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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百九十四話 脱・水不足

 国王たちはレア袋の使い方を覚えると、みんなして試しにコップに注ぎ始めた。

 そして味を確かめるようだ。


「美味い!」


「これが同じ水なのか……」


「魔法で作り出した水じゃないのかしら……」


「この水が大量に……」


「ワシたちの魔法の水ってなんなんじゃろう……」


「爺さん、考えないほうがいいわよ」


 水だけでこんなに喜んでもらえるんだな……。


「水路にちょっと補充してきてもいいですか!? あ、このレア袋を疑ってるわけではないんですけど、本当にそれだけの量が入ってるのか気になりまして!」


「どうぞ」


 ラシダさんは一人、部屋から出ていった。

 国王たちの護衛はしなくていいのかよ……。


 まぁラシダさんはずっとシファーさんの傍で作業を見てきたんだから気にもなるか。


 でも十年だっけ?

 年齢は聞いてないけどラシダさんも十年前は十五歳くらいだったんだろうか。

 シファーさんなんて……九歳?

 え?

 九歳で合ってるよな?


 よくそんな子供に大変な仕事をさせてたな……。

 まぁそんな幼いころから魔法の才能を発揮してたシファーさんが凄いんだろうけど。

 そりゃ女神様って呼ばれるわけだ。


「じゃあ文書の件に戻ってもいいですか?」


「……へ? 文書? ……あぁ、そうでしたね。水のことで頭がいっぱいになってましたが、それと同じくらい封印魔法のことも大事なんでした」


 封印魔法のほうがかなり大事だと思うが……。

 ってそこは水に対する価値観の問題か。


「では二枚目の一つ目、ナミ王国にあるナミの町全体を封印結界により保護をすること。まず改めて封印魔法について説明させてください。この町の規模を考えると封印魔法をかけること自体はそこまで難しくはありません。ただ、そのための準備が色々と必要になります」


 レア袋から魔道線を取り出す。


「この町の感じだと、錬金術で作ったこの特殊な線を町の外の壁に張り巡らせることで、封印魔法を町全体にかけることができたり、より威力を増幅させたりすることができます。そしてその封印魔法を維持するには当然魔力が必要となります」


「はい、それは理解してるつもりです。でも木の柵や柱がなくてもその線だけでいけるものなのでしょうか?」


 ほう?

 封印結界に必要な物まで調べてあったか。


「あれはなにもない場所に封印結界を張ろうとするからそうするしかないんです。この町のように石に囲まれてる場合はこの魔道線だけで下から上までカバーできます」


「なるほど。それならこの町はほかの町に比べると比較的容易に封印魔法がかけられるということですね?」


「……そうですね。でもこの魔道線の原材料をご存じですか?」


「ミスリル鉱石と大樹の森の木から作られてると聞いてます」


「そうです。大樹の森の木と言いましてもあの森には生えてない特殊な木で、ミスリルも含めてどちらの素材も大樹のダンジョンの機能で生成してるものです。つまり魔力が必要になります。ですが今のウチには魔力の余裕がありませんし、仮に魔力をそちらで用意していただいてもこの魔道線を作る錬金術師の手が空いてません。それに魔瘴が迫ってきてない今ならサハへ避難することだってできるはずです。マーロイ帝国やジャポングの人たちがパルド王国まで避難してきたことに比べたらまだマシな選択肢だと思いますが」


「それらのことも理解してるつもりです。でも簡単に引き下がるわけにはいかないものでして、もう一度大樹のダンジョンのみなさまとお話する機会を設けてもらいたかったのです」


 ……手強そうだな。


 そういやこの文書を最初に読んだとき、戦争という言葉よりも、俺たちに詳細を確認したいという意思のほうが強く伝わってきたもんな。

 ベンジーさんやカスミ丸は別意見だったけど。


 でももし俺がナミの立場なら、俺もすぐに避難を選択するんじゃなくてギリギリまでこの国を守る策を考えたはずだ。

 幸いにもまだ多少時間はあるから今はまだ焦るときでもないし。


 ……ということはなにか俺を説得できる策があるってことか?

 だから今も文書もここまで強気に出られるのか?

