表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

497/742

第四百九十七話 地下遺跡調査報告

「では昨日から行っていた地下遺跡調査の報告をさせていただきます」


 地味なリーダーが話し始めた。

 ちゃんとした口調もできるんだな。


「まず水路内と水路外に使われてる石の材質ですが、これはおそらくほぼ同じと考えていいと思います」


 おお?

 それはいい報告だな。


「ですが、地上の建造物に使われてる石の材質と比べると強度が強いくらいで、魔力の伝導率に差があるとは思えません」


 どういうことだ?

 その言い方だと……。


「したがって、今の状態で地下遺跡全体に封印魔法をかけるというのは難しいかと」


「「「「え……」」」」


 国王たちは絶句した。


「ミニ大樹の柵、魔道プレート、魔道柱、魔道線、これらはパルド王国の各町村で封印結界のために使用されてる素材の名称です。我々はその実物を見てきましたが、魔力の伝わり方がそれはもう全然違うんです。地下遺跡の石と比べるのすらおこがましく感じてしまうくらいには」


「「「「……」」」」


 そんなになのか?

 ならピラミッド内の封印結界はどうやって張ったんだ?


 というか水路内の転移魔法陣を維持できてるのはそれだけ毎日魔力を注いでるからってことなのか?


「でも希望がないわけでもありません」


 ん?

 あまり期待させるようなことは言わないほうがいいぞ。


「水路内の転移魔法陣の効力が弱まらない理由、それはもちろん神殿の魔力スポットから毎日魔力を注ぎ込んでるおかげです。我々は今まで水路内の石が特殊な物だと考えてましたよね? でも今言ったようにそれは違ったんです。正確には全てが間違いではないけれど、認識が誤っていたと言うべきでしょうか。ここからは推測も交えます。我々が考えるには、おそらく水路の上層と下層を分断している石、その石だけがなにか特殊な物で作られてると考えるのが自然かと思うんです」


 上層と下層を分断してる石?

 上はきれいな水で、下は排水が流れてるんだよな?


 じゃあその間の石だけに魔力伝導率が高いなにかが使われてると言いたいのか?

 というかそう思ったんなら調べればいいのに。


「もちろん調べようとは思いましたが、調べたくてもそんな簡単には無理なんです。上層の水は飲み水としても使われますから汚すわけにはいきませんし、仮に一部の水をせき止めて石を採取したとしても、誤って下層の汚水が上層に流れ込んだりしたら大変なことになります。それにそのせいで水路への魔力伝導がなくなったりするとそれはもう水道屋の仕事が大変なことになりますから」


 俺の心の声が聞こえてたかのように丁寧に説明された。


 というかこの人、やたらと水路に詳しいよな。

 もしかして元水道屋なのか?

 水道屋から冒険者になる人がいてもおかしくないもんな。


「う~ん。石の厚さとかはわかっていませんものね。でも地下遺跡全体に封印魔法をかけることが難しそうなんだったらその石を調べたところであまり意味がないんじゃないかしら?」


「……まぁそうだけど」


 石のことよりもこの二人の関係が気になる……。


「ロイスさん」


「え? はい?」


「どうしたらいいと思います?」


「う~ん、調べたほうがいいよな?」


 カトレアに聞いてみる。


「当たり前です」


 ピラミッド内に魔力が送られてるかもしれないんだから俺たちとしては調べないわけにはいかないもんな。

 地下遺跡に封印魔法をかけてもらおうとしてたこの人たちは目論見が外れてもう希望を失ってるかもしれないが。


 というか文書を送る前に地下遺跡を調査したほうが良かったんじゃないのか?

