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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第五百五話 行先不明の馬車

 砂漠をウェルダン馬車が走る。

 御者席ではティアリスさんとアリアさんが楽しそうにお喋りながら魔法を放っている。

 二人とも魔法杖での攻撃な。


 俺はドアを少しだけ開け隙間から覗いている。

 別に二人を見てるわけじゃなくて砂漠の景色を見てるんだからな?


 そこへ馬車後方を偵察していたピピが戻ってきた。

 ピピが入るための隙間でもあるんだからな?


「追手はどうだ?」


「チュリ! (だいぶ差がつきましたのでもう大丈夫だと思います!)」


「了解。この馬車は今どのへんを走ってる? あのお爺さんたちが経営してたオアシスとナミの町の中間あたりまでは来てるか?」


「チュリ(十五分程度ではまだそこまでは行ってませんね)」


 ウェルダンもいつもの速度とはいかないから仕方ないか。

 暑いし、歩きにくいし、砂漠のメリットってなんなんだろうな。


「ティアリスさん、そろそろお願いします」


「うん! ウェルダン君! 私がいいって言うまで少しずつ右に方向転換して!」


「モ~! (了解!)」


 そして馬車はサハの町へ向かっていた方角から、フィンクス村の方角へと向きを変えた。


「三分くらいでいいよね?」


「そうですね」


 ティアリスさんとアリアさんの声が聞こえてくる。

 別に盗み聞きしてるわけじゃないからな?


「じゃあピピとメルは空中からウェルダンの足跡や馬車の車輪の形跡を風魔法で消してきてくれ。その前に後ろの馬車に行ってゲンさんとマドに土魔法で適当に砂を散らばらせておくように伝えてくれ。あくまで砂嵐が発生した感じで頼むぞ」


「チュリ(砂嵐なんて見たことありませんよ……まぁ適当にやってきます)」


 ピピとメルは飛び立っていった。


 そして三分後、馬車はフィンクス村とは違う方向へ向きを変えた。


 ふぅ~。

 追手を撒くのにも一苦労だな。


 俺たちがナミの町を出る直前、城で会ったあの冒険者パーティがラクダで追ってきてることにピピが気付いた。

 なにか用があるのかなと思い、とまって待ってみたものの、向こうも同じように遠くでとまってるではないか。

 そしてこちらが動き出すと向こうも動き出す。

 尾行を頼まれたんだろうな。


 だからサハに向かうフリをするためにしばらく東に進むことにした。

 すると当然のように向こうも追っかけてきたではないか。

 でも向こうが誤算だったのはウェルダンの走る速度だろうな。

 行きはラクダの速度に合わせて走ってたから、本当はウェルダンがもっと速く走れるということを知らなかったんだろう。


 そして冒険者たちは痕跡を辿って俺たちを追っていると、途中からはその痕跡が急にフィンクス村方向に向かっている。

 しかもそのフィンクス村への痕跡が途中でなくなっているとなれば、きっと俺たちがわざと痕跡を消したことにも気付くだろう。


 その場合はどっちに行ったと思うのが普通かな?

 素直にフィンクス村へ行ったと思うか、フィンクス村へはミスリードで本当はそこからまたサハへ向かったと思うか。

 シファーさんのことがあったからついでにフィンクス村へ寄ってみようと考えたと思ってくれる可能性もあるからな。


 その次くらいにモーリタ村へ向かった可能性も考えるだろうか。

 その場合はアオイ丸と話した村人の戦士が、ナミの町の誰かと繋がってたというケースが濃厚だろうけどな。

 そうじゃなきゃモーリタ村という選択肢なんかまず出ないはずだ。


「本当にここまでして撒く必要があったのでしょうか?」


「追われたら撒きたくなるだろ」


「そんな理由ですか……。でも私はアオイ君がお話しした人は補佐官さんたちとは関係ないと思ってるんですが」


「なんでそう思う?」


「もし封印魔法の使い手がいるのなら補佐官さんに知られてないわけがないでしょうからね。それならナミの町の封印魔法もまずモーリタ村の方に頼むでしょう」


「それは俺も考えたよ。でも頼んでたとしてもなにか理由があって無理だったから俺たちに言ってきたんだろうしさ。それに村を守る壁のようなものがあるって言ってただけで封印魔法の使い手がいるとは言ってないし。実際には封印魔法の壁もないかもしれないが、少なくともなにか本とかで封印魔法が伝わってるってことだろうと思ってさ」


