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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百九十六話 調査に来た冒険者

 補佐官さんが続きを話そうとしたそのとき、またしてもドアが開く音がした。


「失礼します!」


 衛兵が一人入ってきた。


「その場で待て!」


 ラシダさんの声により、衛兵はドア付近で立ち止まる。

 そしてラシダさんはその衛兵のところに駆け寄り、少し話をしたあと、衛兵をその場に待機させたまま戻ってきた。


「城の前に水道長と冒険者たちが来てるらしいのですが」


「あら、もう終わったのかしら? ちょうどいいからここに来てもらって」


「了解しました」


 水道長ってことは水道屋で一番偉い人ってことか?

 そんな人と冒険者がなぜいっしょに?


「一昨日から地下遺跡を調査させてるんです」


「地下遺跡を? 冒険者を入らせて良かったんですか?」


「もうそんなこと言ってる場合でもありませんから。地下遺跡の魔力状況を調査してもらってるんです。それと今お話ししてたピラミッドの秘密に繋がるなにかが見つかるかもしれませんしね。例えば隠し転移魔法陣とか」


 なるほど。

 できることは全てやっているように思えるな。


「俺たちもあとで地下遺跡に入らせてもらってもいいですか?」


「もちろんです。ぜひその目で地下遺跡をご覧になってください」


 ん?

 そんなに簡単に入らせてもらっていいのか?

 もっと疑ったほうがいいんじゃないか?


「青年、そろそろあの話もしておいたほうがいいのでは?」


「そうですね」


「あの話とは?」


 これだけ色々と話してくれてるんだからそろそろこっちも話すか。

 水のこと以上に驚くだろうが。


「実は火山があった場所にできたというピラミッドですが…………あとにしましょうか」


 ラシダさんが入り口で話す声が聞こえた。

 水道長たちが来たらしい。


「失礼します!」


 水道長と思われる人物の大きな声が響いた。

 そのせいか冒険者たちの声は聞こえなかった。


 ……水道長は杖を持ってるようだ。

 転移魔法陣を使うための杖かな?


 冒険者たちは男性二人、女性二人の四人パーティのようだ。

 この暑さなのに薄着の防具ではなく、しっかりとした丈夫そうな防具を装備している。

 地下遺跡になにか危険があるかもと考えたら当然かもしれない。


 戦士が一人、魔道士が二人、あと一人は軽装備だから中衛職か。

 ん?

 あの腰に付けてるのは爪か?

 なら武闘家かもしれない。

 って爪の武器ってアイリスのオリジナルかと思ってたのに、ウチ以外でも売ってたんだな。


「国王様、水道長と冒険者一行をお連れしました」


「うむ。すぐに席と冷たいお茶を準備しろ」


「はっ!」


 ラシダさんは急いで準備を始めた。

 そして俺たちから見て右、国王たちから見て左の、コの字になるような形で水道長たちは席に着いた。


 横から見られてるとなんだか気になるな。

 アリアさんとカスミ丸の警戒もより強いものとなっているようだ。


「ではまず地下遺跡の報告からお聞きしましょうか。リーダー、お願いしますね」


「……」


 誰がリーダーなんだ?

 水道長の隣に座ってる男性魔道士の人か?


「……」


 緊張してるのか?


「どうしました? ……ラシッドさん?」


「……なぜこの人がここに?」


 ん?

 この人?


「なぜって、大樹のダンジョンの方にもう一度来てもらうことになるとお話してたでしょう?」


「それはそうだけど……」


 補佐官さんに向かってその口調はいいのか?

 冒険者だからって野蛮な口調が許されると思ったら大間違いだぞ?


「いくらなんでも早すぎないか?」


「それは私も驚いたわよ。でも私たちにとってはありがたいことでしょ」


 なぜ補佐官さんまでそんな口調に?


 ……もしかして親子か?

 そうじゃなくてもそれなりに親しい仲だよな。


 というかこの冒険者の人、俺たちのことを知ってるってことだよな?

 ウチに調査に来たという冒険者がこの人なのか?


 ん?

 ほかの冒険者も俺のことを見て驚いているようにも見える。

 少なくともボネやピピのような魔物がここにいることに反応しているわけではなさそうだ。


「……この人がどういう人か知ってるんだよな?」


 やはり俺のことを言ってるのか?