 俺が好戦的な性格だったら本当に戦争になってたかもしれないんだぞ?

 って俺の性格も調査したうえでのこの文書か。


 もしかして本当は俺がここに来ることもこの人の中では想定内だったんじゃないか?

 でも俺はカトレアに言われるまでは来る気なんかいっさいなかったしなぁ。

 ってこの人はカトレアとは実際に会ってるからカトレアの性格も把握していたのかもしれない。

 そこまで計算してたとするとかなりの強者ってことになるが……。


 大体この文書を交流会のための案内状としか思ってないような人ってことだもんな。

 それに話がしたいのなら普通はそっちから大樹のダンジョンに出向いてくるものじゃないのか?

 というかまだ地下遺跡やピラミッドの話はなにもしてないんだぞ?

 俺がここに来た理由の大半はピラミッドのことがあるからだぞ?


「……」


 ……俺のターンでこれだけ無言が続いてるのにまだ待てるのか?


 はぁ~。

 やりづらいったらありゃしない。


 カトレアも本当はこの人が裏ボスって気付いてて俺に相手させようとしたんじゃないだろうな?

 さすがにそれは考えすぎか。


「ミャ(その人、テーブルで隠れてるけどたぶん手が震えてるわよ)」


 いきなりボネが喋ったもんだからみんながビクッとした。


「チュリ(体の力の入り具合からして、両手を強く握って震えを抑えようとしてますね。でも顔には出しませんね。可哀想ですからそろそろなにかお話してあげてください)」


 ここまでの発言とは裏腹に体は震えてるのか。


 俺を怒らせてしまってないか不安なのかな?

 まぁ俺の気持ち次第では次の言葉でこの交流会もお開きになるかもしれないしな。


 ってなんだか俺、凄く上からの立場みたいで偉そうな嫌なやつじゃないか……。

 カトレアもそう思ってるんだろうか?


 カトレアを見ると、カトレアもジッと俺の目を見返してくる。


 …………なに考えてるかさっぱりわからない。


 なんとなくお爺さんを見てみる。

 ……目が合ったのにすぐ逸らされた。


 お婆さんは目を瞑って微動だにしない。

 寝てるのか?


 大臣は俺を睨んで……ん?

 なんだかさっきより弱々しい顔つきになってないか?

 そんな怖い顔してるんだからもっと堂々としてればいいのに。


 国王は……俺の前にいるボネとピピを見ている。

 動物が好きなのかな?


 補佐官さんは……あ、今一瞬目が泳いだな。

 無言の時間が長く続けば続くほど不安も大きくなっていくだろうからな。

 それにこれだけ俺がみんなの顔を見ているとなにか品定めをされているような気分にもなるかもしれないし。


 ってやっぱり俺、嫌なやつだよな……。


 話を先に進めるためにも、もう地下遺跡の話に入ろうか。

 俺たちが調べに来たことはお爺さんから聞いてるんだろ?

 ピラミッドはこっそり調べようと思ってたけど、もうお爺さんに話しちゃったし言ってもいいよな。


 というか話を中断させる場面を間違えたかもしれない。

 さっきの流れで地下遺跡の話に入ってればこんな微妙な空気にはならなかったかもしれないし。


 でもそれもこれもこの補佐官さんが強気な態度できたせいだから仕方ないよな。

 あまり話がとんとん拍子に進むと相手の思う壺みたいだし。


 はぁ~。

 ララがいれば俺の判断は正しいって言ってくれそうなんだけどなぁ~。


 って考えてても俺待ちのこの状態は変わらない。

 なにもなかったかのようにさっきの流れで続きを話そうか。


 とそのとき、遠くでドアが開く音がした。


 ……ラシダさんが戻ってきたようだ。


「凄いです! これがあればもう水不足に悩まされることもなくなります! 補充速度も凄く速いです!」


 ラシダさんが興奮気味に話すも、誰も相槌を打たない。

 でも俺としては流れを断ち切ってくれて良かったけど。


「ラシダさん、立ち位置に戻ってね。今は封印魔法の話をしてるところだから」


「えっ!? はい!」


 補佐官さんに言われラシダさんは再び国王の後ろに立った。


 さて、今度こそ話を再開するか。


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