「……そこまで考えてたんですか」


「これくらいはな。でもじゃあカトレアはその人の目的がなんだと思ってるんだよ?」


「そんなのわかりませんよ。だから確かめに行くんじゃないですか」


「だな」


 今馬車はモーリタ村へと向かっている。

 これが多数決の結果だからな。


 決を取る前に俺がみんなに伝えた意見は、モーリタ村に行ってそこから船で帰ればいいということだけだ。

 村周辺の海の状況なんか知らん。

 とにかく行ってみないことには話が謎のまま終わりそうだからな。


 最初とは違い今度は誰がどちらに手をあげたかみんなが見える形で決を取った。

 賛成派は俺、ハナ、エマ、カスミ丸の四人。

 反対派はティアリスさん、アリアさん、アオイ丸の三人。

 カトレアはどちらにも手をあげなかった。


 その結果、モーリタ村へ行くことが決定した。


 ティアリスさんとアリアさんはやはり罠の可能性がある以上行くのは危険と考え反対したようだ。

 護衛を任されてる身としては当然の判断だと思う。

 アオイ丸はすっかり自信をなくしてしまってるから、自分のせいでみんなを危険に晒すわけにはいかないと思ってるんだろう。


 もちろんその三人も行くと決まったからにはすぐに気持ちを切り替えてくれている。

 魔物との戦闘が避けられない以上、三人の力は必要だからな。


「ロイスさん、これ美味しいですよ」


 ハナがお菓子をくれた。


 ……うん、美味い。


「なんだこれ?」


「デーツと言ってナツメヤシの実を乾燥させたものらしいです」


「あの落ちてきたヤシの実がこれになるのか?」


「あれはココヤシという種類のヤシの木らしいですので別ですね。よく見ると町中には何種類ものヤシ科の木がありました」


「へぇ~」


 ヤシの種類のことを言われてもさっぱりわからない。


「ハナちゃん、ウチで栽培できるリストにもヤシ科の木はたくさんありましたからこれを参考にまた美味しいお菓子作ってくださいね」


「はい!」


 うんうん。

 みんなを飽きさせないためにどんどん新しいお菓子を作ってくれよ。


「ではロイス君、モーリタ村周辺の戦闘に備えて会議をしましょうか」


「そうだな。あと少し痕跡削除したら始めるか」


「もう大丈夫ですよ……。この同じような景色が続く砂漠で全く同じルートを取れるはずありませんって……」


 せっかくだからとことんやりたいし。

 ここからモーリタ村へも念のため少し大回りをして向かってるけど。


 そしてしばらくしてピピたちを呼び戻し、会議が始まった。

 このあたりは魔物が少ないようだから馬車の御者はカスミ丸とボネが務めている。

 ゲンさんは一人後ろの馬車だ。


「もう少し進んだら馬車は一台にします。狭いですけど我慢してください。では戦闘配置を発表します」


 御者席にはティアリスさんとアリアさんとメタリン。

 馬車内の御者席すぐ後ろには俺とカスミ丸。

 カトレア、エマ、ハナ、ダイフクは真ん中で休憩。

 最後方にはゲンさんとボネとアオイ丸。

 ピピとタルは空中。

 残りのリスたち四匹は馬車の屋根上。


 うん、完璧だな。


「ティアリスさんとアリアさんは遠目からでも果物っぽい物が見えたらすぐに報告してください。ピピも魔石拾いより果物探しを優先してくれ」


「ねぇ、レア魔物探しもいいけど普通の敵にも注意したほうがいいんじゃないの?」


「それは当然のことですから」


「でも敵も強いんだよね?」


「アオイ丸が調べた情報が正しければ、普通です」


「普通なの?」


「主にFランクやGランクで、たまにEランクが出るくらいですからね。群れで行動する魔物が多いせいで危険だと思われてるんでしょう。あ、紙に魔物の特徴をまとめたので見てください」


 ティアリスさんとアリアさんは食い入るように見始めた。

 博識なティアリスさんは聞き覚えがある魔物が多いらしい。


「う~ん、Fランクが群れでいるって結構危なくないかな? 数十体の群れとかの可能性もあるって書いてあるよ?」


「大丈夫ですよ。そのリストに載ってる魔物は全部ウチにもいますから危険度は把握済みです」


「え? じゃあロイス君は見たことあるの?」


「まぁ一応。地下二階や三階に出現させようか悩んだ魔物もいるんです。でもどうせなら砂漠のような一番適してるフィールドで出現させてやりたいですからね。Eランクのレッドウルフだけはこないだの地下四階新エリアに出現させちゃいましたけど。適度な強さでちょうど良かったんですよ」


「あのレッドウルフって結構強かったですよ? 私とティアリスさん二人で戦いましたけど、複数匹で出現されると少し手こずりましたもん」


「二人だけで行くからですよ。それにそのときはまだ攻撃役がアリアさん一人しかいなかったからじゃないですか? 今だったらティアリスさんも中級魔法杖持ってるんですから二人でも余裕ですって。まぁ今回は馬車から降りては戦いませんから、その分アリアさんの本来の持ち味は活かせないですけどね。上からはピピやリスたちが魔法で総攻撃しますし、手が足りてないようならウェルダンも攻撃しますので大丈夫です。リスたちもここまではまだ全然本気出してませんので」


「え……はい」


 リスたちの実力を侮ってもらったら困るぞ。

 Dランク相手では厳しいかもしれないがEランクなら大丈夫だ、たぶん。


「ん?」


 少しだけ隙間を開けておいた前のドアからボネが入ってきた。


「どうした? 喉乾いたか?」


「ミャ(馬車とめるわよ)」


「え?」


 そして本当に馬車がとまった。


 なにかあったのか?


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