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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百三十九話 夕食の時間

 カトレアとエマが起きてきた。

 心配だったエマの体調もどうやら大丈夫そうだ。


「え? アオイ君たちまだ帰ってないんですか?」


「ターゲットの形跡を見つけたとかでさらに奥まで行くことにしたんだってさ。ダンジョンで会った冒険者の人に俺への伝言を頼んでたんだよ」


「ターゲットって例のあれですか? 危ないのに。アオイ君は二人の足手まといになりませんか?」


「なるだろうな。でも形跡を追うのならアオイ丸がいたほうがいいだろうしな」


「兄上は大丈夫でござるよ! あれでもそれなりに強いでござる!」


「せいぜいFランクだぞ」


「え……」


「戦闘に関しては二人からしたら確実に足手まといだ。まぁ素早さはあるから逃げに徹してればなんとかなるだろ」


「……」


 カスミ丸はショックを受けている。

 まさか自分たちがEランクとでも思ってたのか?

 そんな甘い世界じゃない。


「でもあと二~三時間戻って来ないとなるとさすがに心配だから魔物たちを向かわせる」


「そうですね。ピピちゃんとメタリンちゃんコンビにサッと行ってきてもらいましょうか」


「それがいいな。エマ、封印魔法のことだが、あと二つ作ってほしいんだが大丈夫そうか? 村の入り口になってる洞窟のところにも頼みたいんだよ。一つは明日の朝とかでもいいからさ」


「それなら大丈夫だと思います。でも効力は本当にわからないですからね? 一年くらいは持続してくれないと自信なくしますけど……」


「そこまで気にしなくていいよ。エマが来なかったらもうなくなってたかもしれないものなんだしさ。それにサービスだし」


「そうですけど……」


 責任感が強いのも大変だな。


「とりあえずご飯食べに行こう。ハナがワッサムさんの食堂で勉強がてら料理作ってるからさ。みんなで行くぞ」


 宿屋の外にいた三人組もさっきそれぞれの家に帰っていったらしい。

 バビバ婆さんが解放してあげると、特に喜びもせずに黙って去っていったそうだ。

 反省してるんだろうな。


 そして食堂にやってきた。


「あっ!? いらっしゃいませ! どうぞこちらへ!」


 子供は元気だな。

 ちゃんと接客できてて偉いぞ。

 すぐに水を出してくれるのも高評価だ。


 端のテーブルでは冒険者たち五人が一つのテーブルで食事と会議をしてるようだ。

 テーブルの上には紙やら料理やら飲み物やらで所狭しといった状態だ。

 ほかに客はいない。


 魔物たちは床にシートを広げて座った。

 ワタは寝てる時間のほうが長いな。


 ん?

 冒険者五人が揃って俺たちをジロッと見てきている。

 カトレアとエマと会うのは初めてだしな。


 聞くところによると、二人パーティと三人パーティらしい。

 女性はいないようだ。

 女性は天然ダンジョンになんか行きたくないって思うのが普通らしいからな。

 砂漠の敵と戦うにしても、この周辺より少し敵のレベルは落ちるがナミの町を拠点にしたほうが色々と便利だろうし。


「なに食べる?」


 三人はメニューを見始めた。

 昼に来たときに全メニュー制覇してるから美味しかったものを思い出してるんだろう。


「なぁ」


 ん?

 向こうのテーブルの冒険者から声をかけられた。

 さっきの伝言の人だな。


「なんですか?」


「こっちでいっしょに食べないか?」


「すみません。こっちも会議するものでして」


「そうか……」


 残念そうだな……。

 もしかしてウチの女性陣といっしょに食事がしたかったのかもしれない。


 ……そういや女性の冒険者がいるって言ってなかったか?


