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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第三章 集いし仲間たち
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第五十一話 防御特化パーティ

 火曜日の十二時を少し過ぎたころ、今日もまた山頂エリアにたどり着いた冒険者がいた。

 ティアリスさんパーティだ。


 彼女らのパーティ構成は戦士二人、レンジャー、魔道士。

 なかなかバランスのいい構成だと思う。


 今は吊り橋を渡った先、その周辺の森にいるブラックオークと戦闘してるところだ。


 いつものように俺とカトレアはソファに座って水晶玉の画面で見ていた。


「前衛に盾持った戦士が二人もいるとさすがに硬いな」


「……そうですね、防御しながらも確実に攻撃してますしね」


「ティアリスさんの補助魔法だっけ? 防御力上昇系の魔法なのかな?」


「……おそらくそうだと思います。スピードや攻撃力が上がってるようには見えませんからね」


「このブラックオークは槍持ってるから至近距離にはなかなか近づきにくいよな」


「……一人が防御してもう一人が攻撃と上手く連携できてますね」


「そして二人に気をとられてるブラックオークの死角から弓で攻撃か」


「……コントロールもいいですね。もう少し力? 速さが欲しいところですが」


「ガチガチの守り主体の戦法だな。戦士のどちらかに防御を任せてもう一人は両手で剣を持って攻撃したほうがいいんじゃないのかな?」


「……ティアリスさんの魔法を軸に考えてるんでしょうね、攻撃力を捨ててでもまずは死なないことを優先してるんでしょう」


「そうか。死んだら終わりだもんな」


 昨日の冒険者三人組は全員が剣を持って斬りかかっていた。

 攻撃が最大の防御と言ったり言わなかったりするみたいだが、俺はまず防御を考えた上でどうやって攻撃するかを考える派だ。

 

 え? 俺が戦ってるとこ見たことないって?

 その通り、ダンジョンが忙しくなってからはしばらく戦った記憶がない。

 外での資金稼ぎもメインはシルバがやってたからな。


 ん? そういや盾を持ったことは一度もないかもしれないな。

 だって重そうじゃん?

 右手一本で剣を持つのも重そうだしな。

 あっ、もちろん自分の剣は持ってるよ?

 重いから両手持ちね。

 ……完全に攻撃主体だと思われるだろうな。


「終わったか。あっ!?」


「……ドロップしましたね、あれはどっちでしょうか?」


「まぁ通常だろうな。こないだも猪肉一発でドロップしてたよな? どんだけ運がいいんだよ」


「……ふふふ、今頃ウサちゃんたち走り回ってますね」


 ドロップ品担当のウサギたちは毎日暇そうにしていた。

 地下一階のダークラビットの毛皮はそれなりにドロップしているようだからいいとして、地下三階の肉類はまだ多くても一日五品くらいだからだ。

 それに比べて魔物解体エリアのウサギは少し活き活きしてきたようだった。

 来週から始まるお店の研修中で肉をたくさん使ってるからだ。


「次はどうするんだろうな?」


「……また同じ戦術でしょうね。その前に私ならいったん休憩エリアに行きますが」


「俺もだな。また最初の休憩場所に戻されるのは嫌だしな。それにあの盾二枚あれば逃げ切れるだろうしな」


 ……着いたようだな。


「魔法をかけてるな」


「……やはり防御力上昇みたいですね」


 さて、どうするんだ?


「ん? 双子の一人が右に走った」


「……彼は盾を左手に持ってますからね」


「っと、いきなり弓での攻撃か。ドラゴンの皮は硬いからダメージはないだろうな。ドラゴンはジョアンさんのほうを一瞬見て……右の戦士のほうへ行くのか。おっ? 耐えたな」


