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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百三十三話 カトレアのお仕置き

「なにすんだよテメェ!?」


「やめてよ! 重いって!」


「可愛い」


 カトレアは三人が正座してる足の上に平たい石を置いた。

 バビバ婆さんがいるせいか三人はその石をどかそうとはしない。


「これが嫌なら別のお仕置きも考えていますけど?」


「「「……」」」


 なにも言わなくなった。

 カトレアの冷めた表情と口調に、もっと酷いお仕置きがあると想像したのだろう。


「数時間で勘弁してあげます。まだなにか良くないことを考えてるようでしたら次は足を縄で結び砂漠で引きずり回しの刑です」


「「「……」」」


 三人とも首を横に振っている。

 この砂漠のこわさは三人のほうがよくわかってるだろうからな。

 砂だから引きずっても痛くはなさそうだが。


「ニャ~(あ、やっぱり戻ってきてた)」


 ダイフクが宿屋から出てきた。

 背中にはワタが乗っている。


 それを見たカトレアはワタに近付いた。


「ワタちゃん」


「ホロロ!」


「……」


 やはりカトレアにも威嚇してる。


 もしかして自分だけは好かれたままじゃないか?

 なんて思ってたようだからショックは大きいようだ。


 そしてカトレアは正座してる三人に再び近付いた。


「もうやめてくれって!」


「重い重い重い!」


「足折れる……でも可愛い」


 無言で石を追加していった……。

 さっきよりは小さめの石だから少しは優しくしてあげてるんだろう。


「見ましたか? この子私にベッタリだったのに今威嚇してきたんですよ? これがどういうことかわかります? この子は人間を憎む悪い魔物になってしまったかもしれません。つまりあなたたちは私たちの仲間を殺したようなものです」


「「「……」」」


 そんなこと言われてしまったらなにも言い返せないよな……。


「カトレア、中で少し休憩しような」


「……はい」


 カトレアはダイフクといっしょに宿屋へ入っていった。

 ワタはカトレアに対して敵意をむきだしにしたままのようだ……。


「さて、カスミ丸、石を足の横にどけてやってくれ」


「いいのでござるか?」


「あぁ。どうせしばらくしたらまた置かれることになるだろうからな」


「「「え……」」」


 カトレアと同じ気持ちであろう人物がまだあと四人くらいいるし。


「今の彼女、パルド王国でも一、二を争う腕を持った錬金術師なんですよ」


「「「「えっ!?」」」」


 ん?

 なぜ婆さんまで驚く?

 まさかそこまで腕のいい錬金術師だとは思ってなかったってことか?


 ……いや、錬金術師だとはまだ説明してなかったかもしれない。

 転移魔法陣を使えるだけに魔道士と思ってたのかもな。

 魔道士には違いないんだけど。


「基本的にどんな錬金でもこなすオールマイティータイプなんですけど、最近は薬系に凝ってまして。例えばこの液体、飲み物に数滴混ぜて飲むだけで凄く快眠できるという代物です。匂いを嗅いだだけでもかなりの安眠効果があります。でもこれを適量以上に摂取すると……死にます」


「「「「……」」」」


「とにかく、彼女を怒らせないほうがいいです。みなさん今日の夜が不安で眠れなくなっても知りませんよ。それに彼女は……いえ、これ以上言うと俺も危険になりそうなのでやめときます。ですからおとなしく正座しててください」


 転移魔法陣で二度と出ることのできない部屋に閉じこめられるかもと言っても良かったんだが、意味深な感じにしておこうか。

 これでもう俺たちに絡んでこようとはしないだろう。


 そして再び宿屋のロビーに戻ってきた。

 婆さんは家に帰っていったようだ。


「チュリ(なぞなぞはどうだったんですか?)」


「解けたらしいぞ」


「チュリ! (凄いじゃないですか!)」


「カスミ丸が解いたんだってさ」


「チュリ? (え? 忍者ってなぞなぞの勉強もしてるんです?)」


「らしいぞ。なんか似たような問題を本で見たことがあったとかなかったとか」


「カトレア殿に実証してもらうまではまだ正解かどうかはわからないでござるけどな。どうやら今まで使ってきた転移魔法陣よりも遥かに魔力を消費するかもしれないらしいでござるよ」