「ダンジョンの中に冒険者があと四人いるんだよな? その中に今朝ダイフクのことを魔物だと気付いた女性もいるってことか?」


「そうみたいでござるな。その彼女はソロで入ってるらしいでござるよ」


「ソロ? 女性一人でこんな危険なダンジョンに? たまたま今日だけ?」


「いや、ずっとソロらしいでござる。そっちの2パーティが何度も誘ってるそうでござるが断られてるって話でござるな」


「その子は強いのか? まだ若いんだよな?」


「十代なのは間違いないらしいでござるが何歳かまではわからないそうでござる。それにダンジョン内でばったり会うことはあっても戦ってるところまでは見たことないって話でござるよ」


「なんだよそれ……。完全に謎の少女じゃないか……」


「フィンクス村出身というのも本当かどうか怪しいでござるな」


 男が嫌いなのかな?

 それとも人間が嫌いとか?


「ロイス君、適当に注文しますよ?」


「ん? あぁ、任せた」


 そもそも女性一人でなぜこのダンジョンに来たんだ?

 腕に自信があるからか?

 このダンジョンでソロで戦えてるんなら間違いなくEランクの実力はあるはずだ。

 パーティに誘われても加入しないのはそこにいる2パーティの実力が自分より下だからとか?

 ウチのダンジョンを紹介してあげればすぐに来る気になるんじゃないか?


「ん? そういやその子は魔力の感知に鋭いとかどうとか言ってたよな?」


「それはロイス殿と兄上が聞いた話で自分は聞いてないでござるよ」


「あ、そうだっけ。魔力の感知に鋭いってどういうことなんだろう?」


「それはカトレア殿に聞いたほうがいいでござる」


「魔道士の中には相手を見ただけで相手の魔力を正確に把握できる方がいるでしょう? それは体内を巡る魔力を見てるんです」


「体内? 体の外にまで溢れるような魔力じゃなくて?」


「その魔力とは少し考え方が違いますかね。体外にまでもれてるような魔力は無駄に魔力を発散させてるようなものですから。今お話ししてるのは単純な魔力の量というよりは潜在能力に近いものです」


「残りの魔力量ではなく最大値がわかるってことか?」


「そうです。それともう一つ、魔力の質を見てるんです」


「質?」


「はい。例えば私が見て質のいい魔力と感じるのは2パターンあって、一つは体内を万遍なく滑らかに流れているパターンですね。見ていて美しいとさえ思ってしまいます」


 人を見るときにまず体内の魔力の流れに目がいったりするのかな?


「もう一つは、さっきとは真逆で体内を凄いスピードで駆け巡ってるパターンです。力強さを感じます。でも少し心配にもなってしまいますけどね」


 血液の巡りとは違うんだよな?


「魔力の質の良さは魔法の精度にも関係します。鍛錬を積んできた成果がわかるものでもあります。でも相手の魔力を見れたからといって相手の強さがわかるものではありません。私の場合、初級魔法しか使えないですけど魔力の総量は多いじゃないですか? 流れもそれなりにきれいな自信もあります。だからそれこそ人を見極める力が必要になるんです。ジジイのような熟練者だからこそできることですね。私の場合はダンジョンに来るお客さんのおかげで目が養われてますけど」


 ウチはサンプルだらけだもんな。

 こないだのパラディン隊試験のときもジジイやギャビンさんたちはそういう視点で見ていたんだろう。


「じゃあ感知が鋭いってことは、体内を巡る魔力を見る目が肥えてる人だってことでいいのか?」


「はい。でも……」


 ん?

 でもなんだ?


「私もそれなりにその感知には自信あるほうだと思ってたのですが、ダイフク君をじっくりと見てみても、微かに魔力の光が見えなくもないって程度なんです」


「なんだと? つまりその子はカトレア以上に感知が鋭いってことか?」


 ほかの人と比べてカトレアがどの程度なのかは知らないけどさ。


「そうなりますね。それに普通は意識して見るものなんです。村の中に入ってきてるおとなしくしてる猫に対してそんな目で見たりするものでしょうか? 普段から常に人や動物そして魔物をそういう目で見てるとしか思えないです」


「見るのにも魔力を消費するのか?」


「はい。目に魔力を集中させる感じです」


 ……目にだけ魔力を集中させてるって考えてるとなんだかこわいな。

 目から魔法出せたりするんじゃないだろうか……。

 魔物にもそういう魔物いるし……。


「……私の目は光ったりしませんよ?」


 それは非常に残念だ。


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