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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百八十九話 見えてきた大きな石

「風のほうがいいかもね」


「砂漠で炎はなんだか暑苦しいですもんね」


「雷も当たると気持ちがいいよね」


「ですよね。ピピが魔石を回収しやすいように思いっきりやっちゃってください」


 ララの魔法は爽快感が凄いよな。

 こんなのを自在に操れるなんて本当に羨ましい限りだ。


「ミャ! (ちょっとティアリス! 暑苦しいからもっと離れなさいよ!)」


「なにボネちゃん? 撫でてほしいの? よしよし」


「ミャ! (違うわよ! ……もう少し後ろよ!)」


 御者席で俺とティアリスさんの間に座っているボネは撫でられて嬉しそうだ。


「二人ともよそ見してたら危ないでござるよ」


 カスミ丸が馬車の中から話しかけてくる。

 ドアを開けっぱなしにしてるおかげで背中に当たる涼しい風が心地良い。


「これくらい余裕だって。視界はハッキリしてるし、言うほど敵もそんなに多くないし、強さもそれほどだし」


「感覚が少しおかしいでござるよ……。それになんだかロイス殿のイメージと違うでござる」


 どんなイメージなんだよ?

 ってダラダラしてるイメージに決まってるか。


「あ、こっちも魔力切れだ。この二本の魔石交換を頼む」


「了解でござる」


 誰でも魔法が使える杖って本当に便利だよな~。


「この砂漠の魔物ってネズミやトカゲみたいなのが多いですよね」


「うん。あとシカとかサソリね」


「あそこにいるヘビかコブラみたいなやつとかダンジョンで出現させたらどうですかね?」


「絶対やめてね? お客さん減っても知らないよ?」


 ティアリスさんはそう言いながら炎で焼き払った……。


 おそらくウチの魔物一覧にいる敵ばかりだよな。

 でもこうやって戦っててもあまり魅力を感じないせいでウチでは登場させてないんだろう。

 砂漠フィールドなんてのも人気出ないだろうしな。


「でもさ、魔王って最近あまり活動してる印象なかったよね?」


「ですね。ジワジワ魔瘴が拡がっていくのを見るのも楽しみの一つなんじゃないですか? 簡単に人間が死んでしまうともうそれで遊びも終わりですし」


「どうせなら早く魔族領に城でも作って待ち構えてくれたらいいのにね」


「まさに今建築中なんじゃないですか? 本物のダンジョンを作るか魔工ダンジョンタイプにするかはわかりませんが、どちらにしても考えるの大変そうですもん」


「ダンジョンの構成考えるのって楽しい?」


「楽しいですよ。アイデアが浮かばないと嫌になりますけど」


「私もいっしょに考えてあげてもいいよ?」


「ティアリスさんはパラディン隊としてやることがいっぱいですからそんなことまでしなくて大丈夫ですよ」


「そういう意味じゃないんだけどなぁ~」


「ミャ! (しれっとなに言ってるのよ! そんな浮ついた考えだからユウナに勝てないのよ! 今もユウナはもっと強い敵と戦ってるわよ!)」


 こんなところまで護衛として連れてきた俺が悪いみたいじゃないか。


「そろそろ見えてくるでござるよ」


「ナミの町がか?」


「違うでござる。ほら、あれでござる」


 あれって……山か?


「ってもしかしてあれがピラミッドか?」


「そうでござる。徐々に大きくなってくるでござるよ」


 いやいやいや!

 大きいってレベルじゃないだろ……。

 完全に山サイズじゃないか……。

 って山か。


 しかも火山の周りを囲ったんだからさらに大きいサイズになってるんだよな。

 あの大きさの山なら作業に二十年かかっててもなんの不思議もない。

 同時に町も作りながらだったんだろ?

 よく最後までやり遂げたな。


「あれに比べると観光用のピラミッドはかなり小さいでござる」


 そりゃ観光用のためだけにあんなに大きな物を作る気力なんてないだろうからな。


「石でできてるんだよな?」


「きれいな石でござるよ。もう少し近くで見るとキラキラしてるでござる」


 錬金によって作り出された特殊な石か。

 以前カトレアがナミを訪れたときにその事実を知ってれば検証用に持ち帰ってきてたはずだよな。


「あっ!? 小さいピラミッドも見えてきたよ!」


 どれどれ?