「あ、だから休憩することにしたのか」


 周りがうるさいとかはあまり関係なかったのか。

 エマみたいに倒れても困るから万全の体調で臨むってわけだな。


「で、なぞなぞの答え教えてくれよ」


「いいでござるよ。紙で説明するでござる」


 カスミ丸は紙にまず地下の安全エリアの図を描き始めた。

 そしてメモ帳を見ながら、各部屋の壁に刻まれていた文字を別々の紙に書いていく。


「なぁ、俺が聞きたいのはなぞなぞの答えだぞ? 別に俺がまだ見てなかった部屋の言葉が知りたいわけじゃなくてさ」


「部屋は全部で六つあったでござるだろ?」


「あぁ」


「その全部の部屋がなぞなぞに関連してるでござるよ」


「え? あの転移魔法陣の部屋だけじゃなくて?」


「とりあえず全部書くでござるから少し待ってほしいのでござる」


 各部屋の言葉を書き出してるってことはその言葉からもヒントがあったってことだよな?

 あの転移魔法陣を使えるようになるためのヒントがあったんだろうか。


 ピピとメタリンは紙を覗き込んで考えている。

 ゲンさんは全く興味がないのか、俺の後ろの地面に座り微動だにしない。

 ボネは俺の膝の上で寝ている。


「ニャ~(カトレアも寝るみたい)」


 ダイフクとワタが戻ってきた。


「そうか。ワタの様子はどうだ?」


「ニャ~(ダメ。かなりストレス感じてそう)」


 それはマズい。

 こういうときはとりあえずミルクだ。

 ワタを優しく抱えてテーブルの上に乗せ、皿に特製ミルクを用意した。


 ……俺に対しては威嚇してこないんだよなぁ。

 俺を魔物だと思ってるのだろうか?


「ちゃんとこぼさずに飲めるようになってきたな」


「ニャ~(少し前まで足入れたりしてたのに)」


 これは成長が早いからってことか?

 それともボネのように賢いからだろうか。

 ダイフクなんてミルクと水と風呂の区別がつくのにだいぶ時間かかってたもんな。


「ん? 少し毛の色が濃くなってきてないか?」


「ニャ~? (そう?)」


「ほら、この背中あたりとかさ。さっきより狐色っぽくなってきた気がする」


 俺が知ってるフェネックスはお腹は白くて背中は狐色だったはず。

 産まれたときは全身白に近いけど成長と共に背中だけ狐色になっていくんだろうか。

 ほかの赤ちゃんとこいつの色が少し違って見えたのはこいつの成長が早かったからかもしれない。


「ニャ~? (わたあめって白色じゃないの?)」


「そうだよ。だから俺はワタって名前には反対だったんだ。カトレアはウチにいるフェネックスを見たことなかったはずだから、少し狐色が混じってるけど基本は白色って認識で名前を考えたんだと思う。って尻尾がフワフワしてることに着目したからだっけ? ……まぁどっちでもいいや」


「ニャ~(なら別の名前のほうがいいの?)」


「どうせララが考えるから今はワタでいいよ」


 でもこういう狐色や茶色系のお菓子の名前はリスたちのときにだいぶ使ってしまってるからなぁ。

 って名前のことなんか今はどうだっていいか。

 このままだとどうせ仲間にならないんだし。


「ピピ、ワタを連れて外で魔物と戦ってきてくれ」


「……」


「魔物のことを危険な敵と認識させればどうにかなりそうじゃないか?」


「……」


「ピピ?」


「……チュリリ(あ~もう集中できないじゃないですか。今なにか閃きそうだったのに。ロイス君のせいですからね)」


「え……すまん……」


「キュ(そうなのです。ご主人様のせいなのです。集中切れたのでもう考えるのやめなのです)」


 ピピはまだしも、メタリンは考えるのが嫌になったからって俺のせいにしやがったな……。


「チュリ(ワタは空飛ぶのこわいかもしれませんから、まずは外の猫たちと遊ばせて様子を見ることにします。動物に対しての反応も見たいですし)」


「あ、そうだな。じゃあそうしてくれ。ケンカになりそうだったらすぐ引き上げて来いよ」


 そしてピピとメタリンとワタの三匹を背中に乗せてダイフクは宿屋を出ていった。

 あの猫たちがワタを悪い魔物と認識してしまったらどうなるかは少し心配だが、ここはピピたちに任せてみよう。


「できたか?」


「完璧でござるよ」


 さて、なぞなぞの答えを聞くとするか。


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