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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百二十六話 初めての天然ダンジョン

 向こうから魔物たちが早くしろと言わんばかりにこっちを見ていた。

 なのでほかの部屋を見ることなく、ダンジョンにやってきた。


 う……。


 獣臭がかなりするな……。

 空気の抜け道とかはないんだろうか。。


 というかダンジョンというだけあってそこそこ暗い。

 でもランプのような灯りも見えてる。

 村の人が設置したんだろうか。

 アオ君は持っていた魔道具で奥まで照らす。


 ……普通の洞窟型フィールドだな。

 壁はなにでできてるんだろう?

 う~ん、石や岩とまではないがかなり硬い土のようだ。

 何百年も残ってるくらいだから頑丈で当然かもしれないけど。


「入ってみてどう思うんだい?」


「想像通りって感じです。この先は道が分かれてたりするんですか?」


「あぁ。行き止まりの道とかもあるね。途中からは魔瘴も目に見えるようになってくる」


「サーベルキャットが出てくるのはもっと奥ですか?」


「そうだね。ここらあたりの敵はまだ砂漠に出てくるようなやつらで、もう少し進むとダンジョンでしか出ないような敵になるよ」


「バナナやパイナップルも?」


「いや、そいつらはさらに奥だ。それこそワシが昔到達した周辺まで行かないと出ないかもしれん」


「ん? でもそれはつまりこの最近でそこまで行ってる人がいるってことですよね?」


「あぁ。この村の者がパーティを組んで行ってるんだよ。なぜか急に本腰入れ出してね。今も確か昨日くらいから入ってるはずだよ」


「ダンジョンを攻略しようとしてるってことですか?」


「そうみたいだね。やる気があるのはいいことだけど、村の者は正直みんなかなり心配してるんだ」


 焦りが死に繋がらないといいけどな。

 この暗さだと常に周囲を照らしながら進まないといけないだろうし。

 でもその明るさに引き寄せられて魔物も次々と襲ってくるかもしれないしな。


 ん?

 奥から誰かがこっちに来る。


「あっ!? お婆ちゃん!」


 ワッサムさんの子供か。

 アリアさんとティアリスさんもいっしょだ。


 ってそういや中に入って行ってたんだったな……。

 すっかり忘れてた。


 その後ろから村人さんが来る。

 ん?

 背中に誰かを背負っているようだ。


「バビバ婆さん! 重傷者だ! 昨日来たばかりのやつだ!」


「すぐに宿屋に運びな」


「でも外傷自体はこの子が回復魔法で治してくれたんだよ! 発見したときはかなりヤバい怪我だと思ったんだけどな」


「へぇ~?」


「頭から血を流した状態でしばらく戦ってたようです。今は気を失われてます。詳しい診察はできていませんが、頭ですから念のため数日は様子を見たほうがいいかもしれません」


「そうかい。ありがとうね。ついでに宿まで付き合ってもらってもいいかい?」


 村人さんとティアリスさんはそのまま宿屋に向かったようだ。


「お婆ちゃん! ダンジョンって楽しいね!」


 こんな子供が入っていいのだろうか?


「そこの壁までって言っただろ? なんで中に入ったんだい?」


「このお姉ちゃんが、中から助けを求めてる声が聞こえるって言ったからだよ!」


「ほう?」


 さすがアリアさんだ。


「その佇まい、あんた相当できるね」


「いえ、まだまだ未熟者です」


「未熟者がミスリルの剣なんか持たないだろ。それにその防具もミスリルじゃないのかい?」


「これはパラディン隊の装備ですので」


「パラディン隊? あんたパラディンってやつなのかい? 冒険者じゃなくて?」


「パラディンです。新設の組織ですのでまだなったばかりですけど」


「……パラディン隊ってのはこんなやつばかり集めてるのかい?」


 ん?

 俺に聞いてるのか?


「いやいや、アリアさんは実力も品性も一番優秀な方ですから。ウチの冒険者を含めても実力はかなり上です」


「パラディン隊は町を守る組織じゃないのかい? ……なんだかあんたのことがわからなくなってきたよ」


 なにがだ?

