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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百九十九話 突然の終了

 トイレには行かない少しばかり長いトイレ休憩が終わり、改めて交流会の席に着いた。


「大変お待たせしました」


「「「「……」」」」


 みんな不安そうに見える。

 俺たちの会話の内容が気になって仕方なかっただろうからな。


「用事思い出したので帰ります」


「「「「……えっ!?」」」」


 一瞬の間があってみんなが驚いた。


「用事思い出したので帰ります」


「いやいや! 聞こえていないわけではないですけど、急になにを仰られるんですか!?」


「急用ですぐに帰って来いと言われまして」


「え……誰もここに入ってきてませんよね?」


「ウチで開発中の最新の通話魔道具というものがありまして、それは世界中のどこにいても連絡が取れるというものなんです」


「……」


 通話魔道具のことまでは知らないか?

 やはり情報がないことに対してはそれほど追及してこようとはしないな。

 そんな通話魔道具が開発できるんなら早く欲しいもんだ。


「じゃあラシダさん、レア袋の中の水を全部水路に補充してきてもらってもいいですか?」


「え? 今ですか? 水路の水量にはまだ多少余裕がありますから急がなくても……」


「ん? もう水はいらないってことですか? せっかく持ってきたんですからたっぷり補充したほうが良くないですか?」


「え? …………レア袋を回収するってことですか!?」


「「「「えぇっ!?」」」」


「そりゃそうでしょう。こんな大容量のレア袋なんですからなにかに悪用されるおそれもありますし、もしそんな事態になったらカトレアの錬金術師生命は終わりですよ? 錬金術師ギルド長からも厳しく言われてますから」


「「「「……」」」」


 封印魔法のために定期的に訪れることになるんなら水もその都度持ってくるつもりだったんだけど、もういいだろ。

 心が狭いと思われても別にいいや。


「みなさん、お食事でもいかがかな? ぜひおもてなしをさせてほしいのだが」


 ほう?

 ここで国王か。


「いえ、ありがたいお話ですがこちらも急いでますので」


 って言っとけばそれ以上誘えないだろ。


「管理人さん、もう一度話を聞いてくれないか?」


 今度は地味なリーダーか。

 こういう状況でも声をかけてこれる勇気があるのは親譲りなんだろうか。


「俺ってそんな暇そうに見えます?」


「いや……大樹のダンジョンの冒険者からは管理人さんの身体を心配する声が度々聞こえてきた……」


 さすがにそこまで忙しくしてるつもりはないけど……。


「私たちを見捨てるのですか?」


 ん?


「見捨てるとは?」


「魔道ダンジョンを繋げていただかなければこの町は孤立します。こんな砂漠の真ん中でですよ? それに火山のことはどうするんですか? このまま放っておくつもりですか?」


「孤立しても生活はできますよね? 実際パルドではリーヌというこの町の何倍もの広さと人口を持つ町が孤立してますがなんとかなってます。そして次にここよりもっと早くラスという町もそのような状態になるはずです。火山のことはみなさんがここに残る以上、俺たちが心配することではありませんので」


「そんな……。では水のことはどうしろと仰るんですか?」


「そのための水道屋さんじゃないんですか? 地下遺跡に避難するのなら地上での転移魔法陣を気にしなくてもよくなりますよね? まぁ地下遺跡での生活でまた新たな転移魔法陣が必要になるかもしれませんけど」


「……封印魔法は? 頑丈な地下遺跡といえど、ひとたび魔物の侵入を許せばそこからなし崩し的に破壊されることになるかもしれないんですよ? 私たちに死ねと?」


「さっきと言ってること違いません? 封印魔法がなくてもいつまでも待つって言ってましたよね?」


「それは……いずれ魔道ダンジョンが繋がる希望があれば待てるかもしれないということでして……」


 なんだか相手にするのも疲れてきたな。

 そろそろ城を出よう。


「ではすみませんがこのあたりで失礼させていただきます。ラシダさん、俺たちは外の馬車で待ってますので水の補充が終わったらレア袋を持ってきてください」


「……わかりました。どうぞこちらへ」


 意外にラシダさんはあっさりだな。


 俺たちが立ち上がり歩き始めても国王たちは立ち上がろうとすらしない。

 補佐官さんも気力を失ったのか下を向いてしまっている。


 せめて一言くらい別れの挨拶をしてくれてもいいのに。

 でもこれが俺たちとこの人たちの距離感を表してるよな。

 これくらいでは戦争にならないと思うが、これで戦争になるんなら仕方ない気もする。

 この人たちにとって俺たちが頼みの綱の最有力候補であったことには間違いだろうからな。


 ドアが近付いてきたところでラシダさんが立ち止まり、俺のほうを振り向いた。


「ロイスさん、少しだけピピちゃんをお借りしてもよろしいですか?」


「ピピ? なんでですか?」


「地下遺跡を見てもらっておこうと思いまして」


「……そういうことなら」


 遠慮なく見せてもらおうか。

 本当は俺も見てみたかったけど。


 ラシダさんはドアを開け、外にいた衛兵に俺たちの案内を任せ、自分はピピといっしょに逆方向に歩いていった。


 そして城の外に出た。


 ……暑い。


 この見張りの衛兵さんたちよくずっとこんなところに立っていられるな。


「あれ? 馬車がないぞ?」


「観光中なんでしょう。カスミちゃん、馬車を出してください」


 城から少し離れた邪魔にならないところへ移動し、カスミ丸がレア袋から馬車を出した。

 すぐにみんなが乗り込む。

 ゲンさんは外で見張ってくれるようだ。

 岩だからって暑さを感じないということではないだろうけどな。

 むしろ岩が熱されると火傷するんじゃないか?

 ただでさえ鎧も着てるのに。


「ゲンさん、大丈夫?」


「ゴ(ん? 暑さのことか? この鎧着てるとなんとなく気持ちいいから心配しなくていいぞ)」


 さすがミスリルの鎧だ。

 ってアリアさんは暑いからってサハに着いてすぐ脱いでたけど。


「ゴ(それに鎧を着てなくてもこのくらいの暑さならなんともない。俺の体は暑さにも寒さにも雨にも強いんだぞ)」


「そっか。じゃあ外はお願い」


 間違いなくゲンさんが最強だよな。


 そして馬車のドアを閉めた。


「ふぅ~。やっぱり馬車の中が一番快適だな」


「本当にこれで良かったのでしょうか?」


「ん? いいんだって。ここは放っておいてもなんとかなるんだからさ」


「そうですけど……確認したわけではありませんし……」


「王都の魔道士のことか? もし交渉が上手くいかなかったらまた俺たちのところに来るだろうからそのときでいいって」


「……そうですよね」


 まぁ少し関わってしまった以上気がかりなのはわかるけど。


「火山のことは話したし、あの人のことだからすぐに調査させるだろ。そのほうが俺たちも楽でいいし、なにより危険な目に合う心配もしなくていいしさ」


 またあの冒険者パーティが調査するんだろうか。

 身内がいるから色々と都合いいだろうしな。

 平均年齢は高そうなパーティだが、ウチに来て修行すればまだまだ強くなれそうなのに。


「では自分はみんなを探してくるでござる」


「あっ! 私も行きます!」


 カスミ丸とアリアさんは馬車から出ていった。


 暑いのにご苦労なことだ。

 たぶんアリアさんはこの町の店を見に行きたかったんだろうけど。

 あとで良さそうなお土産屋を教えてもらおうか。


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