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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百四十一話 答え合わせ

 会議を欠席させてもらうことをワッサムさんに伝え、食堂を出た。

 宿屋には戻らず、そのまま地下へと進む。


「じゃあ魔物たちはまたここで待機しててくれ」


 村側にある封印魔法の壁の傍で魔物たちは休憩に入る。

 そして俺たちは先に進み、右側の真ん中の部屋へ入った。


「……どこなんだ?」


「ここですね」


 カトレアは杖で天井のある一点を指した。


 ……見た目は周りの天井の素材と同じに見えるな。


「おそらく転移魔法陣が書いてあった壁と同じ素材の物が天井の少し上に少量だけ埋められてます」


「少量? 20メートル上までずっと続いてるんじゃなくて?」


「はい。それなら消費魔力も少なくすむかと思ったんですけど、そう甘くはないようですね。実力で辿り着いてみろということなのでしょう」


「……上の転移魔法陣の直前まで掘って進めばいいんじゃないのか? 距離設定はこっち側の転移魔法陣でするんだろ?」


「ロイス君? そんなズルしていいと思うんですか?」


「え……ズルじゃなくて知恵というか……」


「それこそ途中になにか罠があるかもしれないじゃないですか。ズルしたら部屋が消滅するようになってるとか」


「そんなこと可能なのか? 封印魔法で守られてるんだろ?」


「そんなの私にはわかりませんよ。可能性の話をしてるだけです。それにこの上に住んでる人がいたらどうするんですか?」


「それはもちろん確かめてからになるけどさ……でもここと上の村とは方角が違う気もするけど」


「とにかく私が転移魔法陣を発動させることができればなにも問題はないんですから」


 まぁそれもそうか。


「ロイスさん、バビバさんが来ました」


 早かったな。

 さっき食堂を出るときにワッサムさんの子供にこっそり伝言を頼んでおいた。


「なにか用かい? この部屋にいるということは水魔法奥義のことが聞きたいのかい?」


「会議はいいんですか?」


「その会議にあんたも参加すると聞いてたのに、ワシをここに呼ぶんだからなにかあったんだろ?」


「なぞなぞの答え合わせをしようと思いまして」


「なんだと? ……転移魔法陣を使えそうなのか?」


「えぇ。カトレアはそのために体力も魔力も万全の状態にしましたので」


「……良かろう。ワシが見届けてやる。……でもじゃあなんでこの部屋にいるんだい?」


「まずなぞなぞの説明からしますね。カスミ丸」


 そして例の紙を見せてなぞなぞを解いてみせる。


「……」


 婆さんは天井を見上げて驚いている。

 まさかこの上に……という感じなのだろう。

 あの部屋の転移魔法陣をあの場で発動させるものと思ってたからかもしれないが。


「確かにそこの一点、魔力を感じるね」


「ダミーの答えかもしれませんけどね。なんせ俺たちはこの部屋の水魔法奥義に関する謎を解くことはできていませんので」


「でもこの部屋を示してるのは間違いなさそうじゃないか。とりあえずやってみな」


 とりあえずって簡単そうに言ってくれるな……。

 まぁカトレアなら余裕だろうけど、たぶん。


「カトレア」


「はい」


 そしてカトレアは魔力の点の下に行き、さっきと同じように天井に杖を向ける。


「……う~ん、上を向きながらだと安定しませんね……。ロイ……カスミちゃん、私の体が倒れないように支えてもらっていいですか?」


 今俺の名を呼ぼうとしてやめたよな?

 怒ってるのだろうか……。


 カスミ丸はカトレアの体を後ろから支える。

 カトレアはカスミ丸に体を預け、集中し始めた。


「「「「……」」」」


 ……長い。

 カトレアはピクリとも動かない。


 それになんだか緊張してきた。

 数百年解かれなかった謎が今まさに解かれようとしてるんだもんな。


 ……あ、杖が動き始めた!


 まずはゆっくりと円を描いていく。

 あの壁の転移魔法陣よりは小さいんだな。

 いつものサイズって感じだ。


 次に円の中によくわからない模様を描く。

 この転移魔法陣や普通の魔法は俺の目にも見えるのに、なんで魔力単体だと見えないのかいつも不思議に思う。

 この魔法は具現化された実体で、魔力自体は透明だからかもしれないけど。

 でも透明だろうが魔道士のみんなには見えるんだもんな~。


「ふぅ~、こちら側の転移魔法陣は設置完了です。では接続します」


「「「「……」」」」


 ここからが正念場だな。


 カトレアは転移魔法陣の中心、あの魔力の点に杖を当て魔力を注ぎ始めたようだ。


「ん……」


 なんだかいきなりきつそうだ……。


「おい、大丈夫か?」


「ん……」


 声をかけるべきではなかったかもしれない……。


「……見え……ました」


「おおっ!?」


 見えたってことは転移魔法陣があったってことだよな?

