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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百七十二話 ナミの遺産

「「「「地下遺跡!?」」」」


 ラシダさんの言葉に俺以外の三人も驚いている。

 みんな初耳のようだ。


「はい。ナミの町の地下には遺跡があるんです。それも地上の町と同じくらいの広さのものが」


 それってかなり大きいんじゃないか?

 ってナミの町の広さがどの程度のもんか知らないけどさ。


「そんな情報どの本にも載ってなかったでござる……」


 カスミ丸は昔から王都の図書館で勉強しまくってたらしいからな。

 情報屋の仕事の一環とはいえ、学校にも行かずに図書館で勉強とは泣けてくる話だ。

 まぁ給料を貰って勉強できたんだから一石二鳥かもしれないけど。


「このことは国家機密事項ですのでどうかご内密に」


「え……国家機密を俺たちに言ってもいいんですか?」


「致し方ないと判断しました。それにこのまま町に魔物が侵入してくることになれば地下遺跡も崩壊するでしょうから隠してた意味もなくなるでしょうし」


 それもそうか。

 でも隠してるだけの理由があるってことだよな?


「俺も聞いてしまって良かったのかな……」


 ベンジーさんが気にしている。


「大樹のダンジョンの方なんですよね?」


「いえ……俺はこの町の冒険者ギルドの職員なんです」


「…………絶対に秘密でお願いしますね」


「はい……」


 そこまで秘密にされると気になってくるじゃないか……。


「この地下遺跡のことを知ってるのは王族、水の補充者を警護する衛兵、そしてとある魔道士のみです」


 なかなか焦らすじゃないか……。

 特に、とある魔道士って言い方が気になって仕方ない……。


「……その目で見てみたくありませんか?」


「「「「!?」」」」


 なんだと?

 国家機密である地下遺跡を俺たちに見せてくれるって言うのか?

 でも勝手にそんなこと言って大丈夫なのか?

 その代わりに封印魔法をかけろってことか?


「ミャ~(その人、心臓が凄くドキドキしてるわよ。音がこっちまで聞こえてくるわ)」


 ん?

 大事な交渉中だからってことか?

 今まさに奥の手を出して俺を説得しようとしてるんだな?

 それとも国家機密をばらして自分が処分されるかもしれないって思ってるのか?


「話さえ聞かせてくれればそれでいいですよ。俺は暑いところは苦手ですし、なにより封印結界の外に出てはいけないって言われてますのでどのみち無理ですし」


「え……」


 まさかこんなにあっさり断られるとは思っていなかっただろう。


「ほ、ほかの方はどうでしょうか!?」


「……私も別に。わざわざ遠いところに行ってまで見たいと思いませんし」


「……自分もでござる。ピラミッドはもう見たことあるでござるし」


「俺は地下遺跡もピラミッドも少し見てみ……いや、やっぱりどっちにも興味なかったです」


 ベンジーさんはマリンの視線に気付いて途中で言葉を変更したようだ……。


「そんな……嘘ですよね? 地下遺跡ですよ? もし地下遺跡を一般公開すれば観光客で溢れかえること間違いなしですよ? 地下だから暑くありませんし、ピラミッド以上の人気観光地になるかもしれないんですよ? 一般公開することはありませんが、みなさんにならお見せしてもいいと言ってるんですよ?」


 ……正直少しは見てみたい。


 でも今ラシダさんは交渉を仕掛けてきてるんだからな。

 決裂したところでこっちに損がない以上、相手の条件をのむ必要はない。


「「「「……」」」」


「……わかりました。では地下遺跡についてもう少し詳しく説明しましょう」


 そうなるよな。

 このまま終了ってわけにはいかないもんな。


「実はなんと、シファー様による水の補充作業はその地下遺跡で行われているんです」


「……さっき言いましたよね?」


「えっ!? 私がですか!?」


「え……だってシファーさんの話からこの話題になりましたし、地下遺跡のことを知ってるのは水の補充者の警護をしてるからみたいなこと言ったじゃないですか……」


「……そうでした」


 天然ってやつなのか?


「……でも普段シファー様が作業される場所は、城内部から地下に下りてすぐの場所ですのでおそらく遺跡だとは気付いてないんだと思います。ふふっ」


 気付かれてないことを嬉しそうにするなよ……。


「しかもその作業してる場所、なんと神殿なんですよ?」


「「「「神殿!?」」」」


 くっ……神殿なんて言葉が出てくるとは……。


 地下遺跡に神殿、おまけでピラミッド。

 なんだか凄い力のある言葉ばかりだ……。


 ……ん?

 神殿?

 遺跡といい神殿といい、普段聞きなれない言葉のはずなのに、なぜか俺の頭の中でイメージができているのはあのせいだよな?


「神殿ってどんな作りになってるんですか?」


「興味ありますか!? 見に来ます!?」


「いえ、神殿ってなんなんだろうって思いまして」


「え……今のは知らない反応だったんですか……」


 ラシダさんは見るからにガッカリしたようだ。


「聞いたことはある気がするんですけど、実際に見たことないのでイメージが湧かないんですよ」


「あ、それは仕方ありませんよね……。現代で神殿なんてほぼ残ってないでしょうし」


「石で作られた大きい柱がたくさんあるやつですかね?」


「それです! 遺跡も神殿も石で全部できてるんです! な~んだ! 知ってるじゃないですか!」


 感情の起伏が激しいな……。

 こんな嬉しそうな顔、衛兵たちの前では見せられないんじゃないか?


