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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百七十三話 ラシダの秘密

「地下遺跡の秘密を全部教えますから!」


 そう言われてしまったのでまたこちらだけで相談することにした。


「どうする?」


「いいんじゃない? もし封印魔法を中級レベルまで習得できる人がいたらそれはそれでいいことだし。でもコピーといえども本を渡すのはダメだからね?」


「そうか。ならエマに行ってもらうしかないか」


「エマ殿を行かせるなら護衛を強固にする必要があるでござる。もしエマ殿を捕えようとしてきたら自分とコタローとリスたちでは守りきれないかもしれないでござるよ」


「そうだな。エマの封印魔法で自分たちのことは守れてもその状態で移動するとなると厳しいしな」


「なぁ、あまり期待させるのはやめたほうがいいんじゃないか? それにエマちゃんが来たってことは封印結界を張ってもらえるものだと思ってしまわないかな」


「確かにそうですね。ならラシダさんに地下遺跡の秘密を聞きだしてから、やっぱり色々考えた結果封印魔法の件はなしでってことにしたほうがいいかも」


「「「……」」」


 うん、それがいい。

 どうせウチに戻ってドラシーに聞けばなにか知ってそうだから別に教えてもらえなくてもいい気がしてきたし。

 それに封印魔法なんて教えてなにか悪用されたときのことを考えたらやはり教えないほうがいいに決まってるし。


「ミャ~(みんな引いてるわよ)」


「だろうな」


 そして再び封印結界を解除した。


「秘密ってなんですか?」


「え? そんな率直に聞かれるんですか……」


「こちらもまだパラディン隊の準備でやることがいっぱいあるものですから、そろそろ終わりにしたいなと思いまして」


「え……お時間取らせてすみません……。地下遺跡の秘密につきましては、封印魔法の使い手の方がナミまで来ていただけるのなら、その方に現地にて必ずお教えしますので」


「そうですか。……ん? どうしたボネ?」


「ミャ~? (なにがよ?)」


「……そうなのか? すみません、ボネの話によるとウチで一番の術者は砂漠恐怖症らしいんですよ」


「はい? 砂漠恐怖症?」


「そうです。砂漠を見たら吐き気がするという大変重い病気です。砂場くらいなら大丈夫みたいですけど、砂漠のような広大なものとなると危険らしいです。この前サハに下見に行ったときに発症したらしいんです」


「……ほかの二人の方は?」


「その二人は冒険者ですので緊急時以外は修行の妨げをしないルールになってるんです」


「……本当ですか?」


「疑うんですか?」


「いえ……そういうわけじゃ……」


 話はもう終わりだな。

 さっさとお引き取り願おう。


「そろそろ訓練室のほうも終わるんじゃないですかね。文書の件は全ての項目に対して交渉決裂ということでお持ち帰りください」


「待ってください! さきほどまでと違って急すぎませんか!?」


「急? 急なのはそちらでしょう? こっちの予定にないことばかりですよ?」


「それはそうですけど……。でもこのままナミの国を見捨てるんですか!?」


「見捨てるもなにもサハの国は助けようとしてくれてるんですよね?」


「そうなんですけど……。でも自分たちで守れる可能性があるなら少しでもそれにかけてみたいじゃないですか!」


「なんだかウチが一方的に悪いみたいになってません?」


「そんなことは……。でも救える力があるのに救わないなんて酷いじゃないですか……」


「俺たちがなにもしてないと? サハの国を救うことがオアシス大陸を救う一番の方法だと信じて行動してるのに? これから危険を冒して毎月ナミまで通えと?」


「もし私たちの中に封印魔法のスペシャリストさえ見つかれば……」


「そんな都合よくいると思ってます? それに教えてもらいたいのならそちらからこちらに出向くべきじゃないですか? 俺たちみんなウチの術者がナミで拘束される危険を一番心配してるんですよ? ただでさえこんな脅迫状まがいの文書を渡されてるんですから」


「……」


 ついに黙ってしまったか。


「さて、出ていってもらえないのなら力尽くといった形を取らせてもらうことになりますよ? ウサギ君たち、この人を強制……」


「来れないんです」


「え? 来れない? なにがですか?」


「ナミに封印魔法を使える可能性がある者がいます。その者は魔力を大量に持ちながら、なぜか攻撃魔法、回復魔法、補助魔法のどれも使えないんです」


 ほう?