「大樹のダンジョンの管理人さんでしょ?」


「わかってるんだな……」


「どうしたのよ? あなたたちのほうがロイスさんのことに詳しいはずでしょ?」


 やはりそうか。

 たちってことは四人ともウチのダンジョンに来てたのかもな。


「だからこそ管理人さんがこんな場所まで来てることに驚いてるんだよ……」


「そうです。最近日中は外出が増えてるという話でしたけど、朝と夜はいつも受付にいましたし……」


「つい三日前の朝もいつも通り受付で見たしね~」


「私のこと、覚えてないですか?」


 ……申し訳ないが誰のことも全く覚えてない。

 最近新規が多かったし、忙しくてダンジョン内のこともあまり見れてなかったからな。

 さすがにこの焼けた肌の四人パーティで来てくれてたら覚えてるはずなんだが。

 まぁそれだと調査に来てるのに行動にも制限がかかりそうだからそんなことはしないだろうし。


「ミャ(私その大きい男なら覚えてるわよ。やたらとダイフクをベタベタ触りながら話しかけてたもの)」


 戦士の人か。

 ダイフクはみんなから可愛がられるからな。


 ……あ、よく見たら四人が装備してるのってウチで売ってる物じゃないのか?


「それダンジョンストアで買ってくれた装備品ですか?」


「うん! あの店の品揃えと品質と価格はどれもヤバすぎ!」


 武闘家っぽい女性が答えた。

 元気があっていいな。


「私のこと、本当に覚えていませんか?」


「ミャ(なにこの女、しつこいわね)」


 またこの魔道士の女性か……。

 何度言われても覚えてないもんは……ん?


 あ、思い出したかも。


「もしかして小屋の横でペンネと水魔法で遊んでくれてた方ですか?」


「そうです! それ私です!」


「あ~~。すみません、服装が全く違ってたもので気付きませんでした」


「あのときは帽子も被ってませんでしたからね! 美容院で髪型も変わりましたし! それよりペンネちゃん私のことなにか言ってませんでしたか!?」


「いや……ペンネも色々と忙しいものでして……」


「そうですか……」


 急に落ち込んだ……。

 なんなんだよこの人……。


 確かあのとき、朝七時くらいに来て受付待ちしてたんだよな。

 それで小屋の中を掃除してたペンネを見つけて、遊ぼうって言って結局新規への説明が始まる八時過ぎまでずっと遊んでたんだっけ。

 でもこの様子だとあれからも何度か遊んでるな……。


「私のことは!? 覚えてるよね!?」


「ミャ(こっちも小さいくせにうるさいわね)」


 確かに小さい。

 武闘家だとしたらすばしっこくて……


「あ、二十二歳の人ですよね?」


「年は言わなくてよくない!?」


 やっぱりそうか。


 小さいから年齢やウチになにしに来たかを確認したんだった。

 飲食店と思って来られたんじゃ困るからな。

 それにしても顔や体と、年齢とのギャップが凄い。

 この人も髪型変えたよな?


「ゴ(そっちの斧持ってる男、俺に腕相撲してくれって頼んできたから相手してやったぞ)」


 ゲンさんに話しかけるなんてなかなか根性あるじゃないか。

 ダイフクとじゃれたりゲンさんと腕相撲したり、ただ魔物と触れ合いたいだけか?


「もしかしてゲンさん、僕のこと覚えてくれてるんですか?」


 見かけによらず優しい口調だな……。

 ガタイがいい戦士でしかも武器が斧ならもっと豪快なイメージなんだが。


「腕相撲したんですか?」


「しました! ビクともしなかったです!」


 負けたのに嬉しそうに笑顔で言うなよ……。


 じゃあこのリーダーの魔道士の男性も俺や魔物となにかしら絡んでたりするのか?


「ミャ(そっちの男はなんか地味ね)」


「チュリ(一番年上だからってリーダーに選ばれたんじゃないですか?)」


「ゴ(そんなこと言うなって。まぁ確かに魔法が使えるってこと以外これといって特徴はなさそうだが)」


 ゲンさんが一番酷いこと言ってないか?


 みんなの視線がリーダーに集まる。


「……俺はほら、その、風呂でいっしょになっただろ?」


 …………知らん。


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