「本で見たの?」


「いや、ウチの……ちょっと待て。ラシダさん、少しお待ちいただいてもいいですか?」


「え? ……はい」


「ボネ」


「ミャ~(封印結界ね? ……はい、いいわよ)」


 これでラシダさんには声が聞こえないはずだ。


「どういうこと?」


「実はウチのダンジョンのフィールド設定の中に遺跡フィールドがあるんだよ」


「「えっ!?」」


 カスミ丸とベンジーさんは驚く。


「あ~~~。そういやあったね。一覧でしか見たことないけど」


「地下三階を作るときに遺跡フィールドにしようか迷ったんだ。結局は現実味があったほうがいいってことで山フィールドになったけどな」


「地下四階の海底フィールドなんて現実味がなさすぎると思うけど……」


「それはララに期待されてインパクトが欲しかったからまた別の話だ。で、その遺跡フィールドの細かい設定パーツの中に神殿もあったんだよ。なんだか凄い神秘的な建物で、そこで戦闘をさせてもいいのかわからなくなった覚えがある。遺跡のほうはボロボロな感じでいこうと考えてたんだけど、神殿までボロボロにするのは罰当たりな気がしてな」


「遺跡をボロボロにするんだったら同じだと思うけど……。でもさ、ラシダさんが言ったように遺跡や神殿が現代で残ってるなんて聞いたことないよ? ナミのように隠してるだけかもしれないけど、それも地下だから隠せたんだろうし」


「だからもしかしたらウチの遺跡フィールドのパーツはそのナミの遺跡や神殿を参考に作られてるんじゃないかと思ってさ」


「あ、それはあるかも。……もしそうだとしたら、砂漠フィールドの設定パーツにピラミッドもあったりするんじゃない?」


「あ、そうだな。砂漠フィールドは設定したことないからそこまで見たことなかった」


「今ララちゃんに確認してみてもいいけど、帰ってからのお楽しみにしとこっか。それより絶対なにか秘密があるよね。地下遺跡内部には魔物がうじゃうじゃいたりして」


「いや、それだったら見せようなんて思わないだろ」


「あ、そっかぁ~。じゃあこれ以上待たせるのもなんだから聞いてみて。ボネちゃん、もういいよ。ありがとう」


 そして封印結界が解かれた。


「お待たせしました」


「……今のはなんですか?」


「封印結界です。封印魔法にも色々あって、今の結界には音を遮断する効果もあったんですよ」


「……それをこの子猫ちゃんが?」


「えぇ。必死に修行しましたので」


「修行すれば使えるようになるものなんですか?」


「もちろん適性もありますよ。でも初級程度の封印魔法なら使える人も多そうですね。防御系の補助魔法と似てるらしいですから。ただ中級以上を使える適性を持った人となると極端に少なくなると思います。ですから町全体を守れるほどの封印魔法となると、スペシャリストに任せるか、大勢で補うかのどちらかですね」


「……今からナミの魔道士に覚えてもらい、町を守れるほどの魔法を使いこなせるようになれますか?」


「さすがにすぐには厳しいかと。だから数で補う方法はまず無理だと思いますよ。よほどの才能がある魔道士なら別ですが」


「王都パルドにいるという封印魔法の使い手の方々の実力はどの程度のものなのでしょう?」


「5段階でいうと3の能力を持った中級レベルの人が一人、ほかは2か1です」


「それで世界一広い町を守れるんですか?」


「五分五分ですね」


「え……助けなくていいんですか?」


「協力はしてます。封印結界を補助するための錬金素材は渡してありますから、魔道士や錬金術師、あとは王国騎士隊の人たちが連携すればきっと上手くいくでしょう」


「……」


 とは言ってみたものの、本当に大丈夫なんだろうか。

 環境さえ整えてくれれば最後はエマたちを派遣するつもりではいるんだけどな。


「大樹のダンジョンにいらっしゃる方々のレベルはどの程度で?」


「ん? 一人は4、二人は3、この子猫はまだ2といったところですね」


「え……子猫ちゃん以外だと三人しかいないってことですか?」


「そうですけど? あ、でもレベル3といっても今言った王都の3の人よりは上ですよ? 10段階で言うと7と5に近い差はあるはずですから」


「……みなさん封印魔法を極めることに特化したスペシャリストなんですか?」


「いえ、ウチでスペシャリストと呼べるのは一人だけです。ほかの二人は色んな魔法をハイレベルで使いこなせるタイプですから。そのスペシャリストは封印魔法しか使えません」


「えっ!? 封印魔法だけですか!? そんなパターンもあるんですか!?」


「あるんじゃないですか? 火魔法しか使えなかったり、回復魔法しか使えない人もいるんですから。それにウチでは封印魔法を補助魔法の種類の一つみたいな考え方をするようにしてますし」


「でも封印魔法ですよ!? 例えほかの魔法が全て使えなかったとしても、封印魔法には行きつきませんよね!?」


「……まぁ知らなければそうなんでしょうね。覚えようとしてもその術がないかもしれませんし。ウチでも少し特殊な扱いにしてることは確かですから、覚えたいって言ってくる人がいても教えませんし。でもさっきも少し言いましたけど、防御系補助魔法である魔力障壁の強化版みたいなものですから、知らない間に使えてる人だっていたりもするんじゃないですか?」


 そんなに圧をかけてくるようなところか?

 というか理解してくれてるんだろうな?


「お願いします! どうかダメ元で一度ナミの魔道士にご教授願えませんか!?」


 おい……。

 今なにを聞いてたんだよ……。


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