ってこいよ」


 小屋の外の壁沿いまで続く行列ができていた。

 もちろん中の食券販売魔道具のところから続く列だ。

 小屋の中は並ぶスペースがそこまでないので少し並ぶと小屋の外まで続いてしまうのはわかるが、既に三十人は並んでいるだろうと思われた。

 やはり新しいものには目がないらしい。


 俺とカトレアは管理人室に座ってそれを眺めていた。

 同時に水晶玉で小屋内部とキッチンの様子も見ている。

 まだ店にはシャッターが下りたままだ。


 中ではララと従業員合わせて五人が忙しなく準備を進めていた。

 初日なのでトラブルが起きることも予想される。

 人手も足りないだろうし手伝おうかと言ったんだが「お兄がいたら仕事増えそうだから大人しく見てて」だってさ。


 少し酷くない?

 モモだけは凄い喜んでくれてたのに。

 それでも客に渡すことくらいはできると思うよって食い下がってみたんだ。

 そしたら「お客さんは男性のほうが多いんだから可愛い店員さんから受けとったほうがいいでしょ。ただでさえお兄とは毎日受付で顔合わせてるんだからね」と言われたんだ。

 

 確かにその通り! と思ってしまったよ。

 受付でさえ俺よりカトレアのときのほうがみんな嬉しそうだからな。


 なので、俺は小屋内のテーブルの空き状況やゴミの確認をすることになった。

 といっても基本セルフサービスだし、ゴミ箱もあるし、仮にテーブルが汚れていてもホール担当のピピとメタリンがすぐにきれいに拭くだろうし、シルバは列の整列担当として最後尾にいるし、結局やることがなさそうなのでこうやって管理人室から眺めていることになったのだ。


 洗い物も返却スペースに置かれた物は転移によって物資エリアのウサギたちの元へ送られてそこでウサギたちが洗うからな。

 俺がやったことといえば家の前の広場に念のためにテーブルとベンチを配置したくらいだな。

 ……実行したのはドラシーとゲンさんだけど。


 カトレアはこの一週間の疲れが相当出ているらしく、今にも寝てしまいそうだ。


 十一時少し前になると行列は五十人近くになっていた。

 この行列を見てもう一度ダンジョンへ入っていく人もいた。

 早速再入場システムを使ってくれてるな。


 水晶玉でキッチンを見ると、ララの前に四人が横に整列していた。

 制服は黒の上下、赤のバンダナ、赤の前掛けエプロンで男女とも同じものを着ている。


「練習通りにやればなにも問題はありませんからね、落ち着いて作業してください。今は五十人くらい並んでるそうですが、練習では八十人を想定してやってきたんですから大丈夫です! 焦らずに自分の役割をしっかりとこなしてください」


「「「「はい!」」」」


「再度配置を確認しますが、メロさんは焼き物担当、ヤック君は揚げ物担当、モモちゃんはご飯&カレー担当、ミーノさんは仕上げ&提供担当を基本配置とします。ヤック君は揚げ物に専念してください。状況によってメロさんは揚げ物に、モモちゃんは仕上げにも回ってください。ミーノさんはキャベツやドレッシングの補充にも目を配っていてくださいね。ホールはピピとメタリンが担当してくれます。整列はシルバが担当です。私は全体をフォローしていきたいと思います。まずは人のことよりも自分の仕事をこなすことを考えてください」


「「「「はい!」」」」


「ではダンジョン食堂オープンします! よろしくお願いします!」


「「「「よろしくお願いします!」」」」


 みんなが持ち場についたことを確認し、店のシャッターが上がる。


「「「「「おお!!」」」」」


 お客から歓声があがった。

 単に店が開いたことに対してか、それともララがそこにいたからか、はたまたキッチンスペースを見てのことなのか、もしくは従業員が四人もいたことに対してなのかどれかはわからないが。


