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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百三十七話 伝言

「ピィ(寝ちゃってました~)」


「ピィ(エマちゃんもよく眠れてるようです)」


「私のすぐ横でカトレアさんが寝ててビックリしましたよ」


 マカ、エク、ハナが起きてきた。


「ワタちゃん、お腹空いてない?」


「ホロロ」


 どうやら人間も大丈夫なようだ。

 もちろん既にハナとリスたちに対してピピが補助魔法をかけたあとだからだろうけど。


「ハナ、そしてマカとエク、話しておかないといけないことがある」


「なんですか? その言い方は良くないことですか?」


「ピィ(お昼寝しすぎましたか……)」


「ピィ(もしかしてなにかお仕事ありましたか……)」


 そしてワタの一連の出来事を説明する。


「え……」


 ハナはショックが大きいようだ。

 あれだけお世話して可愛がってくれてたからな。


「じゃあ今私に補助魔法がかかってなかったらワタちゃんは威嚇してくるってことですよね?」


「そうだ。カトレアもかなりショックを受けてた」


「どうしてこんなことに……」


「ワタは魔物だからな。こういうこともある」


 自分にも言い聞かせるようにハナに言った。

 ワタは魔法や魔力に興味があるだけで別に俺たちになつこうとしてるわけではない。

 ……とまでは言いきれないが、これが現実だからな。


「ハナ殿、こっちに来るでござるよ」


 カスミ丸は足取りの重そうなハナを連れて宿屋の外に出ていった。

 マカとエクもそれに付いていく。


 そして間もなく外からは三人組の悲痛な叫び声が…………あれ?

 聞こえてこないな。


 するとすぐにハナだけが戻ってきた。

 そして俺の向かいの席に座った。


「なにか一言だけ言おうかなとも思いましたが、なんだかまだ世間を知らなさそうな人たちなのでやめました。ウチにもああいう人たちよく来ますよね」


 大人だな……。


 ハナにはどういう人たちに見えてるんだろう?

 俺から話を聞いて感じた印象だけじゃないってことだよな?


「自分たちは強いと思い自信満々で大樹のダンジョンにやってきたのに、地下三階の難易度にあっさり打ちのめされたって感じの表情をしてました」


 なるほど、いい表現だ。

 地下二階の魔物急襲エリアは難なく突破したものの、地下三階で通常フィールドの敵にさえ手こずるというパターンはよく見られる光景だ。


 ハナだけじゃなく、意外にウチの料理人のみんなはバイキング会場の厨房の中から冒険者たちのことをよく見てるって聞くもんな。


「ロイス殿……」


「ん?」


 カスミ丸たちも戻ってきたようだ。


「マカ殿とエク殿は残酷でござるよ……」


「残酷? なにしたんだよ?」


「ピィ(髪の毛を少し燃やしてやりました)」


「おい……」


「ピィ(同時に指先に少し電気を流してやりました。声も出さずに必死に我慢してたから許してやりましたけど)」


「おい? そんな拷問みたいなことしちゃダメだろ……」


「ピィ(ご主人様に手をあげたんですから死なないだけマシだと思ってもらわないと)」


「ピィ(そうです。今私たちのはらわたは煮えくり返ってます)」


 ワタのことじゃなくて俺のことで怒ってくれてるのか……。


「チュリ(こらこら。この程度のことで怒ってたらキリがないですよ)」


「キュ(ご主人様は暇つぶしに遊んであげてたのです。本気であの女の子の首を斬らないか少しヒヤヒヤしてたくらいなのです)」


「メタリン? 誤解を生むような発言はやめような……」


「ミャ~(もっとやっていいわよ。私も疲れてるのに念力使わされたんだからね。装備品くらいなら全部燃やしてやってもいいんじゃないかしら)」


「ボネ? 過激な発言は控えような?」


 みんな暑さと疲れがあるうえに暇すぎて少しおかしくなってるようだ……。


「ホロロロロ」


「チュリ(ほらみんな、ワタが変なことを覚えてしまわないように注意しないとダメですよ。言葉遣いにも気を付けてください)」


 そうそう、しっかり教育しといてくれよ。

 ってピピ任せだとそれはそれで俺はなにもしてないじゃないかとか言われそうだけど……。


 ん?

