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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物
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第五百二話 買い物好きの人々

 まだか?

 いくらなんでも長すぎるだろ。

 ここに馬車をとめてからもう一時間は経過してるよな?

 なのに誰一人戻ってこないってどういうことなんだよ。

 さっきからリスたちが何度も荷物を置きには来てるけどさ。

 でもお土産ってこんなにいっぱい買うものなのか?

 それだけピラミッド土産が魅力的ってことなのか?

 自分のための物じゃなくて誰かにあげる物が多いんだろうか。

 あの美味しくないピラミッドクッキーは買ってないだろうな?

 人にあげるんなら見た目で選ぶだけじゃなくてちゃんと美味しいやつを買ってこいよ。


「ミャ~(ダイフクは帰ってきたの?)」


 あ、そういやダイフクたちのことをすっかり忘れてた……。


「ピピ、ダイフクとアオイ丸を探してきてくれ」


「チュリ(えぇ~? そのうち帰ってきますよ)」


 そんなに外に出るのが嫌なのか……。


 そしてさらに三十分が経過したころ、ようやく買い物組のみんなが馬車に戻ってきた。


 買い物が終わった人から順番に戻ってこりゃいいのに、なんでみんな揃って戻ってくるんだろう。

 待たせてる罪悪感があったからだろうか。

 みんなで戻ればこわくないってやつか。


 それからまず二台目の馬車を設置した。

 お土産は全て後ろの馬車に持っていかれ、各自のレア袋に自分が買ったお土産を収納する作業が始まったようだ。

 後ろの馬車からは凄くにぎやかな声が聞こえてくる。


 ゲンさんとメタリンは外に移動して見張りをしてくれてるようだ。


「ミャ~(人間ってよくわからないわね)」


「非日常的なことに惹かれるんだろうな。だから観光地が儲かるんだと思う」


「ミャ~(ロイスやカトレアは店に入ろうとすらしないじゃない)」


「どんなものが売ってるか興味はあるぞ。でももうこの暑さや面倒さには勝てそうにない。店を外から眺めてるだけでナミを堪能した気になってるしな。砂漠はもうお腹いっぱいだ。カトレアも本当は店を見たりしたいんだろうが、連日の疲れには勝てないんだろう」


「ミャ~(ふ~ん。二人ももっと人生楽しんだほうがいいわよ)」


 これだけで楽しんでないことになるのか?

 店に入ってなにもいいものがなかったときはきっと疲労も二倍だぞ?

 それにこの観光地のメインはピラミッドなんだろ?

 そのピラミッドは遠くからだけど一応見たし。

 中に入り頂上まで登って砂漠の景色を眺めてようやくナミを観光したと言えるのかもしれないが。

 みんなを見てるとそのピラミッドよりもお土産のほうが大事なようにも見えるけどな……。


「待たせたでござる」


 カスミ丸が後ろから入ってきた。

 本当に待たせたと思ってるのか?


「長くなっちゃってごめんね」


 ティアリスさんも冒険者のときは知らない町に行ってもここまで買い物なんてしてなかったんじゃないのか?


「今日はナミに泊まるものだと思ってましたから……」


 まぁエマの言うことはもっともだ。


「食べたことない物とりあえず全部買ってきました」


 ハナは勉強のために来たんだもんな。

 夜の飲食店に連れてってやれないのは申し訳ない。


「見てください! ピラミッドの置物です!」


 なにが気に入ってそれを買ったんだよ……。

 お母さんの形見の鎧みたいに部屋に飾るんだろうか……。

 アリアさんのことはまだよくわからないな。


「ロイス君怒ってる? ごめんなさい。なんだかみんなといっしょにいると楽しくてついつい買い物が進んじゃったの」


 なるほど。

 そういう心理もあるのか。


 でもさっきからティアリスさんしか謝ってこないじゃないか。

 ほかのみんなは俺のわがままで急に帰ることになったって怒ってそうだな。


「今日はここで一泊するか?」


「「「「えっ!?」」」」


 嬉しそうだな……。

 まさか明日は早朝からピラミッド観光とか考えてたんじゃないだろうな?


「俺とカトレアは帰るけど、泊まりたいのなら泊まっていってもいいぞ。ウェルダンにはまた迎えにこさせるから」


「それはダメでござる。これは仕事でござるからな」


「えっ、そ、そうですよ! ロイスさんが帰るなら私たちも帰ります!」


 おいエマ、今カスミ丸が先に発言しなかったらなんて言おうとしてた?


