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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百九十二話 謁見

 当然だが城の中の壁も床も全面石でできている。

 木の暖かい色に慣れている俺からしたらどうしても少し冷めてるように感じてしまう。

 まぁここは暑い砂漠だからそれが狙いなのかもしれないが。


 国王の部屋の前に着くと、少し待つように言われた。

 先にラシダさんが俺たちのことを話してくるらしい。

 もうあのお爺さんたちが話してると思うけどな。


「ララはこの城の中を見てどんな様子だった?」


「全く興味ありませんでしたね。ララちゃんはパルド城の中を知ってますから」


 だろうな。


 暑い中ラクダに乗ってこんな遠いところまで来て疲れてただろうし。

 さらにキャラメルキャメルを探しに行きたくてうずうずしてたんだもんな。

 だとしたらこんな石に囲まれただけの町とは一刻も早くおさらばしたいと思ってたはずだ。


 そういやお土産も全く買ってきてなかったもんな。

 少し店を覘いてみようという気にすらならなかったのかもしれない。

 ララにとってはピラミッドもどうでもよかったみたいだし。

 でもその割に遺跡にはだいぶくいついてたな。


 すると部屋の中からもうラシダさんが出てきた。


「お待たせしました。ではどうぞ」


 早かったな。

 そして両開きの重そうなドアが衛兵たちによって完全に開かれた。



 おお?

 想像してたより中は広いじゃないか。

 通路より天井も高い。


 奥に玉座が見え、そこには国王と思われる人物が座っている。

 王冠とかは被ってないんだな。


 部屋の入り口から玉座までの道には赤い絨毯が敷かれ、その両脇には衛兵が向かい合わせにずらーっと並んでいる。

 かなりの威圧感だ。


「いつもはここまで衛兵はいません。おそらく急いで準備させたものかと」


 俺の隣を歩くラシダさんが話しかけてくる。


「じゃああのお爺さんが俺たちのことを話してこうなってるんですよね? かなり警戒されてるってことじゃないですか」


「どうでしょうか……。前にカトレアさんやララさんが来られたときにはそこまで警戒してる様子は見られなかったんですが……」


「そのときはサハの女王様もいたからじゃないですか? どっちにしろあまりいい気分はしませんね」


「ミャ(いつでも封印結界張れるわよ)」


 ボネもかなり警戒しているようだ。


「チュリ(これは怪しいですね。衛兵さんたちも緊張してるのか、表情がかなり硬いです。いきなり襲ってくるかもしれません)」


 ゲンさんの頭に乗って周囲を見渡しているピピまでそう言うのか。

 これはヤバいかもしれない。


「アリアさん」


 後ろを振り返り声をかけると、アリアさんは黙って頷いた。

 まだミスリルの剣こそ握ってはいないが、既に臨戦態勢に入っているようだ。


 衛兵に目を合わせてみるが、みんなすぐに目を逸らす。

 なにかやましいことがあるのか?

 今から殺すことになるかもしれない相手の顔なんてまともに見れないか?

 そんなんで戦争なんてできるのか?

 まぁゲンさんと戦わないといけないと思うとこわくなっても仕方ないだろうけどな。


 でももしこっちが襲われてもなるべく誰にも怪我はさせないように言ってある。

 向こうがどう考えてるのかはわからないが、俺たちは戦争をしに来たわけじゃないんだからな。


 そして玉座が近付いてきた。

 国王の顔もハッキリと見える。

 国王が座る玉座の両脇には国王と同じくらいの年齢と思われる男性と女性が立っている。

 五十歳くらいだろうか。


 少し離れた場所にはお爺さんとお婆さんの顔も見えた。

 まさか俺たちをハメようとしてるんじゃないよな?

 別に俺たちはなにも悪いことはしてないだろ?


