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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百四十九話 洞窟風呂

 バビバ婆さんはこの件を村人には話さないことにするそうだ。

 結局過去の人たちと同じ道を辿るってことか。

 それが良いか悪いかは俺には判断できない。

 とにかくマグマスライムの生存確認だけは誰かがしないとな。


 エマに地下の村側にも封印魔法の壁を作ってもらったあと、宿屋に戻ってきた。


「おかえり! 四部屋ってことだけどそれでいいのかい?」


 どうやら誰かが宿の手配をしたようだ。

 外で猫たちの家の隣にでも小屋を設置するつもりだったが、ここのほうが暖かいだろうしこっちでいいか。


「はい。それでお願いします」


「了解。それと封印魔法のお礼でお代はいらないって言ったんだけど、そんなつもりで魔法を使ったわけじゃないでござるとか言われて勝手にお金置いていかれちゃったんだよ」


 カスミ丸か。


「それは貰ってください。宿に泊まらせてもらうんですから当然です。その代わり、ほかに宿泊してるみなさんと同じように通常のサービスを提供してもらえますか?」


「それじゃ代わりと言えないじゃないか……まぁあんたらしいけど。鍵は渡してあるから奥に進みな。リスちゃんたちが部屋の前で待ってるよ」


 俺らしいって、少し話しただけなのに俺の性格がわかるのか?

 でも俺がこのおばさんのことをいい人だと思ってるのと同じような意味か。


 奥に進むと、ある部屋の前でリスたちが集まってなにか話をしてるのが聞こえてきた。


「ピィ(あ、ご主人様たちが来た)」


「ピィ(早く部屋割りを決めないと)」


「ピィ(とりあえずタルはアオイ丸君の看病で決定ね)」


「ピィ(廊下で見張りとかはしなくていいの?)」


「ピィ(ご主人様に相談しよう)」


 なんて可愛いやつらだ……。

 ぜひこの会話をみんなに聞かせてやりたい。


「アオイ丸はどこだ?」


「ピィ! (こっちの部屋です! カスミ丸ちゃんもいます!)」


「ん? じゃあここはティアリスさんたちの部屋か?」


「ピィ! (そうです! ご主人様たちはこっちの二部屋にどうぞ!)」


 マカが代表して説明してくれる。


「そうか。そっちにアオイ丸とカスミ丸、ここにティアリスさんとアリアさんがいるんだってさ。部屋割りどうする? というか何人部屋なんだ?」


 空いてる部屋の中を確認する。

 ……どちらもベッドは二つか。

 思ったより部屋は広いようだ。

 トイレもついてるし、シャワーもあるようだ。


「アオイ君の傍はカスミちゃんとタルちゃんに任せましょうか。ティアリスさんとアリアさんも同じ部屋でいいでしょう。私はエマちゃんとハナちゃんといっしょにこちらの部屋で寝ます。ベッドは追加しますので大丈夫です」


「わかった。じゃあゲンさんは俺といっしょの部屋な。このベッドはどかしてゲンさん用のベッド置くから。って部屋入れるよな?」


「ゴ(なんとか入れそうだ)」


「それは良かった。みんなはどうする?」


「ミャ(私はロイスの部屋に決まってるでしょ。ワタもいっしょなんだからダイフクも来なさいよ)」


「チュリ(私はカスミちゃんのところ行きますね。アオイ君のことも心配ですし)」


「キュ(私はカトレアさんたちの部屋に行くのです)」


「モ~? (じゃあ僕はティアリスさんたちの部屋?)」


「それでいいか。じゃあマカはティアリスさんたちの部屋で、メルとマドはカトレアたちの部屋な。エクは俺の部屋だ」


「「「「ピィ!」」」」


 俺以外は一人につき一匹だな。


「でもまず風呂入ってからな。ここじゃ迷惑かけるから外行くぞ」


 疲れてるカトレアとエマは部屋で休んでもらい、俺と魔物たちで宿屋の外に出ようとした。


「あっ! もしかしてその子たちのお風呂かい!? 男性用の大浴場使ってくれていいよ!」


「大浴場もあるんですか? でもほかのお客さんに迷惑でしょうから」


「今みんなワッサムんところに行ってるから誰もいないんだよ! いつもなら村人も来る時間なんだけど、村人もみんなそこにいるだろ? だから大丈夫!」


 まだあの店にいるのか。

 つまり冒険者も村人会議に参加してるってことだよな。

 バビバ婆さんは呑気に俺たちと話してて良かったんだろうか。

 って話は全然呑気な内容じゃなかったけど。


 ……あ。


「亡くなった三人のこと聞いてますよね?」


「もちろん。今会議に参加してない婆さんたちが色々してくれてるよ。棺桶作ってくれてありがとうね。それとレア袋も貸してくれるんだって? あんな便利な袋があるなんて凄い世の中になったもんだね」


「便利さに慣れてしまうのも困りようですけどね。こんな袋があったら重い荷物を運ばなくていいわけですから人間の体力も落ちるかもしれませんし」


「そうかもしれないけど、その分、別のことに体力使えると考えたらいいんじゃないのかい?」


「あ、なるほど。俺もそういう考え方をしてみます」


 そういう発想はあまりなかった。

 こんな反則的な袋を持ってることをどこか悪いことのように感じてたからな。

 俺がいつも楽することばかりを考えてるからかもしれない。


 だからといってレア袋を流通させまくるのは違うと思うけど。


「それよりほら、今日はこっちが男性用大浴場の入り口だからさっさと入っちゃいな!」


 あ、トイレの横にあった部屋の入り口に暖簾がかかってる。

 ここが大浴場だったのか。

 てっきりおばさんの休憩スペースだと思ってた。


 そして魔物たちといっしょに大浴場に移動する。

 俺たちが風呂に入る間、ゲンさんは村の外に行ってくると言って宿屋を出ていった。

 星でも見にいったのかな。


 そして服を脱ぎ、風呂場の中に入る。


 湯気が凄い……。

 お?

