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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百十六話 モーリタ村潜入

 ピピとエクを先頭に岩場の階段をゆっくりと上っていく。


「あ、マナが感じられますね。ロイス君、このあたりからですよ」


 はいはい、どうせ俺にはわかりませんよ。


 そして階段を上りきった。


「……トラだよな」


「トラですね……」


 やはりトラにしか見えない……。

 しかも本当にたくさんいる……。

 みんなでお出迎えしてくれてるんだろうか。


「チュリ(この子がさっきの子ですよ)」


 どれも全く同じにしか見えん……。


「ニャオ」


「「「「おぉっ!?」」」」


 猫だ!

 ガオーって鳴くもんかと思ってたのに。


「あそこ見てください! 凄く可愛い子猫がいます!」


「きゃーっ! 可愛いです!」


「触ってもいいんですかね!?」


「チュリ(いいみたいですよ)」


 三人とリスたちは子猫に寄っていってしまった。

 トラ猫が可哀想じゃないか。


「ミャ~(なによみんなして)」


 ボネが拗ねてしまったので抱きかかえてやることにした。


「ゴ(ここは猫の村なのか?)」


「ここら一帯の建物全部を猫の家にするくらいだからなにか目的があるんじゃないかな」


「ゴ(案外村長か誰かの趣味だったりしてな)」


「ははっ。さすがに趣味でここまではしないだろ。……ララでもない限り」


 ウチの牧場が頭に浮かんでしまった……。


「ゴ(冒険者村の忍犬も似たようなものだと思うが)」


 あ……忍犬の数を増やしてもらうように言ったのは俺だ……。

 俺もララと同じなのか……。


「ミャオ」


「ん?」


 足元で鳴き声がしたと思ったら、なんと小さな猫がいた。


「ミャ~(これで成猫って言ってたわよね? 本当に小さいわね)」


「そうだな。……触ってみてもいいか?」


「ミャ~(いいわよ)」


 ボネは俺の腕からするりと抜け、肩に移動してくれた。


 ……小さい。

 そして可愛い。

 こんなのララに見せたら大変なことになる……。

 でも普通の猫だからウチで飼うことにはならないか。


「ミャ~(ロイスも大概の動物好きよね)」


「そうか? 寄ってきてくれたから可愛がってるだけで、普段俺から可愛がりにいくことはないだろ?」


「ミャ~(言われてみればそうね。でも今はワタもいるんだから自重したほうがいいわよ)」


 俺に反抗的なのにワタが拗ねるって?

 そのワタはゲンさんの手のひらの上で眠っている。

 襲ってさえ来なければ俺が抱えてやるのに。


「あっ!? ロイスさん! 今から迎えに行こうと思ってたところですよ!」


 アオイ丸の声だ。

 どうやら洞窟から出て来たようだな。

 誰か村人を連れてきたようだが、もしかしてその人が昨日の人か?


「すみません。ピピから猫がたくさんいるって聞いたもんですからすぐに見てみたくなってしまって」


「わっはっは! 可愛いだろ!? あんたも猫好きなのか!? っておおっ!? とんでもなく可愛い黒猫ちゃんがいるじゃないか!」


「ミャ~(なによこの男……ガサツそうね……)」


 ボネは触られるのを嫌ったのか、ゲンさんに飛び移ってしまった。


「恥ずかしがり屋さんだな! わっはっは!」


 テンション高すぎ……。


「ロイスさん、この方が昨日ナミの町の冒険者ギルドでお会いしたというワッサムさんです」


 やはりそうか。

 それよりアオイ丸のこの口調が違和感でしかない……。


「初めまして。パルド王国にある大樹のダンジョンというところでダンジョン管理人をやっておりますロイスと申します」


「おおっ!? 礼儀正しい若者だな! ウチの村では考えられないぞ! わっはっは!」


 なにがそんなに面白いのだろうか……。


「モーリタ村へよく来てくれたな! 聞けばあんたの馬車は凄いらしいじゃないか! アオ君も知り合いがナミに来てたなんてラッキーだったな!」


 アオ君か。

 合わせないとな。


「知り合いと言っても私とロイスさんでは立場が違いすぎるんですけどね。ご厚意に甘えさせてもらっただけです」


「わっはっは! でも昨日大樹のダンジョンの話をたくさん聞いたばかりなのにまさか今日そこの管理人がこんなところまで来るなんて驚いたぞ! わっはっは!」


 一通りの話はしてくれたようだな。

 この様子だとアオイ丸たちはこの人のことをシロだと判断したんだな?