「大変お待たせいたしました! ダンジョン食堂、ただいまよりオープンです! いらっしゃいませ!」


「「「「いらっしゃいませ!」」」」


 練習した成果か、揃っていて元気のいい声だ。


 ララがカウンターの横に設置された食券販売魔道具の近くに行く。


「食券はこちらでお買い求めください! 食券が出てきましたらそちらを持って席でお待ちください! できあがりましたら食券に書かれた番号でお呼びしますのであちらの提供カウンターにてお受け取りになってください! 注文合計が30G以上の方にはキャベツ食べ放題用のお皿が出てきますので、そのお皿を持ってそちらのキャベツコーナーからご自由にお取りください! キャベツがいらない方はお皿は取られなくても構いません! すぐに消えますのでお次の方もご心配なく! お手数ですが返却は端の返却コーナーへセルフサービスでお願いします! お気付きになられた方もいらっしゃると思いますがダンジョン内の休憩エリアにも返却コーナーを設けておりますので、そちらもご利用ください!」


 お客は並んでる間に看板をしっかり見て手順がわかっているのか、スムーズに食券を買っていく。

 普段から自動販売魔道具を利用してるからなにも驚きや抵抗はないのだろう。

 食券販売魔道具で注文が入ると、キッチン側のそれぞれの持ち場の手元にある魔道具へも注文が表示されることになる。


 食券を買った人は、一度席を取りに行き荷物を置いてからキャベツを取りに行く人、キャベツを取ってから席を探す人などに別れているようだ。

 意外にも並ぶ前から席を取っている人はいないみたいだ。

 小屋内の席数が十分にあること、外にも飲食スペースができていること、休憩エリアでも食事可能なこともあるが、それ以上に席を独占する行為が迷惑になると普段から理解してくれているからでもある。


 さて、キッチンのほうはと……

 おっ、メロさんが焼きに入ってるな。

 野獣丼の猪肉と鹿肉は炭による直火焼きだ。

 焼き上がりが近づくとモモが丼にご飯をよそい、メロさんはそのご飯の上に焼いた肉をきれいに並べ、最後はミーノがタレをかけネギと漬物を置いて完成だ。

 この焼き場はカウンターのすぐ裏に設置してあるため、キャベツを取ってる間は正面から見ることができるのだ。

 ララによるとこの臨場感と肉を焼いた匂いが大事なんだそうだ。


 ヤックは、トンカツとコロッケを揚げてるところか。

 食券販売魔道具の裏には冷蔵魔道具があり、焼き物や揚げ物に使う生肉は全てここに入っている。

 冷蔵魔道具と通路をはさんで逆側に揚場がある。


 モモはカレーかな? いや、カツカレーか。

 カレー皿にご飯をよそい、切ったトンカツを乗せ、カツにも半分かかるようにカレーを入れる。

 それにミーノが福神漬けを乗せダンジョンカツカレーのできあがりだ。


 次にモモは丼にご飯をよそうと、ご飯の上にキャベツを乗せた。

 そして揚がったトンカツを一枚取り、ソースに全体を浸した後に食べやすいように切る。

 それを丼のキャベツの上に乗せ、ミーノが最後に漬物を置いてダンジョンカツ丼完成。


 フライドシャモ鳥とコロッケは、揚がったあとにミーノが紙袋に詰めて完成だ。

 ダンジョン内に軽食としても持っていきやすいと思う。


 ご飯はかまど炊きで十五分ごとに炊き上がるようにしている。

 火の様子を見てるのはもちろんウサギたちだ。


 このキッチンにも物資エリアと行き来できる転移魔法陣を用意してるので、食材で場所がとられることもないし、補充も早くすむ。

 最低限必要と思われる量以外は物資エリアに置いてあるのだ。

 仕込みは肉の下処理や野菜の皮むきなど大半はウサギたちの手によって行われ、従業員たちがやることはコロッケの種づくり、トンカツやフライドシャモ鳥の衣付け、キャベツの千切りなどであり、四人もいれば三十分で大丈夫ということで、勤務時間は十時半からになったそうだ。

 米は昼に関してはララが準備することになってるし、カレーの最終確認もララが行うことになっている。


 キッチンにはさらに食材専用の転移魔法陣も用意してあり、キッチン側から必要な物の名前が書いた色付きの札を送ると、すぐにその物が届くようになっている。

 例えばキャベツと書いてある緑の札を送れば、容器に山盛に盛られた千切りキャベツが届くし、ご飯と書いてある白い札を送れば炊き立てのかまどご飯が届くのだ。


 本当にウチはウサギなしではやっていけないな。


 ……おっと、キッチンにばかり目がいって肝心なことを忘れていた。

 お客の反応はどうだろうか。


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