 岩風呂のようだ。

 洞窟って感じがしていいじゃないか。


 ……ん?

 そういやここ砂漠なのにこんな熱い風呂に入ったりもするんだな。

 夜になって少しひんやりしてきたせいか、昼間の暑さなんてすっかり忘れてしまってた。

 そもそも昼間でも洞窟の中にいるからか外ほどは全然暑くなかったもんな。

 今だとバビバ婆さんが熱い茶を飲むのも理解できる気がする。


「ミャ! (ちょっと!? もう少し優しく洗いなさいよ!)」


「ピィ! (嫌がってるわけじゃないからこれでいいんです!)」


 ボネとマカがなにか言い合ってるようだ。

 ……あ、ワタの洗い方で揉めてるのか。


 結局ワタは今日ほとんど寝てたよな。

 赤ちゃんだから仕方ないのかもしれないけど。


「モ~(ご主人様~、僕も洗ってよ)」


「いいぞ。強めがいいか?」


「モ~(うん)」


 ウェルダンはゴシゴシ洗われるのが好きだからな。


「キュ(私も洗ってほしいのです)」


 メタリンはソフトに洗われたい派なんだよな。


「メタリンの体はマグマが当たっても耐えられそうか?」


「キュ(目や口に当たらなければ大丈夫だと思うのです)」


「そうか。じゃあメタリンに頑張ってもらわないとな」


「キュ(なにを頑張るのです?)」


「実はな、この村のダンジョンの最奥には火山フィールドがあるんだよ」


「キュ!? (火山フィールドなのです!?)」


「モ~!? (本当なの!?)」


「「「「ピィ!?」」」」


 二匹が大声を出したもんだからみんなが集まってきた。


「チュリ? (火山フィールドって言いました?)


「あぁ。ナミの近くにあるあの大きなピラミッドの地下にはダンジョンがあったらしい」


 説明が長くなりそうなのでさっさと洗って湯に浸かろうか。


 ふぅ~、いい湯だ。

 砂漠での風呂もいいもんだな。

 魔物たちには深すぎるから誰も中に入らず、俺の頭の後ろに集まってる。

 早く乾かしてあげたほうがいいんだろうが、ついでだからある程度のことは話すことにしよう。

 マカはワタの体をタオルで拭きながら聞くようだ。


「さっき転移した先の部屋には宝箱があったんだよ。その中にフィリシアの日記帳があってな。どうやらそのダンジョンにはボスがいるそうだ」


「「「「!?」」」」


「しかも約三百年前の火山大噴火の根源もそのボスのせいかもしれないらしい。そのボスの名は……マグマスライム。ウチにもマグマプチスライムって敵がいるんだけど、そいつとは違ってかなり大きいらしい。マグマの中に住んでるんだってさ」


「「「「……」」」」


「そしてフィリシアとメネアの二人はそいつに挑んで殺されたようだ。その後、マグマスライムがどうなったかは誰も知らない。噴火が起きてないのが救いだけどな。……とりあえずこんなところだな。あとでみんなを集めて会議するから詳しくはまたその時に話すよ」


「チュリ(もしそのマグマスライムが生きてて、この魔瘴で凶暴化でもしたら…………え?)」


「ん? どうした?」


 ピピを見ると、俺じゃなくて風呂の奥を見ている。


「……チュリ(あそこに誰かいます)」


「え?」


 あそこって壁際か?

 湯の中に誰かいるとでも?


「……あ」


 いた……。

 湯気でハッキリとは見えないが確かに誰かいる……。

 顔の半分まで湯に浸かりながらこっちを見てるようだ……。

 こわい……。


「……こんにちは~」


 とりあえず声をかけてみる。

 あ、こんにちはじゃなくてこんばんはだったか。


「……」


 口も湯に浸かってたらそりゃ声は出せないか。

 よほど体の芯まで温まりたいんだろう。


 会議に参加してない村の人だろうか?

 宿屋のおばさんの知らないうちに入ってきてたのかもしれない。

 村人は風呂代無料なのかな?


「チュリ!? (あっ!?)」


「おい、また魔物がいるって騒がれても面倒だから大きな声出すな」


「チュリ! (さっきダンジョンから帰ってきた子です!)」


「えっ?」


 誰のことだ?

 アオイ丸のことじゃないだろうし、ティアリスさんたちはまだ部屋にいたし、そもそもここ男湯だし。

 ワッサムさんの店にいる人以外にまだ冒険者いたっけ?

 俺が転移先の部屋にいる間に別の村人が帰ってきたりしたんだろうか?


「ニャ~(僕のこと、魔物だって言った子だよ)」


「あ~、あの子か」


 ……ん?


 …………女性……じゃなかったっけ?


「チュリ? (ここ女湯なんじゃないですか?)」


「…………出るぞ」


 そしてすぐに風呂を出た。


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