 ……火山ピラミッドの手前にあるのか。


 でも小さいとはいえ、結構大きいな。

 しかも思ってたより数も多い。


「ん? あれはなんだ?」


 その小さいピラミッドの手前に四角い大きな石のようなものが見えてきた。


「場所的にナミの町じゃない?」


「え? あれが町ですか?」


 ……確かに町のように見えないこともない。


「ナミの町も石で囲まれているでござる」


 やっぱりあれがナミの町なのか。


「でも中の地面の道は砂でござるよ。それに適度に陽の光が入るようにも設計されているでござるし、町の外ほどは暑くなくてまだ過ごしやすいとは思うでござるよ」


「あの石もピラミッドと同じ石か?」


「そこまで確認してないでござるがたぶん違うと思うでござる。あとでカトレア殿に成分を調査してもらったほうがいいでござるな」


 ピラミッドや地下遺跡に使われている石と同じものだったら封印魔法も町ごと簡単にかけられそうなのに。


「魔物から防衛するためにあんな形にしたのかな? それともまた噴火が起きたときに町が破壊されるのを防ぐため?」


「どちらの考えもありそうですよね」


 でもなんだろうこの感じ。

 あれと似たようなものをどこかで……。


「チュリ! (あれが町ですか!? 衛兵さんと思われる人たちが外で戦闘してますよ!)」


 ピピが空から下りてきた。


「そうだってさ。このあたりも急に魔物が増えたのかもな」


「チュリ(それよりあの建物、規模は全然違いますけどユウシャ村みたいですね)」


「ユウシャ村? ……あ、それだ」


 あの要塞みたいな建物と似てるんだ。

 というかどちらかがマネして作ったとしか思えない。

 時系列的にはこっちがあとだよな?

 ララシーの弟子だったらユウシャ村に行ったこともあるかもしれないしな。


「ユウシャ村もあんな感じだったの?」


「はい。土魔法による岩で囲まれてて、まるで要塞みたいだったんです」


「へぇ~。魔物対策をするなら囲まれてないと不安だもんね」


 ティアリスさんは帝都までしか行ってないもんな。


 ……というか帝国出身者を除くと身近でユウシャ村のことを知ってるのは俺とシャルルだけか。

 この前カスミ丸といっしょにナミへ行ったのはメルとマドだっけ?


「メル!」


「ピィ!? (なんですか!? もうすぐ着きますよ!?)」


 メルは敵に向けて風魔法を放ちつつ、俺の膝の上にやってきた。


「ナミの町を見てユウシャ村に似てるとか思わなかったか?」


「ピィ~(似てますか? 石や岩に興味ないのでなにも思いませんでしたけど)」


 リスってそんなものなんだろうか。

 木には興味あるよな?


「ピィ(それに暑すぎて少しでも早く日陰の場所に行きたいとしか思ってなかったですから)」


 それはそうだよな。


 こんな暑い思いをしてまで観光に来たいという人たちの気がしれない。

 ピラミッドも石を積み上げただけの建物だし、よほど暇で時間とお金が余ってる人しか来ないんじゃないのか?


「ピィ? (もういいですか? この付近も前より敵増えてますからラクダたちを守らないと)」


「あぁ。あと少し頑張ってくれ」


 やはりここも敵が増えてるのか。


 でも魔工ダンジョンから拡がっていく魔瘴とは違って、こうやってむりやり発生させた魔瘴は放っておいてもそんなに急激に拡がったりはしないんだろ?

 どうやら魔王は魔瘴発生のために魔力を使う余裕があるようだ。

 完全に遊ばれてるな。


 こっちには今タルとティアリスさんがいるから全部浄化してやろうか。

 ってこれは勝てない勝負だからやるだけ無駄だよな。


「ロイスさん! ここからは私たちが先導します!」


 ラシダさんが横に並んできた。


「わかりました! ウェルダン、ラクダ隊……じゃなくて衛兵さんたちの後ろに付け!」


「モ~(暑い……喉乾いて死にそう……早く休みたい……)」


 ラクダたちも同じ気持ちなんだろうか。


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