表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

478/742

第四百七十八話 水路の補足情報

「……」


 火山がまだあるんじゃないかという話を俺から聞いたラシダさんは目を大きく見開いたまま固まってしまった。

 そしてラシダさんの顔からは凄い大粒の汗が流れ始めた。

 この部屋別に暑くないよな?


「なにか心当たりはありませんか?」


「……」


 ダメだ。

 ナミに伝わるピラミッドの話を信じていただけに衝撃だったんだろう。

 俺とマリンの顔を交互に見つめてなにか言いたそうにはしているが言葉にならないようだ。


「ウチに伝わってる情報が古いだけかもしれませんのであまり深刻に考えないでください。なんせ二百年以上も前の話みたいですから。そこから親交があったという話も書いてないみたいでしたし」


 さっきララが本で調べた情報を俺たちに教えてくれたって設定な。


「とりあえず一度ピラミッドと地下遺跡を調査させてもらってもいいですか? もし遺跡全体が特殊な鉱石で構成されてるんなら遺跡内には封印結界をすぐかけられるかもしれませんし。あ、でもピラミッド内に本当になにもなかった場合はできればサハに避難してもらいたいので封印結界はかけないことになると思います。それでもいいのであればウチから人を行かせますけど」


「……はい。ぜひ調査をよろしくお願いいたします。私共ではお役に立てそうにありませんので……」


 ただの石の建造物だと思ってたのが実は火山かもしれないと思うとこわいよな。


「あの……」


「はい?」


「このことは調査結果が出るまで私だけの胸の内に秘めておいてもよろしいでしょうか? あくまで遺跡内に封印結界をかけられるかどうかの調査のためにお連れしたと話しますから」


「えぇ。こちらとしても混乱を招きたくないですからそうしていただいたほうがありがたいです」


「いえいえ、ありがたいのはこちらですので……」


「でも国王はそれで納得してくれますか? ウチの者に危険がおよびそうならすぐ撤退させますからね?」


「そこは私を信用してください。必ず国王様を説得し、地下遺跡、そしてピラミッドまでお連れしますので」


 やけに強気だな。

 なにか国王の弱みを握ってるのか?

 って水道屋の生まれの時点で立場的にはそれなりに強いんだよな。


「ところで、今の話を聞いてから改めてなにか気になることはないですか? 地下遺跡のことでもピラミッドのことでも構いませんから」


「……あ」


「ん? なにかありました?」


「先ほどは言うの忘れてたんですけど……」


「なんでしょう?」


「水道屋の仕事は地下遺跡にある水路内の転移魔法陣と、それに対応する地上の転移魔法陣を結び付けることというのは説明しましたよね?」


「えぇ、それがなにか?」


「それとセットになってる仕事があるんです。水を使うということは排水のことも考えないといけませんから」


「あ、なるほど。つまり転移魔法陣の数は倍必要になるってことですか?」


「その通りです。私たちの中では当たり前のことですから伝えるのを忘れていました、すみません……」


 なにが言いたいんだろう?

 別にそんな細かいことまで説明してくれなくても……ん?

 排水?


「その排水はどこに流れてるんです?」


「……供給用の水路の下に、排水用の水路があるんです。地上で転移魔法陣を設定する際は、位置情報を間違えて設定しないように注意します」


「ふむふむ。で、その排水はどこに流れ着くんですか? ずっと水路内を流れたままってわけじゃないですよね? 魔法で消滅させてるとか?」


「……おそらく遺跡外部へ流れていってるかと」


「遺跡外部? 町の外ってことですか?」


「たぶんですけど……。なんせ確認したことがないものでして……」


 そんなんで排水の処理とか問題にならないのだろうか……。


「でも遺跡内部からは排水用水路が見えないものでして確認のしようがないんです! 通常用水路と排水用水路の間は石がありますから! 排水ですから見えたら嫌ですよね!? 外の地上からもわかりませんし! 掘って確認してまではいないですけど……」


 わかったから……。

 問題になってないんなら別にいいよ。


「その排水がピラミッド方面へ流れて行ってる可能性はなくはないって考えてもいいですかね?」


「……はい」


 その排水用水路がピラミッドまで続いてるかどうかだな。


「マリン、どう思う?」


「やっぱりその排水用水路が怪しいよね。ピラミッドまで続いてるとして、ピラミッド内で排水を処理することでピラミッド内部の熱を下げてたりするのかも。それか火山の火口に直接流し込んで噴火を抑制してるとか?」


「ありえそうな話だな。それなら排水の利用法としては良く考えられてるよな」


「うん。さすがララシーの弟子って感じ」


「臭いとかは気にならないでござるか?」


「嫌な臭いはいっさいありませんね。たまに気休め程度に消毒用の液体も流しますし。見えない分、転移魔法陣の設置は少し難しいみたいですけど」


 ちゃんと配慮もされてるんだな。

 さすが女性と言うべきか。

 ってまだあの二人が作ったとは限らないか。


「でも転移魔法陣って自分からそんな離れたところにも設置できるんですか?」


「たぶん2メートルくらいまでなら可能だと思います」


「対になる転移魔法陣と転移魔法陣の間の距離は?」


「10メートルはいけると思います。もちろん術者の腕にもよりますが」


 ほう?