「戦士の村だと聞いたものですから、一度拝見させていただきたいなと思いまして」


「こんななにもない村で良ければ隅々まで見ていってくれ! わっはっは! あっ、でもあんた魔物使いって本当なのか?」


「えぇ。ここにいる鳥もリスも猫も大男もスライムもみんな魔物です」


「え……」


 ワッサムさんの動きがとまった。

 そして魔物たちを順番に見てる。


「……魔物使いってその大樹のダンジョンの中だけで有効な能力じゃないのか?」


「もちろんそれも大樹のダンジョンにとっては大事な能力ですが、どちらかというとこうやって実在する魔物たちを仲間にすることができるという能力のほうがメインだと思ってます」


「……魔物なのに襲って来ないのか?」


「襲いません。彼らは我々人間と同じように知能を持っていますし、人間の言葉も理解できますので」


「……そこのきれいな色のスライム……さん? ロイス君の足元に来れるかな?」


 ゲンさんの肩に乗っていたメタリンは言われた通りに俺の足元へジャンプしてきた。


「おお……凄い……」


 なんだか凄く新鮮な反応だ。

 でもこれが普通か。

 マルセールの人たちの反応に慣れすぎてて普通がわからなくなってるな。


「でも魔物使いか~」


 ん?


「う~ん、魔物使いねぇ~」


 なにを考えてるんだ?


「魔物がこんなにたくさんねぇ~」


 やはり危険だと思ってるのか?


「……ご迷惑おかけしそうですかね? なら俺が入るのはここまでにさせてもらいますね」


「いや! そういうわけじゃないんだ!」


 じゃあどういうわけなんだよ……。


「ウチにいる頭の凝り固まった年寄り連中がな、魔物たちが村に入ってきたことをどう思うのかが心配になってな」


 最初は誰だってそうだ。

 戦士の村と呼ばれてるこの村なら尚更かもしれない。

 ピピたちはユウシャ村で、ユウナがいたにも関わらず酷い扱いを受けたようだしな。


「ちょっと待っててくれるか? 少し話を……ん?」


 ワッサムさんは急に洞窟のほうを見た。

 すると洞窟の中から声が聞こえてきた。


「魔物だー!」


「魔物が侵入してきたぞー!」


「追い払うんじゃ!」


「そこの人間たちもグルじゃ!」


「この村を焼き払うつもりじゃ!」


「ニャ~! (やめてよ~! 僕悪い魔物じゃない!)」


 ダイフクが叫び声とともに凄い速さで洞窟の中から飛び出してきた。

 そしてゲンさんの後ろに隠れる。


 どうやらダイフクが魔物だとバレたようだな。


 少し遅れてカスミ丸、アリアさん、ティアリスさんの順に走って出てきた。


 ん?

 暗くてよくわからないが洞窟の中からなにかが……。


 って火か!?

 それに雷も……。


「チュリ! (マカ! エク!)」


「「ピィ! (了解!)」」


 マカとエクは魔法を使った。

 飛んできた炎と雷はそれによって相殺され、消滅した。


 なんだよ今の……。

 人間に向かって魔法使ってきたってことだよな……。


 そして洞窟の中から再び声が聞こえる。


「敵も攻撃してきたぞ!」


「やはり敵だ!」


「魔物は殺していい! 人間は捕らえるんじゃ!」


「女だからって甘く見るんじゃないぞ!」


「足はかなり速そうだから注意しろ!」


 洞窟内から聞こえる声と足音がどんどん大きくなってくる。

 人の姿も見えてきた。

 これはマズいな。


「エマ、封印結界だ」


「はい! みなさん固まってください!」


「ミャ~(任せたわよ~)」


 そして俺たちの周りに封印結界が張られた。


「どういうことだ!?」


 ワッサムさんがアオ君に訊ねる。


「……すみません。実はダイフクも管理人さんの魔物なんです……」


「えぇっ!? 猫じゃないのか!?」


 いや、猫は猫だぞ。

 まぁその説明はあとだ。


「おい!? 魔物が大勢いるぞ!?」


「ワッサム!? なんでお前がそっちにいるんだ!?」


 面倒なことになってしまったようだ。


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