 まだ会ったばかりなのにわかってた気になってたほうが凄いが。


「じゃあ僕はもう帰るね! お姉ちゃん、また夜にでも店に来てね!」


 そう言うと子供はさっさと走って帰っていってしまった。


「もしかして俺たちが封印魔法の壁をどう対応するか見るために、あの子に見張りの人を連れて行かせたんですか?」


「そうだよ。魔物のことをどうするか見たかったからね」


「それなら封印魔法がかかってるって先に言ってくれても良かったじゃないですか。もし俺たちが解除してしまってたらどうするんですか」


「まさか封印魔法の使い手がおるとまでは思いもしないだろう。……ん? どうした?」


 婆さんはエマを見た。

 エマはダンジョン入り口のおそらく封印魔法の壁をジーっと見つめている。


「この封印魔法、いつからあるのかご存じだったりしますか?」


「いや、知らん。でもおそらくもう何百年も前からだと思うよ」


 そんなに前なのか……。

 よくまだ効力が残ってるな。


「封印魔法を上掛けしたり、魔力を補充したりはしてます?」


「してないね。この村の封印魔法の使い手はおそらくさっきのメネアまで遡るし、下手に魔力を干渉させてこいつが消えても困るからなにもしなかったんだよ」


 ということは少なくとも二百年以上前からあるってことか。


 エマは増々怪訝そうに封印魔法を見ている。


「どうしたんだよ?」


「……この封印魔法、もうすぐ消えるような気がして」


「「「「えっ!?」」」」


 消える?

 効力を失うってことか?


「実はさっきの封印魔法も少し気になってたんです。でももしずっと存在してるものならこんなものなのかとも思ってたんですが。この封印魔法はさっきより暗い場所で見てるせいか明らかに弱まってきてるのがわかります」


「確かなのかい!? あんたの魔法でどうにかできないのかい!?」


 婆さんはかなり焦り出した。

 村の安全が失われつつあるってことだからな。


「エマ、確認のためにお前の封印魔法を見せてくれ」


「はい」


 エマは杖に魔力を集中し始める。

 そして壁を作り出したようだ。

 効力の違いは魔力の強さとかでわかるものなのだろうか?


「違いがわかりますか?」


「……」


 婆さんはショックを受けているようにも見える。

 それほど違いがあるってことか。


「ではもう一つ」


 そしてエマは再び封印魔法を使った。


「……村のと似たような魔力だね」


「はい。この程度なら私もたいして魔力を消費せずに作り出せます」


「……どの程度持続できるんだい?」


「なにも障害がなければ……長くて三日間くらいでしょうか」


「三日間!?」


 婆さんは少しよろめいた。

 近くにいたカトレアが慌てて体を支える。


「安定して魔力を供給し続けてあげれば一週間は持ちます」


「それでも一週間かい……そっちの壁は?」


「最低でも一か月は持つかと。このタイプの封印魔法は普段あまり使ったことないのでいつまでというのはわかりません。すみません」


 両側タイプってことか?

 それとも小規模なただの壁って意味だろうか。

 普段は封印結界のようなもっと大きな範囲で魔法を使ってるんだから、この程度ならエマが本気出せば数年は持ちそうなもんだが。


 まぁエマもまだ封印魔法一年生だからな。

 ウチで耐久試験をしてたとしてもまだ最長で数か月だろうからあまり参考にはならないし。

 あまり期待をさせるのもあれだから少なめに一か月って言っておくのは正解だな、うん。


「ロイスさん、どうしましょうか?」


「う~ん、元々の封印魔法がもしかするとまだこのまま何年も持つような可能性もないとは言えない。ずっとこの状態だったかもしれないからな。でもこのままじゃ不安だろうから、元の封印魔法の場所よりダンジョン側に新しく魔法をかけてやってくれ。バビバさん、それでいいですよね?」


「……あぁ。悪いけど頼めるかい」


「どっちのタイプにしたらいいでしょうか?」


「そうだな~。二つ作るんだし、外からの侵入を防げればいいんだから長く持続することを優先して片側タイプでいいだろ」


「そうですよね。では今の私のできる限りのことをやってみます」


 そしてさっきより長めの集中のあと、そこそこ強固な効力を持った壁が作り出されたようだ。


 だがその直後、今度はエマがふらついた。


「おっと。大丈夫か?」


 慌ててエマの体を支える。


 どうやら想定より魔力を消費してしまったようだな。

 エマは力が全く入らないようで、ずっと俺の腕に体重をかけたままの状態になっている。

 ……重い。


 こりゃ今日はこの先に進むのは中止だな。

 もう片方の封印魔法もエマの様子を見てからにしたほうが良さそうだ。


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