「……もう一人の戦士の方とティアリスさんは真っ直ぐ走り出しましたよ? 彼は右手に盾だからそれでティアリスさんは隠れてますね」


「最短距離を行くのか。で、ジョアンさんは……右の方に走ってるな。二人二人に分かれたのか」


「……右の戦士の方、上手く防御だけに徹してますね。ドラゴンの攻撃の重さにも耐えてるようです」


「本当だな。この調子だと他の三人はすぐ逃げれたと思うんだけどな。なんでジョアンさんは右に行ったんだ?」


 真っ直ぐ進んだ二人はそのまま逃げるのかと思いきや、ティアリスさんを真ん中に残して、戦士は右で戦ってるドラゴンの背後から斬りかかる。


「これは倒す気みたいだな。ジョアンさんが右に行ったのはドラゴンの気を引いて背後からの攻撃を悟らせないためか?」


「……さすがに今度は後ろを振り向きましたね。そして戦士は攻撃を止めて防御に徹すると……」


「今度は背後から二人で攻撃か……しかもさっきからドラゴンの右の羽だけを狙ってるみたいだな」


「……まず飛べなくするというところでしょうか。でもそんなにダメージは与えられてないみたいですね」


「と、またドラゴンが逆を向いたか。こうなると戦士は一人で攻撃……はしないでドラゴンの左側に移動か。ティアリスさんもしっかり隠れるように回ってるな」


「……右側の戦士の方も防御しながらじわりと角度を変えていって……これで戦士二人が今度は横に並びましたよ……上手く休憩エリア側に全員回りましたね」


「ここからどうするんだ? 逃げるのかな?」


 こうなったら攻撃の手段がないんじゃないのか?

 ブラックオークのときと同じように片方が攻撃というわけにもいくまい。

 いったん守りを整えて持久戦に持ち込む気か?


「あ、これ火吐くな」


「……ですね。イライラしてますからね」


 その直後、ドラゴンの口からとてつもない炎が吐かれた。

 火魔法でいうと初級と中級の間ってところか。


「耐えてる!?」


「……それよりジョアンさんが短剣を両手に持って二本で左から攻撃してます!」


「戦士の一人も逆から攻撃をしてる! ……三人で攻撃!? ドラゴンが火を吐いた反動で隙ができるのを待ってたのか!?」


「あっ! 短剣を右目に突き刺しましたよ!?」


「暴れてるな……さすがに目をやられたらキツイか」


「……理性を失ってるようですね。そしてまた右羽を攻撃、右目と右羽に傷を負ったらさすがのドラゴンもバランスが保てないでしょうね」


 その後、戦士の一人はドラゴンの左目の視界に入るように動き、ドラゴンの死角からはジョアンさんが攻撃、火を吐きそうになると盾二枚体制で防御に徹しその反動の隙を利用して三人で攻撃ということを繰り返し、ジワリジワリとダメージを与えていった結果、四十分以上の戦いに幕が下りた。


 最後はドラゴンの体力が尽きたところを一斉攻撃でとどめを刺した。


 残念ながらドロップ品は得られなかったようで、ティアリスさんはすごく悔しそうにしている。


「ブレス軽減の魔法とかあるの?」


「……あります。もしかしたら火耐性もなにか対策をしてきたのかもしれません、それに重量上昇とかもかけてるかも」


「防御っていっても色々あるんだなー。それに回復魔法も使えるのは大きいよな」


「……自分たちの攻撃力のなさを徹底的に防御力で補いましたね。弱みと強みをしっかり分析できてるいいパーティですね」


 ふと疑問に思ったことがある。

 それならここに攻撃に自信がある人を入れたらいいんじゃないの?


「パーティの人数に制限とかあるの?」


「……制限とかはないと思いますけど……四人以下が一般的なんじゃないですか?」


「なんで?」


「……なんでと言われましても……私もわかりません」


 人数が増えると連携の問題とかがあるのか?

 依頼を受けたりする場合に一人当たりの報酬が減ることにはなるな。

 敵に見つかりやすくなるとかもありそうだな。

 そう考えると四人がベストって考えになるのか?


「とにかくこれで第二休憩エリアも使ってもらえるな」


「……でもどうせBBQエリアは使ってもらえません。ウサちゃんが可哀想です」


「……もう廃止にしようか。店も出すことだし」

 

 この休憩エリアの先はまた少し森が続き、その森の先には魔物急襲エリアがある。

 だがしばらくは挑戦者すら現れなさそうだ。

 ドラゴン一匹どころの話じゃないからな。


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