 エマと同じパターンじゃないか。

 確かにそれなら可能性はあるな。


「封印魔法のことは知らないはずなので試してもないと思います。試し方もわからないでしょうけど」


 やっぱり自分の魔法系統をすぐに判別できるような魔道具があったほうがいいよな。

 カトレアに要望は出してるが、今はまだ実現できるかどうか検討してる段階だ。


「で、来れないというのは?」


「……仕事が忙しくて」


「仕事?」


 そうか。

 魔力があるからって魔法が使えないんじゃ冒険者は無理だもんな。

 まぁウチには魔力があれば簡単に魔法が使える杖があるけど。


「はい。休みが取れない仕事でして、町を離れるわけにはいかないんです」


「休みがない? そんなブラックな仕事があるんですか?」


「ブラック?」


「完全にブラックです。そんな劣悪な環境でよく働けますね」


「……家業ですから、ほかの者に任せるわけにもいかないんです」


 家業?


 カスミ丸の忍者みたいなものか?

 って忍者は少し違うか。


 でも大樹のダンジョンはそうだよな?

 そう考えたら少し同情してしまうじゃないか。


「仕事の内容を聞いても?」


「……絶対に秘密にしてくださいね?」


「え、それも秘密のことなんですか?」


 秘密が多すぎるだろ……。


「はい。その仕事と魔力を結び付けて考えられると少し困るものですから」


 つまり仕事に魔力が必要ってことだよな?

 魔道具への魔力補充か?

 でもそれなら秘密にすることでもないか。


「お兄ちゃん、これ以上は聞かないほうがいいんじゃない?」


「え? でも気になるだろ?」


「そうだけど、聞いちゃったらたぶんお兄ちゃんは断れない気がするもん」


 それは内容によると思うけど……。


「実はその者は私の妹なんです」


「ちょっと!? ズルいですよ!」


 絶好の機会とばかりに話しだしたラシダさんに対してマリンが慌てて制止させた。


 ……妹?


「妹さんの話なんですか?」


「お兄ちゃん! ダメだって!」


「それならラシダさんの家業ってことにもなるんだぞ?」


「そうだけどさ! ……ってそうだよね? でも衛兵さんの話じゃないですよね?」


 ほら、マリンも聞きたいんじゃないか。


「……私の家系は代々魔力持ちなんです。当然私にも魔力はあるのですが、その仕事をするには魔力量が不十分なものですから。小さいころはいずれ魔力量も増えるだろうと思っていたのですが、十五歳になっても大きく増えることはなく、結局家業は諦めました。兄妹の中で私の魔力量だけが際立って少ないことがずっと不安でしたので、身体だけは鍛えてました。それでなんとか衛兵隊に入隊することができたんです。でもそれもあとになってコネ入隊だってことがわかったんですけどね。親の力ですよ」


「「「「……」」」」


 聞かなきゃ良かった……。

 なんでいきなりこんな暗い話になるんだよ……。


「で、でも! 鍛えてたんですから衛兵隊に入隊できる実力はあったんですよね!? 今だってみんなを率いているようですし!」


 マリンはフォローすることを選んだようだ。


「どうでしょう。自分がほかの人に比べて際立って強いということは感じたことありませんし、魔法を使えるといっても初級程度のものですしね。それに今来ているメンバーの中では私が一番年長ですし、もうずっとシファー様の警護を任されてるということもあって衛兵としての位だけは上ですから」


「……」


 どうしよう。

 今からでも聞かなかったことにできないかな……。


「でもシファー様のおかげで、私の家族たちも仕事が随分と楽になったんです」


「シファーさんのおかげ? 水となにか関係がある仕事なんですか?」


 ってつい反射的に聞いてしまった……。


「そうです。実は私の家系は代々……」


「「「「……」」」」


 なんだ?

 どんな仕事を口にするんだ?


「町の水道屋なんです」


「「「「?」」」」


 水道屋?

 水道ってあの水道?


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