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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十二章 過去からの贈り物

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第四百七十一話 訓練施設で腕試し

 衛兵さんたちはスタンリーさんの実力を疑っているようだ。

 そりゃあ見た目はただのデ……筋肉多めのガッチリ体型で少し動きが遅そうだからな。


 スタンリーさんは不満のようなので、訓練施設で腕を見てもらうことになった。


 そして訓練施設に移動するなりすぐにパラディン隊の装備に着替え、戦闘を始めた。


「見てるであるか!? 敵はブラックオークである!」


「「「「……」」」」


 安全のための強化ガラス越しに見ている衛兵さんたちはスタンリーさんの強さに驚いているようだ。


 まぁブラックオークと一対一で戦って勝てるなら申し分ないだろ。

 というかブラックオークって言ってわかるのか?

 砂漠にはいないだろうし。

 でも食材の名前としては聞いたことあるかもな。


「どうである!? 次はベビードラゴンと戦うである!」


 おい、それはやめといたほうが……。


 ……ん?

 意外に戦えてるな。


 敵の攻撃をくらってるはずなのにそこまでダメージはないようだ。

 筋肉のおかげか?

 ってミスリルの鎧のおかげに決まってるよな。

 剣もミスリルだからか、以前に比べたらスタンリーさんの攻撃力も上がってるように見える。


「これでも納得しないであるか!?」


「「「「……」」」」


 なんとベビードラゴンを倒してしまったじゃないか。

 衛兵さんたちもまさかこれほどの実力だとは思ってなかったんだろうな。

 武器と防具の力が大きいことには気付いてないだろうし。


「スタンリーさん、もういいんじゃないですか?」


 アリアさんが声をかけた。


「うむである。アリア隊員、どうせならお主も腕を見せてやってはどうである?」


「私は遠慮しておきます。それよりこの施設のことを説明してあげたほうがいいと思うんですが」


 あ、そういうことか。


 衛兵さんたちはスタンリーさんの実力のこと以上に、この訓練施設が気になってたのか。

 そりゃあ魔物がいきなり出てきたら誰だって驚くに決まってるよな。


 そしてスタンリーさんがこっち側にやってきて、衛兵さんたちに訓練施設の説明をし始めた。

 すると何人かが戦ってみたいと言い出したので、仕方なく了承をした。


 この魔道ダンジョン内の訓練施設は大樹のダンジョンと違って冒険者から体力や魔力を吸収できない分、魔物を出現させた分だけ魔力が赤字になるからな。

 でも隊員の戦闘力向上および維持のためには必要な施設だ。


「あの、これって危なくないんでしょうか?」


 ラシダさんが聞いてくる。


「危ないですね。下手すると死にます」


「ですよね……」


 ここではセーフティリングも使えないしな。


「ですから訓練を行う場合は操作係の人間が必要になります」


「あ、先ほどからこちらのアリアさんがやられている役割ってことですか?」


「そうです。もし見ていて危険だと判断したら魔物を消滅させることができますから」


「なんと……」


「大樹のダンジョンだともっと色々と融通が利くんですけどね。まぁあくまでこの施設は戦闘力維持という意味合いが強いですから、自分より強い敵と戦うことは避けるように言うつもりです」