 カスミ丸がなにか聞きたそうにこちらを見ている。


「あ、マカとエクは俺に手を出されたことに対してかなり怒ってるみたいだ」


「なるほど、それなら納得……してもいいでござるか?」


「ダメに決まってるだろ。そういうのも含めて横に石置いてるんだからさ」


「ピィ(石程度じゃ怒りがおさまりませんでしたので)」


「ピィ(それに女性には手を出してません。左右の男性二人だけですから)」


「そうなのか? それならまぁいい。……って良くないからな? 男だからいいとか差別はダメだぞ? やるなら平等にな? それにあの女性が主犯だぞ?」


「ロイス殿、平等だったらいいように聞こえるでござるよ……」


「あ、そうか……。とにかく、メルとマドとタルが似たようなことしようとしたら絶対にとめるんだぞ? わかったな?」


「「……ピィ」」


「おい? 大丈夫だよな?」


「チュリ(そんなに心配しなくても大丈夫ですよ)」


 リスたちもまだ子供だからなぁ~。


「チュリ? (それよりなぞなぞはどうなったんですか?)」


「解けたぞ。意外と簡単だった」


「キュ! (凄いのです! さすがご主人様なのです!)」


「チュリ? (カスミちゃんの答えと一致してるんですか?)」


「あぁ。カトレアが起きたら試してくるよ」


「チュリ(なにがあるんでしょうね~)」


 でもいきなりカトレアに転移させて大丈夫なのだろうか?

 魔物をあの安全エリアの中に入らせるとなにかと面倒になりそうだしなぁ。


「カスミ丸、誰が転移すればいいと思う?」


「自分が行くでござるよ」


「いいのか? 危険かもしれないんだぞ?」


「危険なのは誰が行っても同じでござるよ。こういう役割は自分か兄上に任せるでござる。万が一の場合に備えてカトレア殿だけは絶対に行かせたらダメでござる」


 カトレアが閉じこめられたら転移魔法陣を使えるものがいなくなるからってことか。


「ミャ~(いい子分じゃない。褒美はしっかりあげなさいよ)」


 子分ではないが……。

 でもここまで尽くしてくれるんだからやはり給料はもう少しあげてもいいな。


「それはそうと兄上たち遅いでござるな」


「あ、そういやそうだな。案外ダンジョンが楽しくてどんどん奥まで進んじゃってるとか?」


「兄上はそんな軽率な行動はしないでござる。ダンジョン内が危険とわかってる以上、目的を果たしたらすぐに帰ってくるはずでござるよ」


「目的はダンジョンに入ってる村人や冒険者に村に帰るように伝えることだろ? 初見なんだし、一本道でもない限り時間がかかって当然じゃないか?」


「心配でござるな。すぐに迎えに行ってもらうわけにはいかないでござるか?」


「そこまでしなくて大丈夫だって。アリアさんとティアリスさんがいっしょなんだからさ」


「ではあと一時間待って帰って来なかったらすぐ魔物たちを向かわせてほしいのでござる」


「わかったわかった。というかダンジョンまで道を掘らなくても、あの封印魔法の壁付近を少し破壊すればいいだけだよな。それならすぐだ」


 いや、壁を破壊して通れるようにするんじゃなくて、転移魔法陣を使ったほうがいいか?

 カトレアは少し離れた場所へも転移させることができるようになったんだよな?

 それなら封印魔法の壁さえ避ければ大丈夫なはずだから破壊も最小限ですむし、村人たちもそこまで文句言ってこないんじゃないか?


「うぉっ!?」


 ん?

 誰だ?


「この宿屋はいつから動物園になったんだ」


 ガッチリ目の体格の男性が宿屋に入ってきた。

 防具がかなり汚れてるようだが、ダンジョン帰りだろうか?

 地下で汚れを落としてくる決まりじゃないのか?


「大樹のダンジョン管理人ってのはお前か?」


「そうですけど?」


「ふ~ん。じゃあこいつらはペットじゃなくて魔物か」


 男性は魔物たちを物珍しそうにじっくりと見ている。


「ホロロ!」


「おっと。こいつはまだ小さいな」


「俺になにか用ですか?」


「そうだった。実はつい一時間ほど前にダンジョンの中でお前の仲間に会ってな。女二人に男一人のパーティだ」


「確かに俺の仲間の構成と同じですね」


「そいつらに伝言を頼まれたんだよ」


「伝言? 俺にですか?」


「あぁ。ターゲットの形跡を発見したから、もう少し探索してから帰るって伝えてくれってな」


「ターゲット? 魔物の形跡ってことですか?」


「今起きてる状況を説明されてその三人はすぐに奥に向かって行ってしまったからそこまでは聞いてない。まだ何人かダンジョン内にいるみたいだからそいつらのことかもしれないし。じゃあ伝えたからな」


 男性は宿屋から出ていった。

 伝言を早く伝えるために帰ってきてすぐ宿屋に来てくれたのか。

 いい人だな。


「なんのことだと思う?」


「もしかしてあれじゃないでござるか?」


「バナナかパイナップルだよな」


「……結構奥まで行ってるかもしれないでござるな」


「元々の目的の一つとはいえ、危険を冒してまで行く必要もないよな?」


「……ロイス殿の喜ぶ顔が見たいのでござるよ」


 軽率な行動とは言わないんだな。


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