 まぁどっちにしろ火山が本当に取り壊されてることが確認できたらこのまますぐに町を去れそうだ。

 ってあまり淡い期待はしないほうがいいな。

 マリンにも最悪のケースを想定して動けって言われてるし。


「地下遺跡の地図とかってないですかね?」


「あります!」


 水道長が答えた。


 そしてさっき手に持ってた杖……じゃなくてそれ地図を入れた筒だったのか。

 大きな地図をテーブルの上に広げた。


「おお~、この青い部分が水路って考えていいですか?」


「はい!」


 国王の前だからってそんなに張りきらなくていいから……。


「ピラミッドはどちらの方向にありますか?」


「こちらになりますね!」


 地図の西の端か。


「じゃあこの上が今俺たちがいる城ですか?」


「そうです! 神殿もこの地下にあります! 魔力や水を注ぎこむスポットもです!」


 それはなにかと都合がいいな。


「この町からピラミッドまでの地上の地図とかもあります?」


「少々お待ちを!」


 ラシダさんは走って部屋を出ていき、すぐに戻ってきた。

 そして地下水路の地図を横にずらし、もう一枚地図を広げた。


「地上のトンネルをくぐり町を出てラクダで歩いて五分ほど進むと、先ほどの話にありました秘密のピラミッドが左右に一つずつあります。普段は人が多いため、町とピラミッド間の道ではラクダを走らせる行為は禁止されてます」


 ラクダの歩く速度ってどれくらいなんだ?

 平地での人間の徒歩と同じくらいって考えていいのか?


「さらにラクダで五分進みますと、左右に一般公開用のピラミッドがあります。秘密のピラミッドよりは一回り大きいです」


 段々と大きくなっていくってわけか。


「そしてそこからラクダでさらに二十分進みますと、大ピラミッドへ突き当たります!」


 ここからラクダで三十分か。

 近いような遠いような。

 ラクダの歩く速度でそれなら、ウェルダン馬車で急げば五分くらいか?

 近いな。


「突き当りってことは、神殿の位置からしても一直線と考えていいですか?」


「いいと思います!」


 それなら楽でいいな。


「あの、さっきからなんのお話を?」


 補佐官さんが疑問に思うのも当然か。


「さっき言いかけてた話です。既にラシダさんと前国王夫妻にはお話してあります。ですが……」


 ちらっと冒険者たちのほうを見る。


「あ、彼らなら構いません」


「結構大事なこと話しますけどいいんですか?」


「はい。彼は、ラシッドは私の息子です」


 ほう?

 やっぱりそうか。


「ちなみにラシダも私の娘です」


「「「「えっ!?」」」」


 なんだと?

 今までラシダさんも補佐官さんもそんな素振りいっさいなかっただろ?


「もう一人娘がいますが、今は仕事中ですのでご紹介できません。その子はただの水道屋ですけどね」


 えっと……。

 つまりそのもう一人の娘がラシダさんの妹さんなんだよな?

 転移魔法陣しか使えないから封印魔法を教えてみてくれっていう。


「ちなみに私の名前はサイダ、これでも一応国王の妻です」


「「「「え……」」」」


 国王の妻だと?

 そっちのほうが驚きなんだが……。

 大臣補佐官っていうくらいだから大臣の妻の可能性はあると思ってたけどさ……。


 ん?

 この補佐官さんがこの国王の妻ってことは……。


「ラシダさんは国王の娘ってことですか?」


「……まぁ一応」


 おいおいおいおい……。

 なんでそれを早く言わないんだよ……。


 つまり王女様ってことだろ?

 なんでそんな人が衛兵やってるんだよ……。

 あ、入隊できたのもやっぱり実力じゃなくてコネなんじゃないか?

 って王女なら衛兵なんかやる必要ないじゃないか……。


 なんだかよくわからなくなってきた。


 それとこの地味なリーダーは王子様ってことだよな。

 リアムさんやジェラードさんはもう少しキラキラしてる感じはあったけど、冒険者をしてるくらいあってなんか地味だもんな。

 あ、冒険者が地味って言ってるわけじゃないぞ?

 この人はそんなに目立つようなタイプではないってことだからな?


 というかこの王女様、昨日サウスモナの町中で土下座してたぞ?

 向こうが悪いとはいえ、あんなのがバレたら俺が処分されるんじゃないだろうか……。


 衛兵たちもラシダさんが王女様だってことは知ってるんだよな?

 だからみんな従ってたのか?


「この国の国王は一代限りですので私たち子供が優遇されることはないんです。ですから私のことは一人の衛兵と思って接してください」


 それはわかってるけどさ……。

 王女や王子って言われたら頭を下げないといけない気になるのが俺たち庶民だろ?


「ロイス君、普通でいいんですよ。でもここは他国ですから、普段パルド王国の王子や王女にしてるような顎で指図するようなことはやめてくださいね、ふふっ」


「おい?」


「「「「……」」」」


 なんだか凄く誤解されたような気がする……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=444329247&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