 だが気になることがないわけでもない。

 ここに来る途中の馬車の中で二人に火山とピラミッドの話をしたとき、二人は考え込みはしたものの結局はなにも知らないということに落ち着いた。

 でもあれは絶対になにか知ってる顔だ。

 俺たちやラシダさんが知らないなにかを知ってる可能性はかなり高いと思う。

 どうせすぐわかることだからそれ以上は深く聞かなかったけど。


 ベンジーさんが言うには、一般公開されてないピラミッドの中には財宝が隠されてるなんて噂もあるらしいからな。

 それが本当なら、俺たちのことをその財宝狙いの盗賊だと思っている可能性は大いにあると思う。

 あんな脅迫状を送り付けられたウチが怒って戦争をしかけ、勝利の戦利品として財宝を頂戴することくらい別におかしい流れではない気もするし。


 そうこう考えてるうちに国王の前に来てしまった。

 ラシダさんが立ち止まったので俺も立ち止まる。


「国王様、こちらが大樹のダンジョン管理人のロイス様です」


「うむ。……衛兵隊長、衛兵のみなはもう退出してくれ」


「えっ!? よろしいんですか!?」


「うむ。この者たちのことなら問題ない」


「でも……では数名だけは残させますので!」


「いや、ラシダ以外は全員仕事に戻ってくれ。聞かせられない話もあるらしいからな」


「……わかりました。ではラシダ、頼むぞ」


「はい……」


 そして衛兵たちは本当に全員部屋から出ていった。


 残ったのは国王と、国王の傍にいた男性と女性、それとお爺さんとお婆さんの五人だけだ。


「国王様、こんなにすぐ衛兵たちを退出させるのならなぜお集めに?」


 みんなが気になってることをラシダさんが聞いた。


「大切な客人を迎え入れるための礼儀だ。いつものことだろ」


「……そうですね」


 ラシダさんは一瞬戸惑いを見せつつ相槌を打った。

 どうやらいつものことではないらしい。


「まぁいいじゃないですか。それより大樹のダンジョンのみなさま、よくぞこんな遠い場所まで遥々お越しくださいました。慣れない暑さで大変だったでしょう?」


 国王ではなく、隣の女性が話し始めた。

 この人が噂の大臣か?


「立ち話もなんですのでそちらへ移動しましょうか」


 そちら?


 ……確かに会議スペースのようなものがあるな。


 俺たちは警戒を続けたまま移動する。

 衛兵がいなくなったと油断させておいて、この女性にブスッと刺されるパターンもあるからな。


「ロイスさん、ここにいる人たちは大丈夫です」


 ラシダさんが小声で話しかけてくる。


 ということはこの二人も地下遺跡の存在を知ってる人たちってことか?

 ってまぁ国王の側近なら当然か。

 でもラシダさんがグルの可能性をまだ完全に捨てたわけじゃないからな?


 そして俺とカトレアは席に着いた。

 俺たちの対面には国王とその側近の二人、それにお爺さんたちも座った。


 ラシダさんは国王の後ろに立っている。

 俺の後ろにはアリアさん、カトレアの後ろにはカスミ丸がなにも言わずとも立っているから、護衛というのはそういうものなのだろう。

 ゲンさんはその二人の後ろで床に座っているから二人の護衛みたいな感じだな。


「ミャ(この男二人もそれなりに魔力あるわよ)」


 国王はともかく、こっちの男性もか。


「あらあら、可愛い声ですこと。黒猫ちゃんということはボネちゃんね? お腹空いてない? なにか食べる?」


「ミャ? (なんで私の名前知ってるのよ? 勝手にミルク飲むから気にしないでいいわよ)」


 こんな子猫の名前まで調査済みなのか。

 なかなか優秀な調査員がウチに派遣されていたようだ。

 それと俺たちがいきなり来たにも関わらず、それをしっかり覚えてるこの女性もな。


 おっと、ミルクだっけ。

 レア袋から取り出した皿をテーブルの上に置き、ミルクを注ぐ。

 それをすぐにボネは飲み始めた。


 ってさすがにテーブルの上は失礼だったかもしれない……。


「うふふ、可愛いわね~」


 大丈夫そうだな。


 すると今度はカトレアがなにかを取り出し、テーブルの上に差し出した。


「急にお伺いしまして申し訳ございません。こちらソボク村名物のお団子セットです。ぜひご賞味ください」


「あら、またお土産持ってきてくれたの? この前のお饅頭も凄く美味しく頂いたわ。ありがとうね、カトレアさん」


 カトレアの名前も覚えてるのか。


「ソボク村というとマルセールの町から魔道列車で東に二十分ほどのところの村よね? 桜公園が有名だって聞いたわ~。ぜひ一度訪れてみたいものね」


 ソボク村のことまで……。


 観光目的で調べさせたんじゃないだろうな?


「あっ、お茶の準備がまだだったわね。少しお待ちくださいね」


 女性は立ち上がり、近くにある小部屋に入っていった。

 そこにキッチンがあるのか?


「「「「……」」」」


 誰も喋らない。


 というか女性が話し始めてから国王は全く喋らなくなったな。

 隣の男性も喋る気配がないし。

 みんなボネがミルクを飲む姿を無言で見つめている。


「ミャ~(ミルク飲んだらお腹が空いてきたわ。なにかお肉出してよ。私だけ食べてるのもなんだからピピもいっしょに食べなさいよ)」


「チュリ(仕方ないですね。まぁ危険もなさそうですし、いいでしょう)」


 こいつら……。

 国王の前なのに緊張とかしないのかな……。


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