「ざっと話を聞いた感じだとさ、今ここに残ったらトラブルになるかもしれないんでしょ? それなら早く町を出たほうがいいよ」


 そうだティアリスさん、もっと言ってやってくれ。


 って楽しそうに長時間買い物をしてた人が発言するようなことじゃないけどな。


「じゃあそろそろアオイ丸たちを探してきてくれ。みんなで行けばすぐ見つかるだろ」


 そしてピピたちは馬車を飛び出していった。


 ……が、ほんの十秒ほど外に出ただけですぐに戻ってきて馬車の中で涼みだした……。


「そんなに暑いか?」


「チュリ(違いますって)」


「もう謁見は終わったでござるか?」


「ニャ~(死にそう。水)」


 なんだ、ちょうど帰ってきたのか。


 ダイフクは凄い勢いで水を飲み始めた。


「ちゃんと水分補給してくれてたんだろうな?」


「飲みすぎなのでござるよ。だから余計に喉が渇くのでござる」


「ニャ~(子猫にこの暑さはきつい)」


 子猫じゃなくてもきついんだから子猫には相当きついんだろう。

 ボネもいつも以上にグッタリしてるし。


「なにかいい情報はあったか?」


「微妙でござるな。ピラミッドのことも水道屋のこともろくな情報がなかったでござる」


「なら微妙とすら言わないだろ。とにかくお疲れ。もう帰るから馬車の中でゆっくりしてくれていいぞ」


「えっ? 帰るでござるか?」


 そしてアオイ丸にも城での出来事を説明する。


「そんなにやり手の補佐官なのでござるか」


「だからこの町のことは俺たちが気にする必要もなさそうだ。あの人なら例えこの町が魔瘴に覆われたあとでも平気で魔道列車を開通してくれって言いに来そうだからな」


「ふむ。そういうことなら仕方ないでござるな。ダイフク、さっきの件は諦めるでござるよ」


「ニャ~(だから僕はさっきから行きたくないって言ってるってば)」


「なんの話だ? ダイフクは嫌がってるぞ?」


「え……嫌だったのでござるか……」


 アオイ丸はショックを受けたようだ。

 ダイフクは表情に出さないからわかりづらいよな。


「で、なんの話なんだよ?」


「冒険者ギルドでロイス殿が気に入りそうな面白い話が聞けたでござるよ」


「あ、そうか。この町にもギルドがあるんだな」


「昼間の時間にしては結構人多かったでござるよ。以前と比べると依頼がかなり減っているみたいでござるけど。観光客が減ったせいで依頼主となる業者も大変そうでござる」


 お金がある国と言っても町民は普通の暮らしだって話だしな。

 補佐官さんにもちゃんと町民の不安が伝わってるんだろうか?


「面白い話って?」


「実はでござるな、最近モーリタ村付近で奇妙な魔物が目撃されたらしいでござるよ」


「奇妙な魔物? なんで奇妙な魔物を俺が気に入ると思ったんだよ……。いくらレアな魔物だとしても奇妙なのは……いや、話を最後まで聞いてからにしよう」


 奇妙って言っただけで気持ち悪いとは言ってないもんな。


「その前に、モーリタ村のことはご存じでござるか?」


「ここから南西にある村だろ? ダイフクに触ろうとしたあの衛兵さんの出身地だ」


「そうでござる。でもどうやらかなり特殊な村のようでござる」


「特殊って?」


「ナミの国に属してるとはいっても、このナミの町とはほとんど絡みがないそうでござる」


 独立してることを特殊とは言わないよな?


「そんな疑いの目で見ないでほしいでござるよ……」


「早く帰らないと日が暮れるから無駄話を聞いてる暇はないんだよ。みんなも買い物疲れで早くお昼寝したいって思ってるんだぞ」


「「「「……」」」」


 誰も否定しない……。


「あ、自分はまだ買い物してないでござる」


「カスミ丸がいっぱい買ってるからそれを見るか貰うかして満足しとけ。で、話の続きは?」


「……」


 いちいち落ち込むなよ……。


「わかったよ。このあと少しだけ時間取るから」


「それを早く言ってほしかったでござる。ヤシの実ジュースやお菓子を食べてみたかったでござるからな。あ、そのピラミッドの置物いいでござるな。自分も買うでござる」


 置物マニアがもう一人いたか……。


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