「なるほど……。強くなりたいのなら大樹のダンジョンに行った際にということですね?」


 隊員が週に一度は大樹のダンジョンで修行するということまで調べてあるのか。


「それより、衛兵のみなさんってそこそこお強いんですね」


「比較的平和なパルド王国とは違ってナミ王国では魔物もそれなりに出現しますからね。オアシス大陸では西側に行くほど魔物が強く、出現数も多くなるんです」


「サハのほうはまだ安全ってことですか?」


「そうです」


「西側は魔瘴が濃かったり?」


「濃さのことまでわかりませんが、魔瘴地帯は多いですね。特にモーリタ村周辺は危険だと言われてます」


 西の端にある村か。


「さっき怪我した人の出身地の村ですか?」


「はい。彼はそんな環境で育ってきてますから、衛兵の中でも強い部類に入るんです。先ほどはその彼があっさりやられてしまったものですから正直みんな少しショックで……」


「可愛い猫だと思って油断してたんですから仕方ないですよ」


 その彼は仲間の戦いを応援しているようだ。

 ナミの衛兵隊は王国騎士隊よりは強そうだな。


「あの、衛兵たちが訓練させてもらってる間に、私とみなさんとで文書の内容についてもう少しお話しさせてもらえませんか?」


「え? まだ話すことありました?」


「シファー様のお気持ちはわかりましたが、我々としても簡単に引き下がれない事情がありまして……」


 まぁそうだよな。

 元々話がしたくて俺のところに来るつもりだったんだろうし。

 ちょうどいいから、流れによってはさっきのピラミッドを作る案を提案してみるか。


「わかりました。じゃあティアリスさんとアリアさん、ここはよろしくお願いします」


「「……はい」」


 二人とも嫌そうだ……。

 嫌というより面倒って感じか。

 でもこれも仕事……とはいえないもんな。


 そして部屋を移動し、改めて席に着いた。

 この場には俺とマリンとカスミ丸、それにラシダさんとベンジーさん。

 ボネはマリンの膝の上、ダイフクは俺の足元で昼寝に入った。

 ここにはウサギがいるから、万が一ラシダさんが襲ってきても対処できるしな。


「さて、順番にいきましょうか。まず一つ目、ナミの町全体を封印結界により保護をすること。これについてはシファーさんにも説明しましたように無理です。仮に封印結界を張ることはできたとしても、二つ目の条件である今後の維持のためにそちらに訪問することが難しそうですので。その理由として、砂漠地帯での移動が困難なことがあげられます。リーヌの町には月に一度、封印結界維持のためにウチから術者を派遣することにしていますが、それはこの大陸の陸路ではウチの魔物が高速で引く馬車が使えるからです。砂漠ではそれもできませんし」


「そうなんですか……」


「それに普段から魔物が多く出現するような場所なら尚更です。おそらく今後魔瘴に覆われることになれば、今出現してる魔物たち以上のレベルの魔物が出現することが予想されます。俺はマーロイ帝国で、今まで見たこともないような魔物が急に現れたり、魔物が突然変異した例を見ましたので。この猫たちのかつての仲間も魔瘴の影響で普段より能力が格段に上がり、凶暴化した姿で襲ってきたんです」


「そんなことが……」


「その襲ってきた魔物といっしょにいたこの二匹はまだ産まれたばかりの本当に小さな子猫でしたからね。魔物の子とはいえ、善悪もついてないような状態だったので保護することにしました。なにより魔物が溢れる現場で子猫が生きていけるとは思えませんでしたから」


 本当は俺が寝てる間に全て終わってたんだけどな。


「少し話が逸れましたが、封印結界の維持をそちらで全てやっていただけるというのであればやれなくもありません。でもそれならわざわざウチに頼まなくても、封印魔法が使える魔道士をそちらで探してもらえばいいだけの話ですけどね。幸いお金はたくさんお持ちのようですし」


「……探しましたが、オアシス大陸には一人もいませんでした」


「王都パルドに行けば十人ちょいはいますよ」


「えっ!? 本当ですか!?」


「はい。でも今は王都の封印結界の作業で手がいっぱいでしょうし、魔道士ギルドは一人も出さないかもしれませんけどね」


「そうですよね……」


 少し期待させてしまったのは申し訳ないな。


「ウチとしては今後保守をしない仕事は責任感を丸投げしてるようでやりたくないんです」


「それはわかります……。だけど、先人たちが残してくれたナミの町をそう簡単に捨てるわけにはいかないんです。もちろん私たちも家や仕事を失いたくないという思いもあります」


 あ、そうか。

 サハに避難したら衛兵さんたちの仕事もなくなるのか。


 でもそれを言ったら帝国やジャポングの人たちはもうその状況を乗り越えてきてるんだし。


「町と命、どちらを取りますか?」


「え…………命に決まってます」


「ですよね。申し訳ないですがウチができることにも限りがありますので、どうしてもナミの町を守りたいのならほかを当たってもらえますか? 封印魔法がなくても衛兵さんたちや冒険者がいればどうにかなるかもしれませんし。水魔法の術者についてはウチのダンジョンで募集してもらっても構いませんので」


「お兄ちゃん!? 危険ってわかってるのに冒険者をナミに行かせる気!?」


「危険だからこそ報酬が高くなるんだろ? ねぇベンジーさん?」


「あぁ……。でもさすがにリスクを考えると誰も行きたいとは言わないと思うが」


 そうかな?

 今後の生活に困らないだけのお金が手に入るかもしれないんだぞ?

 それに町の人々から神様や女神様と言って崇められるかもしれないのに。

 まぁ住む人がいなくなったら元も子もないけどな。


「……封印魔法をかけ直さない状態でどれくらい維持できるものなのでしょうか?」


「どうでしょうね。なにも障害がない場所で魔力を絶えず注ぎ続けることが可能なら数か月は持つんじゃないでしょうか。でも外には魔物がいますし、封印結界が大きくなればなるほど必要な魔力量も多くなりますから現実的ではないですね」


「……ではなにかほかに町を守る方法を教えていただけませんか?」


 ほかに?

 封印魔法以外でってことか?


 ……そんな方法があるなら封印魔法に頼ったりしないだろう。


「町全体を壁で囲ったらどうですか? それか地下に町を作るとか」


 屍村やユウシャ村みたいにな。

 いつまで持つかは知らん。


「……シファー様から聞きました?」


「ん? なにをですか?」


「私たちが過去から受け継いでる遺産についてです」


「過去から受け継いでる遺産? ピラミッドのことですか?」


「もちろんピラミッドもそうです。でも今私が言ってるのは別のことでして……いえ、もしかするとシファー様も知らないのかもしれませんね」


 なんだよその意味深な言い方は……。


 ただのお金とかの話じゃないよな?

 ピラミッド以外にもなにか重要なものがあるってことか。


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