 そんなに離れてても大丈夫なのか。


 その転移魔法陣を繋ぎ合わせれば移動がかなり楽になるな。

 カトレアにもそれくらいできるようになってほしいもんだ。

 維持する魔力がどうたらこうたら言われそうだけど。


「お兄ちゃん、転移魔法陣のことはあとでいいでしょ」


「そうか。ではラシダさん、明日の朝出発でよろしいですか?」


「え? もう来ていただけるんですか!?」


「というか今しか無理なんです。封印結界担当の者がこの先しばらく仕事が立て込んでて出張続きになるかもしれないので」


「そうなんですか……なのにすみません……」


「いえ。サハでのラクダの手配とかは当日でもすぐにできるんですかね?」


「それはお任せを!」


「そうですか。では明日の朝七時にまたここに来てもらえますか? 衛兵隊全員で構いませんので」


「わかりました! どうかよろしくお願いします! それとやはりこのことを国王様たちにもお話してよろしいでしょうか? 少し不安になってきてしまって」


「えぇ。でもそれはこちらから話をさせてもらってもいいですか? ラシダさんもその場に必ず同席してください」


「はい!」


 最後は元気な姿で帰っていった。

 水道屋でもある立場からしたら色々複雑なんだろうな。


「誰が行くでござるか?」


「そうだな~。まずエマとカトレアとカスミ丸は確定だな」


「むむ……まぁ仕方ないでござる」


「嫌なのか?」


「ラクダで三~四時間の移動は疲れるでござるよ。途中で休憩するとはいえ暑いでござるし、魔物も出るでござるし。でもこの前はフィンクス村に寄ったことを考えれば今度はナミだけなのでまだ楽でござるな」


「あ、カトレアたちが帰ってきたら馬車みたいなのを作ってもらうから少しは楽になると思うぞ」


「本当でござるか!? 期待するでござる!」


 まだできるかどうかわからないからあまり期待はしないでほしい。


「で、情報屋はあと一人いたほうがいいか?」


「そうでござるな。自分が地下遺跡やピラミッドに行ってる間に町で情報収集をしてもらったほうがいいでござる」


「じゃあ前に一度行ってるコタローにも行ってもらうか」


「兄上も行きたそうにしてたでござるよ」


「ん? ならどっちでもいいから、あとで三人で話し合って決めてくれ」


「了解でござる!」


 暑くて魔物が出て移動が大変なところに行きたいなんて物好きすぎるだろ。


「ほかは魔物たちでいいよな? 調査員も必要かな?」


「ララちゃんが行ってくれたら一番いいんだけどね」


「ララかぁ~。こないだ行ったばかりだから行かなそうだな」


「それにキャラメルキャメルの赤ちゃんのこともあるしね」


「あ~、そんなのあったな。なら絶対行かないって言うだろ」


「かもねぇ~。……シファーさんは?」


「行くわけないだろ。自分の村にももう帰れなくてもいいって言うくらいだぞ」


「だよねぇ~。とりあえず報告がてらララちゃんに連絡してみてよ。カスミ丸は三人で話し合ってきて」


 そして今日三度目のララへの通話だ。


「今エマちゃんとシファーさんに話し終わったところ!」


 帰ってきてたのか。

 タイミングがいいな。


 さっきのラシダさんとのやり取りを報告する。


「それ絶対なにかやってるじゃん!」


 やってるってなんだよ……。

 隠してるって言えよな。


「で、調査にララも行くか?」


「行かない。パラディン隊のこととかでやることいっぱいだもん」


 エマがいる傍で暑いや遠いや面倒だとか言わなかったのは偉いぞ。


「シファーさんにも一応聞きますけど、行きますか?」


「……ロイス君の嘘つき」


「はい?」


「だってナミに封印結界はかけないってあれほど言ってたのに」


「状況が変わったんですから仕方ないじゃないですか。それにピラミッドになにもなければサハへ避難してもらうことになるでしょうし」


「……私は行かないからね」


「あっ!? シファーさん!?」


 ララの声が響いた。

 どうやらシファーさんはいなくなったらしい。


「怒っちゃったみたい」


「水のことは話したのか?」


「あ、まだ」


「また水のために働かないといけなくなるかもしれないって思ってるんだろうな。仮に今後封印結界維持のために月一でナミを訪問するようなことになっても、もう水の心配はいらないってあとで伝えてやってくれ」


「うん。で、調査だけどさ、ティアリスさんとアリアさんに行ってもらったらどう?」


「あ、それいいな。でもなんでそこにスタンリーさんを入れないんだ?」


「だって場違いじゃん」


 場違い……。

 酷いような気もするが、調査に向いてない人なのは事実だからな。


「二人には今から頼んでみるけど、エマもすぐ来れるか?」


「はい! 封印結界用の材料も持っていきますか?」


「いや、それはいい。みんなの分の食料を準備してきてくれ。それとララ、砂漠フィールドで使う砂を大量にレア袋に準備してくれ。あと水もな」


「わかった!」


 こんなところか?

 急にやることが増えたな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=444329247&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