 どうやってそれを認識できたのかは知らないけど。


 って声を出したのは俺だけで、婆さんとエマは心配そうにカトレアと転移魔法陣を交互に見ている。

 カスミ丸はカトレアの顔を窺いつつもしっかりカトレアの体を支えている。


「んん…………あと少し……届いては……います」


 魔力の道を作るのはこんなにも大変なのか……。

 これじゃあこの転移魔法陣を大量設置して移動を楽にしてくれなんてとても言えそうにない……。


「最後…………出し尽くします」


「おい!? 無理はするな!」


 そのあとすぐ、カトレアの手から杖がこぼれ落ちた。

 そしてカトレアの両腕がぶらんとなる。


「カトレア殿!? 大丈夫でござるか!?」


「……はい……でも力が……」


「寝かせるぞ! エマ、ベッドだ!」


「はい!」


 エマはレア袋からベッドを出した。


「なんだいこのベッドは!?」


 そしてすぐにカトレアを寝かせ、スピカポーションを少しずつ飲ませる。

 婆さんのことは少し無視だ。


「どうだ?」


「……ん」


 マズいな……。

 魔力はもちろんだろうが、体力もだいぶ消耗してるようだ。

 スピカポーションではすぐには回復しないかもしれない。


「あれ飲むか?」


「……そこまでは」


 まぁ意識はあるから大丈夫か。


 で、転移魔法陣はと…………うん、ちゃんと光ってる。


「もう通れるんだよな?」


「……はい」


 さて、じゃあカスミ丸に……ん?

 カトレアが俺を見てくる。


「ロイス君が……」


 俺がなんだ?


「……転移して」


 は?


 ……そういやさっきカスミ丸を実験体にするなみたいなこと言ってたもんな。


「自分が行くでござるよ」


「……ダメです」


「大丈夫でござる。危険なのは承知でござる」


「……ダメ」


「……ロイス殿?」


 う~ん。

 そんなにカスミ丸を危険な目に合わせたくないんだろうか?

 でも俺ならいいと?

 俺に怒ってるからか?

 もしくはカスミ丸のことを信頼してないとか?


 ……俺のことを信頼してくれてるからか?

 それとも重要な役目を俺に任せようとしてくれてるんだろうか。


 まぁ上に部屋があるんならダンジョンとは関係ないから魔物がいる心配はないか。

 山に住む野生の魔物がいる可能性はあるけど。

 って封印魔法がかかってるんだっけ。

 それなら大丈夫か。


「わかった。俺が行こう」


「ロイス殿!? 危険でござる!」


「大丈夫だって。カトレアがここまで言うってことは転移魔法陣には自信があるってことだろうし」


「そうだとしても転移先になにがいるかわかったものではないのでござるよ!?」


「封印魔法の効果がまだ残ってるんなら外部から侵入されてるようなことはないだろ。大樹のダンジョンでも修行した二人なんだから俺たちがそれを信じてやらないでどうする?」


「なんだって!? それ本当なのかい!?」


 うるさいな婆さん……。


 ってそうか。

 だからカトレアは俺に二人が残したものを最初に見てほしいと思ってるのかもな。

 きっと俺が行かなければこんな状態でも自分が行くって言うだろう。

 まぁ二人はできることなら自分の子孫にこの謎を解き明かしてほしかったのかもしれないけど。


「大丈夫そうなら入ってすぐ戻ってくるから」


「……わかったでござる。でも一分待って戻って来なかったらすぐに自分も転移するでござる」


「そうしてくれ。……天井に手が届かないからテーブルとイスで段差を作るか」


 レア袋からテーブルとベンチを取り出した。


「だからなんなんだいその袋!?」


「……ロイス君、帰りはお気をつけて」


 帰り?

 あ、上から下に落ちてくるからってことか……。

 まさか逆さまに頭から落ちたりしないだろうな……。


「この下にベッドを用意しておくでござるか?」


「いや、どんな体勢で落ちるかわからないから砂にしてくれ。テーブルは少しずらして、転移魔法陣の下に土魔法で囲いを作って砂を敷き詰めよう。というか今やってくれ」


「了解でござる」


 そしてカスミ丸はあっという間にクッション性抜群の砂場を作り上げた。


 ……うん、これなら頭から落ちてもたぶん大丈夫だろう。


「じゃあ行ってくるからな」


 さて、この先にいったいなにが待ち受けてるんだろうか。


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